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「GeForce GTX 1660 Ti」レビュー。レイトレ非対応のTuringこそが新世代の鉄板GPUになる!?
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印刷2019/02/22 23:00

レビュー

RT CoreもTensor Coreも搭載しないTuringが,新世代の鉄板GPUになる!?

GeForce GTX 1660 Ti
(ASUS ROG-STRIX-GTX1660TI-O6G-GAMING)


GTX 1660 Tiは,第2世代Maxwellベースの「GeForce GTX 960」比で3倍の性能を持つとされる
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 日本時間2019年2月22日23:00,NVIDIAは,Turing(テューリング)世代のGPU新製品「GeForce GTX 1660 Ti」(以下,GTX 1660 Ti)を発表した。「GeForce GTX」を名乗っていることからも想像できるとおり,本製品はTuring世代のGeForceとして初めて,リアルタイムレイトレーシングアクセラレータ「RT Core」を持たないというのが大きな特徴だ。

 また,搭載グラフィックスカードの北米市場におけるメーカー想定売価が279ドル(税別)というのは,Turing世代ということを考えると文句なしに安価だったりもするのだが,ではその実力はゲーマーを満足させるものなのか。4GamerではASUSTeK Computer(以下,ASUS)製の搭載カード「ROG-STRIX-GTX1660TI-O6G-GAMING」(以下,ROG-STRIX-GTX1660TI)をASUS JAPANから入手できたので,テスト結果をお届けしたい。

ROG-STRIX-GTX1660TI-O6G-GAMING
メーカー:ASUSTeK Computer
価格:未定(※2019年2月22日現在)
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※本稿ではGPUアーキテクチャの解説を米田 聡氏が,それ以外のすべての宮崎真一氏が担当します。


RT CoreだけでなくTensor Coreも持たない「TU116」ベース


 最初に型番の話を済ませておくと,今回の製品が“GeForce GTX 1160 Ti”ではないことに,特段の理由はないそうだ。NVIDIAによると,「ほかの製品との違いを分かりやすくする」だけの意図から1660にしたとのことなので,「GeForce GTX 10シリーズでもGeForce RTX 20シリーズでもない型番」くらいに理解しておけば十分だろう。

GTX 1660 Ti GPU。ダイ上の刻印は「TU116-400-A1」だった
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 そんなGTX 1660 Tiの基本仕様を最初に押さえておきたいと思うが,冒頭の「RT Coreを持たない」という紹介は,実のところ不正確だったりする。
 なぜなら,GTX 1660 Tiが採用するGPUコア「TU116」は,Turing世代のGPUが統合するもう1つの固定ハードウェアで,深層学習アクセラレータとして機能する「Tensor Core」も持たないからだ。

 付け加えると,TU116はRT CoreとTensor Coreをそもそも搭載していない。「搭載するが無効になっている」わけではないのである。なのでTU116ではどうやってもリアルタイムレイトレーシングの高速化は行えず,またDLSS(Deep Learning Super Sampling)機能を利用することもできない。

こちらはRTX 2060の搭載する「TU106-200」コア。シリコンダイサイズの違いに注目してほしい
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 では,固定ハードウェアを物理的に省いたことで,TU116ではどれだけ小さくなったのかだが,12nm FFNプロセス技術を用いて製造されるTU116のトランジスタ数は66億,ダイサイズは284mm2と,「GeForce RTX 2070」(以下,RTX 2070)および「GeForce RTX 2060」(以下,RTX 2060)が採用するGPUコア「TU106」の同108億,445mm2比で6割強にしかなっていない。

こちらは参考までにTU106のブロック図(上)と,SM(Streaming Multiprosessor)のブロック図(下)。GPCあたりのSM数は12基で,SMごとにRT Coreを1基,Tensor Coreを8基搭載している
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 Turingアーキテクチャではこれまで,32bit単精度浮動小数点数(FP32)の演算器と32bit整数(INT32)の演算器からなる「CUDA Core」を16基と,Warpスケジューラ(Warp Scheduler)と命令発行ユニット(Dispatch Unit)1基ずつ,そしてロード/ストアユニット4基(と,Tensor Coreが2基)をまとめて1つのブロックとして扱い,それを4基束ねたうえで,L1キャッシュとテクスチャユニット4基(,RT Coreが1基)を組み合わせて演算ユニット「Streaming Multiprosessor」(以下,SM)を構成していた。
 そしてTU106の場合,このSMを12基まとめて,CPUにおけるCPUコア的に機能するクラスタ「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)とし,さらにGPCを3基搭載してフルスペックとしていたのだ。なのでフルスペック(=RTX 2070)の総CUDA Core数は2304基(64×12×3)となる。

 そしてここからが重要なのだが,TU116の場合,GPC数は3基でTU106と同じながら,GPCあたりのSM数は(「GeForce RTX 2080」と同じく)8基になっている。つまりTU116のフルスペックにおける総CUDA Core数は,

  • 64(※SMあたりのCUDA Core総数)×8(※GPCあたりのSM総数)×3(※GPCの総数)

1536基だ。GTX 1660 TiはTU116のフルスペックなので,この計算式そのままの理解で構わない。

 ……勘のいい読者はもう気付いただろう。TU116のトランジスタ数とダイサイズは,TU106比で,ほぼCUDA Coreが減った分しか小さくなっていないのだ。では,RT CoreとTensor Coreの代わりに何が入ったのか?

 答えは,16bit半精度浮動小数点数(FP16)演算器である。

TU116のブロック図。RT CoreとTensor Coreが描かれていない点と,SMを構成する演算器のブロックごとに演算ユニットからなる塊が3つある点が最大の注目ポイントである
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SMを構成するブロックのクローズアップ。INT32(左)とFP32(中央)は16基ずつながら,FP16(右)は32基ある
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 NVIDIAによると,Turing世代の従来製品で倍速化されていたFP16処理は,実のところ(FP32演算器ではなく)Tensor Core側にあるSIMD演算ユニットの活用により実現していたのだそうだ。これはおそらく新情報ではないかと思う――少なくとも筆者は今回初めて知った――が,Tensor Coreを持たないTU116の場合,そのままだとTuring世代らしいFP16のスループットを実現できない。
 そこで,SMを構成する4ブロックの1つあたり32基,SMあたり128基のFP16演算器をTensor Coreの代わりに搭載したというわけなのである。

FP16の性能はTU116でもFP32比で2倍となるが,Tensor Coreを持たないTU116では専用のFP16演算器を搭載することで実現している
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 GPUの足回りとなるL2キャッシュ容量は1.5MBなので,これはRTX 2060の半分にして,GTX 1060 6GBと同じ。組み合わされるグラフィックスメモリはGDDR6で容量6GBとなり,メモリクロックは12GHz相当だ。基本仕様はRTX 2060を踏襲しつつ,メモリクロックのみ約86%になっているため,メモリバス帯域幅も約86%の288.1GB/sとなる。
 ただしこの帯域幅は,GDDR5メモリを採用しているGTX 1060 6GBと比べると1.5倍という数字であり,従来世代比ではインパクトのあるスペック向上を果たしている。

 なおNVIDIAによれば,グラフィックスカードメーカーの判断次第では,異なるグラフィックスメモリ容量の製品が登場する可能性はあるとのことだ。今後ひょっとすると,一部のカードメーカーからグラフィックスメモリ容量3GB版が登場するかもしれない。

CUDA Toolkitに含まれる「DevQueryDrv.exe」を実行した結果。L2キャッシュ容量が1.5MB(1572864 bytes)なのを確認できる
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 気になる公称TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は120Wで,GTX 1060 6GBから変わっていないが,PCI Express外部電源は8ピン×1化を果たし,TDPが160WのRTX 2060と同じ仕様になった。
 表1は,そんなGTX 1660 Tiの主なスペックを,RTX 2060と「GeForce GTX 1070」(以下,GTX 1070),そして置き換え対象となるる「GeForce GTX 1060 6GB」(以下,GTX 1060 6GB)と比較したものになる。

※ メモリクロック9Gbps相当となった後期モデルでは「GP106-410」(関連記事)。また,末期には上位モデルと同じGP104版も登場した(関連記事
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 なお,繰り返すが,RT CoreとTensor Coreを持たないだけで,TU116はあくまでもTuring世代のGPUだ。なので,

  • FP32とINT32のオーバーラップ実行
  • L1キャッシュと共有メモリを統合したUnified Cache Architectureの採用とクロック引き上げ
  • FP32比で2倍のスループットが得られる16bit半精度浮動小数点演算性能
  • 新世代のピクセルパイプラインレンダリング概念であるVariable Rate Shadingと,それを応用したContent Adaptie ShadingおよびMotion Adaptive Shading

といった「Turingならでは」の機能は,GeForce RTX 20と同じく活用できる。

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GTX 1660 TiではFP32とINT32のオーバーラップ実行(=同時演算)が可能だ。「Shadow of the Tomb Raider」では,平均して100命令あたり62個のFP32と32個のINT32の命令があるが,それをPascal世代のGPUでは処理するのに100命令分の時間がかかるのに対し,GTX 1660 Tiでは62命令分の時間で終えられるという
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Pascalアーキテクチャに対して,L1キャッシュは帯域が2倍に,ロード/ストアユニットあたりの容量も24KBから64KBに拡大している。Pascal世代ではロード/ストアユニットあたり24KBのキャッシュ容量しか確保できなかったのに対してTuring世代では64KB確保できるようになった点もポイントだ
Adaptive Shadingについては西川善司氏の解説が詳しいが,映像の粗密でエリア分けを行い,のっぺりした部分では解像度を落として処理するVariable Rate Shadingにより,最大40%ものシェーダ負荷軽減を図れるとのこと。Direct3Dの標準ではないため,利用にはゲーム側の対応が必須となるが,「Wolfenstein II」は対応しており,GTX 1660 TiでGTX 1060 6GB比1.5倍の性能を実現できるという
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 NVIDIAはこれらの新要素が,とくに新世代のゲームタイトルで有効だとしている。たとえばFP16は「Far Cry 5」が水面のエフェクト処理に用いていたりするとのことで,積極的に新しい技術を採用しているタイトルであればあるほど,GTX 1660 Tiは旧世代のGeForce GTXに対して優位性を発揮できるそうだ。より正確を期せば,「積極的にNVIDIAの技術を採用しているタイトル」でより高い性能を期待できる,といったところか。

「新しい世代のゲームタイトルほどGTX 1660 Tiで速くなる」というスライド。GTX 1060 6GBと比べた場合,2015年のタイトルである「Fallout 4」だと1.2倍にも満たない性能向上しか得られないが,Variable Rate Shadingに対応したWolfenstein IIなどでは突出した性能向上を期待できるとのことである
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 リアルタイムレイトレーシング,そしてAI推論用の専用ハードウェアを搭載するGPU「GeForce RTX」。そのアーキテクチャ詳細がついに明らかとなった。連載「西川善司の3Dゲームエクスタシー」,今回は,「リアルタイムグラフィックスの再発明」とも呼ばれる新世代GPUの正体に,とことん迫ってみたい。

[2018/09/14 22:00]


ブーストクロックはリファレンス比+90MHzに


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 GTX 1660 TiではNVIDIAのFounders Edition設定がないので,いわゆるリファレンスカードというものは存在しない。それを踏まえたうえで,ここからは入手したROG-STRIX-GTX1660TIを見ていこう。
 まず動作クロックだが,ROG-STRIX-GTX1660TIはメーカーレベルで動作クロックを引き上げた,いわゆるクロックアップモデルである。ベースクロックは1500MHz,ブーストクロックは1860MHzなので,前者はリファレンスと同じである一方,後者は90MHz高い。

NVIDIAコントロールパネルからシステム情報を確認したところ。ブーストクロックは1860MHzだと確認できる
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ROGブランドのグラフィックスカードでお馴染みのGPU Tweak II。上に並んだOC modeとGaming mode,Silent modeのアイコンをクリックすることで,動作モードを切り替えられる
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 また,これはROG STRIXブランドのグラフィックスカードではお馴染みだが,動作クロックの異なる3つの動作モード「Gaming mode」「OC mode」「Silent mode」を備えているのも特徴だ。上で紹介した工場出荷時設定の動作クロックはGaming modeという位置づけになっており,OC modeではベースクロックが1530MHz,ブーストクロックも1890MHzに上がって,さらに「Power Target」(電力目標,以下日本語表記)もGaming modeの100%から110%へ上がる。

 一方のSilent modeは,ベースクロックは未公開で,ブーストクロックは1830MHzとGaming modeから30MHz低下し,電力目標も90%へ下がっている。これら動作モードは,付属アプリケーション「GPU Tweak II」(Version 1.9.4.4)を導入すれば簡単に切り替え可能だ。なお,メモリクロックはどの動作モードも12GHz相当と,リファレンスから変わらない。

 なお,後述するテスト環境において,工場出荷時設定のGaming modeにおける動作クロックをGPU Tweak IIから追ってみたところ,最大2010MHzに達するの確認できた。
 GPU Tweak IIは動作クロックの最適化機能である「NVIDIA Scanner」(以下,Scanner)にも対応しているので,こちらを併用することも可能だ。

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テスト中の動作クロックを追ってみたところ。ROG-STRIX-GTX1660TIはメーカー保証の範囲内で2GHz動作に対応するわけだ
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GPU Tweak IIから「OC Scanner」をクリックするScannerを実行できる。Gaming modeでは平均で動作クロックを67MHz引き上げることができた


カード長は30cm超級。ミドルクラスGPU搭載製品としては極めて大きい


カード長は30cm超級となる
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 続いてはROG-STRIX-GTX1660TIの実機だが,そのカード長は実測で約302mm(※突起部除く)。参考までに,RTX 2060のFounders Editionが同230mm,GTX 1060 6GB Founders Edition同249mmなので,さすがはASUSのGTX 1660 Tiカード最上位モデルといったところか,非常に長い。
 また,“横と縦”にも大きく,マザーボードに装着したとき,マザーボードの垂直方向にI/Oブラケットから実測約24mmはみ出ている点,そしてGPUクーラーが2.5スロット仕様になっている点も押さえておく必要があるだろう。

ROG STRIXらしく,黒基調でまとまった全景。カードの背面側はロゴ入りの金属板で覆われていた
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基板長自体は実測約284mmなので,GPUクーラーがカード後方に約18mmはみ出した格好となる(左)。右はGPUクーラーの2.5スロット仕様を確認したカット
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 この大型クーラーは90mm角相当のファンを3基搭載するが,ファンは,外枠と羽が一体化した「Axial-tech Fan」構造になっている。ASUSによると,同社の従来製品で採用している「Wing-Blade Fan」に比べて,エアフローが27%,風圧が40%それぞれ上昇するという。
 GPUの温度が55℃以下になるとファンの回転を停止する「0dB Technology」が標準で有効になっていて,これはGPU Tweak IIから有効/無効の切り替えが可能だ。

最近,ASUS製グラフィックスカードの一部で見られるようになってきたAxial-tech FanをROG-STRIX-GTX1660TIはGPUクーラーに採用する(左)。エアフローと風圧が向上するだけでなく,機器の動作に支障を来さない程度に粉塵の侵入を阻止できるIP5X相当の防塵性能も獲得できているという(右)
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 さらに,GPU Tweak IIの「Advance Mode」を用いれば,左右の2基と中央の1基で別々に回転数を制御できる。左右の2基と中央の1基で設定できる内容に違いはなく,「Manual」を選択すれば回転数22〜100%の範囲を1刻みで固定できるほか,「User Define」ではコアの温度と回転数の関係を示したグラフから任意の5か所を自由にカスタマイズすることも可能となっている。

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GPU Tweak IIで0dB Technologyを無効にしたところ。なお,無効化しても,GPU温度が55℃以下になると中央のファンは停止する
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左右のファンの回転数を60%に,中央のファンを30%に設定したところ。3基のファンを2ブロックに分けて管理できるのはありがたい

Aura RGB。LEDイルミネーションの色や光り方,点灯/消灯切り替えを行える
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 GPUクーラーにはLEDが埋め込んであり,「Aura RGB Lighting Control for Graphic card&XG-STATION」(Version 0.0.6.1,以下 Aura RGB)を導入すると,色や光り方を設定することができる。
 プリセットの光り方は常時点灯の「Static」,ゆっくり明滅を繰り返す「Breathing」,さらにゆっくり明滅する「Strobing」,色が順次変化する「Color Cycle」,再生する音楽に合わせて点灯する「Music」,GPUの温度によって色を変える「GPU Temperature」の6とおりとなっている。

LEDは工場出荷時だと赤く光るが,色もカスタマイズ可能だ
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基板上にあるVBIOS切り替えスイッチ。写真でその近くに見えるボタンはAura Syncの有効/無効切り替え用で,上述したAura RGBを導入せずとも消灯はここで行える
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PモードではQモードと比べて冷却性能が16%高く,QモードはPモードに対して13倍静かとのこと。ちなみにASUSは「Pモードだと0dB Technologyが無効になる」としているのだが,実際には工場出荷時設定の状態で有効のままだった
 もう1つユニークな点としては,2つのグラフィックスBIOS(以下,VBIOS)を搭載していることを挙げておきたい。VBIOSには「Performance Mode」(以下,Pモード)と「Quiet Mode」(以下,Qモード)という2つの基本動作モードが用意されており,I/Oブラケット近くの基板上端部に実装されたディップスイッチでモードの切り替えを行える。

 Pモードではファンの回転数を高めて冷却性能を引き上げ,一方のQモードでは静音性を高めるべくファンの回転数を下げる。ASUS製の「GeForce RTX 2080 Ti」搭載カード「ROG-STRIX-RTX2080TI-O11G-GAMING」から新たに採用した機能だが,ROG STRIXに属する製品としてROG-STRIX-GTX1660TIもサポートしているわけである。なお,工場出荷時設定はPモードだ。

 補助電源コネクタはリファレンスどおりとなる8ピン×1。外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4a×2,HDMI 2.0b(Type A)×2という構成だ。GeForce RTX 20シリーズで標準インタフェースとなるDisplayPort Alternate Mode対応のUSB 3.1 Gen.2 Type-Cを省略し,代わりに現行世代のVR対応ヘッドマウントディスプレイで活用できるHDMI 2.0bを2系統用意している点はトピックと言えるだろう。

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補助電源コネクタは一段低いところの実装となり,電源ケーブルがケースなどに干渉しないように配慮されている
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RTX 2060 Founders EditionではDual-Link DVI-D×1もあったが,ROG-STRIX-GTX1660TIは持たない

GPUクーラーを取り外したところ
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 GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為であり,取り外した時点でメーカー保証は失効する。そのことをお断りしつつ,今回はレビューのため特別にクーラーを取り外してGPUクーラーと基板を見ていきたい。
 まず,GPUクーラーだが,GPUダイとの接地面積を従来比で2倍とすることで,熱を確実に受けるという「MaxContact Technology」を採用。そこから8mm径のヒートパイプ3本が3ブロック構成となっている放熱フィンへと伸び,熱を運ぶ仕様なのが分かる。

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銅製の枕を介してGPUの熱をヒートパイプへと伝える,よくある構造だが,ASUSが以前採用していた,ヒートパイプがシリコンダイと直接触れる「DirectCU」よりも接地面積のロスが少ないという
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クーラーを底面側から見たカット。3本のヒートパイプが合計3か所の放熱フィンブロックへと熱を運ぶ仕様なのが分かる。これを3基のファンで冷却するわけだ

 というわけで基板だが,基板は表側を,ASUSが「Reinforced Frame」と呼ぶ金属製フレームで覆っている。これは基板のねじれやたわみを防ぐだけでなく,メモリチップや電源部のヒートシンクとしても機能する。

基板からReinforced Frameと背面プレート外したところ(左)。ヒートシンクはあるのだが,一部で千切れたようになっていたり(※分解時に千切れたわけではない),そもそもメモリチップのサイズに合っていなかったりと,ちょっとぞんざいな印象がある(右)
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 続いては基板だが,電源部は6+2フェーズ構成だ。RTX 2060のFounders Editionと同じ回路規模という理解でいい。

基板のGPUパッケージ実装面とその背面。いずれも搭載する部材の数はそれほど多くなく,かなりすっきりした印象を受ける。これならもっとカードサイズを小さくできたような気もするが……。なお,基板上にはメモリチップ2枚分の空きパターンを確認できるので,何か別の製品と基板設計を共用している可能性はある
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基板背面側にあるSAP II POSCAP
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 この電源部には,ASUSが「Super Alloy Power II」(以下,SAP II)と呼ぶ高品質な部材を採用しており,一般的なものと比べて2.5倍の製品寿命を誇るとされるコンデンサ「SAP II Capacitor」,コイル鳴きを抑えたチョークコイル「SAP II Choke」,発熱が少なく電力供給量が多い「SAP II DrMOS」,それにオーバークロック用のヘッドルームを最大限に高めるという導電性高分子タンタル固体電解コンデンサ「SAP II POSCAP」の姿を基板上では確認できる。

GPU側の6フェーズ電源部。SAP II DrMOSとしては,MOSFETとドライバICを1パッケージにまとめたVishay Intertechnology製の「SiC638」を採用していた。「SAO II」とプリントされたチョークコイルの姿も確認できる
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MT61K256M32JE-12
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 なお,搭載するメモリチップはMicron Technology製のGDDR6「MT61K256M32JE-12」(12Gbps品,チップ上の刻印は「8XA77 D9WCR」)。メモリクロックは12GHz相当なので,メモリチップの仕様上は,マージンはまったくないことになる。
 8Gbit品のチップを6枚搭載しているので,総メモリ容量は6GBだ。


ROG-STRIX-GTX1660TIの定格と「リファレンス相当」のクロックで検証


 テストのセットアップに入ろう。
 今回,比較対象としては,表1でもその名を挙げたRTX 2060とGTX 1070,そしてGTX 1060 6GBのいずれもFounders Editionを用意した。Turing世代の上位モデルに対してどの程度の性能があり,かつ前世代のGPUとの比較でどの程度の位置づけになるかを見ようというわけである。

 なお,ROG-STRIX-GTX1660TIは前述のとおり,2つのVBIOSと3つの動作モードを有しているが,今回はこのうち,工場出荷時設定の「PモードかつGaming mode」を用いる。
 また,GPU Tweak IIから動作クロックをリファレンス相当にまで落とした状態でのテストも行うことにした。ROG-STRIX-GTX1660TIは大型のクーラーを搭載するため,「リファレンス相当のクロック設定におけるベストケース」に近いスコアになるはずだが,そこはやむを得ないものとして話を進める。

 テストに用いたグラフィックスドライバは,NVIDIAから全世界のGTX 1660 Tiレビュワーに対して配布された「GeForce 418.91 Driver」だ。NVIDIAは北米時間2月13日付けで同じバージョンのドライバを公開済みだが,そのGTX 1660 Ti対応版という理解でいいだろう。
 組み合わせるWindows 10では「October 2018 Update」を適用。また,とくに断りのない限り「電源プラン」は「高パフォーマンス」で統一した。そのほかテスト環境は表2のとおりとなる。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション22.1準拠。NVIDIAはGTX 1660 Tiのターゲット解像度を1920×1080ドットとしているが,より高い解像度設定における挙動も確認すべく,今回は3840×2160ドットおよび2560×1440ドットもテスト対象とした。


RTX 2060比で8割強の3D性能。NVIDIAの言うとおり,新しめのタイトルではGTX 1070を上回る


 以下,ベンチマーク考察段に限り,ROG-STRIX-GTX1660TIの工場出荷時設定を文中ではそのまま製品名,グラフ中では「ASUS 1660 Ti」と表記し,さらにROG-STRIX-GTX1660TIの動作クロックをリファレンス相当にまで下げた状態は文中,グラフ中とも「GTX 1660 Ti」と表記することを断ったうえで,「3DMark」(Version 2.8.6446)の結果から順に見ていこう。

 グラフ1は「Fire Strike」における総合スコアをまとめたものだ。GTX 1660 TiのスコアはRTX 2060の77〜83%程度なので,Turing世代のGPUとして8割というプロセッサ規模らしい数字が出ていると言える。
 Pascal世代のGPUと比較すると,GTX 1070比で80〜92%程度,GTX 1060 6GB比で110〜127%程度なので,おおむね両者の間といったところになる。ただ,GTX 1660 Tiのターゲット解像度である1920×1080ドットでテストを行うFire Strike“無印”でGTX 1070の約92%,GTX 1060 6GBの約127%という点は押さえておきたい。

 なお,ROG-STRIX-GTX1660TIだと,リファレンスクロック動作時比で3〜4%程度高いスコアを示した。

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 続いてグラフ2は,Fire StrikeにおけるGPUテスト「Graphics test」の結果を抜き出したものになるが,全体としては総合スコアを踏襲するスコア傾向である。GTX 1660 TiはRTX 2060の75〜83%程度,GTX 1070の77〜92%程度,GTX 1060 6GBの107〜126%程度となる。
 カードの定格動作時におけるスコア向上率は約3%だった。

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 やはりFire Strikeから,物理シミュレーション「Bullet Physics」をソフトウェア実行する事実上のCPUテスト「Physics test」のスコアを抜き出したものがグラフ3だ。
 今回のテストではCPUを揃えているため,スコアはキレイな横並びとなった。

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 CPUとGPUの両方の性能がスコアに影響する「Combined test」の結果がグラフ4だが,ここでGTX 1660 TiはRTX 2060比71〜81%程度,GTX 1070比89〜93%程度,GTX 1060 6GB比126〜144%程度となり,RTX 2060からの「置いて行かれ度合い」とGTX 1060 6GBに対する「引き離し度合い」が大きくなっている。Combined testではスコア差がより顕著になるということなのだろう。
 ちなみにROG-STRIX-GTX1660TIもGTX 1660 Tiに対してFire Strike“無印”で約7%と,相対的に大きなスコア差を付けた。

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 3DMarkのDirectX 12テスト「Time Spy」における総合スコアをまとめたものがグラフ5となる。
 Time SpyではPascal世代のGPUに対してTuring世代のGPUが優勢に立ち回る傾向が強く出るのだが,果たしてTuring世代のGTX 1660 TiはGTX 1070に対して105〜108%程度,GTX 1060 6GBに対しては143〜145%程度いう,目を見張るスコアを残した。
 なお,対RTX 2060のスコアは84〜85%程度なので,Fire Strikeと比べると若干縮んだことになる。ROG-STRIX-GTX1660TIにおけるクロックアップの効果は2〜3%程度だ。

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 続いてTime Spyの総合スコアからGPUテストの結果を抜き出したものがグラフ6である。
 ここでGTX 1660 TiのスコアはRTX 2060の82〜83%程度,GTX 1070の106〜109%程度,GTX 1060 6GBの149〜151%程度で,Pascal世代のGPUに対する優位性はさらに広がった。

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 一方,CPUテストのほうだと,CPUが揃っているため,Fire Strikeと同じく横並びの結果となった(グラフ7)。

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 では,実際のゲームアプリケーションだとどうか。グラフ8〜10はTuringアーキテクチャにおけるFP16性能がメリットになるとNVIDIAがアピールしている「Far Cry 5」のテスト結果だが,平均フレームレートでGTX 1660 TiはRTX 2060の83〜88%程度,GTX 1070の100〜101%程度,GTX 1060 6GBの135〜141%程度というスコアを示した。対GTX 1070ではFP16性能,対GTX 1060 6GBではFP16性能とメモリバス帯域幅が奏功したと捉えるのが妥当だろう。
 対RTX 2060で高解像度になるほどスコア差が開くのもメモリバス帯域幅の影響と見るべきだ。

 なお,ROG-STRIX-GTX1660TIのスコアはGTX 1660 Tiに対して平均フレームレートで約3%高かった。最小フレームレートも2〜3%程度と若干上がっている。

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 Far Cry 5と比べると比較的古いタイトルとなる「Overwatch」の結果がグラフ11〜13だが,案の定というかなんというか,ここでGTX 1660 Tiの平均フレームレートはGTX 1070の93〜94%程度で,届いていない。
 ただ,それでもGTX 1060 6GBには平均フレームレートで30〜32%程度のスコア差を付けており,新世代ミドルクラスGPUとしてここは面目躍如と言っていいだろう。
 対RTX 2060だと85〜86%程度といったところなので,ここはFar Cry 5とほぼ同じ傾向と言ってしまってよさそうだ。

 ROG-STRIX-GTX1660TIでGTX 1660 Tiから平均フレームレートで2〜3%程度の伸びを示すのもFar Cry 5と同様である。

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 グラフ14〜16の「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)では,Overwatchと比べると多少Far Cry 5寄りの結果となった。平均フレームレートでGTX 1660 TiはRTX 2060の79〜91%程度,GTX 1070の98〜99%程度,GTX 1060 6GBの132〜135%程度だ。
 最小フレームレートだとGTX 1660 TiのほうがGTX 1070より低いのが気になるかもしれないが,PUBGのテストでは実プレイを伴うので,この程度は測定誤差として生じうるレベルだと考えている。

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 「Fortnite」では,ここまでとまた異なる傾向が得られた。グラフ17〜19でGTX 1660 Tiは2560×1440ドット以下の条件だとRTX 2080比82〜84%程度,GTX 1070比104〜106%程度,GTX 1060 6GB比137〜138%程度と,とくに対Pascal世代で良好な結果を残すのだが,3840×2160ドットではGTX 1060 6GBと並んで上位2モデルから大きく引き離されてしまうのだ。
 メモリバス帯域幅が原因なのであればGTX 1070より高いスコアを示してしかるべきだが,そうなっていないことからするに,Fortniteで4Kを相手にするにはGPUの地力が足りていないような印象がある。

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 一方,GDDR6メモリ採用の効果がはっきり出たと言えるのが,グラフ20〜22にスコアをまとめた「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)である。Shadow of Warでは,高解像度テクスチャパックを導入していることもあり,メモリ周りの負荷が非常に高くなっている。そのため,メモリ帯域幅でPascal世代の2製品を上回るGTX 1660 Tiが,順当に高いスコアを示す。平均フレームレートで対GTX 1070は約105%,対GTX 1060 6GBは108〜135%程度だ。

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 世代的には古いタイトルと言える「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の総合スコアをまとめたものがグラフ23となる。
 GTX 1660 Tiのスコアは,ここでRTX 2060の82〜91%程度,GTX 1060 6GBの123〜132%程度ながら,GTX 1070にはあと一歩届かなかった。このあたりは本稿の序盤で紹介したとおり,GTX 1660 Tiが最新世代のタイトルへ最適化されていることの証左と言えるのではなかろうか。

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 グラフ24〜26は,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものになる。
 GTX 1660 Tiのターゲット解像度である1920×1080ドットに着目すると,GTX 1070とのスコア差はそれほど大きくない。GTX 1070と同等の快適性は得られると述べてよさそうだ。

 なお,ROG-STRIX-GTX1660TIのスコアはGTX 1660 Ti比でプラス約3%と,ここまでの傾向を踏襲している。

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 「Project CARS 2」の結果がグラフ27〜29だが,GTX 1660 Tiの平均フレームレートはRTX 2060の84〜85%程度,GTX 1070の89〜91%程度,GTX 1060 6GBの125〜126%程度。数字を見る限りはProject CARS 2もTuring世代のGPUが真価を発揮にしにくいタイトルと言えそうだ。

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GTX 1060 6GB比で消費電力は若干大きくなったGTX 1660 Ti


 本稿の序盤で紹介したとおり,GTX 1660 TiのTDPは120Wで,GTX 1060 6GBから変わっていない。では,実際の消費電力も同程度なのだろうか。
 「4Gamer GPU Power Checker」(Version 1.1)を用いて,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行時におけるカード単体の消費電力推移をまとめたものがグラフ30となる。これを見ると,GTX 1060 6GBが100W強あたりで推移しているのに対し,GTX 1660 Tiは150W弱で推移しているように見受けられる。150Wを超える回数もGTX 1060 6GBの51回に対してGTX 1660 Tiは64回と明らかに増えていた。

※グラフ画像をクリックすると拡大版を表示します
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 そんなグラフ30における中央値を求めたものがグラフ31だ。GTX 1660 Tiのスコアは120W弱で,GTX 1060 6GBから15Wほど増加していた。
 注意したいのは,今回GTX 1660 Ti搭載カードとして用いているROG-STRIX-GTX1660TIがGTX 1660 Tiカードの上位モデルであり,RTX 2060 Founders Edition並みの電源回路を備えている点である。その事実を考慮するに,多くのGTX 1660 Tiでここまでのスコア差にはならないような気もする。
 ただ,「同じ」とも考えられそうにはないというのも正直なところで,GTX 1060 6GBと比べて消費電力は増大していると見ておくのが安全だろう。消費電力はGTX 1070並みか,それより少し小さいくらいと考えておけば大きな失敗はしないはずだ。

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 念のため,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の最大消費電力も計測してみた。
 ここでのテストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ32となる。

 ピークを取得するこのテストではスコア差が広がりやすいが,ここでGTX 1660 TiとGTX 1060 6GBとの違いは各アプリケーション実行時で8〜28Wとなっている。ROG-STRIX-GTX1660TIにおける消費電力の増大量は1〜16W程度なので,クロックアップの代償としては納得できるレベルと言っていいのではなかろうか。

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 最後にGPUの温度もチェックしておきたい。ここでは,温度を約24℃に保った室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,「GPU-Z」(Version 2.16.0)から温度を取得することにした。
 その結果がグラフ33となる。
 GPUごとに温度センサーの位置は異なり,また,温度の制御法もGPUクーラーも異なるため,横並びの評価に意味はない。それを踏まえたうえでスコアを見ていくわけだが,ここではGTX 1660 Tiが高負荷時でも60℃強と非常に温度が低い点に注目したい。ROG-STRIX-GTX1660TIの搭載する大型GPUクーラーは見た目どおりの高い冷却能力を持っていると断言してよさそうだ。
 なお,アイドル時にGTX 1060 6GBの温度が高めなのは,0dB Technologyによりファンの回転が停止するためである。

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 筆者の主観であることを断りつつ,ROG-STRIX-GTX1660TIが搭載するGPUクーラーの動作音について触れておくと,非常に静かな印象を受けた。GTX 1060 6GB Founders Editionより静かなことは間違いなく,かなり静音性は高い。


最新世代のゲームでGTX 1070+α程度で,将来的には鉄板となり得る。それだけに……


製品ボックス
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 以上,GTX 1660 Tiのゲーム性能はRTX 2060の8割強で,Turing世代のGPUとしてはこれ以上ないほど順当なところにあると言える。Pascal世代のGPUとの比較だと,最新世代のゲームタイトルであればGTX 1070以上,そうでなくともGTX 1060 6GB比でざっくり30%くらいは高い性能を期待できるので,1920×1080ドット解像度をターゲットとしたGPUとしては悪くないだろう。グラフィックス設定を少し下げ気味にすれば,最近のバトルロイヤル系タイトルで垂直リフレッシュレート144Hz対応ディスプレイと組み合わせて使っていくのも容易なはずだ。

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 気になる搭載カードの価格だが,国内流通筋の情報によると,それこそROG-STRIX-GTX1660TIのような一部ハイエンドモデルを除けば3万5000〜4万円(税別,税込3万7800〜4万3200円)程度で販売が始まる見込み。2019年2月22日現在における搭載カードの実勢価格で言うと,流通在庫のみになっていると思われるGTX 1060 6GBが2万7000〜3万3000円程度,ほぼ間違いなく流通在庫のみのGTX 1070が4万1000〜5万円程度なので,発売当初は,GTX 1060 6GBの置き換えというよりむしろGTX 1070の置き換えと捉えたほうが価格対性能比で満足度は高いかもしれない。

 ブランドを問わなければ搭載カードを4万円台半ばから購入できるRTX 2060という「値下げ圧力」を受け,全体的に価格が下がってくると,将来的にGTX 1060 6GBの正統後継として新しい「鉄板」となる可能性も大いにあるだろう。
 ……今後,リアルタイムレイトレーシングおよびDLSSに対応したゲームが仮にどんどん増えていった場合,せっかくの新世代GPUなのに一切対応できない,というリスクを抱えることになる点だけは覚悟が必要だが。

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 しかし,NVIDIAはこれで舵取りが難しくなったはずだ。GTX 1660 Tiが売れれば売れるほど,「リアルタイムレイトレーシングにもDLSSにも対応しないGPU」の市場シェアが上がるわけで,それはゲームデベロッパにとって,リアルタイムレイトレーシングとDLSSに対応するモチベーションを大いに削ぐ要因となり得る。NVIDIAがそのバランスをいかに取るかによって,GeForce RTX 20シリーズの将来は決まることになるのではなかろうか。

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