インタビュー
リアルで剣が欲しくなったので。西洋剣や日本刀など,レプリカ装備を売っているお店に聞く,日本で手に入る“模擬刀剣”の話
……などと,以前リアルで西洋剣術レッスンを受けてきた際と同様の出だしにしてみたが,今回は「リアルで剣を振りたい」ではなく,「リアルで剣を所持したい」願望を叶える話をお届けしたい。
いやー,カッコイイよね,剣。西洋剣もいいけど,日本刀もいい!
とはいえ,日本には「銃刀法」という法律があるわけで,当然ながら,本物は買おうと思っても買えるものではない。そこで所有欲を満たしてくれるのが,いわゆる“模造刀剣”だ。見た目や構造が似ているだけのレプリカであり,もちろん日本においても所持できる。
模造刀剣を扱う店は,ネットの通販サイトだけでなく,店舗型の専門店もいくつかある。今回は,その中でもアクセスの良い秋葉原にある「武装商店」に足を運び,日本で売られている模造刀剣はどういったものなのかを,店主の菊地 理氏に聞いてみた。
模擬刀剣は,亜鉛合金などで作られた合法的な偽物
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。模造刀剣を購入できるところは限られていますが,武装商店さんは秋葉原にお店を構えてからずいぶん経ちましたよね。
菊地 理氏(以下,菊地氏):
来年(2020年)夏に開店から15年目を迎えます。この手のお店では,鎌倉の「山海堂商店」さんが老舗ですから,まだまだ若いです。
4Gamer:
菊地さんはどういった経緯でこのお店を開いたんでしょう?
私は以前模型店に勤めていて,エアガンコーナーを担当していたんです。ただ,当時は量販店が模型やエアガンに参入し始めた頃で,商売として厳しくなってきまして,10年ぐらい働いていたお店を辞めました。
では次に何をしようか考えたときに,模型店で扱っていたレプリカの刀剣類のことを思い出したんです。この手の武器には興味がありましたし,専門店の数も少なかったので,秋葉原なら商売になるだろうと,武装商店を開きました。
4Gamer:
今回は,ゲームに登場するようなレプリカ武器は,日本でどんなものが手に入るのか,どういった点で注意が必要なのかをお話いただければと思います。
まずは基本的なところとして,いわゆる模造刀や模造剣と呼ばれるものは,どういったものなのでしょうか。
菊地氏:
一般的には「模造刀剣」と呼ばれていますが,法的に厳密に呼ぶと「模擬刀剣」です。鉄砲で例えると分かりやすいんですが,おもちゃの「モデルガン」は「模擬拳銃」ですが,それが「模造拳銃」になってしまうと,「実弾を撃てるように改造したモデルガン」になってしまうんです。
4Gamer:
模造だと,法律上は実銃の機能を内包してしまうわけですか。
菊地氏:
刀も同じで,「日本刀」が刀匠の手で伝統的な製法で作られたものなのに対して,「模造刀」というのは車の板バネを削って自作したようなものを呼びます。それらに対して,うちで扱っているようなレプリカは「模擬刀剣」になるんです。
もっとも,一般的にそこまで厳密に分類することはなく「模造刀剣」で通じるので,どう呼んでも構わないと思いますが,お店としては正しい呼び方で統一しています。
4Gamer:
本物と偽物の境界線みたいなものは,どこにあるんでしょう。
菊地氏:
イメージでは「切れるか切れないか」と考えがちなんですが,それは違います。真剣の刃を潰して「刃引き」すればもちろん切れなくなりますが,これは研げば切れるようになりますから,模擬刀剣ではありません。切れるかどうかというのは,刃が「薄い」か「厚い」かの違いでしかないんです。
4Gamer:
なるほど。
菊地氏:
ではどこで判別するかというと,刃の材質です。日本では,鉄やステンレスなどの「磁石がつくもの」はすべて本物扱いになると法律で決められています。ですから,日本で販売されている模擬刀剣の材質は,重量や見た目がそれっぽい亜鉛合金製のものが多いです。あとは真鍮や,重量が軽くて演劇などに向いているアルミなどでしょうか。うちでは,最近は一品もので銀の短剣を売っていることもあります。
4Gamer:
柔らかい金属ならセーフ,ということでしょうか。
菊地氏:
大雑把にいえばそういうことです。
例えばゲームで「どうのつるぎ」なんてのがありますし,現実の歴史上でも青銅の武器がありますよね。青銅は銅とスズの合金で,銅よりも頑丈な金属です。一方で,真鍮は銅と亜鉛の合金ですが,これは青銅と同程度な強度がありますが、法的には模擬刀剣として扱われます。
4Gamer:
つまり,強度だけで見れば,材質によっては本物と同じレベルのものでも模擬刀剣扱いになっているということですか?
菊地氏:
そうなります。ま,鉄製の刃物が存在する現代に,銅剣をいちいち法規制する必要がないってことでしょうね。
とはいえ,「切れるかどうか」だけで言えば,それこそコピー用紙だって切れますから,どこかで法的な線引きをするにあたって,「刃に磁石がつくかどうか」が基準になっているということですね。
斧はいいけど槍はダメ
菊地氏:
もう少し法的に突っ込んだ話をしましょうか。これは模擬刀剣ではなくナイフ類の話ですが,「ダガー」は規制が厳しくなり,昔は刃渡り15cm以上までOKだったのが,現在は5.5cm以上だと所持できません。
ただ,刺突の威力だけで考えると,断面図が菱形のダガーよりも,面の少ない包丁などのほうが,実は強力なんです。しかし,包丁は法的に規制されていません。
これがなぜかというと,法律では「武器」と「道具」で扱いが分かれるからなんです。包丁は調理などに使う「道具」ですが,ダガーは日本語にすると「短剣」,つまり“剣”であり「武器」という分類ですね。
4Gamer:
威力とかで分けているわけではないんですね。
菊地氏:
ええ。道具としての分類は,ちょっと面白いですよ。例えば道具である「ナイフ」ですが,ナイフがナイフとして扱われるのって,どのぐらいの長さまでだと思います?
4Gamer:
ええと,8cmでしたっけ。
菊地氏:
それは携帯時の規制ですね。実はナイフに長さの制限は一切ないんです。仮に刃渡り1mのナイフを作ったとして,それがナイフとして認められれば合法のナイフなんです。
刃が前に曲がった「グルカナイフ」というものがありますが,これは日本では「鉈」の扱いで道具になります。しかしこれ,国によっては,儀式用に水牛の首を一撃で落とす,長さ1m以上のものもあるんですね。それでも日本での分類は鉈,道具です。
4Gamer:
水牛の首を落とせるのにですか?
菊地氏:
マグロの解体に使う包丁だって,長さは日本刀と変わりませんが,所持できますよね。それと同じようなものです。
ほかにも分かりやすいところで言うと,狩猟用のショットガンなんかも道具です。あれは危ないものではあるので,自動車などのようにライセンスは必要ですが,合法的に持てます。
一方,拳銃は人を撃つ武器であり,狩猟道具ではありませんから,オリンピック選手などの競技用のものなど,ごく一部を除いて所持できません。
4Gamer:
銃の中でも道具と武器で分かれるんですね。
菊地氏:
あとは,ゲームに武器として斧が登場することはよくありますが,これも日本では規制されません。斧は薪を割ったり木を切ったりする道具だからです。
しかし,槍は武器なので日本では違法になります。魚突きで使う「ヤス」や「銛」は狩猟道具になりますし,海外だと狩猟用の槍も存在するんですが,日本で本物の槍を所持するには,刀剣登録されているものでないとダメです。
4Gamer:
斧はいいけど槍はダメって,ゲーマー的には不思議な基準なんですが(笑)。
斧は形状にバリエーションがありますが,どの程度までゴテゴテしていてもセーフなんですか?
菊地氏:
柄が長かろうと,両側に刃が付いていようと,法律上は道具ですね。しかし,先端に小さな槍が付くと,これは「槍斧」になるのでアウトです。
4Gamer:
ハルバード,ダメなんですね。
菊地氏:
ダメです。とはいえ,これらはあくまで鉄製などの「本物」の話ですよ。日本でもレプリカのハルバードは販売されていますが,あれは材質が合法なものなので問題ないんです。
日本で手に入る西洋剣は限られる
菊地氏:
脱線しましたが,本物か偽物かでいろいろな線引きが行われている中で,うちで扱っているのは日本刀や西洋剣,古式銃などの,「本物が合法ではない武器のレプリカ」になります。模造包丁とか,模造折り畳みナイフとかを扱ってもしょうがないですから(笑)。
4Gamer:
本物を買ったほうが早いですね(笑)。
日本でも,本物の日本刀は刀剣登録すれば所持はできますが,なかなかそうもいかないですから,レプリカ需要はあると。
菊地氏:
ちなみに刀剣登録は,「美術品として政府が認めましたよ」というものに発行されるシステムです。そのため,西洋剣は基本的にアウトになります。
4Gamer:
え,そうなんですか?
菊地氏:
本物の西洋剣は,すべて武器の扱いですから。日本刀はあくまで美術品としてOKなだけで,許可を取れば武器として持てるというわけではないんです。日本刀の登録許可を出すのも,警察ではなく教育委員会ですし。
西洋剣は博物館での展示目的などの例外を除いて,海外から持ち込むこともできません。
4Gamer:
では,日本において西洋剣のレプリカは,「オレの家にも剣が欲しい!」という需要に応えてくれる唯一のアイテムなわけですね。
しかし,西洋剣のラインナップって,かなり限られていますよね。武装商店さんに限らず,いろいろなサイトなどを見て回っても,日本で手に入るのは同じメーカーのものばかりです。あれはなぜなんですか?
菊地氏:
日本で出回っている西洋剣のレプリカは,ほとんどがスペインのDenixというメーカーのものです。あとは一部,インドのWindlass Steelcraftsの製品があるぐらいでしょうか。
模擬刀剣を作っているメーカー自体は世界中にあるんですが,その中で日本に正規のルートで輸入できるのが,Denixぐらいしかないんですよ。
4Gamer:
それは材質的な問題ですか?
菊地氏:
そうです,海外製品は鉄やステンレス製ですから。
4Gamer:
材質を日本の法律で問題のないものにしてもらうことは難しいのでしょうか。
菊地氏:
難しいですね。海外のメーカーは,模擬刀剣を偽物という意識で作ってはいないんですよ。あくまで切れないだけの本物なんです。それなのに,日本向けの素材に変えてしまうと,強度の関係で逆に危険なものになりかねません。
ではなぜ,日本でDenix製品が手に入るのかいうと,あそこはそもそも飾り物メーカーなんです。本物を飾ると,鉄なら錆びますし,革ならカビが生えますし,子供が手を出してケガをしてしまうかもしれません。そうした部分を割り切って,維持に手間がかからず,安全で安価な飾り物を作っているんです。その結果が,たまたま日本に輸入できる材質だったということです。
4Gamer:
Denix製品って,割と装飾が多くて,あまりリアルな見た目ではないですよね。それはもしかして……。
菊地氏:
ええ,飾り物だからです。日本人からすると,「なんでそこに装飾入れちゃうかな!」と思う部分もあるんですが,海外ではリアル志向のメーカーがほかにありますから,あの装飾自体がウリになっているんです。
4Gamer:
なるほど……日本で西洋剣のリアルなレプリカが欲しいと思っても,選択肢がなくて悲しかったのですが,そういう理由だったんですね。
鎧や盾など,防具に関しての規制はあるんでしょうか。
菊地氏:
防具は武器と比べて規制は少ないんですが,管理が大変なので扱わないことが多いです。
先ほどのWindlassは防具を販売していて,法的にも輸入は可能です。しかし,錆び止めのためにグリス漬けで送られてくるんですよ。うちで扱っているヘルムやガントレットだけでも,グリスを落とすのに3日ぐらいかかりますし,落とした後は別の油を塗る必要が出てきます。
4Gamer:
本物の鉄製防具だからこその手間がかかるんですね。
菊地氏:
うちのような専門店はともかく,すべてのお店がそういった処理をするわけではありません。そのため,問屋さんに「錆びました」「ベタベタなんですが」みたいなクレームが来てしまったそうで,防具を扱うのが難しいみたいです。
また,日本の鎧は紐で縛るので,体格に多少の違いがあってもどうにかなりますが,西洋の全身甲冑はサイズを測ってフルオーダーするものですから,一式輸入して店頭に置くわけにもいきません。
ヘルムとガントレットはそれほど場所も取りませんし,購入して飾ったり遊んだりしやすいので,現在はこれだけ扱っています。
4Gamer:
盾はどうでしょう? 鎧よりはお店に並べやすいと思うのですが。
菊地氏:
盾も要望をいただくことはありますし,海外では売っています。日本の法律上も問題はありません。
ただ,商売的に厳しいんですよ。盾ってほとんどが木製で,それに飾りが描かれたキャンバス地を貼って作ります。高級品であれば蒸気と圧力で曲げて加工しますが,普及品は平らな木の板のままなんです。
ここで問題になるのが,日本人の西洋の盾のイメージです。「ドラゴンクエスト」的なのを思い浮かべませんか?
4Gamer:
あ! 金属で縁取られた,華美な装飾のカイトシールドみたいな……。
菊地氏:
それです。そうなると,暖炉の上に置くような飾りの盾のほうが近いんですが,それも見た目だけのものが多く,作りはイマイチでして……。
盾を日本で扱っても,需要に応えるのが難しいと思うんですよね。
模擬刀は飾る用途と振る用途で価格も作りもまったく違う
4Gamer:
日本刀のレプリカについても教えてください。西洋剣に比べて,ラインナップが豊富ですね。
菊地氏:
メーカーも揃っていますからね。売上としても,日本刀の圧勝です。
4Gamer:
日本刀の価格は,数千円から数万円まで,かなり幅があります。これらはどういった違いがあるのでしょう。
菊地氏:
これは業界的に決まりがないので,あくまでうちの基準ですが,飾りのための安価なものを「美術刀」,スポーツとしての居合いでの使用に耐えうる仕様のものを高価な「居合刀」としています。
4Gamer:
ということは,美術刀は振らないほうがいいんですね。
菊地氏:
はい,振るためにできていません。美術刀は安価に作るために,柄の部分はプラスチックなんです。これを振ると,刀身より先に柄が折れます。
一方,居合刀は真剣同様に,柄の7割ぐらいまで茎(なかご)が入っていて,柄材は真剣と同じ朴(ほお)ですし,本鮫皮を使っていますから,美術刀と強度は雲泥の差です。
4Gamer:
飾るぶんには美術刀で十分と。
菊地氏:
真剣と近い作りの居合刀を美術刀として買う方もいらっしゃいますし,居合刀1本の価格で美術刀を複数買う方もいますので,そこはお好み次第です。
また,居合刀は振るために作られているとはいっても,それには居合いの技術が必要になります。正しい技術でまっすぐ振ることができればそうそう壊れませんが,そうでなければ負荷がかかってしまいますから。
それと,美術刀より高価ですが,居合刀よりは安価な「居合練習刀」という製品も扱っています。これもうちの基準ですが,居合刀は合法かつ一番良い素材でできた刀身を使っていて,長さのオーダーができて,メーカーが修理に対応してくれて,柄巻きがきつく巻いてあるものとしています。この条件を1つでも満たせないものは居合練習刀です。
4Gamer:
「うちの基準」ということは,お店によっては全然違うこともあるんですか?
菊地氏:
はい,観光地などのお店の場合,“観光地価格”になっていて,美術刀でも高価なことはあります。また,ネットで検索すると1万円ぐらいで買える「居合刀」が出てくるんですが,それがうちでの美術刀だったりもしますね。
こうした名称はお店ごとの基準ですから,どうこう言う筋合いはないのですが,すごく紛らわしいのが現状です。
4Gamer:
実在の刀の名前が付けられている商品もありますが,どの程度現物に則したデザインになっているのでしょう。
菊地氏:
そのへんは,だいたいフィーリングです。現物を参考にしていることもあれば,時代劇やゲームを参考にしていることもありますし,「村正は呪われている感じにしよう」みたいなノリでやっていることもあります。
そもそも,現物が残っていたとしても,特定の人物が一生同じ刀を使うということはあり得ません。「刀は武士の魂」なんて言葉はありますが,消耗品ですからね。使ったら研ぎに出す必要があり,その間は丸腰というわけにはいきませんから,別の刀を複数持っています。サラリーマンのスーツと同じような感覚です。
4Gamer:
一般的にはどのくらいの数の刀を持っていたんですか?
菊地氏:
数は人それぞれでしょうね。価格的には,現代のバイク1台ぐらいなんですが,それもスクーターなのかアメリカンバイクなのかで差がありますし,数を持っていれば,その分メンテナンスの手間や費用もかかります。
上杉謙信なんかは,数百本を持っていた刀マニアとして有名ですよね。「個人ごとにこの刀」というのは現実的でなく,商品はあくまでイメージです。
4Gamer:
これらの模擬刀は,どこで作られているんでしょう。日本刀ですし,国産ですか?
菊地氏:
作るメーカーもそれを扱う問屋も,岐阜県の関市が多いです。関市は地場産業が刃物作りで,イギリスのシェフィールドとドイツのゾーリンゲンに続く世界三大刃物産地として知られています。
織田信長,豊臣秀吉,徳川家康の本拠地から近く,さらにたくさん数を作れたのが関鍛冶なんです。備前鍛冶が1本作るうちに,関鍛冶は10本を作ったと言われています。明治時代に西洋式の刃物が入ってきたときも,関は数打ちをやっていたおかげですぐに対応できたため,刃物の街として発展していったんです。
模擬刀の場合,刃は鋳造で鞘は木工で作るので,1つの工場でそれをやるのは難しいんですが,関にはそれらをできる工場が揃っているので,その結果でメーカーや問屋も関にあるというわけです。
飾るだけなら手入れに手間はかからない
4Gamer:
購入した後のことも教えてください。買った直後は,そのまま持ち帰るのではなく,発送してもらったほうが良いですか?
菊地氏:
もちろん発送のほうが楽ですが,持ち歩くことも法的な問題はありません。
ただ,「公共の場所で」ということを踏まえると,注意点は2つあります。まずは使える状態で持ち歩かないこと。模擬刀剣といっても本物そっくりに作ってあるので,手に持って歩けば本物に見えてしまいます。包丁だって,梱包したものなら持ち歩けますが,出して持っていたら捕まりますよね。
そういう意味では,うちもお客さんが購入されたときに,コンビニでガムを買ったときのように「シールだけでお願いします」という希望には応じられません(笑)。
4Gamer:
模擬刀剣と言っても金属の棒ですから,それを踏まえた取り扱いを,ということですね。
菊地氏:
もう1つは,理由が説明できない状態で持ち歩いてはいけないという点です。居合いのために道場に持っていくですとか,コスプレのためにイベント会場に持っていくなどですね。購入した直後であれは,「買ったものを家に運んでいる」という理由があるので問題ありませんが,使う予定がないものを持ち歩くことはできません。
基本的には,こうした常識的な範囲での取り扱いを守っていただければ大丈夫です。しっかり梱包されていれば,飛行機でも預かり荷物として持ち込めますよ。
4Gamer:
あ,飛行機でもセーフなんですか。
菊地氏:
もちろん,海外から持ち込む場合は注意が必要ですよ。銃刀法の基準が国によって違いますから。
4Gamer:
そうですよね……。以前ドイツの中世の城壁が残っている観光地に行ったとき,日本人向けの字幕付きPVが流れているお店で模擬刀剣を売っていたんですが,材質的に日本でアウトなものだったことがあります。知らずに海外で買ってしまう人もいるんだろうなと……。
菊地氏:
「パイレーツ・オブ・カリビアン」が流行った頃に,古式銃でそうしたトラブルが実際にありましたね。アメリカでは,金属薬莢に対応していない古式銃は登録制度がなく,日本のエアガンのような感覚で入手できるんです。それを撃つための黒色火薬はライセンスがいるんですが。
日本では古式銃も登録対象なので,アメリカの骨董店で買って持ち帰ったらアウトだった,というわけです。
4Gamer:
海外で簡単に買えるものであっても,調べずに手を出すべきではないですね。
模擬刀剣を購入した後,どのように保管すればいいのかも教えてください。錆びなどを気にする必要はありませんか?
菊地氏:
飾るだけなら基本的に何もしなくて大丈夫です。ただ,刀身はメッキ加工されていることが多いので,指紋が付いた状態で放置すると,それが原因で傷むことがあります。刀身は触らないようにして,もし触ってしまった場合は柔らかい布で拭いておきましょう。
真剣のように油を塗ったりする必要はないので,それと比較すると,保管はグッと楽です。
ただ,日本刀の鞘は木製なので,極端にじめじめしていたり,逆に乾燥していたりするところに保管するのはやめましょう。
4Gamer:
剣が家にあったら飾りたくなります。日本刀なら専用の台も売られていますけど,西洋剣にそういうものはないですよね。おすすめの飾り方はありますか?
菊地氏:
西洋剣はデザインがバラバラですし,石壁文化の海外と違って,日本は壁に穴を開けるのもためらいますから,壁に専用台を作るみたいなのは難しいです。
そこでおすすめなのが,うちでも使っている「パーテーションメッシュ」と呼ばれる仕切用の網ですね。突っ張り式で天井に穴を開けずに使えるので,これを設置してバンドやS字フックを取り付けるといいと思います。ただ,日本は地震が多いので,ある程度は固定することも意識したほうがいいです。
4Gamer:
剣の向きなどに基準はあるのでしょうか。
菊地氏:
日本刀は腰に装備するときの外側が表という決まりがありますが,西洋剣はそこまで厳密ではありません。とはいえ,腰につけたときに見栄えがいいようにデザインされているので,結果的に縦向きになるのではないでしょうか。
古式銃なんかだと,機関部を見せようと思ったら自然と向きも決まってくるんですけど。
専門店なら合法的に楽しめるものを安全に買える
4Gamer:
模擬刀剣を買いに来るお客さんはどういった層が多いんですか?
菊地氏:
コスプレイヤーの方よりも,コレクターの方が多いという印象です。ただ,「刀剣乱舞」のヒットで,女性のお客さんがすごく増えました。
4Gamer:
ゲームの流行による影響はあるんですね。
菊地氏:
はい,顕著ですね。ただ,刀剣乱舞はあまりに売れた結果,模擬刀を扱うお店が全国に増えて,本屋さんなどにも置かれるレベルになりました。そのため,品薄で入荷できなくなってしまったのは,専門店としてちょっと困りものです(笑)。
あと,古式銃をモチーフにした「千銃士」のときも,古式銃のレプリカを扱っているお店自体が限られていますから,お客さんがたくさん来てくれましたね。
専門店としては,こうした作品にもっとアンテナを張れればいいのですが,なかなか難しいです。
4Gamer:
刀剣好きとしても,ゲームのヒットでもっと模擬刀剣にスポットが当たってくれると嬉しいんですが(笑)。
菊地氏:
マイナーな業界ですから,きっかけは何でも,注目してもらえることが嬉しいです。専門店なんて,全国に指折り数えられるぐらいしかありませんし。
4Gamer:
ものがものだけに,通販ではなく実物を手に取って選びたくなりますから,店舗があるのはありがたいです。
菊地氏:
模擬刀剣自体は,ネットオークションなどでも手に入りますが,それが法的に問題のないものなのかは分かりません。出品者が銃刀法に詳しいとも限りませんから,「日本で買ったものだし大丈夫でしょ」「切れないから合法でしょ」みたいな感覚で売っている可能性もあります。
その点,専門店なら合法的に楽しめるものしか店頭に置いていませんし,取り扱いもご説明いたします。質問があれば模造でも真剣でもお答えしますので,お気軽に足を運んでいただければと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
武装商店公式サイト
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