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[CEDEC 2015]21世紀に活躍するためのスキルを養う数学ゲーム「Global Math」。その誕生の背景や,今後の展望が語られたセッションをレポート
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印刷2015/08/29 14:49

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[CEDEC 2015]21世紀に活躍するためのスキルを養う数学ゲーム「Global Math」。その誕生の背景や,今後の展望が語られたセッションをレポート

 2015年8月26日〜28日,ゲーム開発者会議CEDEC 2015がパシフィコ横浜で開催された。本稿では,開催28日に行われたセッション「教育での利用を目的とする数学ゲーム『Global Math』 3年間の試みとゲーム産業界への期待」の模様をレポートしよう。

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 セッションでは, 東京工科大学 メディア学部 特任准教授岸本好弘氏と,ベネッセホールディングス EdTech Lab 主任研究員星 千枝氏,そしてマッチロック ツール&ミドルウェア事業部 BISHAMONエバンジェリスト/部長を努める後藤 誠氏が,「Global Math」誕生の背景と,その特徴,そして同タイトルにまつわるこれまで3年間の活動と今後の展望を語った。

「Global Math」公式サイト


セッションの冒頭では,オランダやアメリカで,ゲームが教材として利用されている事例が示された
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ベネッセホールディングス EdTech Lab 主任研究員 星 千枝氏
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 ベネッセホールディングス EdTech Labでは,2011年より数学ゲーム「Global Math」に取り組んでいる。この取り組みは,「21世紀で活躍するために必要な力(21世紀型スキル)とは?」をテーマに経済協力開発機構(OECD)が策定した「キー・コンピテンシー(主要能力)」に沿ったものだ。コンピテンシー(能力)とは,「単なる知識や技能だけではなく,さまざまな心理的・社会的なリソースを活用して,特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力」を指す。

南極大陸の面積はどのくらいか。こうした問いでは正解を求めることよりも,どのようにして解答に至ったか(問題を解決したか)という過程が試される
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 OECDのキー・コンピテンシーは3つのカテゴリーに分かれているが,「Global Math」がフォーカスしているのは「協調的問題解決力」と,その過程で使われる「数学的思考力」だ。

 問題解決のプロセスは,「発見」「計画」「実行」「見直し」という4つのステップで構成される。上に示した「南極大陸の面積を求める」という課題であれば,大陸を小さな正方形で区切ってその面積の合計を出す,あるいは円で囲ってザックリとした面積を求めるといった「発見」をし,「計画」を立てる。その計画を実行し,誤差などを確認して本当にそれが適切であったかどうか「見直し」をする。そして,結果が思わしくないようであれば,もう一度最初からやり直す,というわけだ。

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 「Global Math」は,こうした問題解決のプロセスを身に付けることを目的とした活動であり,活動の参加者が提供したゲームを通じて,9つの「思考力」を養おうとしている。
 上記の問題で南極大陸のでこぼこした形をザックリと円にまとめる思考力は「抽象化力」であり,このほか「規則認識力」「分類力」「計画力」「実行力」「見直し力」「ナンバーセンス」「空間センス」「関数のセンス」がある。

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 それでは,具体的に「Global Math」はどのような形で思考力を養うのだろうか。例示された「Magic of the Hat」というゲームでは,帽子に入れた数字が,ある規則にしたがって変化していくというもので,数字の関係を調べたり,説明したりすることによって規則認識力が鍛えられる。
 これがやがて,例えば「気温が上がったから,アイスの売上が伸びた」といったように,社会で起きる事象の因果関係を理解することにつながり,ひいてはビジネスに役立つ力を生み出す,というわけだ。

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 「てくてくロボット」というゲームは,植物に水を与えるためにパネルを使ってロボットに指示を出すというもので,頭の中で計画を立て,それから実行へ移すというプロセスを重視している。そして,うまく行かなかった場合には,見直しができる。
 以上の説明をまとめて,星氏は「Global Math」を「従来の計算ドリルのようなものではなく,数学的思考力を身に付けるゲーム」と表現した。

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「Global Math」を使ったベネッセホールディングス EdTech Labの取り組みも紹介された
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東京工科大学 メディア学部 特任准教授 岸本好弘氏
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 東京工科大学では,2012年より「Global Math」にゲームを提供している。岸本氏によると,教育目的のゲームは一般的なエンターテイメント向けのゲームと異なり,面白さではなく「そのゲームを通じて何を学習できるか」を重視しているとのこと。例えば初年度の2012年には「Global Math」向けに4タイトルを提供したが,プレゼンテーションでゲームとしての面白さを強調したところ,星氏らベネッセのスタッフから「何を学べるのか明確にしてほしい」と指摘されたという。

 また教育目的のゲームでは,「間違った考えに基づいた解答が偶然正解だった」ということを禁じている。したがって,クリティカルヒットのような偶然の要素を盛り込むことは基本的にできない。
 岸本氏は,教育目的向けのゲームを開発する際には,娯楽向けのゲームとの違いを考慮に入れつつも,キャラクター性やストーリー性といった特徴を活かしていくといいのではないかと語った。

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マッチロック ツール&ミドルウェア事業部 BISHAMONエバンジェリスト/部長 後藤 誠氏
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 セッションの終盤では,後藤氏が自身の取り組む教育向けゲーム開発事例を紹介した。後藤氏はかつてセガのキッズ向けコンピュータ「ピコ」の開発に携わった経験があり,現在では本業とは別に,個人として開発を行っている。

 後藤氏は,GDC 2013で行われたシリアスゲームのセッションで,海外では教育目的のゲームが大きな産業となっており,また大学でもゲーム関係のカリキュラムが充実していることを知り,衝撃を受けたという。

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 そして後藤氏は,日本でもゲーム開発のノウハウをエンターテイメント以外の分野で活かし,ゲームの収益チャンネルを増やしたり,ゲーム開発者の雇用を伸ばしたりできないかと,ずっと考えていたという。
 そんなとき「Global Math」の存在を知り,ゲーム開発者養成のプラットフォームになり得るのではないか,ゲーム開発者の活躍の場を拡大するきっかけとなるのではないかと考えたそうだ。

 後藤氏は最後に,5年後10年後におけるゲーム業界全体のより良い未来を見据え,「Global Math」をはじめとする教育目的のゲームの取り組みを応援していきたいと述べて,セッションを締めくくった。

会場では,後藤氏自身が開発している「Global Math」向けのゲームも紹介された
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