平成の終わりに――「平成ゲーム」の集合写真を撮りたい！ 秋葉原で何本見つけられるかな？

　もうすぐ「平成」が終わり，新元号「令和」が始まる。この30年，さまざまな出来事があった。ゲーム業界で働く我々が平成を振り返るとき，一体何をすべきだろうか。そう，それは「平成ゲーム」を振り返ることに決まっている。


　時間を少し戻そう。4月某日，筆者は4Gamerの編集者に呼び出された。待ち合わせ場所に指定されたのは，ゲームとは切っても切れない関係にある秋葉原だ。
　時間どおりにやってきた男は開口一番，「秋葉原で平成ゲームを探しましょう！」と言い放った。

「は？　何の話ですか？」

　突然のことに戸惑う筆者に対して，編集者が説明したのが冒頭のくだりだった。そして，真顔でこう続けた。

「秋葉原で平成ゲームを探して，我々が平成のゲーム業界を生きた証に集合写真を撮りましょう！」

　やはりよく分からない。やけに芝居がかった口調だったから，おそらく事前にセリフを用意してきたことが伺えるが，それをいちいち指摘するのは面倒くさそうだ。
　だが，いくつか確認しないわけにもいかない。

「あのー，そもそも平成ゲームって何ですか？」

「タイトルに“平成”が入ってるゲームに決まってるじゃないですか」

　どうやら，彼にとっては常識だったらしい。

「それをこれから探すんですか？」

「秋葉原ならゲームショップが多いし，相当な平成ゲームが見つかると思いますよ。まだ午後イチだし，頑張って隅々まで探しましょう！」

　妙に熱量の高い編集者に半ば押し切られる形で，秋葉原の街へ繰り出すことになってしまった。
　とはいえ，もちろん予算が無尽蔵にあるというわけではなく，編集者曰く「だいたい2万円くらいで足りるんじゃないですかね」。これが十分なのか，見積もりが甘いのかもよく分からない。昔のゲームだったらプレミア価格になってるかもしれないし，そもそも1本も見つからない可能性だってあるんだし……。

渋々ながら出発する筆者。かなり釈然としない表情である

　さて，ゲームショップに向かう道すがら，平成ゲームとやらを考えてみた。
　ご存じのとおり，平成が幕を開けたのは1989年1月8日である。当時の家庭用ゲーム事情はファミリーコンピュータが現役選手として活躍中。同年4月にはゲームボーイが鮮烈なデビューを果たしている。そして，大きなシェアを占めるファミリーコンピュータを追いかけていたのが，PCエンジンやメガドライブだった。
　つまり，我々の対象はファミリーコンピュータやPCエンジン，メガドライブ，ゲームボーイといった世代以降のゲームということになる。そして，メーカーが「タイトルに“平成”を入れよう」と考えるなら，平成の初期だろうと考えた。ネーミングに際して，新しいワードに飛びつくのは世の常だからだ。

　したがって，今回のターゲットである「平成ゲーム」は，主に1989年から1990年代前半に存在したと想定するのが自然だろう。また，「秋葉原で探す」ということから現実的に考えると，家庭用ゲームに焦点を当てるほうが効率的であるはずだ。我ながら，なんてロジカルな思考だ。


　……そんな推理を進めていたら，最初の目的地にたどり着いた。「スーパーポテト 秋葉原店」である。秋葉原の中古ゲームショップのなかでも有名で，連日多数のゲームファンが集う。レトロゲームが所狭しと並ぶ同店では，4本の平成ゲームを発見することができた。

ファミコン「究極ハリキリスタジアム 平成元年版」
中古価格	100円（＋税）※ソフトのみ
メーカー（当時）/発売年	タイトー/1989年
ファミコン「平成天才バカボン」
中古価格	2280円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	ナムコ/1991年
スーパーファミコン「平成 新鬼ヶ島 後編」
中古価格	1380円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	任天堂/1997年
PS2「恐怖新聞【平成版】〜怪奇！心霊ファイル〜」
中古価格	1780円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	コナミ/2003年

　「平成天才バカボン」が少々高いと思ったものの，1軒目から4本の収穫は上々の滑り出しだろう。ちなみに同作は1990年に放映されたTVアニメのゲーム版である。原作のタイトルに「平成」が入っているので，必然的に「平成ゲーム」になるというわけだ。また，「恐怖新聞【平成版】〜怪奇！心霊ファイル〜」も同様のケースで，原作の漫画が2002年にリバイバルした際に「平成版」という副題を冠したようだ。


　2軒目は「まんだらけコンプレックス」。ゲームだけでなく，フィギュアやトレーディングカード，漫画などのサブカル関連商品が揃うショップである。秋葉原という街自体，訪日客が多く見られるが，なかでも同店では目立っていた印象だ。

ファミコン「SDバトル大相撲 平成ヒーロー場所」
中古価格	600円（＋税）※ソフトのみ
メーカー（当時）/発売年	バンプレスト/1990年
ワンダースワン「対局囲碁 平成棋院」
中古価格	3200円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	サクセス/2000年
ニンテンドーDS「平成教育委員会DS 全国統一模試スペシャル」
中古価格	700円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	バンダイナムコゲームス/2007年

　ここで購入したのは3本。なかでも注目は「対局囲碁 平成棋院」だ。中古ゲームにしては高めの値段設定だが，「ワンダースワンの囲碁ゲーム」という希少性から出荷本数が少なかったのだろうか。ちょっと気になる。
　また，「平成教育委員会DS 全国統一模試スペシャル」は1991年から放映されたTV番組が原作のゲーム。やはり「原作に平成が入っている」パターンはそれなりの本数がありそうだ。


　3軒目の「トレーダー 秋葉原本店」では，「平成 新鬼ヶ島 前編」を発見。これで前・後編が揃ったことになる。ちなみに同作は少々特殊なタイトルだ。1997年，ローソンが展開していたゲームソフト書き換え販売サービス「ニンテンドウパワー」専用ソフトとしてリリースされており，その翌年にカートリッジ版の発売に至っている。ローソンに設置されたニンテンドウパワーの端末やSFメモリカセットを覚えている人も多いだろう。「近所のコンビニでゲームをデータが購入できる」体験は画期的かつ刺激的なものだった。

スーパーファミコン「平成 新鬼ヶ島 前編」
中古価格	726円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	任天堂/1997年

　4軒目の「駿河屋 秋葉原ゲーム館」では，取材班（2人しかいないが）に激震が走った。

PCエンジン「つっぱり大相撲 平成版」
中古価格	9080円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	ナグザット/1993年
PS「対局囲碁 平成棋院」
中古価格	400円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	ゲームバンク/1997年
PS「梅沢由香里の対局囲碁 平成棋院II」
中古価格	600円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	ダイキ/1998年
ドリームキャスト「平成麻雀荘」
中古価格	1000円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	マイクロネット/2000年

　同店では4本の平成ゲームに遭遇したわけだが，「つっぱり大相撲 平成版」がなんと9080円（＋税）だった。これは想定外の高額商品，いわゆるプレミア価格ということだろう。まさか1万円近い中古ゲームを購入することになるとは……。そもそも大ざっぱな予算感しか持っていなかったこと自体，いかがなものかと思うが，これを境に編集者がちゃんと値札を見るようになった気がする。おそらく出発前に想定していた2万円をオーバーしちゃったからだ。


　もう1点，特筆しておくならば「平成棋院」シリーズの存在だ。2軒目のまんだらけコンプレックスでも1本購入しているので，シリーズ作品が3本揃ったことになる。筆者は囲碁に明るくないため，取材時には知らなかったのだが，「平成棋院」シリーズはPlayStation 2版やWindows版も存在するほどの人気シリーズのようだ。


　さて，秋葉原散策はまだ続く（予算がオーバーしたのに「取材終了」ではないらしい）。5軒目の「レトロげーむキャンプ 秋葉原店」では，さらに2本の平成ゲームに出会えた。

ゲームボーイ「平成天才バカボン」
中古価格	680円（税込）※ソフトのみ
メーカー（当時）/発売年	ナムコ/1992年
PS2「SuperLite2000 平成博徒伝」
中古価格	480円（税込）
メーカー（当時）/発売年	サクセス/2004年

　これで14本である。意外に安く済んだことで編集者もホッとしている様子だ。そして，ここまでの予想以上の成果に我々のテンションも上がる。


「まだだ！　まだいける！」

　しかし，ここから停滞期に突入。その後，複数の店舗に足を運んだものの，すべて空振りに終わってしまう。そして我々の知る限り，すべての中古ゲームショップを回ったことになる。
　そう，これはつまり，我々の挑戦が終わったということだ。最後に今回の取材を総括するならば，熱心にレトロゲームを物色する多数の訪日客の姿が印象深い。家族連れ，カップル，単身やグループのバックパッカー，その顔ぶれはさまざまだったが，日本のレトロゲームを愛する気持ちは我々と同じだと思われた。嗚呼，レトロゲームよ，永遠なれ！

「しょうがない。新宿に移動しましょう」

　ここで「取材終了」を告げられると思っていた筆者は耳を疑った。だって，アンタ！「秋葉原で探しましょう」って言ってたじゃないか！　さっき総括しちゃったよ！
　秋葉原を歩き回って足は痛いし，中古ゲームがぎっしり詰まったリュックは重いし，もう帰りたいのに……。


　新宿のお目当ては「駿河屋 新宿マルイアネックス店」だ。フロアが広く，中古ゲームの品揃えもなかなか，きっと何かがあるに違いない。そして，そんな我々の思惑が見事に当たった。

スーパーファミコン「平成イヌ物語バウ ポップンスマッシュ」
中古価格	1800円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	タカラ/1994年
ニンテンドーDS「平成教育委員会DS」
中古価格	300円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	バンダイナムコゲームス/2006年

　ありがとう，新宿。俺達は十分に戦った。よくやった。頑張った。もう，日も暮れてきたよ。万感の思いを胸に「ゲームセット」のコールを待つ筆者。しかし，現実は非情だった。

「池袋と渋谷も気になりますね……。よし，手分けしましょう」

　なんだよ，この執念……。ここで我々は二手に分かれることにして，筆者は渋谷，編集者は池袋へ向かった。だが，その結果は芳しいものではなかった。

ニンテンドーDS「人生ゲームQ 平成のデキゴト」
中古価格	842円（＋税）※ソフトのみ
メーカー（当時）/発売年	タカラトミー/2007年

　上記の1本は編集者が「GEOモバイル 池袋北口店」で確保したものだ。池袋では4店舗に足を運んだものの，収穫はこれだけだったとのこと。一方，渋谷を散策した筆者は空振りに終わった……。いや，ちゃんと探したんだって！

渋谷に着いたときに編集者に送った写真。とくに証拠提出を要求されたわけではないが，あとで何か言われそうな気がしたので……

　後日，筆者は4Gamer編集部に向かった。自前のセガサターンコレクションのなかから，「平成天才バカボン すすめ！バカボンズ」を持参して。

セガサターン「平成天才バカボン すすめ！バカボンズ」
中古価格	※筆者の私物
メーカー（当時）/発売年	ゼネラル・エンタテイメント/1995年

「いやー，御簾納さんも持ってたじゃないですか，平成ゲーム。しかも，あれだけ探しても見つからなかったレアな1本を！」

「ええ，自宅に帰ってから探してみたらありました」

「それならそうと早く言ってくれればいいのに」

「でも，“平成”を意識して買ったわけじゃないから，すぐには思い出せないですよ……」

「しかし，集まりましたね。全部で18本ですか。さっそく集合写真を撮りましょう！」

ファミコン「究極ハリキリスタジアム 平成元年版」
中古価格	100円（＋税）※ソフトのみ
メーカー（当時）/発売年	タイトー/1989年
ファミコン「SDバトル大相撲 平成ヒーロー場所」
中古価格	600円（＋税）※ソフトのみ
メーカー（当時）/発売年	バンプレスト/1990年
ファミコン「平成天才バカボン」
中古価格	2280円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	ナムコ/1991年
スーパーファミコン「平成イヌ物語バウ ポップンスマッシュ」
中古価格	1800円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	タカラ/1994年
スーパーファミコン「平成 新鬼ヶ島 前編」
中古価格	726円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	任天堂/1997年
スーパーファミコン「平成 新鬼ヶ島 後編」
中古価格	1380円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	任天堂/1997年
ゲームボーイ「平成天才バカボン」
中古価格	680円（税込）※ソフトのみ
メーカー（当時）/発売年	ナムコ/1992年
ニンテンドーDS「平成教育委員会DS」
中古価格	300円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	バンダイナムコゲームス/2006年
ニンテンドーDS「平成教育委員会DS 全国統一模試スペシャル」
中古価格	700円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	バンダイナムコゲームス/2007年
ニンテンドーDS「人生ゲームQ 平成のデキゴト」
中古価格	842円（＋税）※ソフトのみ
メーカー（当時）/発売年	タカラトミー/2007年
PS「対局囲碁 平成棋院」
中古価格	400円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	ゲームバンク/1997年
PS「梅沢由香里の対局囲碁 平成棋院II」
中古価格	600円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	ダイキ/1998年
PS2「恐怖新聞【平成版】〜怪奇！心霊ファイル〜」
中古価格	1780円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	コナミ/2003年
PS2「SuperLite2000 平成博徒伝」
中古価格	480円（税込）
メーカー（当時）/発売年	サクセス/2004年
セガサターン「平成天才バカボン すすめ！バカボンズ」
中古価格	※筆者の私物
メーカー（当時）/発売年	ゼネラル・エンタテイメント/1995年
ドリームキャスト「平成麻雀荘」
中古価格	1000円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	マイクロネット/2000年
PCエンジン「つっぱり大相撲 平成版」
中古価格	9080円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	ナグザット/1993年
ワンダースワン「対局囲碁 平成棋院」
中古価格	3200円（＋税）
メーカー（当時）/発売年	サクセス/2000年

　当初は「平成の終わりに何やってんだ……」と思っていたが，こうして集合写真を撮ってみると感慨深いものが込み上げてくるような気がしなくもない。撮影を終えた編集者に「で？」と言いたい気持ちをぐっと堪えたのも事実だが。
　ただ，編集者がインターネットを駆使して調べたところによると，平成ゲームはもっと存在するという。家庭用ゲームのパッケージ版に限ると，現在判明しているのは4本である。

3DO「九星占術による平成開運暦」
メーカー（当時）/発売年	アリ・アドネ/1994年
ゲームギア「ギアスタジアム平成版」
メーカー（当時）/発売年	ナムコ/1995年
スーパーファミコン「平成軍人将棋」
メーカー（当時）/発売年	カロッツェリアジャパン/1996年
PS2「インターネット囲碁 平成棋院24」
メーカー（当時）/発売年	サクセス/2002年

ダウンロード専用ソフトだが，メディアファイブの「マル合格！資格」シリーズも平成ゲームと言えるかもしれない

　ゲームギアや3DOとは……何もかもみな懐かしい。そして，またまたまた「平成棋院」である。平成ゲームの世界において「平成棋院」シリーズのタイトル数はNo.1と言えそうだ。「平成ゲームの世界って何だ？」という話だが。
　ここまで来ると，そう簡単には出会えないだろう。まあ，どうしても欲しかったら通販やオークションを使えばいいんだけどさ……。

「ゲームは遊んでナンボ」ということで，撮影後に購入してきた平成ゲームを遊んでみました！

　あと，「ほかにも平成ゲームを知ってる」という読者は編集部まで情報提供を……しなくてもいいです。ホントに結構ですから！