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[CEDEC 2016]日本のアナログゲーム市場の今と,その特徴。「アナログゲームが熱いって本当?」講演レポート
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印刷2016/08/25 15:30

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[CEDEC 2016]日本のアナログゲーム市場の今と,その特徴。「アナログゲームが熱いって本当?」講演レポート

 CEDEC 2016の初日,すごろくやの丸田康司氏,ドロッセルマイヤー商會の渡辺範明氏,そして今回のセッションには東京工芸大学 芸術学部教授として登壇する遠藤雅伸氏の3人による,「アナログゲームが熱いって本当? 〜メカニクスデザインの最前線〜」と題されたセッションが行われた。セッションの模様を簡単に紹介したい。

「CEDEC 2016」公式サイト



年間1000種が流通するアナログゲーム


 最初に登壇したのは,すごろくやの丸田氏である。
 丸田氏はもともとデジタルゲームの開発者であり,関わった作品としては「MOTHER2 ギーグの逆襲」「風来のシレン」などのビッグタイトルが並ぶ。2006年にボードゲームショップであるすごろくやをオープン。そんな丸田氏が,日本のアナログゲームの市場にを概説した。

丸田康司氏
 “アナログゲーム”という言葉が指し示す範囲は広い。セッション冒頭,丸田氏はアナログゲームを「人力に頼るタイプのゲーム全般」と定義したが,今回,話の対象とするのは,その中でも近代型のボードゲーム(「カタン」「カルカソンヌ」「ニムト」「ドミニオン」など)――つまり,1960年代後半にドイツで確立された「大人向け」のボードゲームについてであると語った。

 そのような狭義のアナログゲームの概況だが,2016年現在,国内で流通しているタイトルは1000種程度だという。1年あたりの新製品の数は300種類以上(インディーズゲーム含まず)である。つまり月刊20〜30タイトルが市場に姿を現し,それと同じくらいの数のゲームが市場から消えていく,という。

 このように,かなりの種類が流通するアナログゲーム市場だが,その8割は海外(ドイツ,フランス,アメリカなど)からの輸入品となっている。さらに,その約半数が「完全日本語版」として,マニュアルや備品もすべて日本語に翻訳された製品になる。
 一方,純国産のボードゲームは全体の2割程度を占めるに過ぎないが,6年前までは数%程度だったので,比率としては急激に成長している。

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「ドミニオン」が拓いた新市場


 丸田氏は近年のアナログゲームの大きな普及のきっかけとして,「ドミニオン」を挙げた。ドミニオンがゲームのコアユーザー(あるいは「ポケモンカードゲーム」や「遊戯王OCG」をプレイしていた層)に普及したことが,現在の日本のボードゲーム市場を大きく変化させたというわけだ。
 ドミニオンがどんなゲームであるかは「こちら」を参照していただくとして,本作が持つ「コンボ」の要素はTCG(トレーディングカードゲーム)プレイヤーにとってなじみ深いものであったし,ロチェスタードラフト(TCGの遊び方の一つ)的な要素は戦略系ゲーマー層の心をつかんだ。

[CEDEC 2016]日本のアナログゲーム市場の今と,その特徴。「アナログゲームが熱いって本当?」講演レポート
 「ドミニオン」が大ヒットした2009年以降,アナログゲームの「日本語版」は急増した。それまではショップが「和訳ルール」や「和訳シール」を配布していたが,ルールはもちろんカードやボードに書かれたテキストすべてが日本語になった製品の発売数が増大したのである。
 一方で「ドミニオン」の勢いは衰えを知らず,なんと2016年現在もなお,国内アナログゲーム市場の10%弱は「ドミニオン」が占めると言われている。「まさに一桁違う売上」(丸田氏)なのだ。

 実際,アナログゲーム市場そのものも,2009年から一気に伸びた。2012年には前年の震災の影響で売上が落ち込んだが,2009年と2015年を比較すると,4倍〜5倍の伸びとなっている。

 具体的にその市場規模は? ということになると,2015年段階で30億円〜40億円程度と見られている。2015年の国内デジタルゲーム市場は1兆3591億円なので,それと比較すればわずか0.3%と,規模は小さいが成長は急だ。

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インディーズゲーム大国,日本


渡辺範明氏
 続いて登壇したのは,ドロッセルマイヤーの渡辺範明氏だ。
 渡辺氏はスクウェア・エニックスで10年間プロデューサーを務めたあと,独立してドロッセルマイヤーを設立。以前はボードゲームの実店舗を開いていたが,今ではネットショップに限定し,ボードゲームの企画,制作,各種イベントなどを行っている。

 渡辺氏が行っている特徴的なイベントとしては,「20名の参加者が4時間以内にボードゲームを1つ作る」というワークショップが挙げられる。
 いわば,アナログゲーム版の「ゲームジャム」を,さらに短時間にしたようなワークショップで,その第1回で制作された「巨竜の歯みがき」はドロッセルマイヤーで商品化され,日本だけでなく,台湾やポーランドのパブリッシャがローカライズ版を発売するほどの好評を博したという。
 最近は,日本科学未来館でプロジェクションマッピングを利用した「全長10mのボードゲーム」なども発表しており,渡辺氏の活動は多岐にわたっている。

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 渡辺氏は日本のアナログゲーム市場の特徴を語るにあたり,以下の3点を指摘した。

 まず,その「草の根」的な性格。草創期の日本ではアナログゲーム愛好者が市場を牽引し,専門店やゲームサークルがその活動の中心になっていた。一方,メーカーはあまり目立った活動はしておらず,草の根で育っていった例が多いという。最近ではボード/カードゲームのプレイスペースやニコニコ生放送など,新たな「活動拠点」も見られるようになってきた。

 続いて,輸入販売に始まって,次第に国産化が進んだ点。最初は海外からゲームを輸入し,せいぜい日本語に翻訳したルールブックをショップがサービスとして同梱する,という程度だった。
 これが,「日本語が印刷されたシールが同梱され,プレイヤーが所定の位置にそれを貼ることで,実質的に日本語化する」といった動きに変わり,やがて完全日本語版が発売されるようになる。日本オリジナルのボードゲームが登場し始めたのも,この頃だ。

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 最後に,インディーズ(同人)のデザイナーが多いという点。デジタルゲームと比べれば絶対数は少ないかもしれないが,市場規模に比較すれば明らかに多い。
 その理由として,「ゲームマーケット」の影響があるという。創作アナログゲームのイベントとしては世界でも類を見ない規模であり,海外からも注目を集めるゲームマーケットが,インディーズデザイナーの育成に大きな影響を与えているというのだ。

 事実,ゲームマーケットの来場者は右肩上がりで,2016年に1万人を突破。参加サークル数は,実に450にのぼる。
 複数のデザイナーが一つのサークルに出品していることもあり,渡辺氏はゲームマーケットにオリジナルゲームを出展しているインディーズデザイナーは最大で1000人ほど,少なく見積もっても500人ほどいると考えている。

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作家性の強いインディーズゲーム


 それにしてもなぜ,こんなに巨大なインディーズデザイナー達が生まれたのだろうか? この疑問に対して渡辺氏は,3つの仮説を示した。

 1つめは,日本は世界的に見ても「ゲーム文化が浸透した国」だということ。小さい頃から普通にデジタルゲームを遊んできた人が多く,ゲームを作ってみたいという潜在的なデザイナー人口が多いのではないかと渡辺氏は述べる。

 2つめは,コミケを中心とした同人文化が成熟していること。アナログゲームは,極端なことをいえば印刷物である。カードにしても,ルールブックにしても,それらを印刷してくれる業者は多く,版下を作る技術も草の根レベルで普及している。モノを作る素地はある,というわけだ。

 最後は,日本文化の特徴としてしばしば指摘される,抽象化と見立ての文化の影響。緻密なシミュレーションや壮大なオープンワールドといったゲームは,アナログゲームでは実現が難しい。一方で,要素を絞り込んだミニマルなゲームであれば,ぐっと作りやすくなる。この,ミニマルなものを作りたいという欲求は,抽象化や見立ての文化にフィットしている。

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 そのうえで,アナログゲーム制作にはさまざまな魅力もあると渡辺氏は述べる。
 まず,少人数で作れること。システムデザインとグラフィックスデザインの2人組という例は珍しくないが,アナログゲームは画像が高度に抽象化された記号の組み合わせでも問題にならないので,1人で何もかも作ってしまうことも可能である。
 低予算で作れることも魅力的だ。スライドでは“10万円程度”という数値が示されたが,渡辺氏によれば,これはちゃんと印刷所に出した場合の金額で,体裁にこだわらないなら,いくらでも安く作れる。
 つまり,アナログゲームは「自分で全部作れる」(渡辺氏)。すべての決裁者=自分という環境で,最後まで作りきれるのだ。


 こうした,チームではなく個人の主張が強く含まれる制作環境は,小説や漫画,あるいは作曲など,作家性の高い作品が生まれる母体になる。しかも,必要な要素がほぼゲームメカニクスとアートワークだけなので,とことんこだわってゲームが作れる。
 かくして,日本のアナログゲーム市場にはゲームデザイナーが育つ土壌が成立していると渡辺氏は指摘した。


ゲームデザインの底力を高める


[CEDEC 2016]日本のアナログゲーム市場の今と,その特徴。「アナログゲームが熱いって本当?」講演レポート
 ここでゲームマーケットの各数値を考えてみると,参加サークル数450という数字の異質さが改めて理解できるだろう。「450人以上(最大で1000人ほど)のインディペンデントなゲームデザイナーがいるのは,日本のゲーム史上で見ても,例のない状況」だと渡辺氏は言う。

 しかもこの450人〜1000人は,ほぼ全員が1から「自分のゲーム」を作る経験を積んでいる。
 これもまた,デジタルゲームの現状から見ると異質と呼べる。商業化が進んだデジタルゲームの世界では,どうしても「RPGなら,こんな感じ」といった類型に陥りやすい。また,ヒットした作品の続編をアレンジするという形になることも多く,要するに,「1から」ゲームを作れるような機会はきわめて少ないのである。

 アナログゲームは現在,「カンブリア爆発的にゲームデザイン文法の進化をもたらしうる」状況にあり,「(多数のデザイナーは)ゲームデザイン力の底上げになる」(渡辺氏)。したがって,「アナログゲームは熱いのか?」と聞かれれば,「熱いと答える」と渡辺氏は語った。

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 ここで渡辺氏は,元デジタルゲームの開発者の視点として,日本のアナログゲーム市場で生まれる新たなデザインのすべてがデジタルゲームに応用できるわけではない,と付け加えた。
 デジタル,アナログの区別なく,人間にとっての楽しさの根本は変わらないかもしれないが,両者のゲームのデザインは分化しており,「親戚」(渡辺氏)くらいには離れているという。この点には十分に注意が必要だと述べて,渡辺氏は講演を終えた。


日本のアナログゲームについての質疑応答


遠藤雅伸氏
 最後は質疑応答の時間となった。最初の質問者は,登壇者の1人である遠藤氏だ。
 遠藤氏は,日本のアナログゲームのプレイヤーには,いわば「濃い」ところがあるのではないか,と指摘した。例えば日本でヒットしたアナログゲームには,カナイセイジ氏の「ラブレター」のように,初手で勝負が決まってしまうようなものもある。こうした極端な状況すら笑って楽しむ,そうした素地が日本のアナログゲーマーにできているのではないかと聞いた。

 これに対して渡辺氏は,「ラブレターは運や初手の要素が強く,普通ならここにもう少し要素を足してゲームにするところを,あえてそのままゲームにしているところがある」と述べる。
 そのうえで,これを「日本的だ」と評したのは海外の目であり,カナイ氏が「これが日本のゲームデザインだ!」と確信していたかどうかはハッキリしないと続けていた。
 ちなみに,ラブレターという作品はもともと,複数のゲームデザイナーが500円以内という縛りでゲームを競作する「500円ゲーム」という企画から生まれたものだった。

 丸田氏は,ラブレターは車で言えばトヨタ車のようなものとする。アメリカの車が大きく派手になっていくなか,性能が良くて安いという部分を突き詰めていったのがトヨタ車であり,ラブレターには,そういう姿勢が見て取れるというわけだ。
 また,ラブレターの背景には,「ごいた」という日本の伝統的なゲームがあり,そのあたりに「日本っぽさ」「日本のゲーム性」といったものが潜んでいるのではないかと述べた。

 続いての質問は,「パンデミック」のような協力型ゲームの動向について。

 丸田氏は,協力型ゲームは昔からあったが,パンデミックで一気に注目が集まったという。そのうえで,「パンデミック」に匹敵するような協力型ゲームはまだないかもしれない,と語った。

 渡辺氏もまた,「パンデミック」のような決定的なタイトルは少ないという意見だ。
 もっとも,ニーズがないかといえば,そうではない。ボードゲームは「このゲームを遊ぶ」ために集まるというより,「集まった人が楽しく遊べるゲームで遊ぶ」といった遊び方が多く,このため,勝ち負けを競うゲームはイヤだが,協力型ゲームなら遊びたいという状況が生まれることもある。「パンデミック」はまさに,そうした欲求に刺さったわけだ。

 しかしアナログゲームは,対戦相手との駆け引きがゲームを面白くしていることが多い。協力型ゲームの対戦相手とは,つまり物言わぬカードや乱数であり,これを面白く作るのは大変だとも指摘した。それはそのまま,「パンデミック」のような傑出した作品が少ない理由にもなっている。

 遠藤氏はこれに対して,協力型ゲームの鍵はロールプレイであり,役割分担に重点を置いたデザインをすればうまくいくのではないか,と語った。


 続いては,「アナログゲームのパッケージを見てもそれがどういうゲームなのか分からないことは多いが,これをうまく伝える方法はないか」という質問だ。

 丸田氏は「確かに分かりにくい」「ストーリーや世界観しか説明していないパッケージも多い」と認め,どんなゲームなのかを説明するポップをすごろくや側で追加することも多いと語った。とはいえ,「ワーカープレイスメントです」という一言を足したところで,それをちゃんと理解できる人がどれくらいいるかとなると,また別問題となる。
 さらに,アナログゲーマーはしばしば,今までのゲームとは違う,新しいゲームを求める傾向があるという。そのため,「皆様ご存知のこういうシステムです」という説明は,商品にとってマイナスになる可能性さえある。
 以上を踏まえ,丸田氏はそのゲームの「どこが新しいか」を表現し,伝えるようにしていると語った。

 渡辺氏は,「これはデジタルゲームにも通じる問題」として,パッケージ裏の説明文で,ゲームの面白さを伝えることには,まだ研究の余地があると語った。
 しかしアナログゲームの場合,熟練者でも説明書や動画を見ただけでは分からず,プレイして初めて「これは面白い!」となることも珍しくない。そのため,パッケージのさらに外側の世界を含め,体験会を開くなどして,楽しさを伝えやすい環境を作っていくべきだと語った。

 次は,「デジタルゲームの開発者から見て,日本のアナログゲームの特徴や面白さは何だと思うか」という質問。

 渡辺氏は,「それを説明しようとすると,ディープな話になる」と前置きしつつ,「表面的なことを言えば,デジタルゲームの文化を共有している人に向けた作品が多い」と指摘した。つまり,デジタルのファンタジーRPGを遊んだ経験を前提としたアナログゲーム,といった作品が目立つわけだ。
 このあたりはデザイナー本人の経験や文化が出やすい部分でもあるので,日本における文化や興味が多様化すれば,ゲームも自然に多様化するのではないかと渡辺氏は述べた。

 続いて「ボードゲームを作るときのプロセスの特徴」について。

 遠藤氏は「実際にルールやシステムを実装しなくても,メモ書き程度で,すぐに試せる」ことを利点として挙げた。丸田氏も,テストプレイヤーの探しやすさを指摘する。
 このように,設計,実装,テストのサイクルが短いのがアナログゲームの特徴と遠藤氏は強調した。

 最後は「一人用アナログカードゲームの可能性」について。

 丸田氏は,ソリティアには可能性があり,またニーズも高いと語るが,その一方で,どうしてもただのパズルゲームの域を越えにくい,とも指摘した。このため,「可能性はあるが,“新しい”作品を作るのは難しいだろう」と語り,ここで時間となったため,セッションは終了した。

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