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[CEDEC 2016]VR酔いを防ぐにはどうすればいいか。「映像酔い・VR酔いの理解とその軽減に向けて…(初級編)」をレポート
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印刷2016/08/27 14:50

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[CEDEC 2016]VR酔いを防ぐにはどうすればいいか。「映像酔い・VR酔いの理解とその軽減に向けて…(初級編)」をレポート

 2016年8月26日,神奈川県のパシフィコ横浜で行われた「CEDEC 2016」で,「映像酔い・VR酔いの理解とその軽減に向けて…(初級編)」という講演が行われた。VRコンテンツを作るうえで避けては通れない映像酔いの問題を,国立研究開発法人産業技術総合研究所の氏家弘裕氏渡邊 洋氏,そして新潟大学の板東武彦氏が語った。

「CEDEC 2016」公式サイト



なぜ人は映像酔いを起こすのか。酔いにくい映像の条件とは


国立研究開発法人産業技術総合研究所の氏家弘裕氏
 まずは氏家氏が登壇し,「映像酔いを引き起こしやすい動き」というテーマについて述べた。
 読者もご存じだと思うが,映像酔いとは,映像を見ることで乗り物酔いに似た症状が起こる現象のことで,映像の手ブレも原因になり得ると氏家氏は言う。手持ちカメラで撮影した映像を中学生達に見せたところ,285人中36人が映像酔いを訴えたとのことだ。

 映像酔いが生じやすいのは,映像にインタラクションがある場合だ。インタラクションとは,自分の操作によって映像に変化が生じるということであり,これはまさにゲームそのもの。とくにVRコンテンツで起きる映像酔いには「VR酔い」という通称が付けられており,VRコンテンツを作る際に大きな問題になる場合がある。

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 なぜ人は酔うのか,その理由として氏家氏が挙げたのは「感覚不一致説」だ。人間の脳には,身体が動いたとき,各所でどのような感覚が起こるかについての経験が蓄えられている。この経験により,身体を動かす前であっても,動いたらどんな感覚が得られるかを予想できる。
 しかし,こうした予想と実際の感覚にズレが生じた場合,酔いが生まれるとする説だ。例えば,「映像は動いているのに,自分の身体には動いた感覚がない」といった感覚のズレが蓄積されることで,不快感を生じる。

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 映像を回転させ,どういった動き,速度の場合,酔いやすいかを調べる実験も行われており,その結果,6秒間に1回転ほどの映像で最も酔いが生じやすいという結果が出ている。回転がこれより速くても遅くても酔いにくく,動きが激しいほど酔いやすいのではないかという予想には反している。

氏家氏らが行った,仮想空間で映像を回転させる実験(上)と,結果(下)。同様の実験は過去にも行われており,このときは回転するドラムが使われたが,同様の結果が得られたという。映像酔いが強くなるのは60deg/s(スライド内の“1秒の6回転”の記述は誤りで,6秒間に1回転)ほどの速度域で,あまり速くはない
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 酔いを起こさないコンテンツを作るには,それが酔うかどうかを調べる仕組みが必要となる。氏家氏らは,それを自動で行う「映像酔い評価システム」を開発した。映像の動きを解析して酔いやすさの程度を予測するもので,客観的な評価が可能になったとのことだ。

「映像酔い評価システム」。酔いを起こしそうなシーンを集めた映像でテストを行ったところ,人間の評価に近い予測結果が得られたという
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 映像酔いを起こさないためには映像を動かさないのが一番だが,ゲームを作る場合,できるだけダイナミックに映像を動かして迫力を出したいというのが作り手の心情だ。ここで役に立ちそうなのが,氏家氏が提案する「映像酔いを抑えつつ,動きを提示する方法」だ。
 これは,「視野が広い場合,映像がヨー軸(Z軸)で回転するなら,動きが激しくても映像酔いが起こりにくい」というテスト結果に基づいている。

[CEDEC 2016]VR酔いを防ぐにはどうすればいいか。「映像酔い・VR酔いの理解とその軽減に向けて…(初級編)」をレポート
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 例えば,停止した列車から走行中の列車を見ると,自分が動いているような感覚に陥ることがあるが,これが「ベクション」と呼ばれる錯覚だ。氏家氏は,酔いにくくダイナミックな映像とは,映像の動きと身体の感覚のズレが小さく(大きいと酔いやすい),なおかつベクションが強く感じられる映像だという。
 人間は内耳の半規管と耳石器で,身体の動きを別々に感知している。映像がZ軸を中心とした動きなら,違和感を覚えるのは半規管だけで済むため,ズレは小さく,ベクションは大きくなるというわけだ。氏家氏は,酔いを生じにくい条件を工夫して映像を使えばよいのではないか,というアドバイスを来場者に贈った。

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動きを予告すれば,映像酔いは低減できる


国立研究開発法人産業技術総合研究所の渡邊 洋氏
 氏家氏に続いて渡邊氏が登壇し,「VIMSを低減する動き予告」と題された講演を行った。
 VIMSとはVisually Induced Motion Sicknessの略称で,これも映像酔いのことだ。渡邊氏は「あらかじめこれから起きる動きを告知すれば,VIMSが軽減できるのではないか」と考えており,3つの実験結果から,動きを予告する手法を示した。


・道でこれからの動きを予告する
 立体で表現された花畑を進んでいくというコンテンツを使った実験では,花畑の中に道を表示することで映像酔いが軽減された。つまり,被験者に対して,これからどのように進むかを予告したことが効果を発揮しているというわけだ。

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・先導者を表示する
 上と同じ映像で,被験者を先導する紙飛行機のような物体を表示した場合も,映像酔い軽減の効果が見られた。紙飛行機を旋回させ,これから進む方向を示した場合と,旋回に加えて紙飛行機を移動させたあとで映像を動かした場合に効果が高かったそうだ。

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・加速する場所を予告する
 この実験では,ランダムで出現する柱の間を駆け抜けていくという映像が使われている。また,映像酔いの判定を,主観ではなく交感神経の興奮の程度によって行ったとのこと。
 映像では加速と減速が繰り返されるが,予告なしに速度が変化した場合に比べ,あらかじめ地面に三角形のマークを表示して加速や減速を行ったほうが,興奮の程度が下がったという。また,予告を出すタイミングを変えることにより,興奮の程度を調整することもできた。

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映像酔いに関しては,視覚と身体の感覚がズレた場合のみに注目してしまいがち(左)だが,実際にはズレがあっても酔わない場合もある。移動を予測できるかどうかが重要だ(右)と渡邊氏は指摘した
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必要となるのは,映像酔いへの対策


新潟大学の板東武彦氏
 最後に登壇した板東氏は,これまでの講義のまとめとして「人間が空間をどのように認知しているか」「映像酔いに対し,どのような対策が検討されているか」というテーマで講演を行った。

 人間が空間を認識するには,2つの座標系が使われているという。重力の方向を半規管や耳石器で知覚することによる「地球座標系」と,視覚や聴覚といった五感で周囲の景色を捉える「自己中心座標系」の2つで,脳が両者を統合することで自分の周囲の空間を理解する。ここに,筋肉や関節からのフィードバック「自己受容性感覚」を加え,環境や身体条件に合わせた調整を行うことで,人間は自由に動いているという。

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 また,VR空間という新たな環境では,これまでの経験が役に立たなくなり,経験と実際の感覚がズレたときに映像酔いが発生する。VR空間での経験を積むことで酔いが軽減される場合もあるが,今度は現実に戻ったとき,「アフターエフェクト」と呼ばれる感覚のズレが発生することもある。

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 映像酔いに関する国際ガイドラインを策定する取り組みはすでスタートしており,以下のような,さまざまな対策が検討されている。

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 ゲーム開発者として注目すべきは「映像の揺れを防ぐ」「仮想空間内でのタスクは,できるだけ単純にする」の2点だろう。坂東氏によれば,センサーで頭の位置を測定している場合,ノイズがフィードバックされて映像に思わぬ震動が生じる場合があるという。

 ユーザーの自由度を減らすには,ライド型のコンテンツが考えられるが,ゲーム開発者としてはできるだけ自由度を高めたいと思うはずで,このあたりは難しいところだ。今回の講演で挙げられたような対策が,自由度の高いタイトルには必要になっていくだろう。

 VRへの注目が高まるに従い,映像酔いへの対策はさらに重要になっていくと考えられる。安心してVRを体験をするため,氏家氏らが取り組んでいる国際ガイドラインが果たす役割は大きなものになるだろう。
 映像酔いとその対策に関しては,すでにさまざまなな論文が発表されている。興味がある人は,これをきっかけにさらに調べてほしい。

「CEDEC 2016」公式サイト

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