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【Jerry Chu】ゲームで歴史を体験する
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印刷2017/04/22 12:00

連載

【Jerry Chu】ゲームで歴史を体験する

Jerry Chu /  香港出身,現在は“とあるゲーム会社”の新人プログラマー

Jerry Chu「ゲームを知る掘る語る」

Twitter:@akemi_cyan


ゲームで歴史を体験する


イラスト提供:いらすとや
マフィア III
 歴史系ゲームが好きだ。

 小学生のときに「真・三國無双2」をプレイしたことは,のちにPlayStation 2を購入するきっかけとなった。その後も「無双」シリーズをはじめ,「義経英雄伝」「決戦III」,そして「戦国BASARA」シリーズといったゲームを楽しんだ。

 しかし,筆者は歴史に詳しいというわけではない。高校進学後は理数系を専攻とし,香港人である筆者には日本の戦国史など分かるはずもなかった。
 それにもかかわらず,ゲームは筆者に歴史への興味を持たせてくれた。「真・三國無双2」を遊んだ後,「三国志演義」を読み漁った。当時はまだ日本語を読めなかったが,「戦国無双」シリーズのストーリーを理解するために日本の戦国史を調べたり,山岡荘八氏の歴史小説を手に取ったりしたものだ。

 PlayStation 3を購入して,欧米のゲームをプレイし始めると,今度はアメリカの歴史にものめり込んだ。筆者はアメリカを訪れたことが一度もないばかりか,アメリカの歴史にも疎かった。
 だが,ゲームによってアメリカの歴史と文化を垣間見ることができた。「Assassin’s Creed III」でアメリカ独立革命を体験する。「Red Dead Redemption」で西部の荒野を駆け抜ける。「L.A. Noire」で終戦直後の繁栄と退廃を見聞する。
 自分の知らない世界と時代を体験できるのは,まさに歴史系ゲームの魅力だ。

「Assassin’s Creed III」
マフィア III


1960年代のアメリカに存在した黒人差別を描く「Mafia III」


 最近,筆者をアメリカの歴史に引き込んだのは「Mafia III」PC / PlayStation 4 / Xbox One)だ。ニューオーリンズをモチーフにした架空の街を舞台に,敵対するマフィアと抗争を繰り広げながら,自らの勢力を拡大させていく。ジャンルとしては「Grand Theft Auto」シリーズに近いと言えるが,特筆すべきはその時代背景である。

 「Mafia III」は「1960年代のアメリカ南部」を舞台にしており,主人公はベトナム戦争から帰還した黒人。この時代,アメリカには激しい黒人差別が存在していたので,「人種差別」は避けて通れない重要なテーマだ。

「Mafia III」の主人公,リンカーン・クレイ
マフィア III

 19世紀前半,コットンの輸出はアメリカにおける貿易の要であり,黒人奴隷はアメリカ南部のコットン産業を支える労働力になった。その後,奴隷制度を巡って南北戦争が勃発し,奴隷制度の存続を主張する南軍の敗北で幕を閉じている。
 黒人奴隷は解放されて自由と人権を手に入れたが,彼らに対する差別と弾圧は終わらない。南北戦争の終結後,白人至上主義を掲げる秘密結社「クー・クラックス・クラン」(Ku Klux Klan,通称KKK)が生まれ,黒人に投票権を行使させまいと脅迫や暴行を加えるようになった。
 さらに,アメリカ南部諸州では「ジム・クロウ法」(Jim Crow law)と呼ばれる人種分離政策が次々と制定され,学校やレストランなどの一般公共施設は「白人専用」と「有色人種専用」に分けられた。アメリカ南部の黒人は貧困に喘ぐばかりか,白人による私刑にも苦しめられたという。

「有色人種立入禁止」(No Colored Allowed)の看板はジム・クロウ法を想起させる
マフィア III

 人種分離を終わらせるため,1950年代以降に公民権運動が台頭した。
 1954年,ブラウン対教育委員会裁判において,アメリカ合衆国最高裁判所は公立学校における人種分離は違憲であると認めた。それでも人種融合に対する白人の反発は異常に強く,アーカンソー州のリトルロック高校では,黒人の入学に反対する白人の大群衆から黒人学生を守るために軍が動員されるという事件も起きている。
 また,1955年には市営バスに乗車したRosa Parks女史が白人に席を譲ることを拒否したため,逮捕されてしまう。この事件が契機となり,人種分離政策の廃止を訴えるバスのボイコット運動が生まれた。
 こうした人種差別に端を発した事件が公民権運動の盛り上がりにつながると,1964年に立法した公民権法によって,ようやく人種分離政策に終止符が打たれている。

 つまり,1960年代のアメリカは種族主義とそれを巡る抗争の真っ只中にある。「1960年代のアメリカ南部」を描いた「Mafia III」にも,人種分離と黒人差別のテーマが色濃く盛り込まれており,黒人の主人公がレストランに入ると,スタッフに脅迫された挙句,警察が駆けつけてくる。また,敵対するマフィアは南軍(南部連合)旗を掲げており,奴隷制存続を主張した南部勢力を思わせる。
 「Mafia III」は「1960年代のアメリカ南部」の風景だけでなく,当時の黒人が受けた差別も再現している。

南軍旗の隣に「アメリカを解放せよ 白人のアメリカを」の標語が見られる
マフィア III

 ゲームの中盤,「南部連盟」(Southern Union)という秘密結社が登場する。メンバー全員が白いマスクを被り,燃えさかる十字架に集う姿は,まるでKKKのようだ。
 KKKは1960年代にも活動しており,黒人や公民権運動家への暴行を繰り返した。南部連盟は黒人の人身売買を行っており,黒人を標的とする犯罪組織という点でもKKKと共通している。

南部連盟は黒人奴隷のオークションを行っている
マフィア III

 ただし,南部連盟は史実にそぐわない点もあるようだ。「Mafia III」に登場する南部連盟は都市近郊の住宅地を拠点としているが,「KKKは都市部ではなく農村地域で活動をしていた」と歴史学者であるBob Whitaker氏が指摘している(出典元)。
 KKKは犯罪組織であるため僻遠な農村に隠れる必要があり,そもそも都市部では警察が人種隔離を行うので,KKKが自ら手出しする必要はないというのだ。

異様な出で立ちで白人至上主義を謳う,その姿は明らかにKKKをモチーフにしている
マフィア III

 「Mafia III」において,警察官は黒人差別に加担する者として描かれている。多数の白人が居住している裕福な地域で犯罪を起こすと,警察が速やかに現れて主人公を取り囲む。一方,黒人が大半を占める貧しい地域では事件が起きても,警察の反応はまるで遅い。
 警察官が主人公に近づくと,ステルスゲームのようにその位置を示すアイコンが画面中央に表示される。ただ街を歩くだけでも,警察の視線を感じずにいられない。黒人は常に警察に敵視されているということを表現したのだ。

黒人と白人の居住区では,警察の反応がまるで違う
マフィア III

「警察に見られて不安になる」という体験がなくても,「敵にこちらの存在を察知されて慌てる」という感覚はステルスゲームの経験者なら共感できるはず。ゲームの記号によって,差別を受ける者の感覚をプレイヤーに伝えている
マフィア III

 「警察が黒人を差別している」という状況は1960年代のみならず,現代のアメリカでも議論の的になっている。近年でも警察が過度な暴力を振るい,黒人の一般市民を死亡させた事件が相次いだ。警察による暴力をはじめ,黒人差別に抗議する政治運動「Black Lives Matter」も支持を得ている。
 2016年10月,Netflixで公開されたドキュメンタリー映画「13th -憲法修正第13条-」をご存じだろうか。この作品は,多数の黒人を投獄してきたアメリカ司法制度の問題点を明らかにしている。
 つまり,「Mafia III」で描かれている黒人差別は,現代に生きる我々にとっても決して昔話ではない。

「黒人を根絶やしにせねば」と過激に言い放つ警察官が登場
マフィア III

公民権運動に参加している黒人に対して,警察が放水したり逮捕したりするドキュメンタリー映像がカットシーンに盛り込まれている
マフィア III


欠点は多い。しかし,文化的な価値が大きい


 ゲームの予算と規模が大きくなるほど,政治や社会的なテーマを避ける傾向が見られる。こうしたテーマよりエンターテイメント性を重視するケースが多く,政治や社会問題に対して明確な立場を見せることは珍しい。ゲーム情報サイト「ZAM」のJohn Brindle氏は「ゲームにおける現実問題は所詮,人目を引くための販売戦略でしかない」と批判している(出典元)。
 しかし,「Mafia III」は近代アメリカの暗部である種族差別の現実を容赦なく見せつけた。AAAタイトルとしては,異色で鮮烈な存在だ。

マフィア III

 歴史を舞台にしたアクションゲームで,差別問題に触れたAAAタイトルと言えば,「Assassin’s Creed」シリーズが有名だろう。
 「Assassin’s Creed III」では,ネイティブアメリカンとして育てられた主人公が,イギリス人による先住民族への弾圧に反抗すべくアメリカ独立革命に参戦する。エピローグでは革命軍が勝利を収めて,イギリスの船がアメリカ本土から追い出された。主人公は革命軍と共に奮戦したものの,アメリカ政府に裏切られて村の土地を奪われてしまう。
 アメリカ建国時から,黒人は白人と同等の権利を与えられず,つねに弾圧される側であると「Assassin’s Creed III」は語っている。

 シリーズのスピンオフ作品「Assassin’s Creed III: Liberation」は,黒人奴隷の実態が描かれている。主人公は黒人女性であり,植民地のニューオーリンズを駆け抜け,奴隷解放のために戦う。
 「Assassin's Creed IV: Black Flag」のDLC「FreedomCry」では,ハイチに流れ着いた黒人のアサシンが主人公だ。奴隷オークションから黒人を救出したり,サトウキビ農園で強制労働に従事する黒人奴隷を解放したりして,フランスの植民地支配に対抗していく。
 「Assassin’s Creed」シリーズはAAAタイトルでありながら,幾度も黒人を主人公に据え,黒人差別や奴隷制度に焦点を当ててきた。「Mafia III」は間違いなく,その系譜に連なるタイトルと言えるだろう。

「Assassin’s Creed III: Liberation」
マフィア III

 ただ,「Mafia III」は決して完璧ではない。ゲームをプレイしていて冗長に感じることが多く,バグや不具合も目立つ。
 しかも,黒人差別のテーマとゲームシステムはいささか合致しないように見える。前述のとおり,「Mafia III」は「Grand Theft Auto」シリーズのゲームシステムに近いが,黒人の主人公は街を堂々と歩き,車を盗み,銃で人を撃つ。そんな凶悪な犯罪者が白人に疎まれ,警察に睨まれるのは当然ではないか。平然と車で歩行者を轢くような自由度の高いゲームプレイは,人種隔離や差別といったシリアスなテーマには少々そぐわないと感じる。

マフィア III

 とはいえ,歴史系ゲームは「歴史を正確に再現する必要はない」と思う。歴史に対する興味を喚起さえすれば,あとはプレイヤー自身が調べればいい。
 「真・三國無双」や「戦国無双」の主人公は,たった一人で数百人の敵兵を蹴散らしていく。これは,もちろん現実的ではない。だが,筆者はプレイした後に三国志や戦国時代について,資料や小説を探しまくった。ゲームが楽しくて魅力的であれば,それをより深く知りたいプレイヤーは,おのずと歴史を調べようとするはずだ。

 当たり前だが「Mafia III」はゲームである。その世界にはフィクションが盛り込まれており,史実を正確に再現しているわけではない。
 しかし,「Mafia III」が描いている人種差別は,我々の生きる現代にも影を落としている。近代社会における人種差別を大胆に描いた「Mafia III」は,歴史系ゲームの中でもとりわけ文化的な価値が大きい。

■■Jerry Chu■■
香港出身,現在は“とあるゲーム会社”の新人プログラマー。中学の頃は「真・三國無双」や「デビルメイクライ」などをやり込み,最近は主に洋ゲーをプレイしている。なるべく商業論を避け,文化的な視点からゲームを論じていきたい。
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