[IGF2002 06]Impossible Creatures - 02/28 22:55

[IGF2002 06]Impossible Creatures

文・写真 奥谷海人

 若手の中でも新鋭デザイナーとして期待され,25歳にしてRelic Entertainent代表を務めるアレックス・ガーデナー(Alex Gardener)氏。360°の完全自由な状況でのRTSを実現した「Homeworld」で脚光を浴び,マイクロソフトと協力して開発を進めているのが,「Impossible Creatures」(旧名Sigma)だ。40種に及ぶ動物たちを掛け合わせていくことで新種生物を生み出し,それを量産して敵と戦うという,これまた一風変わったリアルタイム戦略ストラテジーなのだ。
 実は2001年のE3時点では,マイクロソフトもそのゲーム性に疑問を抱いていたようで,二つのモニターでひっそりと公開されているという状況だった(E3記事の「こちら」参照)。オマケにSigmaというタイトルが登録商標に引っかかり,しばらくは鳴りをひそめている状況だったわけだ。
 ガーデナー氏に話をすると,その顛末を回顧しながら
「去年はいろいろ学ぶことがありましたよ。でも,その経験をImpossible Creaturesの開発に生かして,非常に安定感が出てきたと思います」
と率直に語ってくれた。ゲームを遊んでみても,以前とは全然別なものである印象を受け,「どうなったかな?」という想像をはるかに飛び越え,一般的なリアルタイム戦略ゲームにまとまったようだった。

 ゲームの背景となるストーリーを話しておこう。
 遺伝子操作で新しい境地を築いた博士が,その技術を悪用して世界を征服しようと企んで反旗を翻した弟子の助教授に,博士の遺伝子操作で改良した新種動物を操りながら,南洋の孤島まで追いかけていくというものだ。時代背景を,映画「インディ・ジョーンズ」のような'30〜40年代に設定しており,冒険活劇のような雰囲気をうまく出しているようだ。
 シングルプレイヤーモードでは,島に点在するさまざまな動物を採取しながら,相手に攻撃できるだけの新ユニットを作り出していく。動物たちには,ゴリラやキリン,ハイエナ,バッファローに加え,アーチャーフィッシュやシュモクザメのような海洋生物,ワシのような鳥類,さらにはカメレオンといった爬虫類から戦闘アリまで,多用なものが用意されているのだ。これらの中から2種を配合して,頭部,腕,腹,足,尾などの部分を自分の好きなように組み合わせていくのだが,それぞれの動物には特徴や特殊能力が加わっていて,これを作るのがなかなかに楽しい。

 例えば,モノを投げる(長距離攻撃)腕を持つチンパンジーと足の速いチーターを組み合わせたり,敵に見えなくなるカメレオンと飛行能力のあるワシをかけ合わせて偵察ユニットを作るなどできる。これらの組み合わせは,推定で軽く4万パターン以上存在する計算になるのだが,実際に使えるのはその3分の1くらいになるはずだとガーデナー氏は説明する。さらに,泳力やナイトビジョンなどの特殊能力は30種類程度あるといわれ,配合パターンによって一つから四つまでの能力を持つことができる。これらのユニットは,元になった動物の希少性(クジラやゴリラなどの強力なユニットは高い)によってレベルが1〜5までに分かれており,自分の陣地を進化させていかなければ生産できないようになっている。
 マルチプレイヤーモードの場合は,あらかじめ複数の配合種を作り出しておいて,そのうちの9種を使ってアーミー(軍団)とすることでゲームに使用することになる。これは,あえて言うならカードゲームでの"デッキ"のようなもので,自分に合ったセットを揃えて対戦すると考えることができるだろう。もちろんこれらのアーミーは複数揃えておけるので,運を差し引いた勝負として同じプレイヤーと3連戦してみたりといったプレイが可能になるのかもしれない。ともあれ,1回の対戦の時間は短くなっており,30分程度で終わらせることができるのだ。

 ゲームの進行は,飛行船で島にやってきたプレイヤーがその気球を着陸させて本部とし,"ブラント"と呼ばれる作業ユニットを生産して,水上タービンなどの施設を建設していくことから始まる。水中作業であれ炭坑作業であれ,すべてブラントが行ってくれるわけだ。基本的には配合種ユニットが攻撃ユニットばかりなので,レーダーや対空ミサイルなどの防御施設はブラントが生産するわけだが,とくに面白かったのは,ブラントをヘリコプターにくくりつけて敵地まで飛んで行って,そこに防御施設を建ててしまうという作戦だ。ブラントは,宙ぶらりんのままで作業するので,飛行ユニットでなければ手出しできないのである。
 インタフェースも見やすくなっていて,操作もマウスだけほとんどのコマンドができるようになっている。味方のユニットをグルーピングした後で敵の施設を複数クリックするだけで,その順番通りに攻撃してくれるなど,プレイヤーにとって親切なインタフェースになっているのが好印象だった。
 ゲームエンジンの性能は折り紙つきで,建築物のアニメーションや動物が走った後の砂ぼこりなど,細かい部分までに作り込みが見られた。すでに,90%くらい開発が進んでおり,アメリカでは今春中には発売される見込みである。国内発売については未定。


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