現時点では発売時期や対応プラットフォームなどについてはアナウンスされていないものの,日本語化された公式サイトも用意されており,筆者が試遊したものと同じデモを収録した19分のウォークスルー動画もあわせて公開されている。
「Blood Message」は,2025年のSummer Game FestでNetEaseがティザートレイラーを公開したタイトルであり,これまでオンラインマルチプレイ作品で実績を積んできたNetEase Gamesが,本格的なシングルプレイヤー向けアクションアドベンチャーとして送り出す最新プロジェクトだ。
実質的な開発を担うのは,同社傘下のThunder Fire(雷火事業群)の開発部門である24 Entertainment。2021年にリリースされた「NARAKA: BLADEPOINT」で知られるスタジオだが,本作のデモからは,さらにさまざまな点でパワーアップしているのを感じられた。
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本作のストーリー背景は,中国の歴史的事件「沙州帰唐」という歴史的な出来事をバックグラウンドにしている。
西暦848年当時,シルクロードの要衝である沙州(現在の敦煌一帯)は約60年間にわたりチベット系の国家「吐蕃(とばん)」に占領されていた。しかし,圧政に苦しみながらも唐朝への帰属意識を失わなかった人々が,豪族である張議潮(ちょう ぎちょう)のもとに結集し,漢族や周辺の異民族が結束して武装蜂起を決行。見事に占領軍を追い払い,故郷を奪還した。
しかし,当時の敦煌から長安までの道のり(河西回廊)は,敗走した吐蕃の残党兵が目を光らせているだけでなく,ある程度の統率力を持つ流寇や馬賊が跋扈している状態で,沙州奪還の報が長安に届くことなく,孤立無援の状態が続いていた。そのため張議潮は,勝利のメッセージを届けるべく,10隊の決死の伝令使を異なるルートで放った。
砂漠や雪山,敵の追手を突破する過酷な旅の末,わずか1隊のみが2年がかりで長安へ到着することに成功し,これによって沙州は再び唐の領土へと復帰を果たした。
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「Blood Message」では,そんな伝令使として選ばれた,歴史上では無名の人々にスポットライトを当てており,主人公として描かれているのは「ペイ・チャングアン(Pei Changguan)」という男だ。
ペイはまだ幼い息子の「ニン(Ning)」とともに激動の沙州の蜂起と,その後の政情不安に巻き込まれ,やがて長安へ一通の手紙を届ける決死の旅へと身を投じることになる。
ゲームプレイについては,同時に公開されたウォークスルー動画を見ていただければ分かりやすいが,デモ内でのペイは,「兄弟」と呼ぶ「アルタイ(Arrtai)」という男性と行動を共にしていた。
その風貌から異民族と分かり,義兄弟という設定で間違いなさそうだが,どこか中央アジア的な雰囲気の漂う建物や内部の装飾など,漢民族とは異なる文化的要素のあるマップも非常に細かく描かれている。
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高低差のある建物の内外でステルスを駆使しながら移動を続け,眼下の敵兵に対してジャンプして暗殺するシーンは「アサシン クリード」を彷彿とさせる。そして,コンパニオンとなるアルタイと連携しながらタイミングベースでピンチを切り抜けるプレイは,「アンチャーテッド」や「ゴッド・オブ・ウォー」などに通じるところがある。
試遊中は,ステルスで向かうべき方向が少し分かりづらかったり,今回のデモのクライマックスとなる複数人の敵(5〜6人ほど)と立ち回る際に何度か倒されてしまったりということはあったものの,一介の民兵にすぎない主人公ペイの壮絶な戦いが非常にシネマティックに表現されており,24 Entertainmentの表現力の高さがうかがえた。
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特筆すべきは,本作の剣戟アクションが持つ「重み」と「容赦のなさ」である。「NARAKA: BLADEPOINT」において,24 Entertainmentはスタイリッシュかつ空中を縦横無尽に舞う高速な近接戦闘を歴史ファンタジーとして極めた。「Blood Message」では,そのノウハウが完全に真逆のベクトル,すなわち「地に足のついた泥臭いリアリズム」へと全振りされている。
敵兵と正面から対峙した際の戦闘は,プレイヤー自身の刀や盾を用いたタイトな「弾き(パリィ)」と,相手の体勢を崩す体幹の削り合いが基本だ。
攻撃を受け流した火花や,刃が肉を断つ鈍い効果音が非常に生々しく,そこから繰り出されるフィニッシュムーブの残虐な処刑モーションは圧巻の一言。エリートではない一介の民兵だからこそ,きれいごとではない「生き残るための執念の暴力」として戦闘が描かれており,歯を食いしばり,手が汗ばむほどの緊迫感を味わえた。
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また,ゲームプレイに深い情緒と緊張感を与えているのが,ペイが背負う「父親としての顔」である。今回用意されたデモでは息子のニンが直接登場することはなかったものの,ペイは一通の重要な書状を届けるだけでなく,まだ幼い息子の手を引いて進まねばならない設定だ。敵の警戒網を突破する際,ニンを安全な物陰に隠し,父親が周囲の脅威を完全に排除してから再び呼び寄せるような,ゲームシステムとストーリーテリングが文字通り一体となったシチュエーションが随所に用意されているという。
今回のデモでは,アルタイがコンパニオンを務めていたが,ニンをはじめとする今後の登場人物との展開においては,ペイが単独であったり,親子一緒の戦いになったり,あるいはほかの仲間たちとともに戦うようなシーンにも期待できそうだ。
孤独で過酷な旅路ながらも,そうした平民たちの人間模様がしっかりと描き込まれていることが予感できる。
そのグラフィックスを見れば分かるとおり,Unreal Engine 5によって限界まで引き上げられたビジュアルクオリティも見事の一言に尽きる。光の眩しさは太陽に近い高地平原にいるという錯覚を起こさせるには十分だ。これまでにリリースされた画像などからも,夜の闇を照らす松明の揺らめき,衣服や皮膚に付着する砂埃,血飛沫のリアルな質感はもちろん,今回のデモで描かれた集落のように,9世紀のアジアの辺境という混迷の時代における多民族地域のディテールが,徹底的なリサーチのもとに再現されているのがよく伝わってくる。
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ここ最近の中国産アクションゲームの質の向上には目を見張るものがあるが,「黒神話:悟空」の成功によって,中国国内の開発会社のAAA級シングルプレイ作品への開発熱はかつてない高まりを見せている。「Blood Message」は,24 Entertainmentが蓄えた近接アクションのノウハウに,より歴史に根差したリアリズムを融合させており,その次のゲームチェンジャーになり得るポテンシャルを十分に秘めていると感じられた。
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