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  • 発売日:2016/02/05
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XCOM 2
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【箭本進一】ゲームのご先祖様:「XCOM 2」のルーツを尋ねて
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印刷2017/10/21 13:00

連載

【箭本進一】ゲームのご先祖様:「XCOM 2」のルーツを尋ねて

箭本進一 /  ゲーム系ライター。最新作からレトロゲームまで幅広く遊ぶ

画像集 No.001のサムネイル画像 / 【箭本進一】ゲームのご先祖様:「XCOM 2」のルーツを尋ねて

箭本進一「ゲームのご先祖様」


 日々,無数の新作が発売されるゲーム業界ですが,「新しいもの」は突然変異的に現れるわけでなく,偉大な先人達が積み上げてきた工夫や試行錯誤がそこにはあります。この連載では,筆者が独自の見解で新作を分析。ルーツと思しきゲームを探ったり,新作の画期的な要素がこれまでのゲームでどのように取り上げられてきたのかを探っていこうと思っています。
 第3回は2Kの「XCOM 2」PC / PlayStation 4 / Xbox One)を取り上げてみましょう。


「XCOM 2」のルーツを尋ねて


 「XCOM 2」は,プレイヤーに対して感情移入を強く促すシミュレーションRPGだ。特殊部隊・XCOMの兵士達は戦闘で経験値を得て成長するが,戦いの中で命を落せば生き返ることはない。これは初代「X-COM: UFO Defense」(1994年。邦題「X-COM 未知なる侵略者」)も同様だったが,シミュレーションにRPGの要素を加えたことで,兵士への感情移入の度合いが高くなっている。

 「XCOM 2」には,感情移入をさらに深くするための仕掛けが施されている。バーに行けば兵士達がくつろいでいる姿があり,慰霊碑を見れば兵士の遺影とともに死因が記されている。兵士達が駒ではなく,生きた人間として描かれているのだ。
 8月29日にリリースされた拡張パック「選ばれし者」では,同時に出撃した兵士達は「絆」を結び,相手を励まして助け合えるようになった。また,敵に苦戦したり,状態異常を受けたりすると,これがトラウマになり,再び同じ事態に陥ったときにパニックを起こすこもある。兵士達がより人間らしくなり,一人ひとりに対して深い思い入れを抱くようになった。

 そのため,プレイヤーはできるだけ兵士を大事にする戦術を組み立てることなり,戦死したときには喪失感を覚える。論理的に戦術を組み立てるシミュレーションでありながら,感情移入がプレイヤーの決断や体験を印象深いものとしているのだ。

XCOM 2
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 シミュレーションと言えば,兵器や兵士の集まりがユニット(駒)となることが多く,目的達成のためにはユニットを犠牲にすることも許容されるジャンルだ。そんなシミュレーションに感情移入を組み合わせるという試みは,1980年代から同時多発的に行われてきた。
 「大戦略」(1985年)ではユニットが戦闘で経験を積むことで強くなるが,マップごとに使い捨ての駒だった。それが同作の流れを汲む「マスターオブモンスターズ」(1988年)において,成長したユニットがより強力に進化するうえ,生き残った者を次のマップへ引き継げるようになった。
 また,「三國志」(1985年)では配下に加えた武将を育成できるだけでなく,「忠誠度」が低いと裏切られることもある。ユニットを成長する個人,独立した意志を持った個人とすることで,プレイヤーの感情を強く揺さぶる存在になったのだ。

XCOM 2
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 シミュレーションボードゲームの世界では「聖戦士ダンバイン オーラバトラー」(1983年)や「風の谷のナウシカ」(1984年)といった作品において,原作のキャラクターがユニット(駒)になり,感情移入の度合いを深めている。キャラクター達が織りなすドラマを描くアニメ,その関連商品としてキャラクターがユニット化されたわけだが,この例を見ると,いかに日本人が感情移入を重視しているかが分かる。「シミュレーションRPG」というジャンルが日本から勃興したのも必然と言えるだろう。

 そのエポックとなったのが,「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」(1990年)。敵軍のユニットを説得して仲間に加えることができ,キャラクターが持つドラマ性がシミュレーションと見事に融合している。
 ユニットにはそれぞれの個性に合わせて死亡時のセリフが用意されており,死んだ者は基本的に生き返らない。シミュレーションでは当たり前のように起こるユニットの損失が特別なものとなり,ドラマ性が生まれている。実に練り込まれたゲームデザインと言えるだろう。
 また,同時期の「第3次スーパーロボット大戦」(1993年)では,好きなパイロットやロボットを育成する要素に加えて,原作の名シーンを再現することで,ロボットアニメファンの感情移入を強く促している。

XCOM 2
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 今や,シミュレーションにRPGの要素や感情移入を促すシステムが存在することは珍しくない。そして「XCOM 2」を見れば分かるとおり,この進化はワールドワイドなものとなっている。このジャンルの次なる進化は,いったいどこから生まれるのだろう。



筆者の考える「XCOM 2」のご先祖様 5選


「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」
ファミリーコンピュータ / 任天堂 / 1990年

 従来の兵器が中心だったユニットをキャラクターとした,シミュレーションRPGの金字塔。キャラクターによって見た目を変えただけでなく,「特定のユニットで因縁のある相手を説得できる」「死亡した者は基本的に生き返らない」「若者は老人より成長率が高い」といったルールにより,個性に合わせたドラマ性が生まれている。
 それまでシミュレーションのプレイヤーと言えば,男性が中心だったが,同シリーズには女性ファンも多い。感情移入を重視したことで間口が広がり,20年以上も愛され続けることになったと言えるだろう。
 シリーズ第4作の「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」(1996年)では,異性のユニットを隣接させると恋愛関係が生まれ,有利な補正を得られるようになった。あらかじめ組み合わせが決められているのではなく,プレイヤーによって恋愛関係となるキャラクターが異なるのがポイントだ。

任天堂公式サイトより引用

(C)1990 Nintendo
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「大戦略」シリーズ
PC-9801など / システムソフト / 1985年〜

 兵器をユニットとするシミュレーションゲーム。戦闘を通じて経験値が得られ,勝利を重ねるとパワーアップしていく。「大戦略」シリーズのユニットは基本的に使い捨てなので,全滅しても同じものを再生産すればいい。
 しかし,それなりに成長したユニットには愛着が生まれ,大事に扱うようになる。感情移入がプレイヤーの決断を左右しているのだ。なお,初期作品ではユニットを成長させてもその効果を発揮できるのは,1つのマップに限られる。お気に入りのユニットを,次のマップでも育て続けることはできない。

「Project EGG」公式サイトより引用。画像は「大戦略88」

(C)2017 SystemSoft Alpha Corporation (C)2017 D4Enterprise Co.,Ltd.
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「マスターオブモンスターズ」シリーズ
PC-8801など / システムソフト / 1988年〜

 「大戦略」の流れを組むシミュレーションゲーム。ドラゴンやデーモン,ペガサスといったファンタジー系のモンスターがユニットになっている。ユニットは戦いで経験値を得ると成長し,例えばドラゴンの場合,「ラージドラゴン」「ファイヤードラゴン」といったように進化を遂げていく。
 「大戦略」とは違い,育てたユニットを次のマップへと引き継げるため,プレイヤーの感情移入度はさらに深い。まさにシミュレーションRPGの原点だ。

「Project EGG」公式サイトより引用。画像は「マスターオブモンスターズII」

(C)2017 SystemSoft Alpha Corporation (C)2017 D4Enterprise Co.,Ltd.
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「三國志」シリーズ
PC-8801など / 光栄(現 コーエーテクモゲームス) / 1985年〜

 三国時代を舞台に,君主となって乱世を生き抜く定番シリーズ。戦力を充実させるには優れた武将を迎えることが欠かせないが,武将には「忠誠度」というパラメータが存在し,これが低いほど裏切りやすくなる。つまり,ただの駒ではなく,プレイヤーの意に反した行動を取る可能性がある人間として描かれている。
 それだけに有能な武将は大切に扱うようになり,裏切られようものなら憎しみも抱く。「武力」「知力」といった能力値を成長させるRPGの要素も相まって,感情移入がゲーム体験を豊かなものとしている。

「三國志」30周年記念特設サイトより引用。画像は「三國志」

(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
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「サクラ大戦」シリーズ
セガサターンなど / セガ / 1996年〜

 アドベンチャーとシミュレーションという異質なジャンル同士を融合させた作品。アドベンチャーパートでキャラクターの「信頼度」を上げると,シミュレーションの戦闘パートで能力が上昇する。とくに信頼度の高い仲間と隣接していると,特殊な「合体技」が使えるようになる。
 キャラクターへの愛情や思い入れがそのまま戦力につながるというわけで,アドベンチャーとシミュレーション,どちらのファンも楽しめるようになっていた。シミュレーションでありながら女性ファンが多いのも,こうした感情移入を重視したゲームデザインが理由の一つだろう。

サクラ大戦.com」より引用。画像は「サクラ大戦3」

(C)SEGA (C)RED
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■■箭本進一■■
宮城出身の大阪育ち。4Gamerを中心に活躍しているゲーム系ライター。アイデアや表現が優れている,勢いがすごいなど,一芸に秀でたゲームを愛する。著書に「超クソゲー」「超ファミコン」(共著/太田出版),「放課後、ゲームセンターで」(マイクロマガジン)などがある。
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