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「Déraciné」「SEKIRO」と新体制の成果が見え始めたフロム・ソフトウェア。その目指すところや今後について,宮崎英高氏に聞いた
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印刷2018/12/29 00:00

インタビュー

「Déraciné」「SEKIRO」と新体制の成果が見え始めたフロム・ソフトウェア。その目指すところや今後について,宮崎英高氏に聞いた

画像集 No.014のサムネイル画像 / 「Déraciné」「SEKIRO」と新体制の成果が見え始めたフロム・ソフトウェア。その目指すところや今後について,宮崎英高氏に聞いた
 2014年5月に,「DARK SOULS」シリーズのディレクションなどで知られる宮崎英高氏を取締役社長(現在は代表取締役社長)に据え,新たな体制をスタートしたフロム・ソフトウェア。あれから4年半,新体制発足後に企画・開発されたタイトルが,PlayStation VR用ソフト「Déraciné」(デラシネ)や,2019年3月リリース予定の「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」PC/PS4/Xbox One 以下,SEKIRO)といった形で姿を見せ始めた。

 そこで4Gamerでは,両タイトルのディレクターでもある宮崎氏に,Déracinéの手応えや,SEKIROで目指すもの,そして2019年以降のフロム・ソフトウェアの展開などを聞いてみた。


VR専用や人を選ぶ内容など,ハードルの高さを承知で作られた「Déraciné」


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは,Golden Joystick Awards 2018のLifetime Achievement Award(生涯功労賞)の受賞,おめでとうございます。

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「Déraciné」「SEKIRO」と新体制の成果が見え始めたフロム・ソフトウェア。その目指すところや今後について,宮崎英高氏に聞いた
宮崎英高氏(以下,宮崎氏):
 ありがとうございます。

4Gamer:
 これまでに生涯功労賞を受賞しているのは,ケン・レヴィン氏,小島秀夫監督,任天堂の岩田 聡前社長,青沼英二氏,そしてシド・マイヤー氏と錚々たる顔ぶれです。その1人に加わった今の感想はいかがですか。

宮崎氏:
 とても光栄なことですし,とても驚いています。正直,その顔ぶれに並ばせていただける理由は,今でも思い当たりませんので,困惑している,というのが正しいのかもしれません。
 ただ今回の受賞が,一緒にゲームを作ってきた仲間と,作ったゲームをプレイし,楽しんでくれた,そして支持してくれたユーザーさんのお蔭であることは間違いありません。そうした皆様にご恩返しするためにも,これからまた,面白い,あるいは価値のあるものを目指してゲームを作っていこうと,思いを新たにしているところですね。
 あと個人的には,功労賞のプレゼンターがスティーブ・ジャクソンさんとイアン・リビングストンさんだったことが,とても嬉しかったです。お二人は,私のファンタジーの原体験であるゲームブック「ファイティング・ファンタジー」の作家さんなのですが,事前に知らされていなかったので,不覚にも会場で子供のようなテンションになってしまいました(笑)。

4Gamer:
 笑顔で一緒に写真に写っているのはTwitterで見ました(笑)。
 2年半ほど前,「DARK SOULS III」の発売から少し経ったタイミングでインタビューさせていただいて,そのときは「これから出てくるタイトルが新体制になってから作り始めたもの」というお話でした。今年になって,ついにそのタイトルが出てき始めましたね。

宮崎氏:
 はい。当初の予定通りではあるのですが,お待たせしてしまいました。もっとも,Déracinéはともかく,SEKIROはまだ発売前ですし,そうした言い方は尚早かもしれませんが。

4Gamer:
 それでは発売済みの,新体制最初のタイトルとなるDéracinéの話からお願いします。エンディングまで遊んでプレイレポートを書きましたが,本当に楽しめました。

宮崎氏:
 ありがとうございます。Déracinéは,近年のフロム・ソフトウェアとしてはかなり異色の,いくつもの挑戦を含んだタイトルでしたから,そう言っていただけると,ほっとします。

4Gamer:
 チャレンジの手応えはいかがですか。

宮崎氏:
 少なくとも,作ってよかったと感じていますね。知見経験など得るものはとても多かったですし,我々が目指した体験を,確かに受け取ってくれたユーザーさんもいらっしゃると感じています。個人的にも,作っていてとても楽しかったので。反省点が多かったのも事実ですが,その多くは次に活かせるものでしたしね。
 また,少し話は違いますが,SEKIROと同時期に発表できたことも,よかったと思っています。今までのフロム・ソフトウェアらしい路線はしっかりとありつつ,新しい挑戦もしていきます,というメッセージになったかなと。

4Gamer:
 Déracinéは特徴的なアドベンチャーになりましたが,企画の発端を教えてください。

宮崎氏:
 もともとは,VRのタイトルを作るつもりはありませんでした。ですが,確かあれはPlayStation Awards 2016で,Bloodborneがユーザーズチョイス賞をいただいた時だったと思いますが,お祝いの席で,SIEの皆さんと「今VRでゲームを作るとしたら,どんな内容にするか」という話になったんです。その時に軽い気持ちで,Deracineの原型となるアイデアを話したら気に入ってもらえて……という流れですね。

4Gamer:
 ずいぶんアバウトなスタートだったんですね(笑)。

宮崎氏:
 はい,そうですね(笑)。小規模で挑戦的なプロジェクトになること,DARK SOULSやBloodborneとはまた違う意味で,強く人を選ぶ性質のタイトルになることなど,SIEさんには事前にお伝えしていましたが,「それでも構わない」と言っていただけて,とても感謝しています。我々としてVR技術に触れておきたいという欲求もありましたので,それならば,ということでプロジェクトがスタートしました。

4Gamer:
 宮崎さんが最初に考えていた企画アイデアは,どういったものだったんですか?

宮崎氏:
 当時,いくつかの開発中のVRタイトルに触れる機会がありました。その時,まず世界とキャラクターの実在感に驚き,その後に非実在感も感じたのです。確かにそこにいるように思えるのだけど,触れられないし,こちらを認知してくれてもいないという,不思議な,少し悲しい感覚です。
 それはある種の技術的限界ではあるのだけど,確かに印象的だったので,そうした感覚をベースに新しい体験を構築できないだろうかと考えました。それが最初のきっかけですね。

画像集 No.002のサムネイル画像 / 「Déraciné」「SEKIRO」と新体制の成果が見え始めたフロム・ソフトウェア。その目指すところや今後について,宮崎英高氏に聞いた

4Gamer:
 技術的な限界を逆手に取ろうという企画だったんですね。
 時間が止まった世界を表現するというのは,最初から決まっていたのでしょうか。

宮崎氏:
 時が止まった世界や,姿が見えない妖精といった設定は,先ほどお話しした感覚を世界観に落とし込み,むしろ没入の助けとするための仕掛けですね。ほかにもいくつかの選択肢はありましたが,プロトタイプの比較的早い段階で今の形に決まっていたと思います。
 Déracinéのコンセプトというか,目標は,先ほどの感覚を足掛かりに「感情を動かす」ということでしたが,その為にも都合のよい設定だったので。

4Gamer:
 お世辞ではなく,本当に感情を揺さぶられました。プレイレポートで,ネタバレになるので伝えたい話は何も書けず,もどかしく感じていたほどです。

宮崎氏:
 そう言っていただけるととても嬉しいですね。短くとも記憶に残る体験にしたい,と思って作っていましたし,Déracinéを世に出すことには,なんというか,勇気が必要だったので。
 Déracinéは,いわゆる「ゲームらしいゲーム」「VRゲームらしいVRゲーム」ではありませんし,近年の我々に期待されているところともずれていましたから。それでも一緒に作ってくれたスタッフ,また背中を押し,支援してくれたSIEさんには,本当に感謝しています。

4Gamer:
 発売後のプレイヤーの声からは,感情を動かすという目標は達成できているように見えます。“音楽が止まる”シーンとか,私も含めて立ち尽くした人がいっぱいいるようなのですが,ああいった反応を見ると「ニヤリ」という感じなんですか?

宮崎氏:
 むしろ,ほっとする気持ちの方が強いですね。どのタイトルも少なからずそうなのですが,やはり不安だったんだと思います。世界観,キャラクターと物語,そして演出を主体に「感情を動かす」というゲームデザインは,今までの我々,あるいは私には未知の世界でしたから。
 そして,終わってみると,やはり色々と稚拙な部分に気付いてしまうので。
 ある程度人を選ぶタイトルであることは,コンセプトの時点で避け難いと思っていましたが,それでも,より多くの人に楽しんでもらえるよう,できることは多くあったろうという思いがあります。

4Gamer:
 今後もDéracinéのような尖った企画にチャレンジすることはあるのでしょうか。

宮崎氏:
 はい。機会を探すことはしようと思っています。今回得られた知見経験は貴重なものでしたし,そういったものもあり得る会社であった方が,自由に面白い,価値のあるものを作り得る環境だろうと思いますので。
 あとは,単純に作っていて楽しい,ということもありますね。将来的には,屋台骨となるタイトルは優秀な後進に任せて,私は横で変なタイトルを作っている,というのが理想です(笑)。

4Gamer:
 楽しみにしています。ぜひ宮崎さんにまたアドベンチャーを作ってほしいです。

宮崎氏:
 次の尖った企画があるとして,それがアドベンチャーであるとは限りませんが,そう言っていただけるのはとても嬉しいです。

4Gamer:
 プレイしていて気になったのが,いくつか登場するBloodborneのイースターエッグです。「続編の予告なのでは?」と噂されていますが。

宮崎氏:
 憶測を呼んでしまって申し訳ないのですが,あれは純粋に悪戯です。 私も,また幾人かのスタッフもそうですが,Bloodborneというタイトルが好きなので……けれど,やりすぎたかもしれません。反省点のひとつです。

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隙を突く駆け引きと戦術を考える余地によって「DARK SOULS」とは異なるバトルに


4Gamer:
 続いては,3月に発売を控えたSEKIROについてお願いします。

宮崎氏:
 はい。今まさにマスターアップに向けて,最後の詰めにかかっているところです。

4Gamer:
 今回は,Activisionさんとの共同開発ですが,どういった経緯で決まったのでしょうか。

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宮崎氏:
 そんなに特別な話はありませんよ。フロム・ソフトウェアは海外販路を持っていないので,その点を補完してくれるパートナーさんとの協働は必須でして,今回のSEKIROに一番興味を持ってくれた,評価してくれたのがActivisionさんだった,ということです。
 また,Activisionさんのゲームの作り方に興味があったのも事実ですね。
 
4Gamer:
 フロム・ソフトウェアさんの最近のタイトルは,ダークファンタジー路線が中心ですよね。SEKIROを和風路線にしたのはなぜでしょう。

宮崎氏:
 我々が,過去いくつかの和風タイトルを作ってきた,あるいはパブリッシュしてきた経緯もあり,「何か新しいタイトルを作ろう」という議論の中で,和風が選択肢になるのはごく自然なことでした。
 そして,和風というセッテイングは,美術面や物語で新鮮なことができそうでしたし,和風の中でも,特に忍者というキャラクター性が,私が考えていたゲーム性に合致したことが決め手になりました。折角立体マップを作り込んでいるのだから,ということもあり,探索であれ戦闘であれ,より立体的でダイナミックなゲーム性を考えており,忍者というキャラクターが,リアリティや真剣さを崩さず,それを実現してくれると思えたのです。

4Gamer:
 フロム・ソフトウェアさんで忍者というと,先ほど名前の挙がった天誅シリーズが思い浮かびますが,SEKIROと関連はあるのでしょうか。

宮崎氏:
 参考にしている部分はあります。ごく初期は,本作を天誅シリーズとして作る選択肢もあったくらいです。
 ただ,その案はすぐにやめました。我々が過去,天誅のパブリッシャではあれ,デベロッパではなかったこともあり,どうしても模倣になってしまうと感じたからです。
 なので,鉤縄での移動など,特徴的ないくつかのアイデアは参考にしつつ,我々なりの新しいアクションゲームを作ろう,という方向性を選択しました。

4Gamer:
 イベントのプレイアブル出展で試遊しましたが,鍵縄や忍殺,雑魚敵でも正面から挑むと大変というあたりは,天誅っぽさを感じました。一方で,明確に変えている部分もあるかと思うのですが。

宮崎氏:
 天誅との違いはとても沢山ありますが,例えば,あくまでも戦闘主体のゲームである,ということは挙げられると思います。例えばステルスなども,戦闘を有利にする,取り得る一手段という位置づけでデザインされています。

4Gamer:
 戦闘主体と聞くと,“和風DARK SOULS”のような印象を受けるのですが,そういうわけではないんですよね?

宮崎氏:
 はい。SEKIROの戦闘,剣戟は,DARK SOULSとはまた別の立ち回りを要求されるものです。SEKIROの剣戟は,まず激しく刀と刀がぶつかりあう激しさがあり,その激しさの中で,敵の体幹をどうにか削り,隙を見出していく駆け引きがあります。
 また,ある戦いにおいて有効なやり方が,今までよりも強めに設定されているのも,SEKIROの特徴です。様々な手段を駆使し,工夫して有効なやり方を見出していく,ということに価値を持たせているんです。

4Gamer:
 敵の種類や状況に応じての使い分けが重要になるんですね。

宮崎氏:
 そうですね。鉤縄による位置取りや,ステルスの活用,義手忍具の選択など,どのように戦うか,戦いに臨むかが重要になっています。ただ正面から挑むばかりでなく,また忍ぶばかりでもなく,武器であれ状況であれ,使えるものはすべて使い,最終的に勝つ,というのが,SEKIROの忍者像ですね。

4Gamer:
 そこには,どんな狙いがあるのでしょうか。

宮崎氏:
 正面からアクションで挑む以外の,攻略の余地を用意したかったんです。困難に挑み,それを克服するやり方が色々と存在し,純粋なアクションが苦手でも工夫の余地がある,といったことですね。レベルデザインも,それを意識して調整されています。
 もちろん,特定のやり方以外通用しない,ということはありませんので,正面からアクションで挑むことも十分に可能になっています。そしてそれは,往々にとても激しいものになると思います。

4Gamer:
 イベントでの試遊は,バトルが難しくなったように感じたのですが,戦略・戦術でカバーするべきだったんですね。

宮崎氏:
 イベント試遊での難度については,正直,慣れの問題も大きかったと思います。繰り返しになりますが,DARK SOULSとはまた別の立ち回りを要求されるデザインなので。
 製品版では,SEKIRO独特の立ち回りを学び,徐々にうまくなっていく過程を含めて,楽しんでもらえればと思っています。

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