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日本人の細やかなモノ作りと,中国人のエンジニアリングパワーは融合するべき―――DeNA Chinaの若き社長は,日本と中国のゲームマーケットをどう見ているのか
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印刷2016/08/24 11:30

インタビュー

日本人の細やかなモノ作りと,中国人のエンジニアリングパワーは融合するべき―――DeNA Chinaの若き社長は,日本と中国のゲームマーケットをどう見ているのか

DeNA Chinaの社長室からの景色。新旧が同居する,上海ならではの風景だ

2016年の7月28日から31日まで,上海で行われた「ChinaJoy 2016」の話題の中心は,なんといってもスマホとVR。コンシューマもいまから花開こうかというタイミングではあるが,まだまだマーケットとしては小さく,ChinaJoyで存在感を示すほどではない。

わざわざここで書くまでもないが,中国という国のゲームエンターテイメントの成長カーブは半端なく,PCとスマホ合わせたオンラインゲームの市場が,2015年時点ですでに2兆2000億円を超える。最新のデータである2016年Q1時点では,すでに約6500億円ほどになっていて(→こちら参照),成長はまだ続いている。ここにコンシューマとVRが参戦し,今後さらに伸びていくことになるのだろう。

さてそんな中国ゲームマーケットについて何か聞いてみようと思ったときには,誰に聞けばよいのだろうか。政府のお役人? プラットフォーマー? ……いや,やはり現場でゲームを開発して運営/経営している人に聞くのがよいだろう。彼らは肌感として,数字として,熱量として,マーケットに対峙しているのだから。

2兆2000億円という前述の数字の半分を叩き出すモバイルゲームの会社達は,現状と未来をどのように見ているのだろうか。それを聞いてみたく,何社かの会社にインタビューの打診をしてみた。そのインタビューの模様をお伝えしよう。


 2016年7月28日〜31日まで行われていたChinaJoyで,何社かに送ったインタビューオファーのうち,真っ先に反応して受けてくれたのが,今回紹介するDeNA Chinaだ。

 ランキング上位を独占……するような派手さはないものの,元が日本の会社であることを生かした有名IPの獲得と,それを丁寧にゲーム化する地に足のついた運営で,中国ゲームマーケットに一定の存在感を示し続けている。そしてなによりDeNAは,過去に何度かの失敗を経験し,中国での経験を積み上げてきているのだ。

 ChinaJoyの会期が始まる前に,上海にあるDeNA Chinaオフィスまで足を運んでのインタビューとなった。その全文を掲載しよう。


「DeNA」公式サイト


来たるべき時代のために,ゲームエンジンへの投資は今後も欠かさない――中国発,日本でも名高いゲームエンジン“Cocos2d-x”のChukongは,いまのゲーム業界をどう見ているのか

「違いを理解すること」と「理解した部分を中国向けに修正する」ことは全然別なこと――2年で急激な成長を遂げたHeitaoのやり方とは

ゲーム業界がどんなに変わっても,我々が成すべきことは「良いゲーム」を作ることだけ――LINEの信用を得た中国のゲーム開発会社「Longtu」とは


4Gamer:
 本日はChinaJoyの準備でお忙しい中,お時間をいただきありがとうございます。
 初めてとなりますので,まずは任さんご自身についてお聞きしたいと思っているんですが,どういった経歴で,DeNA ChinaのCEOになられたんでしょうか。

DeNA China CEO 任 宜氏。ChinaJoy会場で,新作のデモプレイでもしてそうな雰囲気だ
DeNA China CEO 任 宜氏
(以下,任氏):

 どのくらい昔から話したほうがいいでしょうかね……子供のころから始めましょうか?

4Gamer:
 ぜひお願いします。

任氏:
 まず,名前からもご想像がつくかと思いますが,生まれは中国なんです。私が3歳のときに母が東大に留学すると言って日本に行ったんですね。短い期間ではありましたが父親もそれについていったので,私は祖父と祖母のところに預けられて,7歳まで中国で暮らしました。いまからは想像も付きませんが当時の中国はまだ配給制の時代で,今のような資本主義ではなかったですね。

4Gamer:
 失礼ですが,今おいくつなんですか?

任氏:
 今年で32歳になります。

4Gamer:
 若い……。

任氏:
 若造です(笑)。それで小学校2年生の途中,7歳のときに日本に渡ったんですが,そのまま中学,高校,大学と進学して,日本で就職しました。

4Gamer:
 なぜ中国に戻ることになったんですか?

任氏:
 ドリームインキュベータというコンサルティングファームに新卒で入社したんですが,リーマンショック(2008年)あとの2010年ごろ,入社2年めの途中くらいから,中国の案件が増えてきたんですね。
 それで,当時会社には中国人が私一人しかいなかったので,3プロジェクトくらい同時に任されて……。

4Gamer:
 いや待ってください。普通コンサルファームって一人1案件,みたいな感じなのでは?

任氏:
 そうですよ(笑)。なので毎日3時まで働いてまた9時に出社して……みたいな状態で,もう大変な日々を送ってました(笑)。

4Gamer:
 それはまた……。

任氏:
 そうこうするうちに中国オフィスを立ち上げようということになって,上海に渡りました。ちょうどその直前あたりに東京で,DeNAのファウンダーで現取締役会長の南場智子と,共通の知り合いをとおして顔を合わせたんです。

4Gamer:
 お,ここでDeNAとつながりが。

任氏:
 それからコンサルタントとしてDeNAを担当することになったんですが,そのDeNAからの収入もあって,ドリームインキュベータの中国オフィスは1年めから黒字となったんです。それで会社にも恩は返しただろうということで,2012年初頭からDeNAに入社したという形です。そこからはずっと中国で,DeNA Chinaの社長になったのは2014年の2月ですね。

4Gamer:
 なるほど。しかし思っていた以上に日本での生活が長かったんですね。

任氏:
 そうですね。都合17,18年は日本で暮らして,残りの11,12年くらいが中国ですね。

4Gamer:
 失礼な質問で申し訳ないんですが,それだけ多感な時期を日本で過ごしていたら,中国の人の感性を理解しづらい,とかそういうことはありませんか?

任氏:
 いえ,おっしゃりたいことは分かります。
 日本にいたときは,名前も日本人じゃないし,両親は中国人だから家では中国語を話すし,いわゆるおふくろの味というものは中華料理だし……と,なんだかんだ言っても自分は中国人だなと思っていたんです。

4Gamer:
 そりゃそうですよね。

任氏:
 でも中国に帰ってくると,「俺ってけっこう日本人的なんだな」と思うんです。感性とかそういう部分でも。じゃあどっちなんですかって言われると,どちらか一方ということではなくて。
 中国の人を完璧に分かるかと言われると分からないけど,もちろん完璧に日本人かというとそういうわけでもないという,ハイブリッドみたいなものだと思っています。相対化でしか理解できないところもありますけどね。

4Gamer:
 うーん,でもうらやましいですね,それはそれで。

任氏:
 良くも悪くも,ですよ。今でこそ良かったなと思えますけど,日本に行ったばかりのころはいじめられたこともありましたし。何と言ったらいいのでしょうか……人生苦あれば楽あり,人間万事塞翁が馬ですよ。当時苦労したから,逆に今メリットを享受できるわけで。

4Gamer:
 中国って,僕ら日本人から見ると,同じアジアの人とは言っても,いろんな面でかなりセンスが違うなと思うんですね。良いとか悪いとかじゃなくて。
 ゲームひとつ取ってもそうですよね。面白いと感じる部分だったり重要視する部分だったり,あるいは課金するポイントだったりがずいぶん違うので,そのあたりの日本と中国の違いで苦労されたかなと思ったんです。でもお話を聞いた感じだと,その両方をなんとなく理解しているんですね。

任氏:
 例えばなんですが,私達ゲーム業界の人間に化粧品を売ってくださいと言われても,何をしていいのか分からないと思うんですね。だけど,歴代の凄い社長や創業者って,一領域でしか成功していないわけではないですよね。例えばソフトバンクの孫 正義さんだって,いろんなことをやってきて今に至るわけです。

4Gamer:
 ええ。

任氏:
 何が言いたいかというと,その国の言語ができて,文化をある程度理解できていれば,やっている事業が違うとか,ユーザー層が違うとか,そういうことは会社がうまくいく/いかないの要因にはならないと思います。
 言い方を変えると,今の日本の60代の方が,20代の人の気持ちを分かるとは到底思えないんですよね。

4Gamer:
 うーん,確かに。僕も20代の人の気持ちは分かりません。が,納得はできなくても理解することはできます。

任氏:
 30代の僕だってそうですよ(笑)。
 でもまさにそこが重要で,コミュニケーションできるかできないか,理解しようとするかしないかが大きな差になると思います。必ずしも自分自身がユーザーである必要はなくて,ユーザーであることを分かろうとするとか,分かる人を採用するとかがキチンとできていれば,あまり問題にならないかな,と。

4Gamer:
 確かにそうですね。


二転三転してようやく落ち着いたDeNA China


4Gamer:
 では次に,DeNA Chinaがどういう経緯で立ち上がり,そしてどう歩んできたのかをざっくり教えていただけますか。

任氏:
 まず,DeNAグループの中国チャレンジというのは2007年ごろから始まったんです。当時まだ僕は入社していないので,こういう言い方もちょっと問題かもしれませんが,2006年に日本でモバゲーが当たって,DeNAはちょっと調子に乗りまして(笑)。この,日本で成功したビジネスモデルをすぐに海外に広げようと考えて,人口が一番多い中国に目をつけたわけです。

4Gamer:
 はい。でもその動きはよく理解できます。

任氏:
 それで2007年に,北京のオフィスを立ち上げて……オフィスといってもマンションの一室なんですが,そこに10人くらいのメンバーを送り込んで,中国向けのプロダクトを作ろうと。……かなりのプロダクトアウトですよね(笑)。市場調査もそんなにしていませんから。

4Gamer:
 確かに,思いきり日本人の感性によるプロダクトアウトですね(笑)。

任氏:
 当時の中国はフィーチャーフォンもなければ,大きい画面の端末もない。回線も2Gの時代だったのでまったく流行するわけもなく,半年くらいで打ち切りになりました。それが最初のチャレンジだったんですが,それは大失敗に終わったんですね。

4Gamer:
 引き上げるのも早かったですね。

一世を風靡した「怪盗ロワイヤル」
(画面はiOS端末向けアプリ版)
日本人の細やかなモノ作りと,中国人のエンジニアリングパワーは融合するべき―――DeNA Chinaの若き社長は,日本と中国のゲームマーケットをどう見ているのか
任氏:
 2回めのチャレンジは2009年です。モバゲーで「怪盗ロワイヤル」とかが当たって,もう1回ちゃんとグローバル化をやりたいね,と。でも,なかなか自分達でやるのは難しいということになって,数億〜10憶くらいの規模だったと思うんですが,天下網という中国のモバイルSNS会社を買収して,その企業でやろうとしたんです。
 でも,買収時のデューデリ(=Due Diligence:買収前に行う買収対象企業の調査)もおそらくちゃんとできていなかったと思うんですが,鳴かず飛ばずの状態が続くわけです。

4Gamer:
 デューデリって財務/法務の面に終始しちゃいがちなので,実態が見えないことって多々ありますよね。ビジネス面に関しては,なんかCEOとの面談だけで済ませちゃったりとか。

任氏:
 そうですね。当時のDeNAはとくに,海外のマネジメントをやったことがなかったので,なかなかPMI(=Post Merger Integration:M&A成立後の持続的成長を実現させるための統合プロセス)であるとか,操業であるとかがうまくいかなかったわけですね。

4Gamer:
 その状態はどれくらいまで続いて,どこで今のDeNA Chinaに繋がっていくのでしょう。

任氏:
 スマホシフトの始まりが見えてきた時期である2010年末に,DeNAもいわゆるガラケーで遊ぶモバゲーから,スマホアプリにシフトしなければというタイミングを迎えたんです。同じ時期にアメリカのngmocoという会社を300億円強で買収し,グローバルなスマホ向けのモバゲープラットフォームを作りましょうというのを始めたんですが,それに合わせて中国の戦略も変え,フィーチャーフォン向けのSNSとかをクローズして,新しくスマホ向けのプロダクトを中心にしてやっていこうという決定をしました。
 ちょうど私が,上海で南場に会ったころですね。それで2010年末から2011年初頭にかけて,これまでのフィーチャーフォンチームを外に出して,日本から呼んだ人達と現地で採用した人達で,ゼロから新たなチームを作ったんです。そのメンバーが,今のDeNA Chinaのベースとなる人達です。

4Gamer:
 最初は何人くらいで始めたんですか?

任氏:
 立ち上げ当時はフィーチャーフォンチームのメンバーも残っていたので,会社の人数としては50〜70人はいたんですけど,スマホチームは30人くらいから始まりました。そのうち日本からきたメンバーは10人くらいですね。今はだいたい400人強くらいいます。

DeNA Chinaのオフィス。意外と(?)普通。日本の会社だと言っても分からないかもしれない

4Gamer:
 プロダクトアウトを強引に進めたりSNSを買収したり,以前からチャレンジはしていたものの,中国でのユーザープール(=既存のユーザー)はほぼゼロの状態で始まったわけですよね。そのあたりって,どうやって解決してきたんですか?

任氏:
 いやそこはいろいろと大変でした。SNSの買収といったそれまでのチャレンジは,海外マネジメントの経験にはなったものの,ビジネス的には全く蓄積にならなかったんですね。なので,今のDeNA Chinaを形作っているものは,そのほとんどがスマホシフトしたあとのチームがベースなんです。

4Gamer:
 そうなりますよねえ。

任氏:
 今でこそゲームの開発/運営に完全にシフトしていますが,最初はゲームのプラットフォームをやろうとしていたわけです。でも,プラットフォームと言ってもそもそもユーザーがいないんで,さてどうしましょうかねと。当時App Storeはそれなりに売れ始めてはいたけど,Google Playは禁止されている。じゃあアプリってどうやってダウンロードするんだっけ? みたいな。

4Gamer:
 サイトからapkファイルを直接ダウンロードする,というやつですね。

任氏:
 ええ(笑)。最初は自分達がアプリストアを作るという発想はなかったし,AppleやGoogleとは喧嘩したくもないですしね。それでどうしようかなと考えていたとき,Baidu(百度/バイドゥ)とかAlibaba(阿里巴巴/アリババ),Tencent(騰訊・TengXun/テンセント)の3社や,360捜索といったIT企業大手のところに,レベニューシェアでやりましょうよという話を持っていくことにしたんです。

4Gamer:
 妥当かと思われます。

任氏:
 それで私は営業担当として「プラットフォームを作ろうとしてたんで,ゲームはたくさんありますよ!」と。ほかにもメディアだったり,アプリストアを作っている会社だったりを駆けずり回って営業しましたね。

4Gamer:
 意外と泥臭い活動が元なんですね。

任氏:
 Tencentや360捜索には,日本のドコモマーケット(現,dマーケット)やiモードを念入りに調査して,「こういう風に作ってみては?」と,ノウハウを教えたりもしましたね。それで「ポータルサイトを作った暁には,モバゲーのゲームコーナーを設けてください」「ゲームはうちに任せてね」という交渉をしたりとか。

4Gamer:
 そういえばモバゲーそのものは,中国ではどんな結果だったんですか?

任氏:
 最初の1年くらいで1500万人ほどの累積登録者数を出しました。

4Gamer:
 中国……という国の人口を考えるとイマイチかもしれませんが,決して悪くない数字だと思うんですが。

任氏:
 確かにそうですね。でも当時の私は,営業担当として売り上げの方を見ていたんで,なかなか伸びないなって悩んでたんです(笑)。ユーザーさんにしても課金する習慣がなかったので,売り上げ的には全然だったんですけど,今こうしてユーザー獲得という観点でみると,かなり集めていたんだな,結構凄い数字を出していたんだなと思いますね。

4Gamer:
 10数億という人口を誇る国であることを考えるとピンとこないんですけど,1500万人が1年くらいで集まるって,やはり桁が違いますねこの国は。

任氏:
 でも今でも,人気アプリの累積ユーザー数1000万って,そんな簡単にはいかないですよ。

4Gamer:
 あれ,けっこうな壁なんですね。


日本人の細やかなモノ作りと,

中国人のエンジニアリングパワーの融合


4Gamer:
 ユーザー数1000万が壁と聞いてちょっと意外だったんですが,中国のモバイルゲーム市場って,どのように推移しているんでしょう。

任氏:
 スマホアプリだけで見ると……ええと,1元を16円くらいで考えて,2015年はだいたい7000億円くらいの市場ですかね。2010年,2011年は統計すら行われていなかったのでデータがなくて,2012年後半くらいからスマホ市場が立ち上がったと考えると,5年くらいでここまで来たということになりますね。

4Gamer:
 あっという間に巨大市場になりましたね。

任氏:
 グローバルランキングだと,為替の問題もありますが,中国が1位,アメリカが2位,日本が3位で,3つ合わせて70%くらいを占めていて,その3つの市場が大体同じくらいの規模というところまできています。

4Gamer:
 中国がなぜここまで急激に伸びたんだと考えていますか? やはりスマホの普及が一番の要因でしょうか。

任氏:
 大きく3つの要因があると考えています。1つめはまず単純に,いまおっしゃったようにスマホの時代を迎えたというところですね。それは,Xiaomi(小米科技/シャオミ)のような中国メーカーがかなり安いスマホを出すようになったというのが大きいです。iPhoneだけだとハイエンドユーザーしか手が出せませんよね? そこに,1000元(大体16000円くらい)でもちゃんとゲームが動くスマホが出てくるようになったことで,お客さんが増えたんだと思います。

4Gamer:
 Xiaomiよりはちょっと高級志向ではありますが,Huawei(華為技術/ファーウェイ)なんかもかなりいいスマホを作ってますよね。個人的に結構好きなんです。では2つめはなんでしょう。

任氏:
 通信インフラの問題ですね。日本では2003年くらいに3G回線が始まっているんですけど,中国では10年遅れの2013年ぐらいからで,それまでは2G回線だったんです。つまり,スマホがあってもネットワークが悪くてアプリが起動できなかったわけなんですけど,2015年から4G回線が始まったんです。

4Gamer:
 ……飛び級?

任氏:
 そうです。まだ2G回線がほとんどだったところに,3G回線を飛び越えるようにして4G回線が出てきました。そして一方で,3Gが始まるのが遅かったため,家でもカフェでも街でも,Wi-Fiがかなり普及していたんですね。

4Gamer:
 あぁなるほど。こんなにWi-Fiの電波が飛び交ってるのはそういう理由でしたか。

任氏:
 3つめは,これが日本と根本的に違うところなんですが,コンソール市場がないという面ですね。日本だと,ニンテンドー3DSがあって,PlayStation Vitaがあって……と,スマホ以外にも持ち運びできるゲームというものがありますよね? でも中国にはそれがなかったんです。

4Gamer:
 完全にゼロだったわけではないですが,実質ないと言っていい状況ですね。

任氏:
 端末も高いですし,実質ないに等しいというか。それでみんな携帯ゲームに飢えていた,持ち運びできるゲームが欲しいという需要が日本より大きかったというのがありますね。このあたりが,5年間で市場が急に立ち上がった原因じゃないかなと考えています。

4Gamer:
 中国でゲームというとPCオンラインゲームのイメージですが,いまそちらはどんな感じでしょうか。

任氏:
 ゲーム全体でいうとPCオンラインはまだ強いですね。とはいえさすがに,下がってはいないものの成長もしていません。「現状維持」といったところでしょうか。

4Gamer:
 維持はしているんですね。ちょっと安心しました。

任氏:
 でも,ゲーム市場を含めたエンターテイメント業界の伸び方はとても激しいです。それぞれが凄いスピードで成長していくなかで,今延びているのはモバイルです。PCに関しては,ここ最近の2クオーターくらいを見る限り落ち始める予感があるんですけど,だいたい維持できているかなという状況です。

4Gamer:
 なるほど。確かに映画然りスマホ然り,伸び率が半端ないですしね。

任氏:
 ただ,GDPが7%という伸びを記録する中国という国で考えると,維持はしているとはいえ伸びていないというのは,実質落ちているのに近い状態だと思います。エンターテインメント業界でみると,例えばいま話に出た映画業界は,年20〜30%の伸びを記録しているわけですから。

4Gamer:
 年30%って……。ではその激しいエンターテインメント市場で,DeNA Chinaの特徴や強みとしているものってなんですか?

NBAのオフィシャルモバイルゲーム「NBAドリームチーム2」(中国名は『NBA梦之队2』)。中国選手が大活躍したとかで,中国でのNBA人気は大変なものらしい
(C)2015 DeNA China. All Rights Reserved.
日本人の細やかなモノ作りと,中国人のエンジニアリングパワーは融合するべき―――DeNA Chinaの若き社長は,日本と中国のゲームマーケットをどう見ているのか
任氏:
 これまでも日本やアメリカのゲームを中国に持ってきて,それをローカライズして運用するということはやってきましたが,日本やアメリカのIPを持ってきて,それを中国でオリジナルのタイトルとしてゼロから作れるというのが,他社と一番差別化できるところで,現在力を入れているところでもありますね。

4Gamer:
 確かに中国向けにゼロから作れるというのは強いですね。

任氏:
 デザインやUIをスッキリさせたり,中国に合わせた課金システムを作ったり,国ごとの文化の違いや慣習といったところも意識して作れるところが,強みだと思います。

4Gamer:
 オマケに御社は,日本のIPを比較的持ってきやすい立場であるというのも相当な強みになっているかと。

任氏:
 はい。でもIPだけじゃなくて,日本の優れたモノづくりを体現できるところも強みだと思ってますよ。日本のゲームは,細かいところに気が配られていたり,アートやゲームデザインの細かいところへのこだわりであったり,そういう部分がとにかく凄いんですね。

4Gamer:
 確かにその部分は,まだまだ日本に分があると思います。

任氏:
 例えばステージをクリアしたときの☆1,☆2,☆3みたいな達成条件の話でも,中国のゲームはずっと「ダメージを食らわない」とかになっていて,どのステージでも条件がだいたい一緒だったりするんです。でも,日本では1つのゲームでもステージごとに違いますよね。そういう細かいところの遊び要素は凄く良くできているんですよ。

4Gamer:
 しかし一方で,中国のエンジニアリングパワーは凄まじく優秀だと思います。

任氏:
 そう,そこなんです。
 分かりやすい例ではapkファイルのサイズでしょうか。同じ動きのゲームでも,日本に比べて中国は圧倒的に小さいんですよ。圧縮技術だったり,通信が悪いところでどうやってサクサクヌルヌルで動かせるかという技術がすごくて。日本のゲームメーカーって,このあたりを軽視しがちだと思うんですけど,エンジニアリングについては日本を遥かに超えていると思っています。

4Gamer:
 中国のスマホのMMORPGって尋常じゃないですよね。劣悪な通信環境でも,ラグがなく遊べてしまうという。

任氏:
 しかもそれを1サーバーあたり数千人の同時接続で実現しますからね(笑)。スマホでMMOを作るのって結構凄いことなんですが,日本だとエイミングさんとアソビモさん……くらい,数えるほどしかないと思いますが。

4Gamer:
 日本の細やかで丁寧なゲームが,中国のエンジニアリング技術で作られるといいなぁ,とずっと思ってるんですが。

任氏:
 そうですねえ。でも日本がそこを軽視しがちなのもなんとなく分かるんです。まず,見ただけだと気付かないですよね。日本や韓国のような,通信環境が良い国で作ったものと比べても,結果だけ見るとそんなに変わらないと思うんです。だけど,中国は環境が劣悪な分,その中身が全然違うものになっている。
 極端な話,リバースエンジニアリングでもしないと,これだけのものをこのapkに詰め込んだのか!ということは分かりませんし。

4Gamer:
 ま,まぁそうですね。

任氏:
 日本の特性と中国の特性,その両方を理解したうえで,お互いの良いところを取り入れた形で市場に合ったものを作るというのが,DeNA Chinaが目指しているところなんです。今それが完璧にできているとは言えませんが,その点は強みかなと思いますね。

4Gamer:
 そういうことが出来る会社はほかに出てこないんでしょうか。

任氏:
 あと2年くらいすれば,お互いの国の良いところを生かしてゲームを作っていくところも出てくると思いますよ。今DeNAは,任天堂さんとゲーム作りをやらせてもらっていますが,任天堂さんがフロントサイド,いわゆるゲームの遊びの部分を作って,DeNAがサーバーや通信周りを整える。こういう形は増えると思うんですね。というかむしろ,それができないと勝てない市場になっていくんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 職人が1人でコツコツと作りあげる時代じゃないですからね……。任天堂というのは,実は昔からネットワーク周りはあまり強くないので,DeNAと組むと聞いたときに“これは正解だな”と思いました。あれだけ大きい会社なのに,自分が持っていないものを分かっているのはすごいと思います。

任氏:
 会社ごとに強みが違うし,国ごとでもまた強みが違うわけです。いわゆる左脳型で,ガリガリやるところは中国はホント強いです。でも“遊び“の面になると,豊かになってからの歴史が長い日本のほうが一日の長があるわけですし,そう簡単に追いつけるものじゃないなと思います。


ジェネレーションが変われば,ゲーム業界も変わる


4Gamer:
 中国がそこに追いつくには,あとどれくらいかかると思います?

任氏:
 5年くらいですかねえ。

4Gamer:
 そんなにかかりますか?

任氏:
 今の中国ゲーム産業の中で脂がのっている世代であり,プロデューサーやディレクターなど開発の中心にいる層が,30歳から30代後半なんですね。私もその世代ですが,幼少期はまだ配給制で,ゲームやアニメといった遊びというものをまともに触れられるようになったのは中学高校くらい。そこからMMORPGやDota系,「World of Warcraft」とかをプレイした世代なんですね。

4Gamer:
 ジェネレーションの問題ということですね。

任氏:
 その下の層,今の25歳からから30代前半の世代が,本当に小さいころからゲームを遊んで,日本のアニメを観て育ったという,豊かな中国を経験している世代なんです。ゲームデザインは,積み上げたキャリアが決めるところがあるので今すぐにとはいきませんが,小さいころからゲームやアニメを楽しんできた彼らがゲームを作る時代がくるのは,あと早くて5年かな,というのが理由です。

4Gamer:
 なるほど,説得力あります。

任氏:
 なので早くて5年でその動きが見え始めて,本当に日本のコンシューマゲームのレベルまで行こうとするともうちょっとかかると思いますけどね。ただ一方で「全く違うもの」を作る可能性もあると考えています。

4Gamer:
 それはどのような?

任氏:
 例えば今「Pokémon GO」iOS / Android)が話題ですけど,LBS (Location-Based Service:位置情報)を使ったゲームは,もちろん中国でもあるんですよ。ああいったちょっとトリッキーなゲームって,日本人だとあまり考えつかないと思うんです。中国はそういった,違う形での遊びを考え出してくる気もしますね。

4Gamer:
 そういう話でいうと,中国はGoogleを使えないがゆえに,自国内でさまざまなインターネットサービスを開発して拡充させてますよね。あれは結構すごいことなんじゃないかと。

任氏:
 そうなんですよね。それこそWeChatペイなんか,LINE Payより遥かに進んでいて,あらゆるところで使えますからね。テクノロジーによって生活を便利にするにはどうするかを考えるときに,いままでの積み重ねとか歴史がない分“古い発想”というものもないので,それこそさっきの話じゃないですが,2Gから4Gに飛んだように,一足飛びするような発想が生まれることが多いと考えています。

4Gamer:
 ゲームでも同じことが起きる可能性はありますねえ。

任氏:
 全く違うイノベーションが起こる可能性は高いですよね。いわゆる日本的なレベルデザインに追いついて匠の域に達する,みたいな話では時間がかかるだろうと思いますけど,違うところで勝負するんだろうな,と。

4Gamer:
 日本はMMORPGなんかでも割とIP頼みなところがあるので,そういう話になると中国は強そうです。

任氏:
 でもそれは,IPなりなんなりの力を借りないと難しいという面もあるわけですよね。
 例えば「INGRESS(イングレス)」iOS / Android)とPokémon GOって,技術的に凄く差があるというわけではないですよね。でも,ポケモンっていうIPから生まれる世界があって,それゆえに,あそこまで急速に世界中に広がったわけですから。

4Gamer:
 しかし最近日本は,20代前半の人なんかだとナンバリングのドラクエやFFをプレイしたことがないというゲームプレイヤーも少なからずいるようなんですよね。名前は知っているけどやったことないとか。IPという部分に関しては,日本のゲーム業界も着実に変わってくるだろうな,と思います。

任氏:
 IPは世代を代表するものでもあるわけですからね。
 DeNA Chinaも先日,中国向けに「聖闘士星矢」のゲームを出しました(聖闘士星矢:Reborn)。ランキングも最高で3位までいったくらいにはヒットしていてるんですけど,では現在,聖闘士星矢がどれだけ中国で熱いのかといったら,別に熱いわけではないんですよ。

中国でサービスされている「聖闘士星矢:Reborn」(中国名は圣斗士星矢:重生)。中国の30代の心を鷲づかみ,らしい
日本人の細やかなモノ作りと,中国人のエンジニアリングパワーは融合するべき―――DeNA Chinaの若き社長は,日本と中国のゲームマーケットをどう見ているのか 日本人の細やかなモノ作りと,中国人のエンジニアリングパワーは融合するべき―――DeNA Chinaの若き社長は,日本と中国のゲームマーケットをどう見ているのか

4Gamer:
 さっきのジェネレーションの話ですか?

任氏:
 そうです。私たちの世代にとっては,青春であり夢だったんです。私の世代が5歳から6歳くらいのころ,中国のテレビでは日本のアニメは1日30分だけしか流れなかったんですね。しかも毎日同じアニメが流れるんですが,その時流れていたのが,聖闘士星矢やスラムダンクで,それを観て育ってきたんです。
 その時テレビで流れていただけで,おもちゃが発売されたりしたわけでもないのに,今そのゲームを出して売れるというのは,私の世代には絶大な影響力があったというわけですね。

4Gamer:
 僕はIP周りの話ってあんまり詳しいわけじゃないんですが,なんか胡坐(あぐら)をかいてる気がしてときどきすごく心配になります。

任氏:
 ちょっと危ないんですよね……。IPって,先人達が築き上げた財産を使っていると考えられるわけです。先人達が作り上げたIPって,そもそもゲームとかがない時代に,世界を切り開いて作り上げたものじゃないですか。その時に広がったものを今でも使い続けているんですよね。
 もちろん新しく切り開いている人達もいて,それで作り上げたものが将来の価値につながるわけですが,誰もチャレンジしないで過去のIPにすがって生きていると,それを食いつぶすだけになりますから。それは凄く思いますね。


人材教育にコストをかけていられない国,中国


4Gamer:
 先ほど中国は30代のプロデューサーやディレクターがいるという話をされましたが,日本って60代のクリエイターの方がまだ現役で,その下はちょっと飛んで40代。そしてその下がいない状態なんです。いやもちろんクリエイターはいるんですけど,表に華々しく登場する人がいないというか,業界を引っ張る人がいないというか。5年後にこの業界はどうなっちゃうのという懸念があります。
 勝ち負けの話じゃないんですけど,このままでは中国や韓国に勝てないな,と思います。

任氏:
 そこは難しい話ですよね。自分も中国で社長をやるようになって経営者的視点で思うのが,日本は経営が強いということです。強い,というより安定してるんです。なぜかというと人が辞めないので。新しいものを築き上げるのが大変ですけど,一度築いたものが脈々と続いて,蓄積され続けるというか。

4Gamer:
 なるほど,その視点はありませんでした。

任氏:
 それこそいまの話で言うなら,シブサワ・コウさんが凄いのは,その名前がゲームの歴史に残っていながら,いまだ30年にもわたってゲームを作り続けているわけじゃないですか。あれは確実にシブサワ・コウという人物とそのチーム,そしてシステムを含めた30年の歴史が積み上がってできているものなわけです。

4Gamer:
 おっしゃるとおりです。

任氏:
 中国では,それがなかなか難しいんです。人がものすごい勢いで入れ替わるし,エンジニアも変わる。新しいものは生まれるけど,日本のようにうまく積み上げられないんですね。それで何が起こるかというと,経営的に不安定になるんです。

4Gamer:
 すごく理解できます……。

任氏:
 良いゲームを作ったチームが,必ずしも残り続けるわけじゃないんです。若い人が経験を得られたり,チャレンジしたりするチャンスもたくさん生まれるけど,一長一短というか。お国柄という要素は大きいかなと思います。

4Gamer:
 しかし,人の動きはそこまで流動的なんですか?

任氏:
 難しいですよ。例えばここ5年のモバイルゲーム市場だと,平均在社年数は1.2年くらいです。要は1プロジェクトですよ。

4Gamer:
 1.2年!? 皆どういう理由で動くんでしょうか。

任氏:
 例えばあるプロジェクトが成功したとします。そうすると,このチームのプロデューサーは,自分のスタジオを立ち上げるなり,リーダーになるなりします。次にチームにいた人の中からプロデューサーが選ばれますが,肩書が一個上がるだけで相対的な位置は変わらないわけです。

4Gamer:
 まぁ一つスライドしただけですしね。

任氏:
 そこで,お金は持ってるけどチームを持っていないという外の人間から「倍の給料出すからうちでプロデューサーやらない?」と声を掛けられて,引き抜かれていく,と。外部からお金がよく集まるので,凄くたくさんこういうことが起きているんです。民族性なのかもしれませんが,みんながみんな「俺がリーダーやりたい」という国なので,成功して箔が付くと,みんな散っていきますね。

4Gamer:
 たくましいというか,せわしないというか……。

任氏:
 1つのチームがプロジェクトを終えて,次のプロジェクトを始めるときに会社に残っている人数は,半分いればマシなほう,というレベルですかね。平均的な話をするならば。さすがにキーメンバーは抜けないように会社もいろいろと策を講じていたりしていますが。

4Gamer:
 聞いているだけで経営をしたくなくなりますね……(笑)。僕がやっているのはメディアカンパニーですけど,やはり数年スパンで残ってくれることを前提にいろいろなことを組み上げるので,みんなに1年で辞められちゃったら,もうどうしたらいいか分からない。

任氏:
 日本が社員教育にかけるコストって,結果的にはすごく高いですよね。そして学生の就職率が高い。会社に長く勤めてくれるというのが前提条件にあるから,会社に入れてから育てればいいやと新卒採用を重視するじゃないですか。

4Gamer:
 はい,一般的な大手企業はそのとおりだと思います。

任氏:
 一方アメリカや中国って,大学卒業後の新卒での就職はとても難しいんです。それは離職率が高く,1社に勤める期間が短いから,新人教育の投資がまったく割に合わないんですよね。人は辞めるものだと思って経営するので,即戦力しか雇わないんです。結果として,経験がないまっさらな人達に対する需要が低いんです。いい悪いじゃなくて国の違い,文化の違いですね。

4Gamer:
 ということは中国の学生って,そんな中でどうやってキャリアを重ねていくんですか?

任氏:
 大学に在学中に,インターンとして会社に入って経験を積みます。大学の先生も,そこに凄く気を遣いますね。日本の大学の就職率って,有名な大学だったら名前だけで9割はいけるじゃないですか。残り1割っていうのは,まぁもともと就職する気があんまりない人だとか。

4Gamer:
 確かに有名大学の就職率は高いと思います。

任氏:
 なので日本の有名大学の就職課って,どうせ皆就職できるだろうみたいなイメージがあるのか,ちょっとゆるいですよね。一方中国の大学の就職課の先生って,本当に“営業マン”なんです。各企業とアライアンスを組んで,「うちの学生を労働力として使っていいから,その代わりその中から何人か採用して」という感じで,いろんな大きい会社と交渉するんです。そうした努力で上げた就職率が彼らにとってのKPIであり,それが大学の人気に直結するし,先生のボーナスも変わるという。日本とは違う社会システムで動いてるんですね。

4Gamer:
 なるほど,ドライでシステマティックですね。

任氏:
 もちろん一流の大学はそこまでシビアじゃないですけど,中堅どころの大学の争いは凄いです。学生が志望する大学も,日本の大学ほど名前で人気が偏らなくて,「この大学のこの科は就職率が高い」みたいなところを見て選ぶ傾向がありますね。

4Gamer:
 いまの人達はどうか分かりませんが,少なくとも自分のときは大学の就職率なんてほとんど気にしてなかったですねえ。


市場規模2000億円のマーケットに2000億円の投資


4Gamer:
 でもまぁそういうことよりなにより,日本は“新しいこと”が生まれづらい風土なのかもしれないなぁ,とも思いますね。

任氏:
 そうですね。中国は日本とは違って,新参者が新しく何かを始めるのは非常に有利なんです。何かベンチャー企業を始めるというときに,キャッシュよりもまず良い人材集めが大事なんですが,人の流れがこれほど流動的というのは,逆に言えば引き抜きやすいんです。やりたいことのビジョンとお金があれば,最初からそれなりの人材を集められるわけです。


4Gamer:
 確かに参入障壁が低いというか,チャレンジャーにとっては有利です。

任氏:
 ご存じとは思いますが,その代わり会社の勃興は激しいですよ。新陳代謝が常に起きている……というと聞こえはいいですが,守備に回ったらとても不利です。日本みたいに,“100年企業“みたいなものはほとんど不可能じゃないでしょうか。
 典型的な例でいうと,Tencentが勃興する前,中国のゲーム業界で一番大きな会社だったShanda Games(盛大/シャンダ)ですが,20年も経たないうちに買収されて,再編が行われているわけです。30年の歴史があるゲームメーカーがたくさんある日本と比べると全然違いますね。

4Gamer:
 あれにはびっくりしましたし,今回も久しぶりにChina Joyを回ってみて「あれ?みんなどこ行っちゃったの?」という。

任氏:
 日本の状況とは全然違うんです。この国はチャレンジャーにとっては良い国だけど,守る側には最悪な国ですよ(笑)。本当に日本とは逆ですね。

4Gamer:
 日本は,スマホが登場してアプリ市場が生まれたことで,インディーズや新規の会社の参入がしやすくなったなあと思っていたのもつかの間,上位を占有しているのはやはり大企業ですからね。

任氏:
 DeNA/グリーの2強時代のとき,新しい会社がいろいろと立ち上がったじゃないですか。でも,スマホに移行してHD化が進み,制作面がヘビーになってきたところでまた顔ぶれが戻りましたよね。当時立ち上がった会社も何社かは良い位置にいますけど,当時一世を風靡した会社が落ち込んできていたり……つらいタイミングですよね。

4Gamer:
 良い面も悪い面もあるでしょうけど,中国の勃興を見ていると業界人的にはうらやましいなと思うところはあります。

任氏:
 経営している側はつらいですよ(笑)。

4Gamer:
 よく分かります。僕なら経営したくないです(笑)。しかし中国のゲーム業界って,ホント投資が盛んですよね。

任氏:
 これはゲーム業界に限らずですが,マーケットの展望が明るいというところと,投資資金が豊富にあるという理由があると思います。その資金はどこから来るのかというと,1つは国内の個人を含めた投資家ですね。

4Gamer:
 中国は個人の投資も盛んですしねえ。

任氏:
 ええ。そしてもう1つは海外からの投資ですね。
 投資家としては,大きく成長するところに資金を投資したいわけです。先進国のGDPは,伸びてもせいぜい2%くらいで,東南アジアなどはまだ一個一個の投資が小さい。そうなると,大きい国で成長しているインドか中国となりますので。

4Gamer:
 いろいろ言われていますが,まだ中国はやはり強いんですね。

任氏:
 そして,いくらインドや中国といっても伸びる産業がたくさんあるわけじゃないので,儲かりそうな産業に凄い額が集まるんです。それでお金が集まったのが,スマホ産業が一気に伸びたゲーム産業なんですね。
 例えば2012年や2013年って,モバイルゲーム市場って全体の売り上げがまだ2000億円に満たないくらいでしたが,1年で集まった投資額も2000億円くらいだったんです。つまり,産業規模よりも大きな投資額が集まったわけです。
 まぁ100億円くらいの規模なら,先行投資として理解できます。でも,1000億円を超えた規模の産業に,売り上げ以上の投資があったって異常ですよね。

4Gamer:
 そんな状態だったんですか……。

任氏:
 あの時代は,もらったお金でそのまま自社のゲームに課金すれば売り上げを出せましたからね(笑)。

4Gamer:
 もしかして無限ループ。

任氏:
 そうです。さすがに上位企業はそんなことやりませんけど,小さい企業だと別会社を作って自社のゲームに課金してましたね。日本だと粉飾決算になって捕まりますが,当時の中国はけっこうゆるかったんです。それを繰り返して「俺らこれだけの売り上げを出したぜ」っていう感じで,さらにファンドからお金を入れてもらうという。

4Gamer:
 たくましいというかなんというか……。しかし,日本でゲームに投資って,最近はめっきり聞かなくなりました。ペイさせるのも難しいし,横展開も難しい。
 あと私が言うことじゃないんですが,そもそも日本はマーケティングで差別化を図ることが難しいので,何か“ブレイクする要因”を作り出せないとそのまま沈んでいくだけなんですよね。これはよくないポイントだと思っています。

任氏:
 でもそこは,どのポイントに立って話をするか,ですかねえ。中国で仕事をしていると,日本は天国だと思いますよ。

4Gamer:
 いまのマーケティングの話ですか?

任氏:
 そうです。日本のIPを使ったゲームを出すとして,中国で広告を10個くらいやったときの結果と,日本で例えば少年ジャンプに1枚ペラの広告を出しただけの結果が,ほぼ一緒なんです。
 日本は,マーケティングがなんて楽な国なんだろうと思います。TwitterとかFacebookの運用は当然やるとして,あとは事前登録キャンペーンを打って,IPモノなら掲載誌や単行本の帯といった関連する部分に告知を出してテレビCMを流せば,もうそれでマーケティング終了です。

4Gamer:
 単純化しすぎかな,とも思いますが,確かに概ねのラインでは間違っていない気はします。中国だとどんな感じなんですか?

任氏:
 中国だとまずテレビ局が50も60もあって,“視聴率が良い”と言われている番組でも1%とか2%なんですよ。なのでテレビで広告を打とうとすると当然お金もかかりますし,そうでなくてもいろんなことをたくさんやらなければいけません。

4Gamer:
 ネットワーク広告周りはどうでしょう。

任氏:
 これがアメリカとかだったらFacebookやGoogleが強いので,オンライン広告をやれば,まあ何とか最低限のラインは……という感じですが,中国はネットワークもバラバラなので,それも事実上難しいんですよ……。

4Gamer:
 なるほど。お互い一長一短という感じですね。

任氏:
 先ほどの話の逆ですが,日本のマーケティングで苦労するのは「差別化」です。やることが限られていて,いったいどうやって他社の作品と差別化を図ればいいのかなかなか難しい。
 一方で中国はやることが大変な分,差別化はしやすいんです。他社と違うことをやりやすいんですね。アプリマーケットにしても,まず少なくとも30か所くらいはつなげないとならないですし,端末も100から200種類くらいあって,しかも通信環境も2Gの人と4Gの人が混在しているので,両方が楽しめるデザインにしなきゃいけない。

4Gamer:
 聞いてるだけで大変そうです。

任氏:
 そしてそれぞれのユーザー層に向けたマーケティングとして,数十個のキャンペーンを考えるんですね。数億円レベルの売り上げを出そうと思うと,ToDoリストが日本の5倍とか10倍とかの量になるんです。今回は誰と組むのか,プラットフォームとの交渉はどうするのか……。経営者として戦略を考えるのは,各社本当に大変だと思います。

社長の机の後ろの棚には,ガンプラとお酒のビン。写真では見えないが,この左側にはPS4と3DS,そしてそれらのゲームが山積みで,ここは一体なんの部屋なのか


日本のマーケット規模がそれなりであったがゆえの弊害


任氏:
 しかしいまマーケティングの話をしていて思ったんですが,スマホ以降,PlayStation 4もそうだと思うんですけど,プラットフォームってもうグローバルですよね。ハードウェア企業も含めてグローバル化してきているのに,コンテンツを作る人達や,新しく会社を興す人達がそれについていけていないと感じていて。

4Gamer:
 それはどのあたりで?

任氏:
オフィス入り口に飾ってあった数々のトロフィー。同席した中国人曰く「なんとか賞っていうのが多すぎて,どれが一番偉いのか,誰にもさっぱり分かりません(笑)」とのことで,なんかすごく中国らしい
日本人の細やかなモノ作りと,中国人のエンジニアリングパワーは融合するべき―――DeNA Chinaの若き社長は,日本と中国のゲームマーケットをどう見ているのか
 DeNA内でもよく議論が挙がるんですけど,日本の企業が中国に投資しても良いわけじゃないですか。売り上げを出すことが重要なのであれば,中国マーケットもターゲットにするということが重要です。起業して,日本と中国両方にチームを持って,両方の良いところを出していきますという会社があっていいと思うんです。でも,そういうビジョンをもって創業している人が見当たらないように思うんですね。

4Gamer:
 さっきの話の延長ですね。

任氏:
 これだけプラットフォームがあって,時代がグローバルに広がっていて,アメリカやインド,そして中国に投資が集まっているのに,それに対してアプローチできていないのは,市場のせいじゃなくて自分のせいだと思うんです。極論かもしれませんが,それぞれの経営者自身が,自分の能力やビジョンを問うたほうががいい。

4Gamer:
 耳が痛い話です……。

任氏:
 例えば中国で日本人が起業して,日本マーケット向けにサービスを行いますと言えば,そこにビジョンがあればお金を出してくれる人はいると思うんです。それができない,またはやらないというのは,いくらなんでも他力本願すぎると思うんですね。

4Gamer:
 でも現実問題として,日本人的にはなかなか出来ないんです。私だけですかね,そんな甘いこと言ってるの。

任氏:
 それこそ中国で起業している人って,ABC(=American Born Chinese)と呼ばれる人や,子供の頃に留学していた人といった,海外から戻ってきたグローバルな感覚を持った人が多いです。彼らが起業するときは,そのときの国の情勢や市場の状況を見て,どこで起業するのが一番いいかを考えて,ビジネスを組み立てていくんですね。日本人もそれをやればいいだけなんですけど,現状はやれていないですよね。

4Gamer:
 擁護するわけじゃないですが,日本で「地に足ついた起業」って想像するよりは難しいと思います。風土的にも,社会システム的にも。

任氏:
 いやいや,そんなことじゃダメでしょう。私はコンサルファームからDeNAに来たとき,個人的にはゲーマーではありましたけど,ゲーム産業での実務経験はゼロだったわけです。今DeNA Chinaはだいたい年間ランレートベースで200億円ほどの売り上げを出していますが,ゲーム業界の経験がなくても,数年でこれだけのビジネスができているんです。
 日本のゲームメーカーだってチャレンジすれば絶対もっと上にいけるのにと思うんですが,本気でチャレンジできていないんですね。

4Gamer:
 いろいろな諸問題で腰が引けるというのはあると思うんです。

任氏:
 「チャレンジするにも,ちょっと中国語が……」というのであれば,英語でもいいですよ。英語ならアメリカにチャレンジしてもいいわけですが。日本でお金が集めにくいと思ったら,最初に起業して作るアプリがアメリカ向けでもいいわけですよね。中学,高校と英語はみっちり学んできているんですから。そういう発想をする人が少ないということ自体が,日本の問題だと思います

4Gamer:
 自分もそういう部分が少なからずあるのであまり強くは言えないんですが,なぜ日本人は日本マーケットにこだわるんでしょう。日本のマーケットにこだわっていてもどうにもならないのは自明の理なのに。

任氏:
 まず日本をベースとしてやるべきだ,という刷り込みもあるのかなと思います。

4Gamer:
 日本のマーケットがそれなりに大きくて恵まれているというところも,原因としてありそうですけどね。日本だけでそこそこは稼げてしまうので。

任氏:
 なぜ韓国からサムスンという世界的企業が生まれたかというと,それは逆説的な話で,韓国マーケットが小さかったからだと思うんです。自国のマーケットが小さいから,その中だけでは戦っていけないと危機感をもって海外でチャレンジした結果,企業としてたくましくなったと。

4Gamer:
 なるほど,確かに。

任氏:
 逆に日本は1億数千万という人口を誇り,戦後の努力のおかげでアメリカに続く2番めのGDPを記録する豊かな国になりました。文化も独特で,その閉じられた大きな楽園の中で勝負をして売り上げを出せば,世界からみても上位の売り上げになるという時代が長かったわけですよね。その結果,海外に挑む意味が薄くなってきたんじゃないかと思うわけです。

4Gamer:
 やろうにもリスクの方が高いという。

任氏:
 日本は最盛期に世界のGDPの20%を占めていたんですが,この2,30年で落ち込んで今では5%です。つまり世界における日本の価値は4分の1まで下がってしまったわけです。それなのに世界のGDPを2割を占めていたときの感覚のままで,数字ベースで頭では理解していても,これがどういう状況を意味しているかを本当に分かっている日本の企業って少ないように思うんです。

4Gamer:
 同じことがゲーム業界でも起きている?

任氏:
 はい。そう思います。日本のゲーム業界の世界シェアって,例えばゲームボーイやスーパーファミコンの時代って,今正確な数字は分かりませんが,世界の50%くらい,へたをしたらそれを超えていたと思うんです。それが,スマホゲームになったら世界シェア20%です。
 これから中国やインド,東南アジアが伸びてくることは明白で,このままだとおそらくもっと……そうですね,きっと10%くらいに落ちてしまいます。DeNAやグリーのブラウザゲームが下がってきたら,ゲーム業界全体で見るともっと低くなります。本当に日本のゲーム業界は「世界に出ないで勝てるんですか?」ということを,真剣に考えた方がいいですよ。

4Gamer:
 すでに何年から前から警鐘は鳴らされていたんですけど。

任氏:
 例えば日本が1兆円のマーケットで,世界が5兆円だったとします。それが日本が1兆円のままで世界が15兆円,20兆円と拡大したときに,国内の売上がグロスで減らなかったとしても,マーケットを日本だけに置いていると,相対的にパーセンテージが減るんです。
 映画産業なんかがそうですが,ハリウッドで100億円掛けて制作された映画に,5億円で制作された日本の映画は勝てないですよね,日本国内でだけ売れるジャンルは残りますけど,いわゆるハリウッド超大作に日本の物は勝てない時代がきた。ゲームもまさにそんな感じです。それはもちろんスマホでもやってくるということは,理解するべきだと思います

4Gamer:
 そういった話はCEDECあたりで深く議論したいところですね。PS4のゲームを日本向けに日本語版だけで出すっていうのは,大丈夫なんだろうかと思いますし。

任氏:
 人材やIPを含め,日本にはまだまだアセットが眠っていると思うんです。まず,お金は外資からでもいいから,外部から集めればいい。お金を集めて物を作って,それを海外向けにどう売るかをグローバルにプロデュースをできる人がいればいいと思います。私はこのあたりが,日本の皆さんはすごく考えなきゃいけないところだと思います

4Gamer:
 僕もそうなんですが,お金に対する感覚が甘いのかもしれません。

任氏:
 お金というか“ビジネス”に対してですね。仕事に対して,匠というか職人的な気質が強いので。

4Gamer:
 アメリカ人とか中国人が作った会社に,制作として日本人が入るのがいいんじゃないかとずっと思ってます。

任氏:
 中国人は,基本的な考え方が商人ですからね。例えば,台湾の鴻海(ホンハイ)によるシャープの買収ですが,あの小さな国に,日本の大企業が買収されたということがどういうことなのか,日本の会社はよく考えるべきだと思います。

4Gamer:
 ちなみに任さんはどういう捉え方をしてるんですか?

任氏:
 私は……1つの新しい形かな,とポジティブに捉えている面も大きいですね。
 もちろん,短期的にはリストラなどさまざまな問題はありますけど,長期スパンで見たときには,日本の技術というアセットを復活させるにはいい形なんじゃないかと思います。

4Gamer:
 なるほど。職人にせよ町工場にせよ,お金を握ってくれる人がいれば生き残れるわけですしね。

任氏:
 良いものを作るという意識が本当に高いですからね,日本の人は。

4Gamer:
 どんなジャンルであれ,こだわり度合いが半端ないですから。

任氏:
 本当に凄いと思います。中国でも良質なアクションRPGはありますが,いわゆる技術的な面をみると,例えば「白猫プロジェクト」iOS / Android)のヌルヌル動くあの感覚だとか,いろいろチャレンジしてみようと思わされるところとか,細かいところが良くできていて。そういった作り込みの差をすごく感じます。
 もの作りに対するコンセプトや詰めが日本は凄いんですけど,ただそれをビジネスにするのがうまくない。本当にもったいないです。


中国でのVR普及については懐疑的


4Gamer:
 ところで中国ではコンシューマはどうですか?

任氏:
PlayStation VR
日本人の細やかなモノ作りと,中国人のエンジニアリングパワーは融合するべき―――DeNA Chinaの若き社長は,日本と中国のゲームマーケットをどう見ているのか
 うーん,「PlayStation VR」待ちじゃないですか? あれで行かなかったら当面ないでしょうね。

4Gamer:
 でも中国のVR凄いらしいですね,お金の動きが。「VRやります!」って言えば誰でも出資してもらえそうな勢いだとか。

任氏:
 VRはまだしもコンシューマに関していえば,ビジネスの組み方を若干間違っているんじゃないかと思ってます。国営の会社から,マイクロソフトとソニー両方のプラットフォームが出てるので,どっちに肩入れすればいいのかよく分からないというのはちょっと問題です。

4Gamer:
 そういえば中国は,同じ会社がPS4とXboxを売ってるんでしたね。

任氏:
 PS4なんかはあまり売れてないですね。10万台売れたというニュースが出て……累積20万台くらいなのかな,今。

4Gamer:
 売れない理由って何でしょう?

任氏:
 一番はやはり並行輸入品でしょう。海外から入手したものは政府の検閲も入ってないので,言ってしまえば暴力もエロもそのままです。あとはやはり,中国のゲーム文化の中心はPCオンラインとモバイルだというのがあります。
 検閲については時間をかけて改善されていくと思っていますが,後者については,VRでPCと違う体験ができますということをどれくらい広められるかですね。VRで新しい体験が初めて生まれてそこでブレイクスルーが起きればと思うんですけど,逆にそれでもダメだったら当面トピックはないというか。

4Gamer:
 PCゲームは普及してるので,逆に「Oculus Rift」は?

任氏:
 いまはまだまだですね。VRでいま中国でホットな話題はアミューズメントなんですよ。端末を家で買うほどじゃないけど,ゲームセンター感覚で10分くらい体験するという。あちこちでバンバンできています。
 そうやってコンテンツが増えていって,しばらくしていわゆるコンテンツがマスマーケットに投入されるような値段になっていれば,そこがPS VRの最初の盛り上がりだと思うんですけど。

4Gamer:
 あー,そうですよね。年齢制限の問題とかいろいろありますが,日本もアミューズメントの線が結構アリだと思っています。カラオケボックスなんかで貸し出すのもいいですね。あとはお約束ですが不動産関係とか旅行会社とか。

任氏:
 そうそう,まさにそんな感じです。そのあたりが一個目の試金石で,そこでダメだったら,当面ユーザーが買うという行動には走らないと思います。いわゆる普通のコンシューマは,ここ2年くらいやってダメでしたから,これから何か火が付く原因ってVR以外に何もないんですよ。

4Gamer:
 もうちょっと普及するかと思っていたんですけど。

任氏:
 そうですね……たぶん,コンテンツをどれくらいそろえられるかの勝負になるじゃないですか。中国メーカーが何社か最初から何か出すみたいですけれど。

4Gamer:
 はい。

任氏:
 コンテンツを作る立場からすると,PS4以上に作り込もうとすると本当に大変な作業なので,端末が普及しないと作りたくないですし,かといってコンテンツを作らないと端末が普及しないという,ありがちなジレンマもあります。最初はつらいかなと思うんですけど,ただいつかは来ると思います。圧倒的に違う体験なので,どこかで“来る”とは思うんです。

4Gamer:
 まだ第一世代ですからね。ハード面的にも,もうちょっとよくなってからかな?とか。

任氏:
 そういう意味では個人的に僕はソニー(SIE)に期待してるんです。PS4にVRが付いてくるっていうのが,一番体験を変えやすいですし。あとはDMMさんが“あちら方面”で広げるとか(笑)。

4Gamer:
 ビデオデッキ再び,ですね。

任氏:
 まぁでもやっぱりニーズはありますからね。デバイスが動けばコンテンツも動きますし。インターネットが広がったのも,きっとそういう理由ですよ(笑)。

4Gamer:
 何でモデムのスピードを上げたかったのか,っていう話ですね(笑)。
 さてそろそろお時間のようですので,最後に……3年後の世界のゲームマーケットってどうなっていると思いますか?

任氏:
 3年ですか……スマホに関していうと,グローバルで単一のマーケットに近づいていると思います。いまは中国,日本,欧米という大きな3つのマーケットがありますけど,この差分を生んでいるのはインフラであり端末であり,そしてユーザーのゲーム経験の年数です。

4Gamer:
 なるほど。

任氏:
 日本でスマホゲームをプレイしている人達は,モバゲー/グリーからの積み上げがありますけど,グローバルで考えると,スマホが普及してからまだ5年くらいの経験です。それぞれのユーザーが求めるものにキチンと対応していたことで,結果的に成功するゲームのタイプが分かれていました。でもおそらく3年もするとある程度マーケット間のレベルが合ってきます。中国もインフラが急成長するでしょうし。

4Gamer:
 世界規模で見たら,使う側の「差」もなくなってくるということですね。

任氏:
 コンシューマやPCオンラインに関しては,おそらく2つの市場に分かれると思います。いわゆるHD市場と,スマホみたいな持ち運びできるライトなゲーム。スマホマーケットは単一になっていきますが,コンシューマは端末の価格がけっこうなものなので,まず先進国で普及して広がっていくという構図は残り続けるでしょうね。欧米や日本の今までの積み上げがすごくあるので,それらが引き続き市場を引っ張っていくと思います。
 一方でPCオンラインに関しては,たぶん中国が世界を席巻すると思います。二つの市場で,一方は先進国が,一方は中国が。

4Gamer:
 やっぱり二極分化していくと思います? 真ん中くらいに位置するゲームって需要がなくなってくると思ってるんですよ個人的には。

任氏:
 そう思います。結局は,ユーザーが何を求めてゲームをするかだと思うんです。スマホはそこまでお金を出して時間をかけてゲームはしたくないけど,サクサク暇な時間にゲームしたい。暇な時間が1時間,2時間ってこともありますけど。
 コンシューマは,お金をかけてでも没入感を得たいという。VRが3年後にどれくらい普及するか,今は正直なんとも言えないですが,そっち方向に発展していくと。中国におけるゲームプラットフォームとしてのPCがコンソールに切り替わるかどうかというタイミングが,この3年で来るんじゃないかと思います。
 スマホゲームに関しては,先ほど言った感じですが,世界のマーケットの中での日本メーカーの位置付けは落ちる一方なので,日本の企業が世界で覇を唱えるというのはちょっと難しいでしょうね。

4Gamer:
 なるほど……。スマホとVRによっていままでの層とは違うユーザーが増えて,それに対して業界がどう対応するかが肝ですね。長い時間ありがとうございました。

――2016年7月27日収録


「DeNA」公式サイト

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    デュエル エクス マキナ(DUELS X MACHINA)

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