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[GDC 2014]メガネ型拡張現実HMD「Google Glass」対応ゲームで“やってはいけないこと”。注意すべきポイントをGoogleが解説
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印刷2014/03/20 17:01

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[GDC 2014]メガネ型拡張現実HMD「Google Glass」対応ゲームで“やってはいけないこと”。注意すべきポイントをGoogleが解説

 「Game Developers Conference 2014」(以下,GDC 2014)2日目となる北米時間2014年3月18日,Googleは毎年恒例となった「Google Developer Day」を開催した。これはGoogleが主催する開発者向けのサブイベントで,その講演内容はゲームに直接関連したものからそうともいえないものまで,実に多彩だ。

Timothy Jordan氏(Senior Developer Advocate at Google Glass Project,Google)
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 今回はそんなGoogle Developer Dayから,Google製のヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)「Google Glass」に関する講演「Okay Glass,Play a Game」をレポートしよう。
 本セッションを担当したのは,Timothy Jordan(ティモシー・ジョーダン)氏。Jordan氏は,Google Glassに関する開発者向けセッションをほぼ一手に引き受けているという,いわばGoogle Glassの顔といった人物だ。

 なお,半ば余談気味に述べておくと,講演タイトルにある「Okay Glass」とは,Google Glassを音声で操作するときに口にする,音声コマンドのスタートを示す決まり文句である。


RiftやProject Morpheusとは方向性が異なるGoogle Glass


 講演の解説に入る前に,Google Glassとは何かについて,簡単に説明しておこう。Google Glassは,Googleの先端研究を担う「Google X Lab」が開発しているHMDだ。
 HMDといえば,720p解像度の有機ELパネルを2枚搭載するソニーのHMZシリーズ,Oculus VRが開発中の「Rift」を思い浮かべる人も多いだろう。
 さらにGDC 2014では,Sony Computer Entertainmentが開発中のPlayStation 4用のHMD「Project Morpheus」を発表しており,いまやHMDは,GDC 2014の主要テーマといっても過言ではないほどの注目を集めている。

 HMZシリーズやRiftは,ゴーグル型の筐体で装着者の視野を覆い,スクリーンだけを見せるという,いわば没入型のHMDである。外界を遮断してゲームやビデオ映像に没頭するための機器,といっていいだろう。
 それに対してGoogle Glassは,装着者が見ている現実の風景に,情報を重ねて表示するシースルー型のHMDである。

Google Glass。見た目は変なデバイスのついた眼鏡で,装着方法も眼鏡と変わらない
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 その外観は“右目側に特殊なデバイスが取り付けられたメガネ”で,装着もメガネのようにかけるだけという手軽なものだ。このデバイスには,目の前に配置される小さな透過型スクリーンがあり,ここに映像を映し出すことで,あたかもマルチウインドウのように,視野の“上”へ情報を重ねて見ることができる。
 現実の風景に情報を重ねて見るという特徴から,どちらかといえばゲームよりも,実用面での応用が期待されているデバイスだ。

 Googleは現在,Google Glassの開発者向けキット「Glass Development Kit(GDK) Sneak Peek」を米国限定で販売し,ソフトウェア開発者に向けて積極的なアピールを行っている。北米在住なら一般ユーザーも購入できるが,価格は1500ドルもするので,気軽に買って試せるようなモノではない。

 さて,GDC 2014でGoogle Glassの講演をすると聞けば,やはり現実の風景を利用した「拡張現実」(Augmented reality,AR)的なゲームを多数披露して,来場者に「さあ,こういったゲームを作ってください」といったテーマになるのかなと,講演が始まるまで筆者は考えていた。
 だが,実際の講演はゲームへの応用事例を紹介するといったものではなく,むしろもっと基本的な,Google Glass向けアプリケーション開発の注意点を解説するものだった。シースルー型HMDに触れたことのある開発者など現状ではほとんどいないのだから,「何をすべきで,何をすべきでないか」のノウハウは,これから蓄積していくしかない。Jordan氏の講演は,それを説明するものだったわけだ。


Google Glass向けアプリで「やってはいけない」4つのポイント


 Jordan氏は講演のなかで,Google Glass向けアプリケーションでやってはいけないことを4つ挙げていた。それを順に追っていこうと思うが,1つめは,「妨げない」ことである。
 Google Glassは風景と重ねて情報を表示するので,視界を遮るような表示はご法度というわけだ。ゲームと言えば画面全体を使うのが常識ということもあり,Jordan氏は「ゲーム開発において,『妨げない』というのは非常に大きなチャレンジになる」と述べていたが,確かにそのとおりだろう。

「妨げない」の説明でJordan氏が挙げたGoogle Glassアプリケーションの例。写真右上に見えているのが,アプリケーションが表示した「Wikipedia」で,視界を妨げないように小さく表示されているのが分かる
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Google Glassは“今”の事象を扱うデバイスであり,クラウドやノートPC,スマートフォンとはパラダイムが異なると,Jordan氏はいう
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 2つめは,「『今』と関連していないものを扱わない」ことだ。「クラウドは永久,ノートPCは1年以内,スマートフォンは1か月以内のできごとを扱うのに対して,Google Glassは今現在を扱うデバイス」(Jordan氏)であるから,ユーザーが今いる場所や時間,今見ているもの,今していることといった,「現在」と関連するものを扱うべきということである。

 3つめは「予期しない表示を避ける」ということ。要は,ユーザーを驚かせるべからず,というわけである。
 たとえば,深夜に突然「キャベツが25セント引き!」なんて広告が出たら,誰でも驚くし,不快に思うだろう。こういうことはするなというわけだ。しかしJordan氏は,「これもゲームにとっては若干の成約になる」と指摘している。ユーザーの感情を揺さぶるゲームにとっては,ある意味では難しい制約かもしれない。

「予期しない表示」の悪い例。「キャベツが25セント引き!」なんて広告がいきなり出たら,たしかに誰でも驚く。こういうことはするなとJordan氏は述べる
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Google Glass向けアプリケーションは,「人のために作りましょう」というスライド。技術的な理由による制約を設けるのは望ましくない
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 4つめの注意点は,「機械のためにデザインするな」である。
 Jordan氏が悪例として挙げたのは,誰もが見慣れたQWERTYキーボードだ。「QWERTY配列は,タイプライター時代の機械的な都合で,遅く打つように配列が決められた」とJordan氏は述べる。つまり,「人のため」ではなく,機械の都合によるデザインというわけだ。
 Jordan氏の挙げた事例には異なる見解もあるのだが,ともかくGoogle Glass向けアプリケーションを開発するときには,開発者側の事情によるデザインの制約を作るべきではない,というところだろうか。


Google Glassにおけるゲームのお作法


 一般的な注意点に続いて,Jordan氏はGoogle Glass向けゲームを作るときに注意すべき点,いうなれば「ゲームのお作法」について説明を行った。
 氏によれば,Google Glassは「タッチパッドとマイク,音声による操作,位置情報サービス,高音質のサウンド機能が組み込まれた非常に強力なデバイス」であるが,それらをゲームで使うには,いろいろと注意点があるという。ただし,氏が挙げたのは技術的な側面――たとえばAPIの使い方――ではなく,開発者やデザイナーに対する心構えといったものだった。

Google GlassのUIは,時間的に前後するように設計するのは好ましくないという
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 たとえば,「Google Glassのユーザーインタフェースモデルは,基本的にタイムベースである」というものだ。先に挙げた「現在と関連性を持たせること」とも重なる話だが,Google Glassは実世界に情報をオーバーラップさせて表示するデバイスであるゆえに,時間的に前後するようなユーザーインタフェース(以下,UI)は好ましくないのだそうだ。
 「時間的に前後するUI」といわれても,今ひとつ理解しにくいかもしれないが,要は「古くなった情報をいつまでも表示し続けない」といったことらしい。

 意外な注意点だったのが,「モバイルの体験をGoogle Glassに持ち込もうとしてはいけない」という点だ。Google Glassはモバイルデバイスなので,既存のモバイルゲームを移植しようというのはありがちな発想だろうが,それは望ましくないとJordan氏は述べている。
 理由は明確で,モバイル機器向けのUIはGoogle Glassにとって情報が多すぎるから。これはサンプルとして提示されたスライドを見ると一目瞭然だろう。

Jordan氏が例示した,Google Glassには適さないモバイルUIの例。たしかにこれでは情報が多すぎる
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 また,「情報の表示は,できるだけ簡潔にまとめるべき」であるという注意点も示された。
 Google Glassでの情報表示を複雑にすると,ユーザーがそれを認識するだけでも時間がかかる。そしてその場合,せっかくのリアルタイムな情報が「過去のできごとになってしまう」(Jordan氏)。“今”を扱うGoogle Glassにとっては,リアルタイムの情報表示が重要であり,そのためには簡潔にまとめるべきであるというのが,Jordan氏の主張であるわけだ。

歩数計アプリを例としたスライド。左はグラフィカルで見栄えがよく見えるが,情報があちこち分散しているため,ユーザーがそれらを認識するために,1840msもかかる。右のように表示を単純化すれば,ユーザーは半分の920msで情報を理解できるという
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 いかにもGoogle Glassらしい注意点の1つが,「Google Glassのゲームは,必ずアウトドアで試すべきである」というものだ。
 Google Glassに表示される映像は,インドアとアウトドアでコントラストが変わる。ゲーム開発というのはインドアな作業であり,動作検証もインドアで行うのが当たり前と考えられているが,Google Glassのユーザーはアウトドアでもアプリケーションを使おうとするだろう。それゆえに,インドアだけでデザインや動作を検証していては,使いやすいアプリケーションにはならないというわけだ。

Google Glassのアプリケーションは,インドアだけでなくアウトドアでの使用も検証すべきだという。スライドは,中央の写真を表示するアプリケーションの例だが,左のインドアと右のアウトドアで,見え方がまるで違ってしまっている。こうはならないようにしましょう,ということだ
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 「ヘッドジェスチャーの使い方には注意すべし」というのも,Google Glassならではの注意点だろう。
 Google Glassは内蔵する加速度センサーを使い,ユーザーが頭をどう動かしたかを認識して,それをジェスチャー操作に使う機能がある。これをヘッドジェスチャーと呼ぶのだが,「異なる環境,異なる場所でも機能するようにチェックしたほうがいい」と,Jordan氏は注意を呼びかけている。

ジョギングをイメージしたアプリケーションでは,右上に元気づけるかのようなサムアップのアイコンが示されている。こうしたデザインが望ましいとJordan氏は語る
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 そのほかにJordan氏は,「シンプルに感情に訴えかけるデザインを心がけよう」とも語っていた。複雑な表示を避けつつ,シンプルで心に訴えかけるようなデザインが,Google Glassのアプリケーションでは望ましいというのだ。
 サンプルとして示されたスライドは,たしかに一瞬で「今はポジティブな状況である」とイメージできる。こうした心で分かるデザインを心がけてほしいと,Jordan氏は訴えかけているわけだ。


社会に受け入れられるGoogle Glass用ゲームを目指して


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 Jordan氏が講演の最後に示したポイントは,「Include others in the fun」というものだ。これはどういう意味だろう?
 具体例が示されなかったので,氏がどのようなアプリケーションをイメージしていたのかはよく分からないのだが,スライドではGoogle Glassを装着した女性を中心に,Google Glassを使っていない人々も一緒になって,何かを楽しんでいるような光景が示されていた。つまりJordan氏は,「Google Glassを使っていない他の人(others)も,一緒に楽しめるようにしましょう」と訴えているのだ。

 HMDは装着者自身にしか画面が見えないので,HMD用のゲームはどうしても,装着者自身しか楽しめないものになりがちだ。だが,個室でのプレイならともかく,他の人もいるところでHMDを使って自分だけのゲームに没頭しているのは,あまりいい印象を持たれないかもしれない。だから,使っていない人とも一緒に楽しめるようなゲームを開発してほしい……。Jordan氏は来場したゲーム開発者にそう訴えたかったのだと,筆者は理解した。
 現状のGoogle Glassは,プライバシー保護や安全性の面で社会から懐疑的,あるいは警戒的な目を向けられている面がある。他者を阻害しない使い方を模索してほしいというのは,Jordan氏に限らず,Google全体の希望なのかもしれない。

Google Glass 公式Webサイト(英語)

GDC 2014公式Webサイト(英語)


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