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本日50歳を迎えたピエール瀧氏の怪作「バイトヘル2000」は,スマホ時代の到来を予見していた?
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印刷2017/04/08 00:00

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本日50歳を迎えたピエール瀧氏の怪作「バイトヘル2000」は,スマホ時代の到来を予見していた?

 本日2017年4月8日は,テクノバンド「電気グルーヴ」のメンバー,ピエール瀧氏の50歳の誕生日だ。

 氏は俳優や声優としても積極的に活動していて,「シン・ゴジラ」「アナと雪の女王」といった大ヒット作や,テレビCMでその姿を見ることも多いはず。ラジオパーソナリティとしても活躍中だ。
 だが4Gamerとしては,ゲームクリエイターとしての活動を外すわけにはいかない。

 若いゲーマーはご存じないかもしれないが,瀧氏は「グルーヴ地獄V」(1998年,PS),「バイトヘル2000」(2005年,PSP),「The Last Guy」(2008年,PS3)といった作品の開発に参加している。「グルーヴ地獄V」と「バイトヘル2000」は同じシリーズのミニゲーム集で,「The Last Guy」は「バイトヘル2000」に収録されているゲーム「デモ行進」を進化させたものだ。

 本稿では,「バイトヘル2000」を中心に,“ゲームクリエイター・ピエール瀧”が手がけた作品の面白さを紹介したい。
 なお,同作はPSP用タイトルだが,PS VitaやPS Vita TVでもプレイ可能で,現在でもPlayStation Storeで販売されている。


自由で奇抜なバイトの数々


 冒頭で触れたように,「バイトヘル2000」はミニゲーム集だ。その名のとおり,「バイト」(ミニゲーム)で報酬を得て,それを使って新たなバイトや「ドウグ」(詳細は後述)を手に入れていくという内容になっている。
 何より特徴的なのは,バイトの奇抜さだ。主なものを以下で紹介しよう。

●ボールペン工場
次々と流れてくるボールペンにキャップをかぶせ,完成させていく。36桁(数の単位で言うと1000溝まで)のカウンターが付いているが,どこまでカウントできるかは不明。


●人気プロレスラー
プロレスラーの「イリオモテマスク」となり,フォールを3カウントギリギリで外して会場を盛り上げる。


●じゃんけん世界大会
アジア予選,世界大会を勝ち抜き,じゃんけんの世界王者を目指す。


●魔王
小中学校の音楽授業で使われ,一部の生徒のトラウマになったシューベルトの名曲「魔王」がアクションゲームに。ミスするごとに子供がやつれていく。


●ひよこ鑑定
10分間の制限時間内により多くのひよこを正確に鑑定する。「オス」「メス」に加えて「天国」(死んでいるひよこ)があるので注意。


●地引き網
かけ声に合わせて網を引くと,獲れた魚に応じた報酬をもらえる。ただし,漁は最初に漁師から指定される時刻(場合によっては数時間後)に始まるので,それまで待たなければならない。


 どれも「よくこんなの考えつくな」と思ってしまう,突き抜けた設定だ。大方想像できると思うが,バイトのゲームシステムはどれもシンプル。「人気プロレスラー」は[○]ボタンのフォール外しのみ,「地引き網」はスライドパッドを回すだけと,1種類の操作しかないものも珍しくない。


 また,レトロゲームのオマージュと思われるバイトもある。例えば「魔王」のゲームシステムは,かつて流行った縦スクロールのレースゲーム「ジッピーレース」によく似ている。

 だが,強烈な設定のおかげなのか,本作のバイトでは“単調”“焼き直し”といった印象を受けることが少ない。むしろ,テノール歌手が「父」「子」「魔王」の3役で歌うBGMに乗って馬を走らせたり,夜中の3時あたりに目覚ましで起床して漁をしたりするうちに「こんな体験,バイトヘルでしかできない……」と思えるようになってくる。


 そして「よく考えると,これはゲームになっていないのでは?」と思えるバイトが含まれているのも,本作らしいところだ。
 「ひよこ鑑定」は制限時間や鑑定数に応じたボーナスなどがあり,“いかに早く,正確に鑑定できるか”には挑戦できるので,それがゲーム性と言えないこともないが,ミスが重なったり,ペースが遅かったりといった理由でバイトが強制終了することはない。
 「ボールペン工場」になると制限時間すらなくなって,いつ終えるかもプレイヤーの自由。正しい向きにキャップをかぶせた本数に応じて基本給と能力給が支払われるので,地味にコツコツと進めることになる。

 “ゲーム”の定義は人それぞれだろうが,この2つには「勝ち負け」「クリア」「ゲームオーバー」といった要素はないので,「作業に近い」と言うことはできるだろう。なのに,“作業感”を感じることはなく,もっとゲーム性が強いバイトと同様に楽しめてしまう。これには非日常的な設定が一役買っているのではないかと思うのだ。

 少々話は変わるのだが,「ドラッグ オン ドラグーン」「ニーア」シリーズなどを手がけたヨコオタロウ氏は,4GamerのインタビューGDCの講演で,最近のゲームは「ゲームとはこうでなければいけない」という考えに取りつかれて,“見えない壁”を作り,自分から可能性を狭めてしまっていると指摘している。

ヨコオタロウ氏がGDCの講演で使用したスライド。「できること」のエリアに“見えない壁”を作って可能性を狭めている様子を表している
本日50歳を迎えたピエール瀧氏の怪作「バイトヘル2000」は,スマホ時代の到来を予見していた?

 その点,バイトヘル2000はこの“見えない壁”と無縁のタイトルと言っていいかもしれない。何しろ「これはゲームなのか? 作業なのか?」と考えたくなるものが堂々と入っているし,それぞれのバイトの設定に「ゲームとはこうあるべき」といった先入観がないのは明らかだ。

 発売当時も設定の自由っぷりは目立っていたのだが,続編ものや,ヒット作を参考にした“手堅い”作品がさらに増えた今,本作を振り返ると,その自由っぷりがさらに際立っているように感じる。


職人技による絶妙なゲームバランス


 ここまで読んで「“出落ち”みたいなバイトしかないのか」と思った人もいるかもしれない。確かに「ボールペン工場」のように,ゲームなのかすら怪しいバイトもあるのだが,その一方で,とことんゲーム性が練り込まれたものも用意されている。その代表的な存在が「まき割り2」(以下,まき割り)だ。

「グルーヴ地獄V」にほぼ同じ内容のものが収録されていたので,“2”がついている

 「まき割り」はその名のとおり,次々に出てくる薪を[○]ボタンで割っていくバイトで,出されてから一定時間内に薪を割れなかったり,どういうわけか薪に交じって出てくる犬やウサギ,イルカといった動物を割ってしまったりするとゲームオーバーとなる。


 ほかのバイトと同様にシンプルなルールなのだが,「まき割り」の特徴は絶妙なゲームバランスにある。
 その1つが制限時間だ。前述したように,薪は出されてから一定時間内に割らなければならないのだが,その時間は約0.4秒しかない。一瞬躊躇するとアウトになるくらいの短さなので,ある程度慣れた人でも,“動物が数回続いた後の薪”で引っかかったりするし,「一瞬でも気後れしてはいけない」という緊張感が手元を狂わせたりもする。とりあえずの目標となる100本を達成するにも,相当な集中力が必要だ。

 幸いなことに,犬,ウサギ,イルカはいずれも薪とはっきり異なる色なので,「動物だったら押さない」と考えるのではなく,「茶色(薪)が出たらボタンを押す」という風に,意識を単純化すれば割とスムーズに進める。序盤のうちは……。

 50本を過ぎたあたりから,出てくる動物に「コアラ」が加わる。コアラと言えば灰色の体が思い浮かぶが,本作のコアラはどういうわけか,薪と誤認しやすい茶色だ。茶色の動物なら,狸や猿などいくらでもいるはずなのに,あえてコアラを茶色にして持ってくるのは「色で単純化してくるのはお見通し」という作り手からのメッセージだろう。こういう細かい演出もたまらない。


 コアラの出現によって一気に難度が上がり,さらに進むと今度は「ウサギ型の薪」が出てくるようになる。例え動物の形をしていようが,薪は薪なので割らないとアウト。果たして初見でサクッと割れる人はいるのだろうか……。

茶色のコアラやウサギ型の薪という発想も,常識にとらわれない本作でなければ出てこないだろう

 言うまでもないが「薪,コアラ,ウサギ型薪を判別し,必要ならボタンを押す」という一連の作業を,0.4秒以内に行い続けるのは簡単ではない。いくらやり込んだところで確実にクリアはできず,そのときの集中力次第になってくる。言い換えれば,何回やっても緊張感あふれるプレイが楽しめるのだ。

 ゲーム好きとしては,この絶妙な難度を「動物の種類を増やすだけ」で実現しているところに唸ってしまう。素人考えなら,難度を上げるためには「操作ボタンを増やす」「制限時間を短くする」といった方法が思い浮かぶが,「薪割り」は“0.4秒以内に[○]ボタンで薪を割る”という基本部分をまったく変えずに難度を調整している。この“職人技”のおかげで,「すぐに慣れるのに,なかなか飽きない」という理想型のゲームになっているのだ。


 このバイトのベースとなっているのが,薪割りという“作業”である点も興味深い。「ボールペン工場」は作業のままぶん投げられた(ように見える)のに,「まき割り」の場合は作業に制限時間が設定され,動物が混ざることでゲームになり,さらにコアラやウサギ型薪が付け加えられて絶妙な難度に調整……と,丁寧に仕上げられているのが対照的だ。
 この緩急というか落差というか,つかみどころのなさも,「バイトヘル2000」の魅力かもしれない。


PSPをスマホ的に捉えていた先見の明


 ここまで「バイトヘル2000」の魅力を紹介してきたが,2005年リリースの本作には,今だからこそ気づける特徴がある。それがスマートフォンの出現を予想しているかのような要素だ。ちなみに,AppleがiPhoneを発表したのは2007年1月で,バイトヘル2000の発売から約1年以上後のことになる。

 スマホ的要素の1つが,PSPをツール的に使える「ドウグ」の存在。以下のようなものが収録されている。

●LIGHT
画面をハンディライトとして使う。点滅パターンの変更や色切り替えも可能。


●世界時計デラックス
世界各都市の現在時刻を確認できる。アラーム機能付き。


●電卓酒場
飲み会での割り勘用電卓。請求金額を参加人数で割る「パーフェクトモード」と,女性の支払額が安くなる「ゴウコンモード」が用意されており,途中で帰った人が置いていった「チュウブラリンマネー」にも対応。


●王様ゲーム支援ツール〜大臣〜
対象となる番号を指定したうえで,「ウォーミングアップ」「ソフト&マイルド」「ハード&ストロング」の3コースから1つを選択すると,いい感じの命令(罰ゲーム)を提案してくれる。いかにも“大臣顔”をしたモデルさんも印象深い。


 世界時計はiOSやAndroidが標準で搭載しているし,それ以外の3つもApp StoreやGoogle Playで配信されていてもおかしくない……というか,実際に似たようなものが配信されている。

 スマホ普及した今となっては,ゲームとツールが同じ携帯端末に入っているのは自然なことなのだが,PSPはカメラやマイクを搭載しておらず,インターネットブラウザも2005年7月のアップデートで追加されるなど,当初は“あくまでゲーム機”という色が強かった。
 また,2006年11月にPlayStation Storeがオープンするまではダウンロードソフトというものも存在せず,PSPは「UMDディスクを出し入れして遊ぶもの」だったのだ。

 そんな時代に,PSPソフトとしてスマホアプリ的なものを発想できたのは,開発陣に先見の明があったからではないだろうか。

デザインコンセプトがバラバラなアイコンが並ぶところも,スマホっぽい

 もう1つのスマホ的(正確に言えばスマホゲーム的)な要素が「ガチャ」。ここまであえて伏せてきたが,本作でゲームやツールを入手するには,稼いだお金で「ガチャガチャ」を回す必要がある。


 そしてお察しのとおり,ガチャガチャには,ゲームやツールに加えて何の役にも立たない「ハズレ」が大量に含まれていて,そればかり引くことになる(当然かぶりもある)。今回プレイしてお目当てのゲームを引いたときは,「懐かしいけど,割と最近も味わっているような気が……」という微妙な気分にさせられた。

何の役にも立たないのだが,説明が妙に細かいハズレの数々
本日50歳を迎えたピエール瀧氏の怪作「バイトヘル2000」は,スマホ時代の到来を予見していた? 本日50歳を迎えたピエール瀧氏の怪作「バイトヘル2000」は,スマホ時代の到来を予見していた?
本日50歳を迎えたピエール瀧氏の怪作「バイトヘル2000」は,スマホ時代の到来を予見していた? 本日50歳を迎えたピエール瀧氏の怪作「バイトヘル2000」は,スマホ時代の到来を予見していた?

 ガチャガチャには1回100円の「梅」,500円の「竹」,1000円の「松」,5000円の「セレブ」という4種類があり,それぞれ出てくるゲームやツール,ハズレが異なっている。
 当時は「5000円のガチャガチャとか(笑)」という感じで,この料金設定が笑いどころになっていたのだが,「(ガチャに)ン万円突っ込んだ」という話をよく耳にする今となっては,インパクトが薄れているかもしれない。


 ちなみに,オンラインゲームにおけるガチャの導入は,2004年4月に「メイプルストーリー」が「ガシャポン」を設置したのが初,とする説が有力のようだ(関連記事)。
 バイトヘル2000はこれよりも後のリリースだが,前作にあたる1998年リリースの「グルーヴ地獄V」の時点でガチャガチャが取り入れられている。
 さすがに前世紀にまで遡ってしまうと,「先取り」でなく「偶然」という感じが強くなってくるが,既存のゲームに倣ったものではない,ということは言えるだろう。

 ……というわけで,長々と書いてきたが,「バイトヘル2000」の“唯一無二っぷり”を感じてもらえただろうか。ある意味“時代が追いついてきた”タイトルなので,以前プレイしたことがある人も,まったく知らなかった人も,ぜひこのタイミングで遊んでもらいたい。
 そして,ピエール瀧氏にはぜひ新作の発表を期待したいところだ。バイトヘル2000はスマホと相性が良さそうだが,移植よりも,プレイヤーが唖然とするような完全新作を作ってほしいと思っている。
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