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[CEDEC 2017]「ソードアート・オンライン」のようなMMORPGは本当に実現できるのか? 川原 礫氏と原田勝弘氏,二見鷹介氏による基調講演をレポート
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印刷2017/08/31 13:17

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[CEDEC 2017]「ソードアート・オンライン」のようなMMORPGは本当に実現できるのか? 川原 礫氏と原田勝弘氏,二見鷹介氏による基調講演をレポート

 2017年8月30日〜9月1日,ゲーム開発者向けのカンファレンス「CEDEC 2017」がパシフィコ横浜で開催されている。本稿では,開催初日に行われた基調講演「『ソードアート・オンライン』 仮想から現実へ。 小説とゲーム技術のお話。 〜ソードアート・オンラインが現実になる日まで。〜」の模様をお伝えしたい。

 本講演は「ソードアート・オンライン」(以下,SAO)を代表作とする作家の川原 礫氏と,バンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘氏二見鷹介氏によるトークという形式で行われた。話題はオンライン小説からゲーム,テレビアニメ,映画などへのメディアミックス展開を果たしたSAOの事例から,MMORPGの世界やVR,AIなど最新技術にも及んだ。

講演の冒頭では「ソードアート・オンライン」の概要が紹介された
ソードアート・オンライン フェイタル・バレット
ソードアート・オンライン フェイタル・バレット

「CEDEC 2017」公式サイト


 最初のテーマは,小説版SAOにおけるゲームの表現について。本作は,もともとVRのMMORPGを舞台としたオンライン小説だったが,川原氏は「ことあるごとに繰り返して表現したのが,自分の肉体がアバターであること」だと述べた。さらに,「その感覚は,想像してもしきれないところがある」とも説明し,例えばポリゴンで表現されているゲーム内のオブジェクトを触ったとき,それが固いのか,それともつるつるしているのか想像が及ばないというのだ。

「ソードアート・オンライン」の原作者・川原 礫氏

 その疑問に対して原田氏が,「将来的に,おそらく人間が注視している部分だけ細かく描写する──例えば髪の毛に注目して触ったときにだけ,サラサラした感触が得られるような処理になっていくだろう」とし,それに対して川原氏は,SAOに登場する「ディテール・フォーカシング・システム」も同じような理屈を考えたとした。

 二見氏がSAOで好きな表現は,女性キャラが入浴するときに髪をまとめたり,ゲーム内で宿題をしたりといったように,デジタルの世界の中で「現実の人間らしい行動を取る点」だという。
 川原氏は,そうした表現について「(入浴シーンは)サービスの意味合いもある」としつつ,「(VRの表現に対する)書き手としての興味や,作家としての想像力によるもの」と説明した。

バンダイナムコエンターテインメント CS事業部 プロダクションディビジョン プロデューサー 二見鷹介氏。本講演では,主に司会進行を務めた

 川原氏は小説でVR環境を表現する際に難しいものとして,「髪の毛」「液体」「食べ物」を挙げている。「例えばVRで水をすくったとき,それが指の隙間からこぼれるような表現はできるのだろうか」との疑問を提示した。
 それに対して原田氏は,「その処理にどれだけリソースを割けるか,という問題なので,テクノロジーの進化にしたがって将来的には表現できるだろう」と述べた。

 原田氏は続けて,「映像表現が進化するのはいいことだが,プレイヤーがゲーム内の世界を現実世界と同等に捉えられるほど現実感を突き詰めると,それはもはやエンターテイメントにはなり得ない」との持論を披露し,「SAOのように入浴するのは,プレイヤーがゲーム世界だと思っていないから。それは,昔のMMORPGでも少なからず感じられたことだが,映像や音がどんどんリアルになっている最近は,どこか片足を現実に置いていないと面白くならない」と説明した。

 例えばジェットコースターやフリーフォールなど,恐怖体験をセールスポイントとするアトラクションは,体験者が安全だと分かっているからエンターテイメントとして成立するのであり,いかに安全が保証されていても,何も知らない人がいきなりクルマに閉じ込められて50mも落とされたら,それは単なる恐怖体験にしかならない。同様に,VRが娯楽として成立するためには,現実の自分が安全なところにいることをプレイヤーが把握できる必要があるわけだ。

バンダイナムコエンターテインメント Worldwide Planning & Development Unit 部長/ゲームディレクター/チーフプロデューサー 原田勝弘氏

 トークの次のテーマは,SAOのゲーム展開について。2010年頃にバンダイナムコから最初にSAOのゲーム化を打診されたとき,川原氏は「主人公のキリトが女の子達と仲よくなっていくアドベンチャーゲーム」だと思ったそうだ。しかし,実際に企画書を読んだところ「かなりガチなゲーム」で驚いたという。
 「勝算はどこにあったのか」と尋ねた川原氏に,二見氏は「『.hack』シリーズが大好きだったため,ゲーム内ゲーム,あるいは疑似MMORPGのような要素が受けるのではないか」と考えたと述べた。

 海外に行く機会の多い原田氏によれば,世界的にそうしたゲーム内ゲームが理解されるようになったという感覚が得られたのは,つい最近とのことだという。実際SAOも,「なんで素直にMMORPGにしないのか?」と聞かれることが多かったそうだ。
 二見氏も「発表当時は『SAOオフライン』と呼ばれたこともあった」と苦笑しつつ,いざ発売されると中高生に広く受け入れられたとし,「若い人達はネットワークを使った世界観と相性がいいと感じた。そういう時代になったということなのではないか」という見解を述べた。
 それに関連して川原氏は,ゲーム内で主人公達がゲームのメニューを操作していることに自分でも不思議な感覚があるとし,「若い人達は,それを自然に受け入れている」との感想を語った。

 3つめのテーマは,川原氏がSAOを書いた経緯について。川原氏がMMORPGを小説のモチーフにしようと考えたのは,「『ウルティマオンライン』『ラグナロクオンライン』に費やした膨大な時間の元を取りたかったから」だそうだ。「あの当時,VRを使ったMMORPGを題材として,かつデスゲームの要素を持つ物語は,誰が書いてもおかしくなかった。偶然,僕が先に書いただけ」とし,「一番ありがたいと思っているのは,MMORPGに多くの時間を費やした頃の自分を肯定できるようになったことだ」と話していた。

 さらに川原氏は,VRの世界をテーマにした小説が1970年代から存在していたことに言及し,SAOではジェイムズ・P・ホーガンの「仮想空間計画」をヒントにしたことを明かした。「仮想空間計画」の中ではとくに,主人公がVR世界の中にいるかどうかを確かめるためにグラスを叩き割ると,システムの処理が追いつかず,解像度が下がるシーンに面白さを感じたという。
 川原氏はインスパイアされた小説として,そのほかに「クラインの壺」や「クリス・クロス 混沌の魔王」を挙げていた。

 さらにSAOには,プレイヤーを拘束するものとして,外すことも破壊することもできない「ナーヴギア」と呼ばれるヘッドマウントディスプレイ(HMD)が登場する。見た目は現在のHMDに酷似しているが,川原氏によれば,SAOにデスゲームの要素を持たせることを決めたときに考えたそうだ。
 川原氏は,「それでも何らかの手段でナーヴギアの破壊を試み,成功する事例も出てくるのでは」という疑問に対する言い訳として,「事件の黒幕が,誰か一人でもナーヴギアの破壊を試みたらプレイヤー全員を殺すという設定を作った」と説明した。それらを踏まえ,SFに寄りすぎず,あくまでもゲーム小説としての落としどころを模索したら,必然的に現行のHMDに近いものとなったと語った。

SAOに登場したVRデバイスを紹介する一幕も。このうち医療用の「メディキュボイド」は,川原氏の考えた“ゲーム以外でのVRの利用方法”だ。現実世界でも,VRを医療に応用する試みが行われている
ソードアート・オンライン フェイタル・バレット
ソードアート・オンライン フェイタル・バレット

 これに関連して原田氏は,現行のHMDがVR普及の一つの壁になっていると指摘する。長年VRの研究を続けてきた原田氏は現行のVRコンテンツについて,「プレイの前に説明を読んだ時点で,『たぶん,こんな感じではないか』という体験の質が予想でき,HMDを装着してプレイする気力を失うケースがある」と述べた。

 原田氏は「コンテンツが悪いわけではない」と前置きしたうえで,「5分間の素晴らしい体験のために,センサーを設置したりHMDを装着したりしなければならないわずらわしさがハードルを上げている。もう少し技術が進化して,眼鏡をかけるような手軽さでコンテンツが楽しめるようにならないと,次はないかもしれない」と述べ,「いずれこうした事になると予想できたが,結構早く壁が来た感じだ。今はテクノロジーの進化を待っているところ」と付け加えた。
 川原氏と原田氏は続いて,網膜に直接映像を投影するなどいくつかの手法の可能性を論じていたが,結局,「20年後30年後にどうなっているのか興味深い」という結論に落ち着いていた。

 続くテーマは,ARについて。川原氏がシナリオを手がけた劇場版SAOには「オーグマー」と呼ばれる情報端末を使うAR対応のMMORPG「オーディナルスケール」が登場するが,なぜ従来のようにVRを使わなかったのだろうか。

ソードアート・オンライン フェイタル・バレット

 その点について川原氏は,「女神転生」シリーズや「グランツーリスモ」シリーズなど,現実の都市をゲーム中に再現した作品が大好きで,「自分もいつかやってやろう」と考えていたという。
 劇場版SAOのシナリオでは,「東京をVRで再現しよう」と書き始めたのだが,「仮想の東京で戦っているプレイヤーの本体は,東京以外の自宅にある。『さっきまでお台場にいたのに,起きたら自宅!』という感覚が邪魔なんじゃないか」という思いが生じ,「それならARを使って生身で戦ったほうがいい」と考えついたそうだ。

 生身の体を使うという点について「屈強な体の持ち主のほうが有利なのでは」と原田氏が質問し,それに対して川原氏は,実際に体を動かして戦うVRコンテンツをプレイしたときの経験を例に,「小さなアクションでも,十分に敵を倒すことができた。『オーディナルスケール』でも,たとえ屈強でなくとも効率よく戦えば勝てる手法が編み出されていると思う」と答えていた。

ソードアート・オンライン フェイタル・バレット

 ちなみに劇場版SAOにARを採用したことについて,「Pokémon GO」の影響を指摘する声も一部に存在するそうだが,設定を決めたのは2014年とのことで,むしろ「Ingress」のほうがヒントになったという。とはいえ,「Pokémon GO」のレイドバトルのテレビコマーシャルを見て,「あれこそ自分がやりたかった表現」と思っているそうだ。

 最後のテーマは,AIだった。劇場版SAOには,高度なAIによって行動するAR歌姫「ユナ」が登場するのだが,川原氏は「ナーヴギアと同じくらいのオーバーテクノロジーとして描いた」と説明した。また劇場版SAOには,人格やライフログをAIに取り込むことで,故人の知識やノウハウを活かすといった,現実世界でも行われている試みを内包している部分もあるという。

ソードアート・オンライン フェイタル・バレット

 また原田氏は,保険会社などのサポートチャットの簡単な受け応えのほとんどにAIが使われていることを踏まえて,「AIについて言えば,半世紀後にはユナのような自我に目覚めた存在,もしくは自我に目覚めたように見える存在が実現しているかもしれない」と語った。

 AIに関しては,小説版SAOの「アリシゼーション」編に「トップダウン型」と「ボトムアップ型」の2種類のAIが登場している。このうちトップダウン型は,上記のサポートチャットやiOSの「Siri」を極限まで進化させたもので,人間の質問にほぼミスなく答えられるAIだ。しかし川原氏によると,このタイプのAIに会話の内容や言葉の意味まで理解できるかといえば,疑問があるとのこと。

 もう一方のボトムアップ型は,人間の脳をニューラルネットワークにより再現したものになる。そこには知性が生ずる可能性があり,そうなれば当然,会話の内容なども理解できる。原田氏の見解では,「自分が生きている間に可能かどうか不明だが,将来的には確実に実現できる」とのことで,「そうしたAIをどう扱うかをめぐって,人間同士の争いが生まれることもあるのではないか」とも語っていた。

 ちなみに原田氏は,最近話題になった「高度に進化したAIが人間を滅ぼす」といったことは起きないと考えている。これは「人間を滅ぼそうというAIが出てくれば,その一方で人間を守ろうとするAIも出現するだろう」という考えに基づいている。

 トークの最後,原田氏は「VRは本当に面白いもので,研究すればするほど現実社会を再定義しなければならなくなる。VRMMORPGがどこまで再現できるのか,そしてそれがどのくらい先の話なのかは分からないが,人間は今,新しい世界と価値観,そしてAIを含めた新しい生命が生まれるスタート地点にいる。今後もこの研究に足を踏み入れ続けたい」とコメントした。

 また川原氏は「最近では,小説を書いている自分の発想が現実のテクノロジーに追い抜かれていることもあります。現実に追いつかれないよう,一足先二足先の未来を見せられる作家になろうと考えています」と語り,講演を締めくくった。

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僕はずっと,MMO世界の傍観者だったんです――不定期連載「原田が斬る!」,第3回は「ソードアート・オンライン」川原 礫氏とのVRMMO談義

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