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[TGS 2013]PlayStation 4が創り出すゲームの新しい楽しさをSCEのキーマンがアピール。TGS 2013基調講演【第一部】レポート
SCEが,欧米でこの年末に投入する新ハード(日本での発売は2014年),PlayStation 4(以下,PS4)の詳細スペックや専用タイトル,そしてその可能性と最新情報についてのプレゼンテーションだ。本稿ではその模様をお届けしていこう。
ハウス氏は,最初に近年における顧客の視点から,三つのトレンドをピックアップした。まずは家庭用ゲーム機=コアゲーマー向けという方向性で,最先端のゲーム体験を求める人が現在も増えているとコメントする。「コール オブ デューティ ブラックオプスII」「グランド・セフト・オートV」などの大ヒットを例に挙げ,「これらをニッチなマーケートとは言えない」と言い切った。しかし,それと同事に,こういったPCゲーム並みのコアゲームをプレイできる最新の家庭用ゲーム機を「ゲーム専用機」と呼ぶのはもはやナンセンスであり,「優れたUIを持つ多機能な総合的なエンタテインメント機器」と呼ぶことを提唱したいとも述べている。
次に挙げられたのは,タブレットやスマホの普及による新しいゲームの市場拡大である。「常につながっている状態を好む」ソーシャル性がトレンドの一つだという。
そしてフリープレイゲームやDLC販売の増加などのデジタル化で発生した,購入行動の変化をトレンドを三つめに挙げている。
これらを踏まえて,では,次世代ゲーム機に求められる方向性はいったいなんなのか? ハウス氏は,最先端のゲームを求めるプレイヤーを大切にする一方,家庭用ゲーム機が家庭のリビングルームの中心に置かれるために,ほかのデバイスより優れたUIで積極的にネットワークコンテンツを提供し,さらにあらゆるジャンルのゲームでのソーシャル機能を一層強化する必要があると述べ,そういった観点に立って開発されたのがPlayStation 4なのだと説明した。
氏は,PS4では,最高水準のゲーム体験ができる以外にも,誰もがつながれる世の中だからこそ実現可能な体験を届けるための,二つの新しいアプローチを取っていると語る。一つは「スマートフォンやタブレットから,いつでもゲームに触れられる」という要素。もう一つは,「今までにない方法で,プレイヤー同士がゲームを通じてつながる」という要素だ。この二つのアプローチを実現するために「consumer focused,developer inspired」という言葉を掲げ,開発者向けに強力な開発ツールを用意するともしている。
さらに氏は,現在のゲーム開発は二極化が進んでいるとし,開発費の高騰と開発体制の大規模化の一方で,モバイル市場の拡大における小規模開発が躍進していると指摘した。これを映画業界にたとえ,ハリウッドの大作から,新人タレントを起用して低予算ながら魅力的なインディーズ作品が増えていくような多様性が出てきていると語る。そのような背景において,SCEがPS4の大事な目標として掲げているのが「開発のしやすさ」という点だ。
また,これらを見越したフレキシブルなビジネスモデルを提供し,小さな開発チームへの開発支援や,自社でのリリースを可能としたPSN上での販売,あるいはフリー・トゥ・プレイへの環境を作っていくなど,PS4でゲームを開発・提供しやすい環境を整えていくことを約束した。これらの施策によって,今年6月のE3時点での約500社の参入表明があり,現在では620社までに拡大しているそうである。
「コアプレイヤーの期待に応える」という,PlayStationのDNAを受け継ぎつつ,「発売日からすぐに接続でき,優れたUIを持つネットワークサービスの充実」により新たなプレイヤーを獲得し,そこから発展する「家族や友達とテレビの前に集まって楽しむ『Shared Experience』の強化」,そしてPSNを通して「ゲームでつながるソーシャルな体験」を積極的に取り入れるという,この四つの柱をベースに,PS4で新しいプレイヤーの体験を提供していくと,ハウス氏は宣言した。そして,PS4は,「今年度全世界で500万台の販売を見込んでいる」ことを付け加えると,会場からは拍手が上がった。
伊藤氏は過去にPS2,PSP,PS3の開発に携わった経験をもとに,このPS4の開発に際しては「ユーザーフレンドリー」と「デベロッパーフレンドリー」という二つのポイントを重要項目として挙げている。
前者のユーザーフレンドリーとは,手に取りやすい価格と,近年のライフスタイルに合わせたゲームプレイの提供であり,とくにライフスタイルについては,PS4の開発当初から世のゲームを取り巻く事情が大きく変わったことを挙げ,「腰を落ち着かせて遊ぶタイプのゲームよりも,より手軽なものが好まれる」という,現在の流れの中,PS4をいったいどう位置づけるかが,社内でもさんざん議論されていたそうだ。そこで出た答えが,PlayStationのDNAである「没入感のあるゲーム体験」を引き続き大事にしていくということだった。
そして後者のデベロッパーフレンドリーについては,「とにかく開発のしやすい環境を追求した」と話す。そのためにリード・システム・アーキテクトとして,世界的に著名なゲームクリエイターの,マーク・サーニー氏を招聘している。ハードウェアにも精通したサーニー氏は,ゲーム制作者が必要としていることを,どうハードウェアに落とし込めばいいか伊藤氏らに指南してくれたそうだ。
さらにサーニー氏の持つネットワークにより,世界中の優れた制作チームと協力して,そのシステムの妥当性を確認しながら開発を進めたという。その答えとして,PCアーキテクチャの採用と,プレイヤーが求めやすい価格に抑えるために既存のCPU・GPUをベースとしたチップを採用するという結論に達したと語っていた。
また,開発者の声を反映させた代表的なエピソードとして挙げたのが,PS4のメインメモリ容量だ。当初はメインメモリ容量4GBを予定していたが,「没入感のあるゲームを作るためにはもっとメモリが必要だ」という多くの開発者の声を受け,急遽,倍となる8GBへのメモリ増量を決断したそうだ。さらに,転送速度の速いGDDR5 SDRAMを採用したことで,およそ176GB/sというバンド幅でのGPUの使用を可能とし,表現力豊かなゲームが効率的に開発できるようになったという。
このように,ゲーム開発がしやすい「クリエイターによる,クリエイターのためのPS4」が完成した結果,さまざまなゲームがPS4でリリースされることで,「プレイヤーもハッピーになれる」ということも見越した仕様だとも説明した。
インディーズゲームの「制作するうえでの自由」「いつでも好きなときに発売できる自由」「どのプラットフォームでも自由に提供できる」という部分を尊重し,そこからPSプラットフォーム上に作品が輩出されていくことを,いち開発者として非常に嬉しく思うともコメントしている。
続いて,PS4で提供される予定のインディーズゲームのPVの上映と,PS4に採用されたコントローラのDUALSHOCK 4の仕様ついての解説がされたのち,話はPS4を使ってプレイヤーはどんな体験ができるかという内容へと移る。
また「IMMEDIATE」では,ダウンロードゲームのスタート時などで,遊ぶ前のストレスを解消するために,PS4のスタンバイ中にダウンロードを完了するような仕様を採用している。また,一部のコンテンツについては,ダウンロードが終了する前に,そのコンテンツをプレイできるような機能も搭載しているそうだ。
PS4では,匿名だったPSNのIDに対して,よりフレンドとの交流を深めるために実名での登録を採用している。伊藤氏は,実名制を採用した最も大きな理由として,ライトプレイヤーがオンラインプレイにをするにあたって足かせとなっていた匿名相手とのやりとりを,実名の採用によって敷居を下げ,リクエスト承認に対する安心感を上げるためだと説明した(なお,PSNのIDは実名登録が必要だが,ゲームで公開するかどうかを選択できる)。
このようにPS4はハード本体の進化だけでなく,いかにプレイヤーのライフスタイルに合わせて使ってもらうかということに力点を置いて開発を行い,発売後もニーズに合わせて機能を追加して進化させきたとし,期待以上の体験を提供すると伊藤氏は力説した。
AndroidないしiOS採用のモバイル端末上で,このPlayStation Appを立ち上げると,PS4との機器連携が可能となり,プレイヤーは出先からもPSNに参加できるようになる。
ソニーの最新機種であるXperia Z1を手にした吉田氏は,フレンドのアクティビティを知るための「What's New」や,PlayStationのオフィシャル情報を見られる「トピックス」のほか,スマホやタブレットをPS4のコントローラとして使う「Connect to PS4」などの機能を紹介した。このアプリでは,PS4をモバイル端末で操作するだけでなく,モバイル端末をPS4上で動いているゲームを実行するためのセカンドスクリーン化する機能も持ち合わせているという。
PS4にプリインストールされている「プレイルーム」では,画面に映ったたくさんのロボットがPlayStation Cameraを通して映った吉田氏の動きに反応したり,スマホ上で描いた絵にロボット達が集まってくるなど,ゲームの新しい可能性が見えるデモンストレーションが披露された。なお,ソフトによって専用のアプリが用意されることもあるが,基本的にはPlayStation Appだけで,PS4と連携して遊べるようにするとのことだ。
続いて,先日発表されたばかりのPS Vita TVを使ったリモートプレイも実演された。リビングのPS4でゲーム遊んでいたときに,テレビを見たい家族がやってきた場合,PS Vita TVのある部屋に移動すれば,それを経由してPS4を遠隔操作できるのだ。具体的には,PS Vita TVのメニュー画面をDUALSHOCK 4を使って操作し,「PS4リンク」というアプリから,家庭内ネットワークやインターネットを通じて機器登録をしたPS4に接続することで,別の場所でPS4のゲームを快適にプレイできるようになるのである。なお,リモートプレイでは,カメラや音声を除いて,PS4の基本的な機能はすべて操作できるそうである。
最後に伊藤氏は,「我々のさまざまな取り組みを通して,SCEがゲーム業界の一員として,今後も業界のさらなる発展に少しでも貢献できるように考えております。ゲーム業界の環境が変わっていくなか,SCEとしてはPlayStationが提供する新しいエンターテインメントの世界をどのような形で皆様に提供していくか,またその環境をどのようにして構築していくかが我々に課されたチャレンジです。PS4で実現する楽しい世界を,皆様と一緒に作っていきたいと思います」とコメントし,基調講演は終了となった。
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