プレイレポート
ハイテンポで展開される,クドい演出の3Dスピードラン「SEUM」。コンマ数秒を競う即死系インディーズゲームをレポート
ここにおける「工夫」にはいろいろあるが,中でも比較的一般的なのは,1ゲームあたりに必要となる時間を短くすることだ。「10秒あれば1プレイできる」というのは,通りかかる人間にとってのハードルも下がるうえ,「誰かが10秒プレイしているのを見れば,横で見ているだけでも自分向けかどうかが分かる」ということでもある。必然的に,そういったゲームが展示されているエリアは,なんとなく盛り上がって見えるようにもなる。ただし,そのゲームが本当に「10秒遊んでも面白い」必要はあるが。
「Reboot Develop 2016」に展示されていた中でも,「SEUM: Speedrunners from Hell」と銘打たれた作品は,まさにこの「10秒遊んで面白い」ゲームであった。以下,クロアチアのデベロッパであるPine Studioの手によるSEUMがどんなゲームか,簡単に紹介しよう。
走れ! ひたすら走れ!
SEUMはクロアチア語を略したものらしく,英語で言えば「Speedrunners from Hell」の頭文字を取ったものだそうだ(この情報については製作者に担がれている気がしてならないのだが,彼らがそう強く主張するので,そういうことにしておきたい)。
タイトルが示すとおり,プレイヤーはランナーとなり,奇っ怪なステージを駆け抜けていく。規定時間内にゴールに到達できれば良いが,さまざまな死亡ギミックに引っかかればゲームはそこまでだ。
操作方法は,W / A / S / Dで移動,マウスでエイム,左右のクリックで武器やアイテムを使用,そしてSpaceバーでジャンプといった具合に,FPSでおなじみのそれが採用されている。今となっては完全に「直感的な操作」と言ってもいいだろう。
SEUMのルールはただ一つ,どんな手段を使ってもいいから,ゴールに素早くたどり着くことだ。しかるに1ステージごとに,スタートからゴールまでにかかる時間は,長くて30秒程度。ステージは基本,即死ギミックの山なので,開始数秒で死ぬことも珍しくない。いわゆる「即死系ゲーム」なのである。
コースのデザインはよくできていて,なかなかに挑戦意欲を掻き立てる。また,ほぼ必ず複数の「正解」(ないし隠し通路)が用意されているとのことで,コース取りだけではなく,ステージの探索も重要になってくる。
また,SEUMはただ走るだけのゲームではない。右クリックと左クリックに,攻撃用/移動用の武器が,それぞれ割り当てられているのだ。
攻撃用の武器は簡単で,放物線を描くファイアボールを投げるものだ。これは一部の「脆い壁」を破壊できるほか,特定のギミックを起動させるためにも利用できる。
移動用の武器は,「Portal」におけるポータルガンを,より即物的な効果を持ったものにした,と言うのが最も近いだろうか。射出すると白い弾が飛んでいき,着弾したところにプレイヤーはワープするのである。
この移動用の武器が,なかなか扱いづらいのが面白い。そもそも放物線を描くというのがくせ者で,なかなか狙ったところに着弾しないのである。
また,ポータルガンと異なり,テレポート先を視認してからジャンプ,という手順では使えない(着弾で即ワープする)。着弾した先があまり好ましくない場所だったりしても,とりあえずワープしてしまうため,狙いが悪いとワープ後即死ということも珍しくない。
これに加えて,ワープ後もキャラクターの移動ベクトルは保存されているのが話をややこしくする。Portalでは,これを利用したマニューバがいくつもあったが,SEUMでは着地先の様子が分からないだけに,できれば立ち止まってテレポート・ガンを射撃したい……が,弾丸が放物線を描くこともあって,ジャンプしながら射撃したいシーンも多いし,そもそもSEUMはスピードランなので,「立ち止まる」というのは可能な限り避けたい行動だ。このジレンマがまた,面白いのだ。
大勢で楽しむと最高に楽しめる作品
SEUMが面白いのは,ゲームそのものの面白さもあるが,「他人のプレイを見ていると簡単そうなのに,自分でプレイしてみると異様に難しい」という点にもある。一人称視点なのでジャンプ距離の調整が難しいというのもあるし,テレポート・ガンの使い方が見かけよりずっと難しいというのもこれを助長する。
このこともあって,SEUMは1人で楽しむより,複数人でワイワイ言いながらプレイするほうが,ずっと楽しい。「ヘタだな,俺にやらせてみろよ」と言い合いながら死にまくるというのが,おそらく本作の最も楽しい遊び方だ(ちなみにプレイ中,「絶対にハイスコアを塗り替えられない」ことが分かったときは,Rキー1発でリスタートできるので,多人数でプレイするときもテンポが非常に良い)。
また,小さな工夫ではあるが,スピードランでありながら,規定時間内にゴールできなくても,その場で即死はしないという点は面白い。要は初見のステージであれば,ゴールを度外視して,ステージの探索に好きなだけ時間をかけて良いのだ。
もっとも,これは逆に言うとステージによっては,「これどこに行けばいいんだ?」というステージが残ってしまっていたりするということでもある。このあたりは正式リリースまでの間の最終調整に期待したい。
現状,ほかのプレイヤーと競う要素としては,リーダーボード(最速スコアの競争)しかないが,必要にして十分という気もする。なお,将来的にはオンラインCo-opといった要素も考えていきたいとのこと。
正式なリリースは2016年の6月頃,SteamにてPC / Mac / Linux向けに配信される。日本人の感性から言うとさまざまな演出が多少「クドい」作品ではあるが,そこも含めて,皆で騒ぎながら楽しめる作品を探している方には強くオススメしたい。
「SEUM: Speedrunners from Hell」公式サイト
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