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Radeon RX Vegaシリーズ追試。6つ用意された動作モードの切り替えで性能と消費電力はどう変わるのか
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印刷2017/10/10 00:00

テストレポート

Radeon RX Vegaシリーズ追試。6つ用意された動作モードの切り替えで性能と消費電力はどう変わるのか

画像集 No.003のサムネイル画像 / Radeon RX Vegaシリーズ追試。6つ用意された動作モードの切り替えで性能と消費電力はどう変わるのか
 4Gamerでは,AMDの新世代GPUであるRadeon RX Vegaシリーズのレビューをお届け済みだが,リファレンスデザインの最上位となる簡易液冷GPUクーラー付きモデル「Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition」(以下,RX Vega 64 LCE)と空冷版の「Radeon RX Vega 64」(以下,RX Vega 64),そして下位モデル「Radeon RX Vega 56」(以下,RX Vega 56)はいずれも,性能は従来製品と比較して大きく向上しているものの,価格設定と消費電力が大きなネックというのが,大枠でのまとめである。

 テストの詳細は各レビュー記事をチェックしてもらえればと思うが,そのいずれにおいても筆者は2つの宿題を残していた。1つは,Radeon RX Vegaシリーズで6つ用意されている動作モードの挙動をチェックすることで,もう1つはカード単体の消費電力だ。
 カード単体の消費電力を計測するツールである「4Gamer GPU Power Checker」の問題が解決したタイミングで,これらの宿題を片付けつつ,Radeon RX Vegaという新世代GPUの立ち位置について,もう少し深く考察してみたいと思う。

4Gamer GPU Power CheckerにRX Vega 64カードを差した例
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「Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition」レビュー。動作クロックがより高く消費電力の大きい簡易液冷版はどれだけ速いのか

「Radeon RX Vega 64」レビュー。ついに登場したVegaは,AMDと一緒に壮大な夢を見たい人向けのGPUだ

「Radeon RX Vega 56」レビュー。AMDイチオシのGPUには,GTX 1070と真正面から戦える実力があった



いずれも合計6種類の動作モードがあるRadeon RX Vegaの3製品


Dual BIOS Toggle Switch。写真はRX Vega 64リファレンスカードのものだ
画像集 No.004のサムネイル画像 / Radeon RX Vegaシリーズ追試。6つ用意された動作モードの切り替えで性能と消費電力はどう変わるのか
 まずは,Radeon RX Vegaシリーズの動作モードについてお伝えしておこう。RX Vega 64 LCEとRX Vega 64,そしてRX Vega 56はいずれも,本体側面,外部出力インタフェースに近いところに,2つのグラフィックスBIOS(以下,VBIOS)を切り換えるためのスライドスイッチ「Dual BIOS Toggle Switch」を搭載している。工場出荷時設定だと外部出力インタフェース側の「Primary」にスイッチが入っているが,これを反対側に入れると,消費電力を抑えた「Secondary」のVBIOSへ切り替わる仕様だ。

 さらに,Radeon Settingsの「WattMan」から,「Turbo」「Balanced」「Power Saver」という3つの「Power Profile」を選択できる。厳正を期すともう1つ,メーカー保証の範囲を超えてカスタマイズできる「Custom」もあるが,今回は保証の範囲である3モードを使うことにする。
 なお,細かいことを述べておくと,日本語版Radeon Settingsでは,Power Profileが「パフォーマンスプロファイル」,Turboが「ターボ」,Power Saverが「Power Save」,Customが「カスタム」といった具合に,一部で微妙な表記ズレがあるため,この点は注意してほしい。本稿ではAMD本社による英語表記を正式のものとして扱う。

Power Profileの変更用スライドバー。日本語版Radeon Settingsのものだ
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 要するに,Radeon RX Vegaシリーズで動作モードはVBIOSレベルで2段階,WattManで3段階の計6段階あるというわけだが,たとえばRX Vega 64の場合,カードレベルの典型消費電力は,下は150Wから上は253Wまで,かなりの幅が取られている。つまりRadeon RX Vegaシリーズは,消費電力をかなり下げた運用も,性能のために大消費電力を許容した運用もできるというわけだ。
 そうなると気になるのは,合計6つの動作モードで,実際の性能と消費電力がどの程度変わってくるかであって,本稿のテーマも,まさにそこということになる。

AMDが全世界のレビュワーに対して公開した「動作モードごとの典型消費電力」の表
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6つの動作モードすべてでテストを実施


 というわけで,テストのセットアップに入ろう。
 今回はRX Vega 64 LCEとRX Vega 64,それにRX Vega 56のリファレンスカードを用意し,いずれにおいても6つの動作モードすべてでテストを行うことにした。

左からRX Vega 64 LCE,RX Vega 64,RX Vega 56のそれぞれリファレンスカード
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 テストに用いたグラフィックスドライバは,テスト開始時の最新版となる「Radeon Software Crimson ReLive Edition 17.9.2」。テスト開始後,「Total War: WARHAMMER II」および「Forza Motorsport 7」に向けた最適化版という位置づけの「Radeon Software Crimson Edition 17.9.3」が登場したが,今回は17.9.2でドライバを統一するのでご了承を。

 そのほかテスト環境はのとおりだ。

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 テストは,4Gamerのベンチマークレギュレーション20.1から,「3DMark」(Version 2.3.3732)と「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG),「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の3つをピックアップ。解像度は,Radeon RX Vegaシリーズがハイクラス〜ハイエンド市場向けということもあり,3840×2160ドットと2560×1440ドット,1920×1080ドットの3つを選択している。

 なお,4Gamer GPU Power Checker(Version 1.1)を使ったカード単体の消費電力推移測定は,レギュレーション20世代で規定しているとおり,レギュレーション策定時に最も消費電力が高く出ることが判明したFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチを用いる。テスト解像度は3840×2160ドットだ。
 一方,動作クロックの推移は「GPU-Z」(Version 2.4.0)で追うことになるが,こちらでは基本的に3DMarkのTime Spyを用いる。というのも,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチはシーンチェンジ,またCPUの影響が大きいシーンが多く,GPUの動作クロックを追いにくいためである。Time Spyは,GPUの動作クロックを非常に追いやすく,かつ分かりやすい結果も出るので,こちらを使うことする。


VBIOSよりもPower Profileが消費電力を大きく左右


 今回,データ量が非常に多く,また,カード間の比較に意味があるとはあまり思えないことから,本稿では以下,カードごとに見ていくことになる。また,グラフ中に限り,VBIOSとPower Profileの設定を「Primary+Turbo」といった形でGPU名の後ろに付記していくので,その点もあらかじめお断りしておきたい。


●Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition


 それでは,RX Vega 64 LCEの結果から見ていこう。グラフ1は3DMarkの「Fire Strike」における総合スコアをまとめたもの。この総合スコアでは,PrimaryとSecondaryのそれぞれで,Power Profileに応じた,キレイな階段状のグラフになっているのが見てとれよう。
 Balancedを中心とした場合,PrimaryのVBIOSではTurboで102〜103%程度,Power Saverで94〜96%というスコアなのに対し,SecondaryのVBIOSだとTurboで105〜107%程度,Power Saverで95〜96%程度と,後者のほうがメリハリが利いている。結果,工場出荷時設定であるPrimary VBIOSのBalancedと,最も低いスコアとなるSecondary VBIOSのPower Saverでは9〜12%程度のスコア差が付くに至った。

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 続いてグラフ2は,同じく3DMarkのFire Strikeから,事実上のGPUベンチマークテストである「Graphics test」の結果「Graphics score」を抜き出したものだ。総合スコアを踏襲したものになっていると述べていい。

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 同じく3DMarkから,DirectX 12対応グラフィックステストである「Time Spy」の総合スコアとGraphics scoreをまとめたものがグラフ3となる。ここでもBalancedを中心として見たときには,総合スコアでPrimaryのVBIOS時にTurboが約103%,Power Saverが約95%で,Secondary VBIOSだとTurboで約104%,Power Saverで約93%と,やはりSecondary VBIOSのほうがスコアのメリハリは効いている。Graphics scoreも同じ傾向だ。

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 グラフ4〜6はPUBGの結果となる。
 まずPrimaryのVBIOSだと,Balancedに対してTurboは102〜103%程度,Power Saverは95〜98%程度となった。次にSecondaryのVBIOSだと,Turboは102〜108%程度,Secondaryは93〜96%程度で,やはり後者のほうがスコア差は大きくなっている。

 ちなみにPrimaryとSecondaryで比較すると,Secondryに対するPrimaryの平均フレームレートはTurboで100〜103%程度,Balancedで102〜107%程度,Power Saverで105〜107%。最小フレームレートは順に99〜104%程度,100〜107%程度,101〜107%程度だった。

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 グラフ7はFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチのスコアをまとめたものだが,ぱっと見て目を惹くのは,Secondry VBIOSにおけるPower Saverモードのスコアが明らかに落ち込んでいることだ。1920×1080ドット条件では相対的なCPUボトルネックによりスコアが頭打ちになりつつあるが,2560×1440ドット以上の条件で比較すると,SecondaryのBalanced比で約92%,工場出荷時設定であるPrimaryのBalanced比では91〜92%程度なので,スコアのギャップは相応に大きい。

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 FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチの平均フレームレートと最小フレームレートを並べたグラフ8〜10だが,平均フレームレートでSecondary VBIOSのPower Saverが落ち込む傾向は総合スコアと同じ。一方,CPUの影響を強く受ける最小フレームレートだと,動作設定ごとの違いはほとんど出ていない。

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 VBIOSと動作モードの違いで,動作クロックにどのような違いが出ているのか,推移も確認しておきたい。
 グラフ11は3DMarkのTime Spyを実行しているときのGPU動作クロックをGPU-Zから追ったものだ。Primary VBIOSのTurboモードが最も高いクロックなのは当然と言っていいだろう。最高では1721MHzに達していた。
 2番手は意外にも(?)Secondary VBIOSのTurboモードで,Primary VBIOSのBalancedはそれとほぼ同じレベル。Primary VBIOSのPower SaverはSecondary VBIOSのBalanceよりやや低いところを推移し,Sedondary VBIOSのPower Saverは明らかに一段低いクロックとなった。最高クロックも1424MHzまでしか上がらない。

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 4Gamer GPU Power Checkerを用いて計測した,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行時におけるカード単体の消費電力推移をまとめたものがグラフ12だ。グラフが6本なのでちょっと見づらいのだが,それでもPrimary VBIOSのTurboモードだと消費電力が頻繁に600Wを超えてくる(!)。それに対してSecondary VBIOSのPower Saverではピークでも500W程度で,多くの場合は450Wを下回っているのが分かるだろう。

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 グラフ13は,グラフ12のスコアから中央値を求めたものだ。こうやって並べてみると,Primary VBIOSのTurboモードにおける消費電力は顕著に高く,Primary VBIOSのBalancedとSecondary VBIOSのTurboおよびBalancedが2番手グループを形成し,最後にほぼ同じレベルでPrimaryとSeconrdry両VBIOSのPower Saverが並んでいるのが分かる。

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 ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,念のため,システム全体の消費電力も計測してみた結果がグラフ14だ。
 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としているが,アプリケーション実行時のスコアはグラフ12,13をおおむね踏襲していると言っていいだろう。

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●Radeon RX Vega 64


 RX Vega 64でも同じようにスコア見ていこう。
 グラフ15は3DMarkにおけるFire Strikeの総合スコアを,グラフ16はそのGraphics scoreをそれぞれまとめたものだが,RX Vega 64 LCEと比べると,Power Saverのスコアがさらに落ち込んでいる印象を受ける。Primary,SecondaryのいずれでもBalancedモードを100%とした場合,Power SaverのスコアはPrimaryで90〜93%程度,Secondaryで92〜93%程度だ。
 一方,TurboモードのスコアはPrimaryで102〜103%程度,Secondaryで100〜101%程度なので,RX Vega 64においてはPrimary VBIOSのほうがスコアのメリハリはより利いている計算になる。

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 グラフ17は,同じく3DMarkから,Time Spyの総合スコアとGraphics socoreだが,スコア傾向はFire Strikeと同じ。ここでもPrimary VBIOSのほうが,TurboとPower Saverのスコア差は開いている。

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 次にグラフ18〜20はPUBGの結果となる。
 Balancedモードを100%とした場合,Turboモードの平均フレームレートはPrimary VBIOSで101〜105%程度,Secondary BIOSで101〜103%程度。Power Saverモードは順に95〜97%程度,94〜97%なので,(大差ないとはいえ)どちらかと言えばPrimary VBIOS選択時のほうがTurboとPower Saver間のスコア差は大きい。
 平均フレームレートではPrimary VBIOSのBalancedとSecondary VBIOSのTurbodで横並びとなっているのも興味深いところだ。

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 FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチの総合スコアがグラフ21である。ここでもBalancedモードを100%としたとき,TurboモードはPrimary VBIOSで101〜102%程度,Secondry VBIOSで100〜103%程度という数字だ。Power Saverだと順に94〜97%程度,96〜98%程度なので,「Primary VBIOS選択時のほうがTurboモードとPower Saverモードのスコア差が大きい」という点において,3DMarkと似たスコア傾向が出ていると言えるだろう。

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 グラフ22〜24はFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチの平均および最小フレームレートをまとめたものだが,端的に述べて,スコア傾向は総合スコアを踏襲している。

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 3DMarkのTime SpyにおけるGPU動作クロック推移をGPU-Zから追った結果がグラフ25である。
 Primary VBIOSのTurboモードで最も高い動作クロックになるのはRX Vega 64 LCEと同じだが,ここで目を惹くのは,Primary VBIOSのBalancedがSecondary VBIOSのTurboより明らかに高いクロックで,Secondary VBIOSはTurboとBalancedでほとんど同じクロック推移になっているところだ。Turboモードの最大動作クロックは,Primary VBIOSで1530MHzのところ,Secondary VBIOSだと1431MHzと,約100MHzの違いがあった。
 Power Saverの動作クロックはVBIOSを問わずほぼ同じで,これを見ると「Primary VBIOSのほうがスコアにメリハリが利いている理由」がよく分かるだろう。

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 4Gamer GPU Power CheckerでFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行中におけるカード単体の消費電力を計測したものがグラフ26である。
 PrimaryとSecondary,いずれのVBIOSにおいても,TurboとBalancedではピークで500Wを超えてくる。ピークに達する回数はTurboモードのほうがBalancedモードより多いが,全体的にはそれほど大きな違いはない印象だ。
 Power Saverモードの消費電力推移はそれらと比べると明らかに低い。

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 スコアの中央値をまとめたグラフ27を見ると,Power Saverとそれ以外で中央値に大きな違いが出ている。ざっくり60〜70W程度の違いである。

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 Watts up? PROを用いてシステム全体の消費電力を採ったものがグラフ28となる。アプリケーション実行時の消費電力はピークを拾った参考データなので,階段状になっているが,Power Saver選択時にはピークも大きくないのが分かるだろう。

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●Radeon RX Vega 56


 最後はRX Vega 56である。グラフ29は3DMarkのFire Strikeにおける総合スコア,グラフ30はGraphics scoreをまとめたものになる。
 グラフはおおむね階段状と言ってよく,Balancedモードを100%とした場合,総合スコアにおいてPrimary VBIOSではTurboモードで108〜109%程度,Power Saverモードで94〜95%程度というスコアになった。Secondary VBIOSだと順に107〜110%程度,95〜98%程度なので,若干ではあるが,Secondary VBIOSのほうがTurboとPower Saverのスコア差は大きい計算だ。

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 3DMarkから,Time Spyの総合スコアとGraphics scoreをまとめたものがグラフ31だ。ここで目を惹くのはPrimary VBIOSのBalancedにおけるスコアが相対的に高いことだが,その理由は後ほど考察したい。
 ちなみにBalancedモード同士で比較すると,Primary VBIOSのスコアはSecondary VBIOSと比べて8〜12%程度も高い。

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 続いてグラフ32〜34がPUBGのテスト結果だが,ここでは2点,注目したいことがある。
 1つは,Fire Strikeと同じく,Primary VBIOSのBalancedにおけるスコアが相対的に高めであることだ。Secondary VBIOSのBalancedと比べると平均フレームレートで10〜12%程度も高い。
 もう1つは,Primary VBIOSにおけるPower Saverのスコア落ち込みがかなり大きいということだ。Balancedのスコアが高いこともあって,対Balancedのスコアは89〜91%程度となっている。

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 FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける総合スコアをまとめたものがグラフ35だ。ここでは比較的キレイな階段状のスコアになっており,「Primary VBIOSのBalancedモードで相対的にスコアが高め」という傾向は出ていない。
 Balancedモードを100%としたときのスコアは,Primary VBIOSのTurboで103〜110%程度,Power Saverで95〜97%程度。Secondry VBIOSで順に103〜108%程度,96〜98%程度なので,Power Saver設定時におけるスコアの落ち込みが小さいとも言えよう。

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 グラフ36〜38はFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均と最小のフレームレート取得結果だ。平均フレームレートが総合スコアを踏襲し,最小フレームレートがCPU性能の影響を受けて横並びになるという点で,RX Vega 64 LCEやRX Vega 64との間に違いはない。

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 3DMarkでTime Spyを実行したときの動作クロック推移を追ったものがグラフ39で,これを見ると,Primary VBIOSのBalanced設定で相対的にスコアが高い理由が分かる。テスト開始からしばらくはTurboと同じレベルにまで動作クロックが上がり,その後,大きく低下するという挙動になっているからだ。どういう理由なのかは分からないが,上位モデルと明らかに異なる制御なのは間違いない。

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 Primary VBIOSにおけるBalancedの挙動をもう少し掘り下げるべく,PUBGとFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチで,Primary VBIOS選択時におけるTurboとBalancedの動作クロックを追ったものがグラフ40,41である。
 ここではテスト解像度を2560×1440ドットで固定している。また,PUBGではキャラクターを操作している都合上,同じシーンでテストできているわけではないが,PUBGではTurboとBalancedでほとんど変わらない挙動になっていることと,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチではBalancedが明らかに低めで推移していることが分かる。つまり,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける挙動はむしろ上位モデルと同じで,Time SpyとPUBGでは,最適化なのか,別の何らかの理由によって,Balancedのスコアが高い(か,可能性はあまり高くないが,Turboのスコアが低い)ということになるだろう。

画像集 No.050のサムネイル画像 / Radeon RX Vegaシリーズ追試。6つ用意された動作モードの切り替えで性能と消費電力はどう変わるのか
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 話を戻して,グラフ42は,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行中のGPU消費電力推移を測定した結果だ。Primary,SecondaryのVBIOSを問わず,Turboモードだとピークで頻繁に500Wを超えてくるが,Balancedでは500Wを超える回数が明らかに少なくなる。また,Power Saverモードだと,そもそも400W超えがまれというレベルになった。

※グラフ画像をクリックすると拡大版を表示します
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 グラフ42で計測した消費電力の中央値をまとめたものがグラフ43だが,ここでは比較的きれいな階段状のスコアとなった。Primary VBIOSのBalancedだけ突出して高いということはない。
 また,Power Saverで200Wを下回っている点にも注目したいところだ。

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 Watts up? PROで計測した,システム全体の消費電力参考値がグラフ44となる。
 あくまでもピークスコアの比較だと断ってから続けると,ここでPrimary VBIOSのPower SaverとSecondary VBIOSのBanlancedはほぼ横並びとなっている。Secondary VBIOSのPower Saverは,そこからさらに最大約10W低い

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とにかく消費電力を抑えたいならPower Saverモードが正解?


 以上,RX Vega 64 LCEとRX Vega 64,それにRX Vega 56のそれぞれで動作モードの挙動を確認してみたが,いずれもPower Saverモードを有効化すると,消費電力はかなりの低減を図ることができている。レビュー時に筆者は,RX Vega 64 LCEとRX Vega 64で,競合と張り合うため,消費電力的にかなりの無茶をしているのではという話をしたが,「競合との比較から下りる」ことをよしとして,性能がざっくり1割落ちることを許容できるなら,Power Saverモードを選択すれば,工場出荷時設定と比べてかなり低い消費電力で,Radeon RX Vegaシリーズを運用することができるだろう。

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 そしてこのことは,Radeon RX Vegaシリーズと同じGPUコアのマクロアーキテクチャ世代を採用する次世代APUの可能性も広げてもいる。要は,むやみやたらに高性能へ振らなければ,VegaアーキテクチャのGPUコアは比較的現実的な消費電力を維持できるわけで,その意味では安心材料が増えたと言えそうである。

Radeon.comのRadeon RX Vega製品情報ページ

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