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KingstonのNVMe接続型SSD「KC1000」レビュー。その強みは体感速度と5年保証にあった
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印刷2017/10/02 00:00

レビュー

Kingstonの新作SSD,その強みは体感速度と5年保証にあった

Kingston KC1000 Solid-State Drive

Text by 米田 聡


KC1000 Solid-State Drive(型番:SKC1000H/480G)
メーカー:Kingston Technology
問い合わせ先:カスタマーサービス 00531-88-0018(平日8:00〜18:00)
実勢価格:3万7000円前後(※2017年10月2日現在)
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 「KC1000 Solid-State Drive」(以下,KC1000)は,最近だとゲーマー&オーバークロッカー向け製品ブランド「HyperX」の存在感が増しているKingston Technology(以下,Kingston)から登場した,SSDの新製品だ。論理インタフェースにNVM Express(以下,NVMe) Gen.3 x4,物理インタフェースにM.2を採用し,Kingstonブランドのコンシューマ向けSSD製品としては,2017年10月上旬時点における最上位モデルとなる。

 KC1000は容量240GB,480GB,960GBの3モデル展開だが,4Gamerはこのうち480GBモデル(型番:SKC1000H/480G)を入手できたので,独立系メモリメーカー最大手の「本業」における新モデル,その実力をチェックしてみたい。


台湾Phison製のコントローラと東芝製MLC NANDを採用するKC1000


 テストに先立って仕様を確認しておこうと思うが,KC1000はカード長80mmの「M.2 2280」規格に基づくカードと,「HHHL AIC」(Half-Height Half-Length Ad-In Card)と呼ばれるM.2→PCI Express(以下,PCIe)x4変換基板のセット品である。というか正確には,HHHL AICにSSD本体が取り付けられた状態で製品ボックスに入っている。

製品ボックスから取り出した状態。HHHL AICにKC1000が差さっている。マザーボード側のM.2スロットへ取り付けたい場合はHHHL AICから取り出すことになるわけだ。なお,HHHL AICのサイズは実測で56mm×169mm(※カードエッジコネクタおよび突起部を除く)。Low Profile対応となっており,交換用ブラケットも付属する
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SSD本体はネジ1本でHHHL AICから取り外せる(左)。HHHL AIC自体はよく見るとなかなか凝ったカードで,まず,PCIeリンクの+12Vから+3.3Vを生成するためのレギュレータを備えている(右)。PCIeリンクの+3.3Vは容量が小さいため,+12Vを使うことでM.2デバイスに安定した電源を供給する目的だろう。また,熱伝導性のシリコンゴムを使って,基板を広く覆うグランドパターンにSSDの熱を拡散させる工夫も見られる
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 冒頭で紹介したとおり,ラインナップは容量240GB,480GB,960GBの3つ。公開されている主なスペックは表1のとおりだが,逐次読み出し性能最大2700MB/sなど,NVMe/PCIe x4接続の最新モデルらしい数字が並んでいると言えるだろう。
 一般的に,大手メーカーのSSD製品はエントリーモデルで3年,ハイクラスモデルで5年という保証期間だが,KC1000も5年保証なので,その点は安心感が高い。

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SSD本体の表面はほぼ全面がシールに覆われている。シールの下にSSDコントローラがあるようだ
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 というわけで入手した容量480GBモデルだが,「剥がすと保証が切れる」とされる製品情報シールの下にSSDコントロ―ラを搭載しているようだ。
 Kingston Technologyは,KC1000の搭載するSSDコントローラが台湾Phison Electonics製の「PS5007-E7」であることを公表済みだが,このコントローラはすでにCorsairの「Force MP500」やZOTAC Internationalの「SONIX PCIE」といったNVMe/PCIe x4接続型SSDで採用実績がある。NVMe/PCIe x4時代のコントローラとしては割とポピュラーと言っていいのではなかろうか。

背面側はチップがむき出しで,KC1000の採用するNAND型フラッシュメモリとキャッシュメモリの型番を知ることができる
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 背面側を見ると,NAND型フラッシュメモリチップ4枚とDDR3L SDRAMメモリチップ1枚を確認できた。
 NAND型フラッシュメモリは東芝製の「TH58TFG9DFLBA8C」。15nmプロセス技術を用いて製造され,1枚あたり64GBの容量を持つ,MLC(Multi-Level Cell,メモリセルあたり2bitの情報を保存する形式※)タイプの製品だ。最近はいわゆる3D NANDを採用するSSD製品が増えてきているが,KC1000は採用実績の豊富な,“枯れた”フラッシュメモリを採用しているわけである。

 1枚あたりの容量が64GBなので,おそらくシールに隠れた表面にも4枚搭載し,チップレベルでの合計容量は512GBだろう。32GBを予備領域として確保することにより,公称容量480GBにしているのだと思われる。

※そもそもSSDが1セルに1bitの情報を保存する「SLC」(Single Level Cell)からスタートしたという歴史的経緯から,「1セルあたりに保存する情報量がSLCより多い」ためMLCと呼ばれる。字義だけで言えば1セルあたり3bitの情報を保存する形式も4bitの情報を保存する形式もMLCだが,SSDの世界ではこれらを順にTLC(Triple Level Cell),QLC(Quad Level Cell)と呼ぶので注意したい。

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 DDR3L SDRAMのほうはKingstonロゴ入りの「D2516EC4BXGGB」。もちろんキャッシュメモリ用だ。表面でシールと基板の間を覗き込んでみると,同一サイズのチップ側面を確認できるので,容量480GBモデルではD2516EC4BXGGBを合計2枚搭載することで,総容量1GBのキャッシュメモリとして構成している可能性が高い。


比較対象にはIntelのSSD 600pシリーズを用意


 製品概要を確認したところで,テストのセットアップに入りたい。
 今回,KC1000の比較対象としては,NVMe/PCIe x4接続のIntel製SSD「Intel Solid-State Drive 600p」から,容量512GBモデル(型番:SSDPEKKW512G7X1,以下 SSD 600p)を用意した。SSD 600pは4Gamerで初出となるため簡単に紹介しておくと,Intelの第1世代TLC 3D NAND型フラッシュメモリを採用したエントリー市場向けモデルである。Intelブランドかつ低価格ということから,NMVe/PCIe x4対応SSDとしては市場で人気がある製品だ。

 前述のとおりKC1000はハイスペック指向の製品なので,NVMe/PCIe x4接続型SSDのエントリーモデルと比べて何が違うのかチェックするということになる。

テストに使わなかったHHHL AICの背面側
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 テストに用いた機材は表2のとおり。ASUSTeK Computer製マザーボード「MAXIMUS IX FORMULA」は,PCIe x4接続のM.2スロット×1基を備えるので,今回はKC1000およびSSD 600pをマザーボード側のM.2スロットに接続してテストを実行することにした。
 KC1000に付属のHHHL AICは使っていないが,PCユーザーからすれば,M.2スロットに実装するほうが一般的な使い方となるであろうことから,このような対応を行った次第だ。

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 なお,KC1000とSSD 600pはいずれもシステムからDドライブとして設定し,各ベンチマークを行うことにした。今回は一部のベンチマークテストで負荷を高めに設定しているが,それは各テストのところで個別に触れたい。


定番ベンチマークではKC1000がSSD 600pの後塵を拝する結果に


 まずは定番の「CrystalDiskMark」(Version 5.2.2)だ。
 これまで4Gamerでは,一般的なPCユーザーが試みるであろうデフォルトの設定でCrystalDiskMarkを実行してきた。だが,SSDの大容量化にともないキャッシュサイズが拡大しているため,デフォルトのテストサイズ1GiBだと読み出し,書き込みのいずれにおいても多くのテストデータがキャッシュ内に収まってしまう可能性が高くなった。前述のとおり,本稿の主役であるKC1000も,キャッシュメモリ容量は1GBである可能性が高い。

 読み出しと書き込みのテストデータがキャッシュ内に収まると,インタフェースの性能が前面に出てしまい,SSDによる違いを確認しづらくなる。そこで今回は,大部分のSSDでキャッシュ内に収まらないであろう8GiBまでテストサイズを大きくすることにした。

CrystalDiskMarkの設定
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 もちろん,実際のユースケースにおいてはキャッシュの存在が快適さを大きく左右するわけだが,その「実際のユースケースにおける快適さ」は,後段で実行する「PCMark」から推定できる。そういう理由から,CrystalDiskMarkでは,キャッシュ容量を超えたところで,コントローラとNAND型フラッシュメモリの内部転送の性能を見てみることにしようというわけだ。
 具体的には,「テスト回数9回,テストサイズ8GiB,テストデータランダム,スレッド数1」に設定。この条件で,CrystalDiskMarkを5回実行して平均をスコアとして採用する。

 では結果を見ていきたい。
 グラフ1は,QD(Queue Depth,ストレージへ送るコマンドキューの深さ)=32条件における逐次読み出しおよび書き出しのスコアをまとめたものだ。テストサイズを8GiBに拡大したため,カタログどおりのスコアにはなっていないことが一目で分かるだろう。

 逐次読み出しはKC1000の約981.6MB/sに対しSSD 600pが約1000.7MB/s。SSD 600pが20MB/sほど高いが,ここはほぼ互角と言っていいのではないか。
 大きなスコア差がついたのは逐次書き込みのほうで,KC1000は約135.3MB/sしか得られなかったのに対し,SSD 600pは約447.2MB/sとなった。

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 比較対象のSSD 600pは,3D NANDの大容量を生かし,基板片面に4枚のNAND型フラッシュメモリしか実装していない。なので,複数チャネルのインタリーブアクセスといった点から,単純に考えれば逐次書き込み性能はKC1000のほうが有利になりそうなのだが,そうなっていないのはなぜか。その理由の1つとしては,フラッシュメモリの世代が考えられそうだ。
 前述のとおり,KC1000が搭載するTH58TFG9DFLBA8Cは“枯れた”製品で,初めてSSDに載った(のが確認された)のは2年前である。それに対してSSD 600pが採用するのは最新世代のTLC 3D NANDだ。当然,これだけ世代が違えば,フラッシュメモリ接続インタフェースにも違いがあると思われ,そのあたりがスコアとして出た可能性はある。

 また,もう1つ,書き込むとき同時に格納されるエラー訂正符号の計算にかかる負荷も原因としてはあり得る。
 TLCと比べるとMLCのほうがエラー訂正符号の計算負荷は低いというのが常識だが,それでも15nm世代のNAND型フラッシュメモリのエラー訂正はかなり厳しいそうだ。それに対して3D NANDは15nm世代の従来型NANDと比べると,電荷を蓄積する浮遊ゲートのサイズに余裕があり,いきおい,TLCでもエラー訂正負荷は低いと言われている。よって,この違いが出ている可能性はある。
 いずれにしても,逐次書き込みにおける「コントローラとNAND型フラッシュメモリ間」の性能はSSD 600pのほうが上と見るのが妥当そうだ。

 ちなみにこの性能差は,ランダムアクセスでもはっきり確認できる。
 グラフ2は4KiB単位のランダム読み出しと書き込みをやはりQD=32で実施したときのスコアだが,ここでは読み出しでKC1000の約217.6MB/sに対してSSD 600pは約392.0MB/s,書き込みはKC1000の約107.8MB/sに対しSSD 600pが約402.7MB/s。KC1000はSSD 600p比で半分強のスコアしか出せていない。

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 ここまではQueue Depth=32におけるスコアだったが,ではこれを1に変えたらどうなるかというと,傾向はそれほど変わらない。グラフ3が逐次アクセス,グラフ4がランダムアクセスの結果だが,逐次アクセスだとKC1000の不利がさらに顕著となる。ランダムアクセスだとKC1000が若干持ち直し,読み出しでSSD 600pを上回るが,少なくともここまでの結果を見る限り,エントリークラスのSSDに対するKC1000の優位性はないということになるだろう。

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 以上の結果は5回のスコアの平均だが,今回はストップウォッチを使い,約10分間隔でCrystalDiskMarkを5回実行する――合計50分――という方法を使って,ほぼ一定間隔でCrystalDiskMarkを実行してみている。前述のようにテストデータサイズを8GiBまで増やしていることもあり,テスト回数を重ねるたびにSSD内部のキャッシュフラッシュ動作や再配置動作の負荷が高まり顕著にスコアが落ちていく様子が観測できた。
 とくにQD=32の逐次アクセスで,試行ごとにスコアの大きな違いが見られるので,その結果も合わせてみておきたい。グラフ5,6が,QD=32の逐次アクセスのスコア推移だ。

 グラフ5は逐次読み出しのスコア変化をプロットしたもので,初回実行時にKC1000は1663MB/sの高スコアを叩き出すが,2回め以降は1000MB/sを下回り,徐々に下がって,5回めには654.6MB/sとなった。初回と5回めのスコア差が大きい。
 一方のSSD 600pは初回1148.8MB/sで,2回めもさほど変わらず。3回め以降はスコアが900MB/s程度まで低下する。最後は890.0MB/sだった。

 テスト最後の5回めはキャッシュが溢れ,常にキャッシュのフラッシュが起きる状態になっていると考えられる。よってスコアはSSDコントローラとフラッシュメモリとの間の読み出し速度がCrystalDiskMarkのスコアに現れている可能性が高い。つまり,KC1000で650MB/s程度,SSD 600pで890MB程度というのが,SSDコントローラとNANDフラッシュメモリ間の読み出し速度だろうと考えられるわけだ。

画像集 No.015のサムネイル画像 / KingstonのNVMe接続型SSD「KC1000」レビュー。その強みは体感速度と5年保証にあった

 逐次書き込みのスコア変化をプロットしたグラフ6だと,KC1000は初回が294.7MB/sで,2回め以降に大きく下がり,最後は81.5MB/sにまで落ちてしまう。
 一方のSSD 600pは初回から最後まで440〜450MB/s程度をキープしており,変化がとても少なかった。なのでSSD 600pはSSDコントローラからフラッシュメモリに書き込む速度自体がこれくらいあるのではないかと見ている。

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 以上のように,基礎検証的なテストの結果である「CrystalDiskMarkにおけるKC1000のスコア」は,全般的に芳しくない結果となった。テスト回数を重ねるごとに,とくに書き込み速度が落ちていく傾向が強く,それが平均のスコアにも大きな影響を与えていることが分かるかと思う。同様の傾向が他のテストでも見られるのかが気になるところだ。

 そこで,「Iometer」(Version 1.1.0)の結果も見ておくことにしよう。Iometerは,設定したアクセスパターンを使ってストレージに高い負荷をかけ,性能をテストするベンチマークで,I/O性能を確認できる機能を持っている。

 4GamerのSSDのテストではこれまで,4KB単位のランダム読み出しと書き込みを50%ずつ混在させたアクセスパターンを使用してきた。そのアクセスパターン自体は今回も変えないが,一方,テストを行うディスク領域のサイズを従来の1GBから4GBに拡大させている。理由は,CrystalDiskMarkと同じだ。
 また,テスト時間を1時間とし,スタート直後1分間のIOPS値と終了時1分間のIOPS値を比較することにもした。激しいディスクアクセスを1時間続けることにより,IOPSがどのくらい変化するか見ようというわけである。

Iometerの設定。「Maximum Disk Size」を「8388608 sectors」(=4GB)に変更した
画像集 No.027のサムネイル画像 / KingstonのNVMe接続型SSD「KC1000」レビュー。その強みは体感速度と5年保証にあった

 結果はグラフ7だ。総合スコアは1時間の平均IOPS値で,結果はKC1000が約10779 IOPS,SSD 600pが約18741 IOPSで,ここでもSSD 600pのほうが優秀という結果になった。
 ただし,SSD 600pはテスト開始1分間だと約44573 IOPSを叩き出すものの,1時間後のIOPS値は約10342まで下がってしまった。同様にKC1000も1時間後のIOPS値は半減し約10238で終わっている。少なくとも,連続ディスクアクセス1時間後のI/O性能は,両者で大きな違いはないと言ったほうがいいだろう。

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 以上,ここまでの基礎テストでKC1000の「いいところ」を探すのは難しいが,ここまではあくまでも基礎テストだ。前述のとおり,総合的な「SSDの快適さ」は,キャッシュを含めた総合的な性能で決まる
 そこで,より現実のPCユーザーの使い方に即したディスクアクセスパターンを再現するテストとして,PCMark 8における「Expanded Storage」の結果を見ていくことにしたい。


Expanded Storageでは上位モデルらしいスコアを見せるKC1000


 PCMark 8のExpanded Storageについては,「HyperX Savage Solid-State Drive」のレビュー記事で詳しく説明している。初見の人は,そちらも参照してもらえればと思うが,簡単に概要を説明しておくと,「Consistency test v2」と「Adaptivity test」という2つのテストからなるベンチマークである。

 Consistency test v2では,テスト対象のストレージに大量のランダムデータを書き込み,SSD内部の再配置が起こりやすい状況を作ったうえでPCMark 8の「Storage test」を実行する「Degradation pass」(劣化フェーズ)を,ランダムデータを増やしながら8回実行し,続けて一定量のランダムデータを書き込んだうえでやはりStorage testを実行する「Steady state pass」(安定化フェーズ)を5回,最後に,適切なインターバルを置くことでSSDの性能を回復させていく「Recovery phase」(修復フェーズ)を5回実行するテストだ。

 一方,Adaptivity testでは,適切なインターバルを置くRecovery phase相当を合計10回繰り返すことで,ストレージにとっての好環境におけるPCMark 8の正確なスコアを求めるテストとなっている。

 本稿ではまず,Consistency test v2の結果を見ていくことにするが,グラフ8は,Consistency test v2におけるStorage testの平均帯域幅変化をプロットしたものだ。一般的にDegradation passでは徐々に性能が劣化していき,Steady state passで劣化が最大となり,Recovery phaseに入ると徐々に性能が戻るというパターンを示す。

 結果を見ると,KC1000はDegradation passの初回(Degradation pass 1)で平均帯域幅が100MB/sにまで落ち込むが,Degradation pass 2以降で早くも回復を見せ,Steady state passまで約210MB/s〜240MB/sをキープしてみせた。これはなかなか優秀だ。
 また,Recovery phaseに移るとしっかりと帯域幅が回復し,350MB/sを超えるスコアを見せている。

 対するSSD 600pはDegradation pass 1では174.5MB/sを示すものの,劣化が進むDegradation pass 2以降は大幅に平均帯域幅が落ち込み,50MB/sを切ってしまった。以降,徐々に回復傾向を見せるものの,Steady state passまで50MB/s前後とかなり厳しい結果となっている。
 ただ,Recovery phase以降の回復は急激で,Recovery phase 2で完全に帯域幅は回復。約345MB/sと,KC1000と遜色のないスコアを示した。

※グラフ画像をクリックすると,数値入りの完全版を表示します
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 こうして見ると,実使用環境における連続使用時の性能低下量はKC1000のほうが圧倒的に小さくて済むようだ。CrystalDiskMarkやIometerの結果とは真逆と思えるかもしれないが,実使用環境ではキャッシュを含めた総合性能が効いてくる。
 PCMark 8におけるStorage testのワークロードはキャッシュに収まるディスクアクセスパターンが多いので,CrystalDiskMarkやIometerの結果と異なっていても不思議ではない。

 続いて,体感性能がどの程度劣化するのかの目安を知るため,PCMark 8のワークロードに含まれる「Photoshop heavy」(※「Photoshop」を使った,負荷の高い処理)における平均ストレージアクセス時間の変化をを見ていこう。グラフ9は読み出し時の平均ストレージアクセス時間をプロットしたもので,縦軸はms(ミリ秒)だ。

 KC1000は,初回のDegradation pass 1こそで0.45msながら,それDegradation pass 2以降は0.3ms台で安定しており,読み出し時のアクセス時間に悪化はほとんどない。
 対してSSD 600pだと,Degradation pass 1こそ0.74msながら,Degradation pass 2以降は大幅に悪化し,ワーストケースでは7ms秒台になってしまった。Recovery Phase以降で0.31msまで一気に回復するものの,劣化時のアクセス時間はかなり大きく,ユーザーの使い勝手にも悪影響を与えるレベルと言える。

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 Photoshop heavyを使って,書き込み時の平均アクセス時間をプロットしたものがグラフ10となる。
 KC1000はDegradation pass 1で22ms秒というスコアを示すものの,Degradation pass 2以降は落ち着き,1.7ms秒台で推移。一方のSSD 600pはDegradation pass 1だと5ms秒台ながら,Degradation pass 2以降はワーストケースで50ms秒台と,HDD並のアクセス時間を記録してしまった。使っていても劣化がはっきりと体感できるレベルだ。

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 グラフ11は,Consistensy test v2で実行される合計18回のStorage testから,最も高いスコアと最も低いスコアを抜き出してグラフ化したものだが,ベストスコアは大差ない一方,ワーストスコアではKC1000の4390に対してSSD 600pは3555まで落ち込んでいるのが印象的だ。KC1000は,高負荷環境や連続使用環境でも性能の劣化を抑えて踏みとどまることができるわけである。

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 最後にAdaptivity testの結果もまとめておこう。グラフ12はAdaptivity testで実行されたStorage test合計10回のスコア平均,グラフ13は平均帯域幅をそれぞれまとめたものだ。
 どちらも「良好な環境でPCMark 8のStorage testを実行するとこの程度のスコアが出る」という目安になるが,総合スコアに大差はないものの,平均帯域幅ではKC1000がやや上回る結果となった。

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「体感レベルで速く,5年保証」がKC1000の強み


製品ボックス
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 PCMark 8のExpanded Storageからして,KC1000は実使用環境における快適性の確保へ重点を置いた製品だと結論付けることができるだろう。少なくともエントリークラスのNVMe/PCIe x4接続型SSDと比べると,1クラス上の性能を期待できることは間違いない。
 気になるKC1000の実勢価格は,今回テストしたSKC1000H/480Gで3万7000円前後(※2017年10月2日現在)。しっかりしたHHHL AICが付属してこの価格である。

 一方,NVMe/PCIe x4接続かつ容量480〜512GBクラスのSSDで売れ筋を見ていくと,今回比較対象としたSSD 600pが2万3500〜2万4000円程度(※2017年10月2日現在),Samsung Electronicsの「SSD 960 EVO」(型番:MZ-V6E500B/IT)が3万1000〜3万2500円程度(※2017年10月2日現在)となっている。
 SSD 960 EVOは4Gamerでレビュー済みだが,性能はKC1000とおおむね比肩するレベルながら,あちらは搭載するNAND型フラッシュメモリがTLCということもあり保証期間が3年だ。HHHL AICが付属して,しかも5年保証というのが,競合製品と比べた場合に,KC1000の持つ強みということになりそうである。

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KingstonのSSD製品情報ページ

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