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あれから4年。久々に姿を見せた「人喰いの大鷲トリコ」について根掘り葉掘り聞いてみよう――4年間で変わったこと,変わらなかったこと
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印刷2015/08/01 00:00

インタビュー

あれから4年。久々に姿を見せた「人喰いの大鷲トリコ」について根掘り葉掘り聞いてみよう――4年間で変わったこと,変わらなかったこと

 心待ちにしているファンなら先刻承知のとおり,2015年のE3で,ついに「人喰いの大鷲トリコ」が(再?)発表された。4Gamerが,クリエイティブディレクターである上田文人氏最後に4Gamerに記事が掲載されたのは2011年10月。その2か月後くらいに上田氏のSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)退社の報が流れ,同時に「開発継続中」と発表はされたものの,“トリコ”は表舞台から完全に姿を消した。

人喰いの大鷲トリコ

 毎年E3のタイミングではSCEから「作ってます」という声明は発表されていたものの,何も情報は出ず,上田氏も沈黙を守り,そして歳月と共にプラットフォームは一新され,その状況で開発中なのを信じるのはもう無理だな……と思っていた矢先,まさかのE3 2015に登場だ。しかも新しいムービーを引っさげて,プレスカンファレンスにおいて非常に重要である“トップバッター”として。

 ご存じのように,上田氏の作品数は本当に少ない。氏のデビューは2001年なので,今に至る15年間に,「ICO」「ワンダと巨像」というわずか2作品しか世に出していない。そしてその2作品は,日本のみならずとりわけ欧米諸国において絶賛され,(氏はそういう表現を嫌うかもしれないが)一気にクリエイターのスターダムにのし上がった。
 そして3作品目にあたるトリコは,2009年に発表して,すでに6年間作り続けているわけだ。 

 表舞台への最後の登場から4年。その間,上田氏は何をしていたのだろうか。トリコに何があったのだろうか。そのあたりを中心に,根掘り葉掘り聞いてみよう。

 なお2011年に掲載したインタビューで,氏についてはすでに多くのことを聞いているので,未読の方は,ぜひそちらも合わせてお読みいただきたい。本インタビューはそのときの内容を下敷きとしている部分も多いし,上田文人というゲームデザイナーが,何を考えて作品を作っているのか,その姿勢が伺えるだろう。

ゲームデザイナー 上田文人氏


「ICO」と「ワンダと巨像」のリマスター版を迎えて。上田文人というゲームデザイナーは,何を考えて作品を創るのか――日本が誇るゲームデザイナーがみっちり語る2時間

「人喰いの大鷲トリコ」公式サイト


4Gamer:
 2009年からしばらくの間,1年に1回お会いしていたのですが,あのときのロングインタビューから実に4年ぶりですね。お久しぶりでございます。またお会いできて,心から嬉しく思います。

上田文人氏(以下,上田氏):
 えっ,そうなんですか? ……ちょっと信じられないですね。もう4年ですか。

4Gamer:
 正直なところ,さすがにもうトリコ(人喰いの大鷲トリコ)のプロジェクトは永久凍結されちゃったのかな……と思ってました。

上田氏:
 いろんな人にそう言われます。「開発中止と聞いてたけど,続いていて本当によかったです」って。別に中止になっていたわけではないんですけどね(笑)。

4Gamer:
 確かに「中止」という報は流れていませんでしたが……。でもこれだけ無言の期間が続くと,さすがに“中止”が既成事実みたいになっちゃう気はします。SCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)に聞いても「作ってます」と言うだけで,それが何年か続いたので蕎麦屋の出前よりタチが悪いという(笑)。

上田氏:
 まぁ確かにちょっと間が開きすぎたかもしれません……。

4Gamer:
 いやあ,でも素直な感想を述べることが許されるなら「続いていて本当によかった」というのが個人的な気持ちです。続けてくれた,上田さんとSCEに心から感謝です。


ゲームとしての“魅せ場”を見せる


4Gamer:
 さて,E3で公開されたムービー観ました。“観ました”というか……もう何十回観たかな? 今までのムービーと,ちょっと作りが違いますよね。いろんな要素を意図的に見せようとしている気がします。

上田氏:
 今までというのは,ICOやワンダ(ワンダと巨像)の時と比べてですか?

4Gamer:
 いえ,今まで出たトリコのムービーと比べての話です。

上田氏:
 なるほど。確かにそうですね。今回のムービーに関しては,「ちゃんとゲームとして動いているんだ」というところをアピールしないといけない,というのがコンセプトだったので。あまり意図的な演出などは入れずに,ゲームプレイそのままを撮影して出しています。

4Gamer:
 グラフィックの細かさであったり,奥行きのある背景であったり,なびく羽根であったり,ダイナミックに崩れゆくステージであったり,少年とのインタラクションであったり,ひと通りの要素が出ていたんで,とてもいいムービーだと思いました。


上田氏:
 もう少し長いバージョンというのも,E3会場のクローズドの場で見せたんですけど,見栄えのする派手なシーンがあるほうがE3には好まれるということで,そこだけを切り抜いたものですね。

4Gamer:
 確かに「ゲームとして動いている感じ」がしましたね。
 E3って相当な記事数が上がるので,実は1つ1つの記事は,結構な大作であってもそこまで閲覧数が高くならないんですね。でもトリコは初報で凄まじい数の閲覧数がありました。それだけの数の人達が,きっと安心したと思いますよ。「本当に作ってたんだ!」って(笑)。

上田氏:
 そうであれば嬉しいのですが。

4Gamer:
 4年ぶりにE3という大舞台で情報を出して,どんなお気持ちでした?

上田氏:
 正直なところ,発表する前はドキドキでした。長い期間,まったくお伝えできなかったということもあったので,もうとっくに忘れ去られているんじゃないかなとか,期待値が下がっているんじゃないかなとか。

4Gamer:
 欧米で評価の高い上田さんであってもやはりそういう心配はするんですね。

上田氏:
 それはもう。あとプラットフォームがPS4(PlayStation 4)に変更になったということで,いろんな批判を受けるんじゃないかなとか,それこそいろんな想像をしてました。でも実際に発表してみると,思っていたより好意的に受け入れられたのかもしれないな,という印象でしたね。

4Gamer:
 「トリコ先生まだ生きてたんだ?」とか憎まれ口の1つでも叩きそうな人達も,割と好意的に受け止めている感じはします。ひいき目ですかね?

上田氏:
 だとすればありがたいですね。恐くて,あんまり細かいところまでチェックできてないのですが(笑)。

4Gamer:
 みんな私と同じ気持ちで,「よかった,よかった」というところではないでしょうか。

上田氏:
 「トリコがまだ生きててよかった」と,そんな感じでしょうかね。

4Gamer:
 まぁでも店に並ぶまでは信じられない気分でもありますが(笑)。でもそれって逆に言うと,それだけ待たされても,まだ待つ価値があると思っているわけで,きっとそういう人がたくさんいるんじゃないかなぁ,と思うわけです。

上田氏:
 そうかもしれませんね……。申し訳ない気持ちが半分,ありがたい気持ちが半分です。

4Gamer:
 自分の作品を遊ぶために楽しみに待ってくれているというのが,クリエイターとしてのモチベーションになると,確か前回おっしゃっていましたよね。それも度を超えるとプレッシャーにしかならないかもしれませんが,そういう意味ではトリコは,待つ人たちの心に深く刺さっているんじゃないかな,と思います。

上田氏:
 リアクションも大きかったみたいですし,そこは本当によかったです。

4Gamer:
 4年ぶりの発表ということで,SCE的にはどうなると思ってたんだろう?

上田氏:
 あとで聞いた話ですが,ありがたいことにSCEとしてもユーザーに期待されていると感じていて,だからこそE3カンファレンスのトップバッターだったと言われました。

4Gamer:
 そういえばトップバッターでしたね!
 E3はアメリカ時間で動くので,日本で待機中の我々は眠い目をこすりながらSCEのプレカンを観るわけですが,いきなり出てきたのがトリコだったのでひっくり返りました。
 
上田氏:
 今回は,本当に内密に進めさせていただきました。


「動き」にこだわることが,上田作品のこだわり


生々しい動きを見せるトリコ。実在しない生き物なのに,さもそこにいるかのように動く
人喰いの大鷲トリコ

4Gamer:
 しかもまだ生きてたどころか,背景の1ドット1ドットが“生きて”いて,上田さんが言うところの「描き割りではない奥行き」があって,久しぶりに,しかも新しいシーンで観られてとても嬉しかったです。「あそこに行ったら何があるんだろう」と思わせてくれる絵がPS4のグラフィックで健在でしたね。

上田氏:
 でも,グラフィックス的にはPS3時代とそんなには変わってないんですよ。

4Gamer:
 はい。そんなに変わっていないからこそ,逆に1つの疑問が湧いてくるんですが,まぁそれは後で聞くとして……。
 というか,ムービーで見せた部分は,あれ本当に以前のトリコムービーと全然変わっていないんでしょうか。少しリアリティが増した気がしたのは気のせいですか?

上田氏:
 ディテールレベルでは,細かく調整は加えていますけどね。
 ……これはなんて言えばいいのかちょっと難しいんですが,例えばPS4の性能を使って,すべてをフォトリアルに作り込んでいくというのは,できなくはないんです。

4Gamer:
 はい,おっしゃりたいことは分かります。

上田氏:
 でも全体のバランスであったり,最終的な完成品のクオリティを考えたときに,結局僕が表現したいものというのは「その世界がさも存在しているように,リアルに存在するように」ということなので,絵がちぐはぐだったりとか,ある瞬間はリアルに見えるけど,ある瞬間はアンリアルに見える……みたいなものにはしたくないんですよね。
 そういうことを考えていくと,大体これくらいの水準で全体を表現して,それで破たんがないように通して作る必要があるんですね。


4Gamer:
 その調整を,ゲームの最初から最後にわたって,ずっとやり続けるわけですよね。

上田氏:
 そうですね。例えば,ある特定のステージだけ写真のように現実的に……という事も出来るんですが,それだと商品としてはまずいですよね。

4Gamer:
 ですよね。世界に入り込めないというか,なんか変に現実に戻されてしまう。

上田氏:
 キャラクター表現の話でも,よく“不気味の谷”って言われますけど,谷を超えるコストって膨大にかかるじゃないですか。そのあたりを考慮すると,ビジュアルはある程度で留めておいて,ほかの部分の労力を「動き」に当てるのはアリだと思うんです。

4Gamer:
 そしてその「動き」こそが,上田作品を独特たらしめている要素ですね。

上田氏:
 「動き」は,まだプレイヤーが錯覚を起こしやすいんですよ。なのでそちらにリソース配分を調整しつつ,世界全体を通してリアルに感じてもらうというところでのビジュアルバランスです。
 もちろんそれは単なる手抜きというわけではなくて,ほかのビデオゲームとの差別化であったり,リアリティであったり,そういうものを感じてもらうため,あのくらいのバランスがいいだろうと考えた結果です。

4Gamer:
 なるほど。じゃああまりに久しぶりに観たせいなのか,若干ひいき目が入っちゃってるのかもしれませんね。「もしかして筋肉の動き変わった?」とか思いながら観ちゃいました。

上田氏:
 でも,これからまだまだ調整して良くしていけると思いますよ。

4Gamer:
 それは動きに関してでしょうか。“アニメの動きオタク”の上田さんとして。

上田氏:
 そうですね(笑)。動きもそうですし,PS3時代には入っていたけど,まだ移植できていない要素も実はいくつかあるんです。それが入れば,よりリアルに感じていただけると思います。

4Gamer:
 “よりリアル”に,というワードがたいへん上田さんらしいと思ったんですが,あれではまだリアルさが足りない?

上田氏:
 いえ,そういうわけではないですよ。
 なんて言うか,作っている方はみんなそうだと思うんですけど,作っているうちに自分の目がどんどん肥えていくんですよ。まだ足りない,まだ足りないという感じで。言葉を変えると,アラが見える……というか,アラしか見えなくなっていくんです。

4Gamer:
 なんかすごく理解できます。
 原稿という,レベルも手数も違うもので語るのもおこがましいですが,書き上げてから読めば読むほどアラが見えてきて,どんどん「ダメなもの」に見えてくるんですよね……。

上田氏:
 似たようなものなのかもしれませんね。でもその眼の肥え方はものすごく大事だと思います。あと,ビデオゲームに関するいろいろな“進歩”があるじゃないですか。それと比較して調整をかけていかなくちゃいけない。

4Gamer:
 進歩……とは,表現的な部分のものですか?

上田氏:
 ええ。

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    人喰いの大鷲トリコ

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