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印刷2015/03/27 10:00

解説

4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法

 4Gamerのヘッドセットおよびマイクレビューでは,2014年まで,記事単位でマイク特性の計測方法を説明してきたが,2015年春からは,分離して本稿で説明し,機材のアップデート情報なども適宜まとめておきたいと思う。

PAZのデフォルトウインドウ。上に周波数,下に位相の特性を表示するようになっている
画像(001)4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法
 4Gamerでは,録音した音声の試聴とは別に,周波数および位相の両特性を測定し,マイクの品質評価を行う。
 テストにあたっては筆者の音楽制作用環境をそのまま流用するのだが,具体的には,Mac Pro(2013)上で,Avid製の「Pro Tools HD 11 Software」を使用し,こちらでモノラルのテスト用オーディオ信号(=スイープ波形)をスピーカーで再生する。これを,マイク(≒ヘッドセット)が接続されたカスタムPC上でSony Creative Software製のサウンド編集用アプリケーションスイート「Sound Forge Pro 10」を使用して録音する。録音後,収録した素材をPro Toolsに取り込んでから,Waves Audio製のソフトウェアオーディオアナライザ「PAZ Psychoacoustic Analyzer」(以下,PAZ)で録音素材の分析を行う。

筆者自宅スタジオの機材より,上からPro Tools|HD I/OとAvocet(のコントローラ),S3A
画像(002)4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法
画像(003)4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法
画像(004)4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法
 Mac Proは,Sonnet Technologies製のThunderbolt拡張ボックスEcho Express III-Dが接続され,ここにPro Tools用PCI Expressインタフェースカード「Pro Tools|HDX1」を差し,その先には「Pro Tools|HD I/O(8x8x8)」をつないである状態だ。
 Pro Tools|HD I/Oの先には,Crane Song製モニターコントローラで,ジッタ低減と192kHzアップサンプリングが常時有効になっており,デジタル機器ながら,アナログライクでスイートなサウンドが得られるとして,プロオーディオの世界で評価されている「Avocet」がAES/EBUケーブルでデジタル接続されている。そして,Avocetでデジタルーアナログ変換(D/A変換)されたアナログ出力がADAM製パワードスピーカー「S3A」とサブウーファー「Sub10 mkII」にXLRバランスケーブルにて接続される構成である。
 マイクのテストにあたっては基本的に,このS3Aのうち1台をマイク前方30cmのところに置いてユーザーの口の代わりとし,Sound Forge Pro 10からスイープ信号を再生して,PAZで測定する格好だ。収録方法が異なる場合は,記事本編にその旨記載する。

 ここで用いるスイープ波形は,最もピュアな波形であるサイン波20Hzから24kHzまで滑らかに変化させた(=スイープさせた)オーディオ信号である。スイープ波形は,音が壁面や床や天井面で反射したり吸収されたり,あるいは特定周波数で共振を起こしたりといった,テストを行う部屋の音響特性に影響を受けにくいという利点がある。
 なお,テストにあたっては,平均音圧レベルの計測値(Root Mean Square,RMS。「実効値」ともいう)をスコアとして取得する。

 ……以上,長々と書いてきたが,要するに,「トータルの平均音圧レベル(≒音量)を揃えた状態で比較したとき,リファレンスの波形からどれくらい乖離しているか」をチェックするわけなので,記事中では,そこを中心に読み進め,適宜データと照らし合わせてもらいたいと思う。

 本文中で頻出するであろう用語とグラフの見方について補足しておくと,周波数特性とは,オーディオ機器の入出力の強さを「音の高さ」別に計測したデータをまとめたものだ。よくゲームの効果音やBGMに対して「甲高い音」「低音」などといった評価がされるが,この高さは「Hz」(ヘルツ)で表せる。これら高域の音や低域の音をHz単位で拾って折れ線グラフ化し,「○Hzの音は大きい(あるいは小さい)」というためのもの,と考えてもらえばいい。人間の耳が聴き取れる音の高さは20Hzから20kHz(=2万Hz)といわれており,4Gamerのマイクテストでもこの範囲について言及する。

 下に示したのは,PAZを利用して計測した周波数特性の例だ。グラフの左端が0Hz,右端が20kHzで,波線がその周波数における音の大きさ(「音圧レベル」もしくは「オーディオレベル」という)を示す。
 一般論として,リファレンスとなる音が存在する場合は,そのリファレンスの音の波形に近い形であればあるほど,測定対象はオーディオ機器として優秀ということになる。

周波数特性の波形の例。実のところ,リファレンスとなるスイープ信号の波形である
画像(005)4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法

 ただ,ここで注意しておく必要があるのは,「ボイスチャット用マイクの場合,リファレンス波形に近ければいいかというと,必ずしもそうではない」ということだ。
 もちろん,プロ仕様の本格的なマイクでは,はリファレンス波形に近い傾向が出たほうが,集音された音は聞き取りやすい。ただ,ゲーマー向けヘッドセットの場合は,オンラインでのボイスチャットが前提だ。16bit/48kHzのような,CD-DAに近い品質など,初めから想定されていないと言い換えてもいいだろう。

 そのため,ゲーマー向けヘッドセットのマイク設計では,携帯電話やスマートフォンのマイクと近いアイデアが盛り込まれることが多い。具体的には,人間は,

  • 専門用語で言う「基本波」,具体的には,男声に多く含まれる80〜500Hzの帯域を中心に,女声の最大1kHzあたり(=声に含まれる声の周波数成分の中で最も低いところ)までで,声自体の高さを認識する
  • 4kHzくらいまでの「高次倍音」で各自の声のキャラクターを認識し,言語を理解する

ので,極論,基本波の上限から高次倍音の1kHzから4kHzまでがきちんと集音されていれば,少なくとも何を言っているのか理解できる,というものだ。
 音質の善し悪しは二の次で,とにかく,「何を言っているのか聞き取れる」ことを目指す。ゲームのオンラインプレイ時は,ネットワーク上で多くの高域が失われたり,音質に悪影響を与える変調がかかったりするので,こういう,思い切った特性を選択したほうが,実用的であることも多い。

 よって,実況者向けとなるプロ仕様のマイクでは,リファレンスにどれだけ近いかが見どころになるが,ゲーマー向けヘッドセットでは,ノイズ源となりやすい低周波や高周波をカットし,1kHz〜4kHzの帯域をしっかり集音できるようなものが少なくないので,メーカーの意図を汲みながら評価する必要がある。

 もう1つの位相は,周波数よりさらに難しい概念なので,ここでは思い切って簡略化して説明したいと思う。

位相特性の波形例。こちらもリファレンスだ
画像(06)4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法
 ここでいう「位相」とは「ステレオ位相」のことで,ステレオで左右同じオーディオ信号をまったく同じタイミングで再生したとき,左右でずれが生じないと「位相が正しい」といい,そうでない場合は「位相がずれる」と表現される。
 テストに用いているPro Toolsシステムはプロ用の機材であり,しかも再生するオーディオ信号はモノラルなので,出力段での位相ずれが生じることはまず考えられない。よって,マイクのテストにおいては,マイク側の事情によって,たとえば左右の入力タイミングが数ms違っていたり,左右で完全に音が同じになっていなかったりといった問題があると推測できる。

こちらが,逆位相の生じている状態
画像(007)4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法
 グラフの判断基準としては,PAZのグラフ下部にある半円のうち,弧の色が青い部分にオレンジ色の線が入っていれば合格だ。「AntiPhase」と書かれている赤い部分に及んでいると,左右ステレオの音がひどくずれている(=逆位相が生じている)状態で,入力された音を聞くと,聴感上の違和感を受けることとなる。
 マイクに入力した声はチャット/通話相手に届く。逆位相が生じていたりすると,「何をしゃべっているのか聴き取りにくい」状態が発生し,ゲームプレイに支障が出るし,そこまででなくても,違和感や不快感を感じる声だと士気が削がれたりすることも考えられる。それだけに,違和感や不快感を与えない,正常に入力できるマイクかどうかが重要となるわけだ。

 基本的には,モノラルマイクの場合,先ほどリファレンスとして示した,まっすぐ上に伸びる波形であれば合格。ステレオマイクの場合は,半円の両端にある赤いAntiPhaseエリアへ波形が伸びていなければ合格,という理解でいいだろう。
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