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それは革命と奇跡の物語。「あんさんぶるスターズ!」のメインストーリーを“Saga/後編”に備えて徹底考察

 リリースから4年目を迎えた女性向けアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!」iOS / Android / PC。以下,「あんスタ」)。前回掲載した記事では,本作がなぜ多くのファンに愛され続けているのか,その魅力をお伝えしました。

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 今回の記事では,本作の物語の起点といえるメインストーリーを紹介します。「あんスタ」のファンの中にも「実はしっかりとメインストーリーを読んでいない」という人もいらっしゃるかもしれません。第一部だけで全134話,第二部(キセキシリーズ)で全112話と大ボリュームなうえ,現在までに登場しているすべてのユニットやキャラクターが登場しているわけではないからです。

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 Happy Elementsがサービス中の女性向けアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!」。本稿では,この春に3周年を迎えた本作をあらためて紹介するとともに,“なぜ「あんスタ」がここまで女性たちの心を掴んだのか”その魅力に迫ります。

[2018/05/19 12:00]

 しかし筆者は,メインストーリーは夢ノ咲学院で描かれるすべての物語の揺るぎない軸になっていると考えています。メインストーリーをとおして物語の“核”に触れることで,そのほかのイベントストーリーがひと味もふた味も変わってくるはずです。

 2018年12月31日に公開されるメインストーリー第三部「Saga/後編」が始まる前に,本稿ではあらためて第一部と第二部「キセキ」シリーズを,筆者の考察を交えながら紹介していきます。なお考察の内容はあくまで筆者の見解であり,絶対的な正解ではありません。また内容の特性上,ストーリーのネタバレを含む箇所があります。未読の方はご注意ください。



メインストーリー第一部〜あらすじ・ユニット紹介〜


 考察へ入っていく前に,まずは第一部のあらすじと「あんスタ」に登場するキーワードやユニットを解説していきます。

<第一部あらすじ>

 男性アイドルを育成する高校,私立夢ノ咲学院。主人公(プレイヤー)は高校2年生の春に,学院に新設された「プロデュース科」にたった1人の女生徒として転入する。転校して間もないうちに彼女が出会ったのは,ユニットTrickstarのメンバーたち。主人公と同じ学年の2年生だけで結成されたTrickstarの4人は,秩序という名の権力で生徒会が抑圧してきた夢ノ咲学院に“革命”を起こそうと動き出すのだった――。

――キーワード解説――

■私立夢ノ咲学院
 いわゆる「アイドル」を養成するための高校。大海原に面した丘にあり,校内には美しいガーデンテラスや大きな講堂などがある。「あんスタ」の舞台となるのは「アイドル科」で,実際にプロとしてデビューをしている芸能人や,デビューしたものの活動を休止している人,デビューを目指すアイドルの卵が所属している。学院には一般の生徒も通っており「普通科」や「演劇科」「声楽科」もあるが,アイドル科はこれらの科と塀や受付などで区切られている。主人公は,翌年に行われる共学化に向けて学院に転入したテストケース第1号だ。

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■ユニット
 基本的に2人〜5人ほどの小規模な人数で結成されたアイドルグループである。結成や解散,脱退などは学院に申請する必要がある。物語の中には,アイドルの卒業や交代,ユニット名の変更を経て長く活動するユニットも存在する。
 アイドル科には,部活や委員会のグループも存在しているが,それらのグループとは異なり,評価がそのままアイドルとしての個人の成績や評判に反映されるユニットは,一蓮托生の仲間であるといえる。なおこれまでに,ユニットに所属しないアイドルは登場していない(2018年12月現在。ソロのユニットは存在する)。



■生徒会
 学院への出資額が最も多い天祥院家の子息である英智が会長を務めている。副会長はユニット紅月のリーダーであり英智の幼なじみでもある蓮巳敬人,書紀は英智と同じfineに所属する姫宮桃李,会計はTrickstarの衣更真緒である。生徒会を支持するユニットはなにかと優遇される傾向にあり,学院(=生徒会)に都合の良いアイドルの勝利がお膳立てされている状況に,不満を持つ生徒は少なくない。



■ドリフェス
 正式名称は「ドリームアイドルフェスティバル」。夢ノ咲学院アイドル科で,定期的かつ突発的に開催されているイベントである。用意された舞台上で,ユニット同士もしくは個人同士がパフォーマンス対決をし,集まった観客のサイリウムによる投票で勝敗を決する。ドリフェスの結果は成績に反映され,高いランクになるほど学院から多くの報酬や好待遇を得られる。ドリフェスのランクは,高い順にSS>S1>S2>A1>B1となっている(その後のイベントストーリーで「S3」が新設された)。

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■ドリフェスの種類について
  • SS
  • 日本一のアイドルを決定する,年末の業界一大イベント。夢ノ咲学院が主催し,国内中からプロ・アマを問わず多数のミュージシャンやアイドルが参加する。夢ノ咲学院からは代表ユニット1組が参加できる。なお,これまでのSSにおいて夢ノ咲学院の代表アイドルが優勝したことはない。
  • S1
  • 基本的に季節ごとの開催で,校外からの一般客も観覧が可能となっている。
  • S2
  • 不定期に開催。S2以下のイベントは校内のみのイベントである。
  • A1
  • 新入生や結成したばかりのユニットが出場できる。
  • B1
  • 生徒会非公認のドリフェスで,いわゆる“野良”対決。成績には反映されない。
  • DDD
  • SSへの出場権を賭け,学院内で最も権力を持つ生徒会会長の天祥院英智が開催を決めたドリフェス。SSには本来,英智がリーダーを務める学院No.1ユニットのfineが出場することになっていた。「あんスタ」メインストーリー第一部は,Trickstarが打倒生徒会の目標を掲げて立ち上がり,このDDDで勝敗が決するまでを描いた物語である。

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■トリビア1■

 物語の序盤に登場する「竜王戦」のランクは「B1」,学院の講堂にて紅月とRa*bitsの対決が行われたのは「S2」,Trickstarが最初に紅月と対決したのは「S1」,その後,英智がDDDの開催を宣言した対決は「B1」,そしてDDDは「S1」にあたる。なおDDDはプレイヤーが学院に転入した春に行われたものなので,メインストーリー第一部は非常に短い期間の物語である。


<第一部登場ユニットを紹介>

Trickstar[トリックスター]
〜学院の一番星をめざす新星ユニット!〜


 長らく生徒会に抑圧されてきた夢ノ咲学院に革命を起こそうと立ち上がった,メインストーリーにおける“主人公”ポジションのユニット。メンバー全員が2年生で,第一部時点では結成から半年ほどしか経っておらず,揃いのユニット衣装や持ち曲もない状態だった。

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fine[フィーネ]
〜常に勝利をおさめてきた夢ノ咲学院最強ユニット!〜


 夢ノ咲学院で絶大な権力を誇るユニット。リーダーの天祥院英智が幼い頃から病弱なため活動頻度は決して高くないものの,個々の能力は非常に高く,実力も人気も学院のNo.1を誇る。メインストーリー第一部では“ラスボス”的なポジションである。

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紅月[アカツキ]
〜伝統芸能を重んじる和風ユニット!〜


 伝統芸能を基盤としたユニット。生徒会副会長の蓮巳敬人がリーダーを務め,学院No.2と謳われている。メインストーリー第一部では,Trickstarが最初に戦う生徒会勢力の強敵として登場。生徒会側のユニットではあるが,3人とも義理や己の正義を重んじるタイプであるため,単なる敵では終わらないところが第一部での見どころだ。

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UNDEAD[アンデッド]
〜過激で背徳的と謳われるユニット!〜


 かつて学院を賑わせた,比類なき才能を持つ「五奇人」の1人,自称吸血鬼の朔間 零がリーダーを務めるユニット。メインストーリー第一部では,零がTrickstarを導く指導者となり陣頭に立って彼らを影で支え,革命の手助けをすることになる。零の体質上,日中(とくに屋外)のライブは不得手である。なお,UNDEADはこのときまで長らく活動を控えており,第一部で見られるのは彼らの記念すべき復活ライブである。

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Knights[ナイツ]
〜優美かつ華麗な騎士道ユニット!〜


 洗練されたパフォーマンスで,生徒会勢力ではないユニットの中では強豪の1つと言われていたユニット。フルメンバーは5人だが,しばらく前からリーダーが不登校となっており,メインストーリー第一部で解散危機にあったTrickstarの対戦相手として,リーダーを除く4人のメンバーが登場した。リーダー不在ながら圧倒的な存在感を示すKnightsだったが,DDDの最中にメンバーの1人が起こしたとある事件は,後々まで彼らのユニット活動に影響することになる。

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流星隊[リュウセイタイ]
〜悪は許さない戦隊ヒーローユニット!〜


 5色のヒーロー衣装に身を包んだ正義の味方。メンバーにはそれぞれのテーマカラーと口上がある,まさに“戦隊”ユニットで,アイドル活動のほかにも,隊長(リーダー)の守沢千秋が中心となってボランティア活動も行っている。メインストーリー第一部では, ある出来事によってメンバーがバラバラになっていたTrickstarを助けるヒーロー的存在として登場する。比較的出番は少ないものの物語上の“革命”には欠かせない存在で,ヒーローとしての彼らの原点を見ることができる。

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Ra*bits[ラビッツ]
〜ほわほわ可愛いが売りの初心者ユニット!〜


 1年生3人とリーダーの3年生で結成された,できたてほやほやのユニット。リーダーの仁兎なずなは,生徒会の勢力が及んでいない放送委員会の委員長でもある。メインストーリー第一部で彼らが出場したS2ステージでの悲劇は,この“革命”の起爆剤の1つともいえる事件だった。だがこれらの経験が,その後の彼らの結束や成長につながっていったことも確かだろう。

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2wink[トゥウィンク]
〜テクノポップな双子ユニット!〜


 双子の1年生による2人組ユニット。アイドルとしてのユニット結成は夢ノ咲学院への入学後ではあるが,彼らは幼い頃から兄弟で大道芸などをしていたため,2人が“芸”で活動してきた期間はほかのユニットに負けない長さを誇る。2人とも軽音部に所属しており,部長の零に噛み付く大神晃牙(零と晃牙はUNDEAD所属)のなだめ役となっている。メインストーリー第一部では零の腹心として活躍した。

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教師

 北斗,スバル,真が所属する2年A組の担任兼スポーツドクターである佐賀美陣と,専門科目や生徒会の顧問を担当する椚 章臣は,ともに夢ノ咲学院のOBであり,いずれも元アイドルだ。佐賀美陣はその時代では知らない者はいない“スーパーアイドル”で,章臣は彼を慕い追いかける後輩アイドルだった。そんな彼らの現役時代は,のちの限定ストーリー(2016年,2017年エイプリルフール)で明らかとなった。

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■トリビア2■

 これまでにメンバー交代(卒業含む)があり,比較的活動期間の長いユニットはfine,Knights,流星隊。Knightsはメンバーの変更とともに,名称も数回変わっている。また,中でも最も歴史があるとされているのは流星隊である。


メインストーリー第一部を考察する


 メインストーリー第一部について考察するにあたり,それ以前の夢ノ咲学院について少しだけ触れていきたいと思います。

 第一部で描かれた “最初の春”(以降,暫定的に第一部の時期をこう呼びます)の夢ノ咲学院は,権力の頂点である生徒会の秩序によって生徒たちが支配され,個性や自由が許されない場所になっていました。しかし,過去の学院もまた1つの“革命”を経て現在の形になったことが,その後のイベントストーリーなどで明らかになっています。

 「世界の始まりはカオス(混沌)であった」と始まるギリシャ神話のように,最初の春以前の夢ノ咲は,多くの生徒たちが学院の名に胡座をかき,好き放題に振る舞う混沌とした世界でした。それを改革したのが,誰あろう天祥院英智だったのです。彼は機能していなかった生徒会を復活させて会長の座に就き,ユニット制度やドリフェス制度を作り,言うなれば混沌の中に秩序をもたらしたわけです。

 しかしその過程――彼が学院内で権力的にもアイドル的にもトップになるまでには,影で多くの犠牲がありました。主だったところでいえば「五奇人」と呼ばれるアイドルたちの存在がそうなのですが,その犠牲によって英智が,ある者たちにとってのヒール的な存在になったことは事実です。彼が起こした“革命”は,多くの生徒たちにとっては歓迎されるものであったはずですが,その後の学院は次第に変貌し,最初の春の時点では「窮屈極まりない夢ノ咲学院」に君臨する悪の皇帝のごとき存在として描写されています。実際,メインストーリー第一部では,実にラスボスらしいセリフも多く見られます。

 ――ですが,彼は本当に,自分の利益だけを求めて学院を改革したのでしょうか?


■なぜ天祥院英智はDDDを開催したのか?


 ここまでの紹介を読んだ,もしくはメインストーリーを追った人であれば気になるところではないでしょうか。「DDD」を開催しなければ,年末のSSにはfineが夢ノ咲学院の代表として出場するはずでしたし,英智にとってはリスクの伴う行動です。わずかでもリスクのある「DDD」を,なぜ彼が開催したのか,筆者の個人的な見解ではありますが考えをまとめてみました。

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 英智の行動原理は大きく3つあると考えています。1つめは,人間なら誰しもが持つ「愛されたい」「認められたい」という欲求です。

 英智は昔から体が弱く,外で遊び回ることも難しい幼少時代を送ってきました。そんな彼が憧れたのが「アイドル」という存在です。ステージの上のアイドルはまばゆい光に包まれ,キラキラと輝く笑顔を振りまきながら歌い踊り,観る者たちをも笑顔にします。きっとそれを見た彼もひとときの苦痛を忘れて笑顔になったのでしょう。もしかしたら彼の目には,アイドルたちが天使や神のような存在に映ったのかもしれません。彼は財閥の子息でありながらアイドルになることを決心し,必死に努力を続けました。
 「愛されたい」という欲求は,彼が人とは異なる特殊な環境(家柄)で育ったことと,病弱であることが大きく関係しているように思います。必要以上に過保護に育てられ,イエスマンばかりに囲まれ,けれど自分から外の世界に飛び出すことは許されない。彼は肩書きではなく,自分という人間そのものを見てほしいと願い,年頃の男子たちが当たり前にやっているふざけあいや喧嘩,それでも壊れない友情や人とのつながりに憧れていたのではないか? と感じます。

 2つめは「アイドルを文化という高みにまで引き上げる」というものです。これは彼自身が作中で何度か口にしています。彼はアイドルという存在を愛し,アイドルを目指す者たちすべてを愛しているように感じられます。だからこそ,自分だけの価値が高まることに意義を見出しておらず,愛するアイドルたちや,彼らが生きる世界そのものを優れた文化であると世界中に認めさせたいのではないでしょうか。もちろん,若くして優れた経営手腕を持つ彼がまったくの損得勘定なしで動いているとは思えませんが,根底には紛れもなく「アイドルへの愛」があるのではないかと個人的には思います。

 3つめは「見たことのない景色(奇跡)を見たい」「停止した世界を破壊したい」というものです。これもまた,彼自身が語っています。

天祥院英智キャラクターストーリー第1話より
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 このセリフからも分かるように,彼はただ美しく整えられただけの世界には微塵も興味がなく,「慣れ」や「変化のないもの」を最も嫌っているように感じられます。だからこそ自分が築きあげたものであるにも関わらず,秩序が保たれ表向きは平穏だった最初の春の学院に,退屈を感じていたのではないでしょうか。それを裏付けるのが,第一部で聞けるこれらのセリフです。

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 奇跡を望んでいたのは,ほかならぬ彼自身でもあったのではないかと思うのです。さらに言えば,彼の言う「どうしようもない運命」というのは,病弱に生まれてしまった自分自身の運命をも指しているのかもしれません。

 このような理由から,英智は「本気でぶつかろうとする相手」「何かを犠牲にしてでも欲しいものを手に入れようとする者」にこそ戦う権利があると考えているように感じます。命を削ってでも願いを叶えようとする自分と同じように。

 英智に反旗を翻した北斗に対し,「君が得た夢も希望も何もかも踏みつぶす」と,厳しい言葉を投げかけます。これは,それでも本気でぶつかってくる相手や願いを持つ者以外は認めないという意思表明なのではないかと感じます。

 また英智は,DDD開催を宣言する前にTrickstarへ解散を命じたとき,メンバーそれぞれに自分が指定するユニットに所属を移すよう言い渡していました。ここで彼らが言うことを聞くか,それとももう一度反逆するか。前者だった場合,才能と伸びしろを持つ4人を,自分の考える最も良いポジションに置くことができます(=指定したユニットがより強くなる)。後者だった場合,自分が勝ったならひとまずはそれまでと同じ物語が続きます。万が一fineが負けることがあるとしたら,それはまさしく“奇跡”です。どの結果であったとしても,英智にとって損と言えるものではなかったはずです。

 ですが物語のラストにおける英智のセリフと表情からは,彼はずっと夢見ていた以上のものを手に入れ,想像もできなかった景色を見ることができたのではないかと感じました。

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■革命を起こしたTrickstarの4人


 “学院の一番星をめざす新星ユニット”Trickstarは, 2年生4人で結成されたユニットです。筆者は個人的に「Trickstarを主人公とした正史」として,メインストーリー第一部の物語を“紀元”と表現できるのではないかと考えています。「あんスタ」はすべてのアイドルが主人公たる物語ですが,彼らが登場し革命を起こしたことによって,私たちが知る夢ノ咲学院の物語が展開していったからです。

 いつも明るいムードメーカーの明星スバルは,のちに明かされるストーリーで偉大な父を持つことが判明します。そのためか,アイドルとしては天賦の才能を持っています。しかし停滞した夢ノ咲学院でどんなときでも明るく振る舞っていた彼は,周囲から浮き,どうしようもない孤独に苛まれていました。そんなときに出会ったのが,Trickstarになる3人です。

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 メインストーリーでの語り部的存在である氷鷹北斗は,有名アイドルの父と大女優の母を持つ芸能界のサラブレッドで,彼がアイドルを目指すことになったのは必然とも言えます。そんな肩書きや,誰もが羨むような英才教育を受けてきたことは,誇りであるとともにこの上ないプレッシャーと孤独をもたらしたのではないでしょうか。

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 遊木 真は,幼い頃からキッズモデルとして名を馳せていました。しかしそれは本人の意志とは関係のないもので,大人たちに求められるままにカメラを前にしていた彼は,次第に心を疲弊させていきます。モデルを辞めた彼は夢ノ咲学院に入学しますが,いまだに,アイドルを目指す自分を「逃げてきたようなものだ」と卑下する姿もよく見られます。

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 衣更真緒は,頼まれごとに嫌だと言えないタイプの苦労性です。けれど器用な彼は,たいていの問題を容易に解決する能力にも長けており,そんなところを買われたのか,生徒会にも所属しています。生徒会に属していながら,反逆を起こそうとしているTrickstarのメンバーでもあり,義理や人情との板挟みに悩む場面もあります。

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 Trickstarは「あんスタ」に登場するユニットのなかで唯一,他人同士の同い年のメンバーだけで構成されています。あくまで筆者の見解ではありますが,そのため彼らには年齢による上下関係がなく,そういう意味では全員が横並び,二人三脚ならぬ四人五脚で成長していくユニットと言えるのではないでしょうか。

 そして,他人同士でありながら彼ら4人に共通するのは,“Trickstar”が人知れず苦しんでいた自分にとっての方舟のような存在だったことではないかと思うのです。「自分を変えたい」という願い,そして「愛されたい」「輝きたい」という願い。年頃の,アイドルを目指す者なら当たり前の夢かもしれませんが,彼らは恵まれた肩書きを持つ故に,人には理解されにくい孤独感や欠乏感のようなものをお互いに感じ取り,ともに手を取り合ったのではないかと思うのです。

 四人五脚で走っていると,誰かがつまずけば全員が転びます。第一部での彼らは無敵の主人公などではなく,弱点だらけでグラグラと揺れ動きます。けれど仲間とともにいるからこそ自分はもっと輝ける,1人では壊せないような分厚い壁を叩き壊せると信じることができたのだと思います。彼らが夢を叶えることは,苦しむ周囲のみんなを救うだけでなく,なぜアイドルを目指していたのか,なんのために生きているのかというアイデンティティの証明でもあったのではないかと感じます。彼らもまた,英智と同じように「いまいる世界を変えるほどの奇跡」を望んでいたのではないでしょうか。

 そして忘れてはいけないもう1つの存在が,学院の転校生,プロデューサー(=プレイヤー)です。ストーリー中では,プロデューサーの存在がいかに重要かということが折りに触れ語られるのですが,「あんスタ」ではプロデューサーのセリフがまったくないこともあり,存在意義がつかみにくいところもあるように感じます。けれど,「あんスタ」の主題歌である「ONLY YOUR STARS!」に,“君はたった一人のSTARGAZER”という歌詞がある通り,“STARGAZER”(星を見つめる者)がいるからこそ,星の輝きに意味が生まれるということではないかと筆者は感じます。少しメタ的な言い方になってしまいますが,彼らを見つめる者,プレイヤーであり観客でもある私たちがいるからこそ,彼らは輝き続けたいと望むのではないかと。



夢ノ咲学院の過去とその後の物語
第一部がより面白くなるイベントストーリー


 メインストーリー第一部は,一見すると勧善懲悪の少年漫画にも似た構造を持っています。ですがここまでに挙げた事実のほかにも,さらに複雑な感情や事情が絡み合っていることが,その後に公開されたイベントストーリーなどで明らかになっていきました。ここまでの考察のなかで学院の過去に少し触れましたが,ここでは第一部に大きく影響したと思われる,過去の学院を描いたイベントストーリーを紹介します。

■「追憶*モノクロのチェックメイト」

 「追憶」と名のつくイベントストーリーではユニットの過去が描かれ,結成秘話などを知ることができます。この「追憶*モノクロのチェックメイト」はKnightsを中心としたストーリーになっています。ここに登場する月永レオ(Knightsリーダー)はメインストーリー第一部には登場していませんが,彼との間にあった友情やここで生まれた確執は,第一部の中心人物の1人である英智に多大な影響を及ぼしたはずです。また本ストーリーでは,過去だけでなく「DDD」直前の英智と瀬名 泉(Knights)の会話があり,こちらも必見です。

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■「追憶*それぞれのクロスロード」

 UNDEADを中心とした追憶イベントです。ここでは私たちがよく知る零ではない,過去の姿(口調や見た目など)を見ることができました。さらにUNDEADのメンバーだけでなく,この物語には紅月を結成する前の敬人が欠かせない存在となっており,彼もまた,かつての混沌とした夢ノ咲学院を革命したかった1人であったことが分かります。この物語を踏まえてからメインストーリー第一部を読むと,零と敬人の間で交わされる会話や関係性に,より深みが生まれるのではないかと思います。

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■「追憶*マリオネットの糸の先」

 このストーリーではRa*bitsの結成秘話とともに,メインストーリー第一部では登場していないユニット,Valkyrieの過去が語られました。Valkyrieのリーダーは五奇人の1人である斎宮 宗です。第一部の公開当時にはまだ謎に包まれていた五奇人の存在ですが,五奇人と英智の間にあったできごとがその後の学院の方向性を決めたのも事実であり,ここではその物語の一端を,五奇人側(宗側)の視点から見られます。

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■「追憶*集いし三人の魔法使い」

 こちらもメインストーリー第一部には登場していないユニット,Switchが初登場したストーリーです。Switchのリーダーは,五奇人の1人である逆先夏目。このストーリーでは,“五奇人”という存在の始まりと終わり,さらに,今とは異なるメンバーで構成されていた過去のfineを知ることもできました。こちらは過去の学院を英智側の視点で描くシーンが多く,彼がどのようにして革命を成していったかが語られます。
 それともう1点,必見なのが「五奇人の終焉」のステージに登場した“ホッケーマスクくん”の存在。このエピソードは,第一部の革命の原点の1つでもあったことがのちに明らかとなります。

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 また,メインストーリーの主人公であるTrickstarをメインにした「追憶*春待ち桜と出会いの夜」も合わせておすすめしたいです。まだ“何者でもない彼ら”が星になる,爆発する前の初々しい姿を見ることができます。


■革命,そしてその後の影響


 さまざまな過去のできごとを経て,最初の春の革命が起きたことによって学院は大きく変化していきました。第一部に登場するのは全部で8ユニット+教師ですが,その後に追加されたキャラクターやユニットは,この革命に運命を大きく左右された者たちがほとんどなのも面白いところです。これについても少し触れておきたいと思います。

<ユニット紹介>

Valkyrie[ヴァルキュリー]
〜芸術的な演出にこだわる格式高く情熱的なユニット〜


 もとは3人組のユニットだった。生徒会側の人間による策略で心に傷を負いユニットとしての活動がほぼできなくなってしまった宗は,革命後の学院で影片みかとの2人組でValkyrieとして復活を果たす。宗は英智に対し今でも非常に強い憎しみを持っているためか,その後の宗と彼を師と崇めるみかは,英智に反逆したTrickstarに対して,自分たちこそが英智を倒したかったという意味での敵対心を抱く描写がされている。

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Switch[スウィッチ]
〜幸せの魔法をかけるエンターテイメントユニット!〜


 五奇人の中で唯一の2年生(当時は1年生),“末っ子”的存在だった逆先夏目がリーダーを務め,英智が行った革命の一端を担った青葉つむぎが所属するユニット。彼らについては先ほど挙げた「追憶*集いし三人の魔法使い」で初ライブを行う姿を見られるほか,「迷い星*揺れる光、プレアデスの夜」で,結成の原点を見られる。彼らが革命後の学院に対して何をすべきだと思って立ち上がったのか,英智や学院の皆にとってそれはどんな存在になるのかが非常に興味深いところだろう。

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MaM[マム]
〜祭のある場所どこへでも! 東奔西走のソロユニット!〜


 「あんスタ」唯一のソロユニット。MaM=三毛縞斑は昔から月永レオと親しく,レオを不登校に追いやった英智や生徒会に対しては思うところがあったと思われる。彼はどちらかというと物語の本流に入り込むというより,どこか俯瞰で世界を見る立場であろうとするように見えることも。のちに公開されたイベントストーリー「躍進!夜明けを告げる維新ライブ」では,第一部で革命を起こしたTrickstarに対し, 彼が思う“革命”について語る姿が見られた。

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 以上に紹介した新しい仲間たちだけでなく,既存のユニットにとっても最初の春の革命は非常に大きな意味を持つものとなりました。そこには勝者だけでなく,負けて涙をのんだ者たちもたくさんいました。それこそが革命であり,戦いです。負けた者たちはその痛みを乗り越えねばならないし,勝った者たちは「めでたしめでたし」のその先を紡いでいかなければいけない。なぜなら,人生はずっと続いていくものだからです。

 第一部で出場権が争われた「SS」。第二部では,そのSSに向けての物語が展開されていきます。続いては,第二部「キセキ」シリーズについて紹介していきたいと思います。


メインストーリー第二部「キセキ」シリーズ

〜あらすじ・登場ユニット紹介〜


 メインストーリー第二部「キセキ」シリーズは,夏の「サマーライブ」,秋の「オータムライブ」,冬の「ウィンターライブ」の三部構成となっており,年末のSS(ウィンターライブ)に向けた前哨戦と本戦が描かれました。以降にそれぞれのあらすじと,新たな登場人物を簡単に紹介します。

「輝石☆前哨戦のサマーライブ」
<あらすじ>

 SS本番に向けたTrickstarの修行として英智が段取りをつけた,玲明学園のアイドルユニット「Eve」との合同ライブ。EveはSSの優勝候補と謳われるユニット「Eden」の片割れであり,Trickstarは彼らと共に行ったレッスンでその実力差に圧倒されてしまう。SSの前哨戦とも言えるサマーライブに,4人はどう立ち向かっていくのか――。

<登場ユニット>

Eve[イヴ]
〜甘い囁きで虜にするトラップユニット〜


 「あんスタ」初の他校ユニット。リーダーの巴 日和は元夢ノ咲学院で,英智とともにかつてのfineに所属していた。また,メンバーの漣ジュンも夢ノ咲のある人物と因縁がある。

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「軌跡★電撃戦のオータムライブ」
<あらすじ>

 Eveとのライブ以降,研鑽を積んだTrickstarは,秀越学園で行われる「オータムライブ」にゲストとして呼ばれ,学院の代表的なアイドルユニット「Adam」と共演することになる。AdamはEdenの片割れでありTrickstarは再びEveとは異なる優れた才能を目の当たりにする。同時に,「コズミックプロダクション」と呼ばれる芸能事務所への勧誘も受けて揺れ動く4人。彼らを襲う,巧妙に隠された悪意とは――。

<登場ユニット>

Adam[アダム]
〜侵略と支配のルーラーユニット〜


 SSの優勝候補,Edenを構成するもう1つのユニット。Eveの日和同様,リーダーの乱 凪砂も元夢ノ咲学院で,かつてのfineに所属していた。勝つためには手段を選ばないメンバーの七種 茨もまた,夢ノ咲のある人物と関係がある。

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「奇跡☆決勝戦のウィンターライブ」
<あらすじ>

 いよいよ開始したウィンターライブことSS。一度でも敗北すれば終了のシビアな試合形式だが,夢ノ咲学院の生徒たちの応援も受け,なんとか勝利を重ねていくTrickstar。しかしここ一番の大舞台で,何者かの告発によって過去のある事件が明るみに出る。絶体絶命の窮地に立たされたTrickstarに,再び奇跡は起きるのか――?

<登場ユニット>

Eden[エデン]

 EveとAdamの4人で構成された,若手アイドル界でトップクラスの人気を誇るSSの優勝候補ユニット。リーダーは凪砂が務める。

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筆者が選ぶ第二部の見どころ〜サマーライブ考察〜


 英智曰く,サマーライブは起承転結の「承」。起承転結とは,DDDで始まったTrickstarの物語のことを指していると筆者は考えます。よって「起」はDDDであり,サマーライブはDDDで始まった物語の続きとその展開,方向性の確定という側面があるように思います。

■Eveと夢ノ咲学院とのつながり


 先ほども述べたとおり,Eveの巴 日和は元夢ノ咲学院の生徒で,かつてのfineに所属していました(旧fineのメンバーは乱 凪砂,天祥院英智,巴 日和,現Switchの青葉つむぎの4人)。物語のなかで北斗が日和を見て「会長がふたりいるみたいだ」とぼやきますが,個人的にも,日和と英智が目指すものは非常に近いと感じます。つまり彼もまた「アイドルやアイドル業界全体をもっと高みに」という願いを持っている人に思えるのです。詳しい考察は別の機会にしたいと思いますが,彼は傍若無人な発言やふるまいをしているように見えて,英智同様,根底には揺るぎない“アイドルへの愛”があるように感じられます。

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 漣ジュンは,父もまたアイドルだったことが明らかになります。しかし,当時の芸能界によってトップアイドルだった佐賀美陣の噛ませ犬のような立場にさせられ,敗北し心を折られてしまったのです。けれどジュンは「父のようにはならない」と言いながら,陣には明らかに敵意を示します。
 玲明学園は“特待生”と“その他の生徒”ではっきりと立場や待遇が変わり,かつてのジュンは“その他の生徒”でした。特待生でないものは文字通り奴隷のような扱いを受けることもあるようですが,日和に拾われるまで折れずにアイドルを目指し続けたのは,やはり父に対する愛があったからではないかと感じます。強い憎しみを持てる者は,深い愛を持ち得る者でもあるのではないでしょうか。

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■Trickstarを見守る天祥院英智と朔間 零


 この2人は「あんスタ」の物語において非常に対象的な描かれ方をしていると思います。実はメインストーリー第一部では,彼らが直接会話をするのは1話のわずかなシーンのみです。けれどその後に公開されたストーリーで,零と英智は言ってみれば彼らそれぞれの勢力の頂点同士,因縁の関係であったことが分かります。そういう側面もあってか,天使と悪魔,光と闇,白と黒,どこかそういう表裏一体のイメージがあるように感じます。

「追憶*集いし三人の魔法使い」より
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メインストーリー第一部より
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 それまでに明らかとなったストーリーでは,どちらかというと英智が冷酷な権力者,零が弱者に寄り添う優しき魔物に見えるイメージが強かったように思いますが,サマーライブでは,零がプロデューサーに対し,非常に厳しい言葉を口にするシーンがありました。無論これは彼の人格が変わったということではなく,サマーライブでは“保護者”たる立場の英智と対象的に,零の“指導者”の側面が強く出てきたという気がします。彼ら2人は普段から,どこか自分の役割(「皇帝」あるいは「老いた吸血鬼」)を演じているように感じられるのですが,ここでもそういう“役割”を強く意識したのではないかという印象を受けました。


■「努力型」の北斗と「天才型」の真


 Trickstarについてもまた別の機会に詳しく語りたいと思っているのですが,新たに公開される物語を読めば読むほど,プロフィールやいくつかのストーリーでは分からない本質が顕になっていくように感じます。
 氷鷹北斗は前述のように芸能界のサラブレッドで,いわゆる優等生です。Trickstarでは“天才”明星スバルと二枚看板的なポジションになる場面もあり,北斗もまた才能に恵まれた天才というイメージもあったかもしれませんが,サマーライブのエピソードを読むと,彼は紛うことなき“努力型”であることがあらためて伝わってきました(無論,才能は才能としてきちんと持ち合わせているとは思います)。

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 一方で遊木 真は自己評価が非常に低く「みんなに追いつくようにがんばらないと」と,ユニットのなかでも比較的後方部隊であろうとする場面が多かったように思います。ですがサマーライブにおいて,彼が本来は非常に高いポテンシャルを持っていて,その力は自ら閉じ込めてしまっていただけで,着火のきっかけがあれば誰よりも大きな花火を打ち上げられることが分かります。
 また,常に一番うしろから見ていたからこそ分かる,Trickstarの魅力やメンバー各々の武器を語った長いセリフは,情報収集が得意だという真ならではの説得力と痛快さがあり,本ストーリーの中でも必見のシーンです。

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第二部の見どころ〜オータムライブ考察〜


 Trickstarを主人公としたメインストーリー,起承転結の“転”がこのオータムライブです。ここでは,サマーライブまでほぼ順調に進んできた物語に,彼らを揺るがす事件が起きます。

■Adamと夢ノ咲学院とのつながり


 Adamの2人は秀越学園の生徒です。玲明学園の系列校ですが,よりシステマチックにアイドル育成を行っているように感じられます。乱 凪砂はここまでに登場する他校のライバル4人のなかで最も謎が多く,掴みどころがない人です。生い立ちなどは後々判明しますが,それは常人には到底想像できないようなものでした。桁外れの才能を持つ彼はどこか言動も人間離れしており,かつてのfineで行動を共にしていた英智やつむぎも,計り知れない闇を感じ取っていたようです。

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 凪砂を“閣下”と呼び,Trickstarのメンバーに対しては必要以上に褒め殺し,手厚い待遇でもてなそうとする七種 茨は,幼い頃に夢ノ咲学院の伏見弓弦のもと,民間軍事会社で訓練を受けていたことが判明しました。そんな彼がなぜアイドルを目指したのか,なぜTrickstarを「コズミックプロダクション」と呼ばれる芸能事務所へ勧誘したのかについても後々判明していきますが,これまでの「あんスタ」のアイドルにはない,底の見えない狡猾さを持つ彼は,非常に特異な魅力を持つように感じられます。

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■明確な悪意を持った初めての“敵”の登場


 先ほど出てきた「コズミックプロダクション」という芸能事務所は,このオータムライブだけでなく,以降のメインストーリーに非常に大きな関わりを持ってきます。詳しい内容などは伏せますが,この事務所の存在は,これまでの物語には登場しなかった明確な“敵”なのではないかという印象を受けました。
 この事務所の全貌や意図は今の時点で判明していないところも多いのですが,おそらく今後,第三部にも大きく関係してくることが予想されます。


■真緒の「ブレイクスルー」


 サマーライブで,零が真緒に「天才たちを御し,寄り添い救いを与えるのは,普通の人間たる真緒の役目」と語る場面があります。これは真緒にとって非常に重要な助言となり,のちのウィンターライブにもつながっていくのですが,オータムライブでは,そんな真緒に大きな転機がやってきます。
 彼は自分以外のメンバーができないことができて,けれどみんながはじめから持っているものは,自分には努力でしか手に入れられない,あるいは手に入るかどうかも分からないもの。そんな事実を突きつけられ,自分がユニットに存在する意味が大きく揺さぶられてしまいます。けれどこれがサマーライブの真同様,彼にとっての着火になり,強く輝くきっかけになるのです。

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 オータムライブを読んで胸が熱くなるのは,この段階でもまだまだTrickstarが“万能の主人公”ではないところです。四人五脚で走っていると,誰かがつまずけば全員が転ぶという話を書きましたが,ここまでに彼らは何度も転び,そのたびに彼らが進む道の厳しさを教えられているように感じます。けれどそのたびに,転んだからなんだと言うんだ,手をつないでいるからこそみんなで立ち上がれるんだと,泥を払って走り続けようとする姿が目に浮かぶのです。オータムライブまでを読んでいると,そんな彼らが1人1人ある種の“覚悟”を決めていくところが,第二部の面白さではないかと感じました。

 おまけのようになって恐縮ですが,オータムライブでは青葉つむぎと伏見弓弦の活躍も印象的でした。陰ながら,しかし非常に重要な役目を果たした彼らについてもぜひ注目しておきたいところです。


第二部の見どころ〜ウィンターライブ考察〜

第一部と対で描かれた物語


 ウィンターライブは第二部「キセキ」シリーズのフィナーレということで見どころもたくさんあるのですが,ストーリー展開のほかにぜひ注目していただきたいのは,第一部で見られたいくつかの関係性が再び描かれているところです。いずれもTrickstarのメンバーとそれぞれの先輩の間で交わされた会話なのですが,これは2年生だけで構成された彼らにとって,ユニット内では得ることのできない,貴重な心のつながりや学びのように感じられます。

<明星スバルと守沢千秋>

 第一部でTrickstarが解散危機に陥り,1人になってしまったスバルを助けるべく参上したのが,バスケ部の先輩である守沢千秋(流星隊)でした。ですがこの第二部のなかで,そもそもスバルがバスケ部に所属したのは,学院で孤立していた彼に千秋が声をかけて勧誘したからということが明らかとなります。つまり千秋は,スバルの孤独を2度救っていたわけです。

メインストーリー第一部より
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 しかしここで筆者が心を動かされたのはその事実だけではなく,千秋の「相手がスバルでなかったとしても同じことをした」という言葉です。ずっと“あの明星”の息子として,あらゆる方向から羨望も憐れみも憎悪も向けられていたスバルにとって,肩書きをとっぱらったありのままの自分に差し伸べられた手は,かけがえない仲間のそれと同様,この上なくあたたかく感じられたのではないでしょうか。

メインストーリー第二部より
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<氷鷹北斗と日々樹渉>

 同じく第一部でのTrickstar解散危機で,望まぬ決意で苦しんでいた北斗のもとに現れたのが,演劇部の先輩である日々樹渉(fine)でした。そのとき,渉が所属するfineはTrickstarと敵対関係にあったわけですが,彼のその行動に苦言を呈した英智に対し,渉は「(スバルを助けた)千秋の姿を見て,自分も先輩らしいことをしたかった」と答えていました。

メインストーリー第一部より
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 また,かつて英智が五奇人と戦った際,渉が五奇人最後の1人だったことが,第一部の考察で挙げた「追憶*集いし三人の魔法使い」で明らかとなっていました。そこで描かれた渉の助っ人“ホッケーマスクくん”(正体は北斗)を舞台に呼んだのは渉であり,その行動が北斗に対する1つの愛情の形であったこと,このときの北斗の経験が最初の春の革命や,SSにもつながってきた事実に胸が熱くなりました。

メインストーリー第二部より
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<遊木 真と瀬名 泉>

 キッズモデル時代からのつながりで,普段から何かと絡みが多い2人です。第一部ではDDDの最中に泉が真を“監禁”しますが,この経緯は先ほど挙げた「追憶*モノクロのチェックメイト」において,英智と泉がTrickstarを潰すために張った共同戦線が理由であり,真を守りたいという泉の想いからの行動であったことが分かります。

メインストーリー第一部より
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 その後の彼らの関係もずっと泉からの一方通行のようにも見えましたが,第二部を読むと,真は泉から送られ続けていた愛を拒否していたわけではなく,ただ消化しきれなかっただけだったように感じました。真が人間的に成長し,自分自身を認められたことで,与えられる愛に対しても同じように受け入れることができたのかもしれないと。そういう変化があったことで,2人の関係性は再びスタートラインに戻れたように思いました。

メインストーリー第二部より
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<衣更真緒と蓮巳敬人>

 第一部では,生徒会側と反生徒会側という相反した立場の2人ではありましたが,生徒会にも所属し板挟みで人知れず悩んでいた真緒に,敬人は“器用なつもりで立ち回っていた,かつての不器用な自分”を見て,手助けをします。彼らは権力を持ちながらもシビアになりきれない,人情家であるところが似ていると感じました。

メインストーリー第一部より
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 実は第二部に敬人は登場していないのですが,「ウィンターライブ」ではSS本番に向け,真緒が「(敬人に)特訓してもらって,ちょっとした奥義を伝授してもらった」と語ります。かつての学院を革命したかった1人だった敬人は,英智と同様,Trickstarの“奇跡”を今一度と望んでいたのでしょう。陰ながら彼らを支え,笑顔で送り出したであろうことが想像できるエピソードだと思いました。

メインストーリー第二部より
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 このように,ウィンターライブでは第一部と対になるイメージの展開や関係性がいくつか見られます。そして個人的に,第一部で展開された内容を最も美しく回収したように感じたのが,明星スバルの物語です。


<明星スバルをめぐる物語>

 ウィンターライブでは,それまでぼんやりとしか見えていなかったスバルの父と,それにまつわる事件や当時の芸能界の様子が明らかとなります。その事実はとても痛ましいもので,そんなできごとを抱えてなお,笑顔を見せるスバルの強さや苦悩,アイドルを夢見る彼の悲願のようなものが,あらためてこちらの心に迫ってくるように感じました。

 第一部で英智がTrickstarに解散を命じたとき,4人はそれぞれの事情でばらばらになってしまいます。けれどその場に頑として残り,Trickstarの旗を守り続けたのはスバルでした。筆者はその理由の1つが,彼が第一部の序盤で語っていた“メンバーへの恩返し”ではないかと考えています。

メインストーリー第一部より
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 そして第二部ウィンターライブのステージで,Trickstarは絶体絶命の窮地に追い込まれます。なかでも最も傷つき打ちのめされたのはスバルです。3人はどうにかして彼を守り,救い,みんなでもう一度立ち上がろうとします。このとき彼らがスバルにかけた言葉は,あのとき消えそうだった光を1人で必死に守ってくれたスバルに対する恩返し,愛の倍返しのように感じられました。

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 最後にもう1つ,この「ウィンターライブ」をより楽しむためのイベントストーリーを紹介します。まずは「ノエル*天使たちのスターライトフェスティバル」「キャロル*白雪と聖夜のスターライトフェスティバル」です。

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 「ノエル*天使たちのスターライトフェスティバル」では,夢ノ咲学院の冬の一大イベント「スターライトフェスティバル」と呼ばれるS1をめぐる,fineが中心のストーリーが。「キャロル*白雪と聖夜のスターライトフェスティバル」ではRa*bitsとUNDEADが中心のストーリーが展開されるのですが,同じくこの「スタフェス」に出場するTrickstarの面々が,英智に向かってSSの出場権に関するある提案をします。これらの物語を「ウィンターライブ」を読む前にさらっておくと,彼らがどれだけ決死の覚悟でSSに臨んだかという側面の1つを知ることができ,より深みが生まれるのではないでしょうか。

 もう1つは「太神楽!祝いのニューイヤーライブ」です。これは時系列的にSS後のストーリーなので,ぜひ第一部、第二部読了後に読むことをおすすめします。ここでは第一部で対決した,紅月VS. Trickstarの戦いを再び見ることができます。このストーリーで描かれる彼らの熱い想い,ステージにかける情熱は,ここまでの彼らの物語を見守ってきた人なら,必ずや胸を打たれることでしょう。


■めでたしめでたしの向こう側,“夢の先”の景色


 メインストーリー第一部と第二部では,Trickstarの4人が“主人公”としてストーリーが描かれました。ですが「あんスタ」は,登場するすべてのアイドルが主人公たる物語です。
 アイドルの頂点,一番輝く星を目指して日々研鑽を積むすべてのアイドル……fineも,UNDEADも,Knightsも,流星隊も,Ra*bitsも,2winkも,紅月も,Valkyrieも,Switchも,MaMも,そしてここでは描かれなかったたくさんのアイドルやアイドルの卵たちが,革命に,そしてウィンターライブの結末にどんな景色を見たのか。どんなものを受け取り,どんな気持ちになったのか。そして彼らの夢の先にはどんな世界が広がっているのか――。そんなことを想像してみるのも,また面白いのではないかと思います。

 筆者は「あんスタ」の中で好きなセリフがたくさんあるのですが,その中の1つ,アイドル時代の佐賀美陣によるこちらを紹介します。

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 教師たちがアイドルとして活躍していた時代,芸能界は腐敗しきっており,陣と章臣は必死で反抗してきました。ここで言う“馬鹿なガキ”というのは彼自身のことも指しており,その戦いがどこまで影響したかは置いておいたとしても,ある意味で彼らもまた“革命者”であったわけです。

 初めに混沌があり,革命によって秩序が生まれ,再び革命によって奇跡が起きる。誕生と破壊を繰り返しながら,少しずつ世界は正しい方向に動いていく。大げさかもしれませんが,「あんスタ」のメインストーリーで描かれる物語は,そんな人類の歴史をも思わせるものであるようにも感じました。


物語は新たな展開へ。メインストーリー第三部「Saga」について


 DDDで始まった物語がいったん完結し,次に展開されているのが教師を主人公としたメインストーリー第三部「Saga」です。ここで簡単に,第三部の前編となる「Saga*かけあがるレインボーステージ」の内容をご紹介します。

「Saga*かけあがるレインボーステージ」
<あらすじ>

 時間は少し戻り,DDDの少しあと。革命後の夢ノ咲学院で物語が始まる。2年A組を担任しスポーツドクターも務める佐賀美陣は,現役当時は業界トップの人気を誇るスーパーアイドルだった。そんな彼が恩人の頼みで,「Project-Saga(サガ計画)」と呼ばれる企画で一時的にアイドルとして復帰することに。

 サガ計画は,引退したアイドルを“師匠”にし,“弟子”の若手アイドルとともに師弟関係の物語を紡いでいくシナリオです。そこで陣は両親とも懇意にしている氷鷹北斗に声をかけ,姫宮桃李,守沢千秋とユニットを結成します。一方,章臣もとある思惑で春川 宙,影片みか,三毛縞斑とユニットを結成し,ふたつのユニットは合同ライブを行うのでした。

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■前編でおさえておきたいポイントと後編に向けて


 なんと言っても前編においては,陣が語る“アイドル史”に注目しておきたいところです。「あんスタ」という物語において,アイドル業界がどのように始まって何が起き,今に至るのか。この歴史を知ることで「あんスタ」のアイドルたちの物語にさらに深みが増すように感じました。

 また,サガ計画はストーリー序盤では“雑誌の低予算計画”だと言われていたのですが,話が進むにつれ,裏で何かの陰謀が企てられていることが見えてきます。それは一体何者によるもので目的は何なのか,誰が巻き込まれていくのか。このあたりが後編で描かれる内容になってくるのでしょう。


 第三部ではここまでと主人公が変わりますが,後編では第二部に登場した他校アイドルやそこで描かれた陰謀などが絡んでくることが予想されます。したがって第二部,さらに言えば第二部を楽しむために第一部はぜひ知っておきたいところで,やはりメインストーリーはすべてが複雑に絡み合っているということなのだと感じます。

 第一部では夢ノ咲学院が,第二部では夢ノ咲学院と他校のアイドルが中心となった物語が描かれました。そして第三部では,さらにスケールが広大に,かつ深いものになるのではないかと筆者は予想しています。メインストーリーで起きるできごとは,たとえストーリー上で姿が見えていなくても,「あんスタ」に登場するすべてのアイドルに影響すると言っても過言ではありません。第三部はそうした側面が,より強く感じられるものになるのではないでしょうか。

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「あんさんぶるスターズ!」氷鷹北斗の父・誠矢が新キャラクターとして発表に。「Saga/後編」で登場するスペシャルユニット“Lilith”のメンバー

「あんさんぶるスターズ!」氷鷹北斗の父・誠矢が新キャラクターとして発表に。「Saga/後編」で登場するスペシャルユニット“Lilith”のメンバー

 Happy Elementsは本日(2018年12月26日),アイドル育成プロデュースゲーム「あんさんぶるスターズ!」の新キャラクター氷鷹誠矢を同社の公式Twitterで発表した。氷鷹誠矢はTrickstarのメンバー氷鷹北斗の父であり,今もなお人気の衰えない現役アイドルだ。12月末に開催予定の大型イベント「Saga/後編」で,スペシャルユニット「Lilith」のメンバーとして登場するという。

[2018/12/26 12:57]

 以上,「あんスタ」メインストーリーの紹介,解説をお送りしました。なお,膨大な数の「あんスタ」イベントストーリーで筆者が選ぶおすすめのものを紹介しつつ,各ユニットについて語る記事を製作中です。こちらもどうぞお楽しみに。

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