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勝利の鍵は手塩にかけて育てた木が死を迎えること。異色のエコロジー系ボードゲーム「Photosynthesis」のプレイレポートをお届け
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印刷2017/11/06 15:25

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勝利の鍵は手塩にかけて育てた木が死を迎えること。異色のエコロジー系ボードゲーム「Photosynthesis」のプレイレポートをお届け

 ボードゲーム「Kingdomino」で,2017年ドイツゲーム賞の批評家賞を見事に勝ち取ったBlue Orange Games。10月26日から29日までドイツ・エッセンで開催されていたSPIEL’17では,自社ブースで新作をいくつか出展していた。

 そのなかでも,同社がとくに力を入れていた作品,それが木を育てるアブストラクトゲーム「Photosynthesis」だ。来場者の大半を占めるドイツの人々が,エコロジーや自然といったテーマに高い関心を持っていることもあってか,試遊コーナーは常に人だかりができていた。そんな注目作をプレイをしてきたので紹介しよう。

Blue Orange Gamesから発売されている「Photosynthesis」。ゲームデザイナーはHjalmar Hach氏で,カバーアートなどを手掛けるアーティストは,Sabrina Miramon氏。価格は44.99ドルとなる
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日光を集めて木を育て,再び土に還してスコアを獲得しよう


 本作におけるプレイヤーの目的は,自分の木をたくさん植えて大きくしていくことである。また本作は対戦ゲームなので,勝つためにはほかのプレイヤーの木の繁茂を妨害しなければならない。
 ちなみに設定上では,ゲーム中に人間が登場することはないため,本作でイメージされているのは,人工的な植林というよりも,木々そのものの自然な繁茂といえそうだ。

 ゲーム開始時には,各プレイヤーに対し種子トークン2個と小型の木4本,そして中型の木2本が与えられる。このうち小型の木を,場の中央に置かれたゲームボードのもっとも外側にあるタイルに,好きなように配置して初期の勢力とする。

ファーストラウンド前の状況
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 各ラウンドにおけるプレイヤーのターンは,以下の2種類のフェーズで成り立っている。

1.「光合成」フェーズ: ゲームボード上にある自分の樹種の木の数,および太陽セグメント(6角形のゲームボードの各頂点を,毎ラウンド移動していく)の位置に基づいて計算される日光ポイントを獲得する。

2.「ライフサイクル」フェーズ: 光合成フェーズで獲得した日光ポイントを消費して,プレイヤーボード上にある種子や樹木などのアイテムを購入。それらを個人ボード上に配置(またはボード上にあるアイテムと交換)する。

 光合成フェーズで獲得できる日光ポイントは,ゲームボード上に生い茂る自分の木のサイズに基づき,最大で20ポイント獲得できる。具体的には,小型の木で1点,中型の木で2点,大型の木で3点が得られるといった感じだ。

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 この計算時において大きな意味を持つのが,ゲームボードの周囲を移動する太陽セグメントと,それによって作られる木の影だ。樹木はそれぞれのサイズに応じて太陽セグメントと反対側のスペースに影を発生させる。このとき,サイズが同等あるいは大きい木の影に覆われてしまう木は,「光合成ができない状態」になり,日光ポイントを獲得できなくなる。

 例えば,大型の木であれば,その背後の3スペース分のあらゆる樹木に対する日光ポイントを無効化できる。しかし,小型の木の後ろにそれよりサイズの大きい木が立っていた場合,影響はない。日が差す方向が各ラウンドで変化するのにつれて各樹木の影響力も変わっていく仕組みだ。

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 次のライフサイクルフェーズでは,集めた日光ポイントを消費して,個人ボード上にあるアイテムを購入できる。ここで購入した種子を樹木をゲームボードに配置していくのだが,成長した木を置くには条件があるので,基本は種子から少しずつ育てていかねばならない。
 そしてここでも,樹木のサイズが大きな意味を持ってくる。というのも,種子トークンを新たに置けるのは,ゲームボードに置かれている自分の樹木の一定スペース内に限られるうえ,その範囲は木が大きければ大きいほど広がっていくからだ。

 こうして配置した種子や樹木は,手元にある次のサイズの樹木と交換すると成長させられる。交換によりゲームボードから取り除かれたアイテムは,プレイヤーボードのそれぞれの場所に再び戻り,再購入が可能になる。

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 大型の木は交換できない代わりに,ライフサイクルの終結点である死を迎え,日光ポイントを4点消費してゲームボードから取り除くと,プレイヤーのスコアとなる。そのとき,「どこで土に還ったか」によってスコアは異なり,ゲームボード中央のより肥沃なスペースに行くほど高得点が得られる。
 せっかく成長させた木を死なせないと得点が得られないというのは,筆者が本作の中でもとくに面白いと感じた部分の1つだ。

 この2フェーズからなるターンをすべてのプレイヤーが終えたら,1ラウンドが終了となる。以降は同じ手順を繰り返し,太陽セグメントがゲームボードの周囲を3巡したら,その時点でスコアポイントの一番多いプレイヤーが勝利する。


高い戦略性と美しいビジュアルを兼ね備えた良作


 以上のように,本作のルールは比較的シンプルだが,現実の植物のライフサイクルや生存圏争いが(抽象的にではあるが)シミュレートされている点が興味深い。プレイ時間は30分前後とそこまで長くはないが,その間のゲームボード上の展開には,現実の森が数百年にかけて変化していく様子が凝縮されているように感じられる。
 また,その変化を見ていると,対戦ゲームにも関わらず,皆で協力して森を育てているような不思議な気分にもなってくる。

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 一方で,本作はシビアな対戦ゲーム(とくに4人プレイ時)としても楽しめる。それは,個人ボードとゲームボードの双方に高い戦略性が潜んでいるからだ。

 個人ボードで購入できるアイテムには限りがあるのだが,それらを最大20点の日光ポイントからやりくりして入手するのは,結構難しい。
 しかもこれらのアイテムは,残りが少なくなると1点割高になる。たかだか1点くらいと思うかもしれないが,種子を購入してから土に還すまでには最低でも12点が必要なことを考えると,その1点が決定的な影響を及ぼすこともある。

 こうしてプレイヤーは,どのアイテムを購入するかだけでなく,特定のアイテムをあらかじめ買いだめをしておくか,それとも個人ボードにアイテムを戻して,次のターンに安く手に入れるかといった判断も迫られることになる。

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 ゲームボード上では,樹木をどのように配置して,どう成長させていくかという戦略性が求められる。最初に考えるべきは,37のスペースのどこに種子を配置するかだ。より高いスコアが得られるゲームボードの中央に進出するのが一見よさそうに思えるが,中央部はほかのプレイヤーの木の影になりやすい。
 逆に,周縁部のスペースはスコアは低いが,日光ポイントのロスを比較的受けにくいし,プレイヤー間の競争もおとなしい。

 また,太陽セグメントはラウンドごとに移動するので,自分で配置した樹木同士の影が被らないようにすることも重要だ。プレイヤーはこのようにして,それぞれのスペースのメリット・デメリットを天秤にかけながら種子を埋めていくことになる。

 加えて,配置した種子をどのように成長させるかも思案のしどころだ。成長した木は,より多くの日光ポイントを獲得できると同時に,ほかのプレイヤーの日光ポイント獲得を妨害し,更には種子をより遠くに飛ばすことができるなど,良いことづくめだ。
 だが,中型や大型の木は利用できる本数が少ないし,そもそもゲームボードにどれだけ木があっても,ゲームに勝利するためのスコアを生み出すことはない。このため,樹木を成長させたり,ゲームボード上に置かれた木を個人ボードに回収したりするタイミングを,見極めなければならないのだ。

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 さらに,「あるターンに1つのスペースで可能なアクションは1個のみ(例えば,大木を取り除いてスコアを獲得した直後に,そのスペースに種子を置くことはできない)」や,「あるラウンドで最初にプレイするプレイヤーは,(この大きなアドバンテージを相殺するために)次のラウンドでは最後にプレイする」など,細かいルール調整も行われている。
 これらのルールにより, ストラテジーゲーム全般を遊ぶうえでの醍醐味である「有限のリソースをどう配分するか」を考えるのが非常に楽しいのだ。

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 このように本作は,単純に色とりどりの木々の盛衰を楽しみたい人から,ガチで陣取り合戦をしたい人まで,幅広い層のプレイヤーが楽しめる作品になっている。言語依存性がまったくないことも,大きなポイントだろう。

 なお,会場では4人でプレイすることになったのだが,色とりどりの樹木が文字通り林立する様は綺麗ではあるものの,序盤からプレイヤー間の競争が激化する慌ただしい展開となった。このため,本作は2〜4人でのプレイに対応しているとはいえ,少しゆるめのゲームバランスで樹種の勢力拡大を楽しみたい場合は,3人で遊ぶのがちょうどいいかもしれない。

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