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印刷2014/06/26 18:07

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Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表

Google I/O基調講演では,非常に多くのプラットフォームや取り組みが発表された。写真は100ドル以下で販売される新興国向けスマートフォン「Android One」の一例だ
画像集#002のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表
 北米時間2014年6月25日,Googleは,サンフランシスコで開発者向けイベント「Google I/O 2014」を開催した。同日に行われた基調講演では,次期Android OSである「Android L」をはじめとして,非常に多くの発表が行われている。基調講演で発表された新しいプラットフォームや技術をで列挙してみたが,これほど多くの内容が一度に発表されるというのは異例といっても過言ではない。

表 Google I/O基調講演で発表された主なソリューション(順不同)
Android L 次期Android OS
Android Wear スマートウォッチなど,ウェアラブル端末向けプラットフォーム
Android Auto 車載デジタル機器向けプラットフォーム
Android TV テレビに内蔵,または接続して使うAndroidプラットフォーム
Google Fit 健康管理ソリューション向けプラットフォーム
Android One 新興国向けに100ドル以下のAndroidスマートフォンを提供するプログラム

 また,Chrome OSベースのPC「Chromebook」や,テレビに接続して使うメディアストリーミング用端末「Chromecast」といった,既存製品の新機能なども発表されている。
 本稿では,多岐にわたる基調講演の中から,4Gamer読者の関心を集めそうなAndroid Lと,Android TVに関する話題をレポートしたい。


フラットデザイン風の「Material Design」を採用する

次期Android OS「Android L」


画像集#003のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表
 まずは次期Android OSであるAndroid L(アンドロイド エル)の話題から。もちろんこれは正式名称ではなく,ある種のコードネームであり,講演の中では単に「L」とだけ呼ばれることもあった。Android 4.4の開発コードネームが「KitKat」なので,「K」に続くアルファベットという点は従来どおりなのだが,“お菓子の名前”路線を今後も継続するのかは,まだ分からない。

 Android Lは現在開発段階にあり,米国時間6月26日に開発者向けのプレビュー版が公開されるという。正式版の公開時期は明言されていない。Android OSのメジャーバージョンアップとして大きな改良が導入されるため,早めにプレビュー版を公開することで,ハードウェアとソフトウェアの開発者に対応時間を十分に与えようということらしい。

Android Lでは,シンプルで平板なオブジェクトを重ねて,アプリケーションの画面を構成する
画像集#004のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表
 さて,そのAndroid Lで一番大きな変更点は,OSのユーザーインタフェース(以下,UI)が,「Material Design」というコンセプトに基づいたものに変更されることだ。見た目は,Windows 8.xやiOS 7で導入された「フラットデザイン」に似ており,シンプルかつ平板なオブジェクトに,奥行きや影,アニメーションなどを組み合わせて表現するというものだ。
 Android Lでは,オブジェクト同士の重なり具合を影で表現したり,アニメーションでオブジェクトの移動を表現したり,オブジェクトをタッチすると波打つアニメーションが表示されたりといった表現が導入される。こうした表現により,オブジェクトがいきなり画面に現れたり消えたりすることを減らして,ユーザーが戸惑ったりしないようにするのがMaterial Designの目的というわけだ。

 新しい「電話」アプリケーションを例に説明してみよう。Android Lの電話アプリケーションでは,画面下側にあったメニューバーはなくなり,画面上にフローティング表示される丸いボタン(※アイコンデザインはAndroid 4.4と同じ)をスライドさせて,アドレス帳とダイヤルパッドを切り替える仕組みになっている。動きを見ると,アドレス帳やダイヤルパッドというオブジェクトの上に,ボタンのオブジェクトが重ねて表示されているイメージだ。

画像集#006のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表 画像集#005のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表
電話アプリケーションのデモから。左写真はアドレス帳で,アプリケーションの右下に水色の丸ボタンがある。これを指で左にスライドさせると,右写真のダイヤルパッドに画面が切り替わる。画面が切り替わる最中にはアニメーションが挿入され,いきなり切り替わるのではなく,画面が遷移したことを視覚的に示してくれる

 また,アプリケーションの画面下に表示されているナビゲーション領域のデザインも大きく変わり,[戻る]ボタンは左向きの三角形,[ホーム]ボタンは丸,[最近使ったアプリ]ボタンは四角といった,単純な図形に変更された。Android 4.4の画面とAndroid Lの画面を並べて比較した画像を掲載しておこう。全体のイメージが極端に変わったわけではないが,今までのAndroidに慣れ親しんだ人は,初めは少し面食らうかもしれない。

Android 4.4のGMail(左)とAndroid LのGMail(右)。ヘッダ部分のデザインがシンプルになり,メニューがなくなった。右下にある赤いメール作成ボタンはフローティングボタンである
画像集#007のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表

Android L版GMailをタブレットで表示すると,このようなデザインに変わる
画像集#008のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表

 なお,Material DesignのUIは,スマートフォンやタブレットといった従来型のデバイスだけでなく,腕時計から大画面テレビまで,さまざまな大きさや解像度を持つ製品に対応できる仕組みも用意されるという。冒頭ので列挙した,Android WearやAndroid Autoなどでの利用も想定しているようだ。

 Android LのUIで大きく変わったものの1つが,通知のシステムだ。ロック画面などの上に,さまざまなアプリケーションによる短冊状の通知カードが並べて表示されるようになった。通知カードがたくさんある場合は,上下にスクロールさせて確認できるし,不要なカードは右にスワイプして削除できる。Android 4.xの通知画面と同じように,画面下から上に向かってスワイプすることで,通知をまとめて消してアプリケーションに戻ることも可能だ。

画像集#009のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表
着信やメール,メッセージといった通知が,短冊のようなカードとして表示されるようになる。カードをタップすると,該当するアプリケーションに切り替わって通知を処理できるのは今までどおり
画像集#010のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表
通知はリアルタイムに行われる。これは,ゲーム中に通知が来た場合のデモで,通知カードを右にスワイプすれば,何もアクションをとらずに消すことができる


アプリケーションの実行システムが「ART」に変更

パフォーマンスの向上を実現


 Android Lでは,OS内部にもさまざまな改良点が施されている。とくにエンドユーザーにとってメリットがありそうなのが,アプリケーション実行環境(JavaVM)が,既存の「Dalvik」から,「ART」(Android Run Time)に切り替わることだ。
 Dalvikでは,アプリケーションを実行する直前に,Javaコードを機械語(※CPUが処理できるバイナリコード)に変換する「JIT」(Just In Time)コンパイラという仕組みを採用していた。これに対してARTでは,アプリケーションのインストール時に変換してしまう仕組みとなっているので,アプリケーションを起動してから実行が始まるまでのタイムラグが短縮されるわけだ。
 また,アプリケーションのインストール時に多少時間をかけて変換することで,プログラム自体の実行効率を高められるという利点もある。

同じベンチマークアプリケーションをARTとDalvikで実行した場合の処理性能を比較したグラフ。従来のDalvikに比べて,ARTのほうが高い性能を出せるとGoogleは主張している
画像集#011のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表

 実のところ,ART自体はAndroid Lで初めて導入される機能というわけではない。Android 4.4.2からすでに導入されていたものだ。ただし,現在はユーザーが「開発者用オプション」を使って切り替えない限り,既存のDalvikを使うようになっているので,ユーザーがその恩恵を受ける機会が事実上なかったのである。
 ARTはDalvikとアプリケーション実行の仕組みが異なっていたため,互換性を考慮してしばらくは移行期間が置かれていた。その移行期間が済んだとGoogleは判断したのだろう。Android Lから,正式なアプリケーション実行環境として採用されるわけだ。

Android Lでは,64bit環境への対応が行われる。これによって,OSとアプリケーションは4GBを超えるメモリ空間を利用可能になる
画像集#012のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表
 アプリケーション実行環境でもう1つのトピックに,Android Lでは64bit実行環境が正式にサポートされることが挙げられる。64bit CPUを搭載する端末であれば,大きなメモリ空間と64bit長の汎用レジスタを利用できる64bitモードで動作するというもので,既存のAndroidアプリも無変更で実行可能だという。
 64bit CPUで追加された新命令や内部レジスタを活用できることで,アプリケーションの高速化にある程度の効果があるはずだ。

Android Extension Packにより,GPUが持つテッセレーションやコンピュートシェーダがサポートされるように
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 ゲームと関わりのある新要素としては,GPUを使うためのAPIセットの改良が挙げられている。APIセットに導入される「Android Extension Pack」によって,テッセレーションやジオメトリシェーダ,コンピュートシェーダやASTCテクスチャ圧縮が使えるようになるとのことだ。
 これらはDirectX 11で導入済みの機能であり,現在のAndroid端末で使われているGPUの多くは,すでにこれらの機能を備えている。つまり,Android Lがこれらをサポートすることで,PCやほかのゲーム機用に作られたゲームを,移植しやすくなるというわけだ。

 基調講演では,「Unreal Engine 4」を使ったデモが披露されて,実力の一端をうかがわせていた。Android端末向けのゲームグラフィックス向上に役立つことを期待したい。

基調講演で披露されたUnreal Engine 4によるデモ映像
画像集#014のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表

 そのほかの細かい改良点として,バッテリー駆動時間を延ばすためにシステムのアイドル時間が長く続くよう,OSやアプリケーションの動作タイミングを調整する改良が,タスクスケジューラなどに加えられたことも触れておきたい。実際にどの程度効果があるかはなんともいえないが,Android Lではバッテリー駆動時間を延ばすための改良が加えられていることは,覚えておいてもよさそうだ。

OS上で動く各プログラムの動作状況をグラフ化したもの。上は改良前の状態で,下がAndroid Lでの改良後。CPUがアイドル時間に入るのを妨げる「wake_lock」と呼ばれる処理が上は散在しているが,下では数カ所にまとめられているので,アイドル時間が結果的に長くなる
画像集#015のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表

 ゲーマーに影響がありそうな改良点に挙げられていたのが,Androidのゲームポータル機能「Google Play Game」の改良だ。基本的にバックエンド側の改良が中心で,Googleのクラウド側に対応ゲームのセーブデータを保管したり,「一定期間内に目標を達成する」といったクエストをゲーム本体をアップデートすることなく配信したりするといった機能を,ゲーム開発者がゲームに組み込めるようになるという。

Google Play Gameの改良は,クラウド側を活用する機能が中心。ただし,対応ゲームでなければ利用できない
画像集#016のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表


ゲーム用途を重視した据置・テレビ内蔵型デバイス

Android TV


基調講演で披露されたAndroid TV機能を内蔵するテレビ
画像集#018のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表
 冒頭でも触れたとおり,基調講演ではAndroidを基盤としたさまざまな新プラットフォームが発表されたが,ゲーマーの関心を呼びそうなものといえば,「Android TV」だろう。
 これは,テレビ内蔵型や,テレビに接続する単体デバイスとして提供されるAndroid端末だ。

 Googleでは以前に,テレビに接続して使うデバイスとして「Google TV」を開発し,ソニーやLogitech(日本ではロジクール)がGoogle TV搭載デバイスを発売していたことがあった。しかし,専用アプリケーションしか使えないこともあって,まったくといっていいほど市場に受け入れられずに終わったことがある。
 それに対してAndroid TVは,その名のとおりAndroidデバイスであることが大きな違いだ。そのため,膨大なAndroid対応アプリケーションが動作するし,ほかのAndroid端末と対戦ゲームをすることもできると,Googleでは主張している。

Android TV内蔵テレビ(左)で,「NBA JAM by EA SPORTS」をプレイするデモの一コマ。写真右でソファに座っている男性が持つAndroidタブレットと,対戦プレイをしてみせていた
画像集#019のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表

テレビ内蔵型のAndroid TVで,映画のコンテンツを検索した様子。背景ではテレビの映像が流れ続けている。Android TVを使えば,比較的容易に豊富なアプリケーションを備えたスマートテレビを作れるわけだ
画像集#020のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表
 もっとも,据置ゲーム機型のAndroid端末なら,すでに「OUYA」やMad Catzの「Mojo」があるし,日本ではあまり見かけないが,Android端末の機能を内蔵したテレビも海外では多数販売されている。その点ではあまり新鮮味がないというのも事実だ。
 基調講演では,音声認識機能を使ってAndroid TVでコンテンツを検索するといったデモを披露していた。テレビメーカーがあまりコストをかけずにスマートテレビの機能を実現したいと考えたときに,Android TVを使うというのは1つの選択肢となるかもしれない。

 Android TVのパートナー企業としては,QualcommやNVIDIA,MediaTekにIntelといったSoC(System-on-a-Chip)メーカーのほか,テレビメーカーとしてシャープとソニーの名前が挙がっている。シャープとソニーでは,2015年に発売するスマートテレビに,Android TV機能を内蔵するとのことだ。
 ただし,北米市場向けと日本市場向けで,ベースは同じテレビでも搭載する機能を変えることはよくあるため,日本で発売される両社のテレビに,Android TV機能が搭載されるかどうかは不明だ。

Android TVのパートナー企業には,QualcommにNVIDIA,IntelといったSoCメーカーに加えて,シャープやソニー,LG ElectronicsやASUSTeK Computerの名前も挙がっている
画像集#021のサムネイル/Google,開発者向けイベントで次期OS「Android L」やテレビ向けAndroidデバイス「Android TV」などを発表

 Android TVは,失敗に終わったGoogle TVの二の舞を避けて普及できるのか。まずはGoogleとパートナー企業の取り組みに注目したい。

Google I/O 2014 公式Webサイト(英語)


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