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[CES 2018]西川善司の3DGE:CES 2018でAMDは何を発表したのか
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印刷2018/01/09 00:00

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[CES 2018]西川善司の3DGE:CES 2018でAMDは何を発表したのか

 CES 2018の開催に合わせてAMDは,2018年にリリース予定の新製品を予告した。その概要はすでにお伝え済みだが,本稿ではより詳しく,「AMDは具体的に何を発表し,どんな製品を出すと言ったのか」をまとめてみたいと思う。

Radeon Vega Mobileを掲げる,AMDのLisa Su(リサ・スー)社長兼CEO
画像集 No.031のサムネイル画像 / [CES 2018]西川善司の3DGE:CES 2018でAMDは何を発表したのか

 というわけで,速報記事も踏まえつつ最初に結論めいたものをお伝えしておくと,今回,AMDが予告したこととしなかったことは以下のとおりだ。

●デスクトップPC向け第2世代Ryzen
  • 12nmプロセス技術と「Zen+」マイクロアーキテクチャを採用して2018年4月リリース
  • シリーズ名は「Ryzen Desktop 2000」に。「Ryzen 2」にはならない
  • 具体的な製品ラインナップの予告はなし
  • 対応チップセットは低消費電力化の進んだ400シリーズ。「X470」の名は挙がるも,詳細説明なし
  • AM4プラットフォーム向けに「HDD用のSSDキャッシュ」技術の提供を発表

●Radeon Vega Mobile
  • 2018年1月現在,サンプル出荷中
  • リリース時期,詳細スペックのいずれも未公開。パッケージ上でGPUとセットになるメモリはHBM2×1
  • 演算ユニット数は「Radeon RX Vega 64」比でかなり少なくなり,一方で電力性能は大幅に向上する見込み
  • AAAタイトルを高いフレームレートでプレイ可能とされる

●7nmプロセス採用版Radeon
  • 2018年中にサンプル出荷開始
  • スペックなどに関する情報は一切なし

●新世代APU
  • デスクトップPC向けRaven Ridgeは「Ryzen Desktop Processor with Radeon Vega Graphics」として北米時間2月12日に正式発表
  • ラインナップは169ドル(税別)の「Ryzen 5 2400G」と99ドル(税別)の「Ryzen 3 2200G」。前者は4コア8スレッド対応CPUと演算ユニット数11基のGPU,後者は4コア4スレッド対応CPUと演算ユニット数8基のGPUを組み合わせたもの(※参考:Xbox One Sの統合するGPUコア数は11基)
  • Ryzen Desktop Processor with Radeon Vega Graphicsの登場に合わせて現行デスクトップCPUの価格改定を実施
  • Ryzen Mobileでは下位モデルとなる「Ryzen 3 2300U」「Ryzen 3 2200U」が追加に。前者は4コア4スレッド対応CPUと演算ユニット数6基のGPU,後者は2コア4スレッド対応CPUと演算ユニット数3基のGPUを組み合わせたものに
  • Ryzen Mobileに「PRO」が加わる。「Ryzen 7 PRO」「Ryzen 5 PRO」「Ryzen 3 PRO」の3モデル展開


大きなマイクロアーキ刷新はないが,12nmプロセス技術へ微細化が進む第2世代Ryzen


Jim Anderson氏(Senior Vice President and General Manager, Computing and Graphics Business Group, AMD)
画像集 No.002のサムネイル画像 / [CES 2018]西川善司の3DGE:CES 2018でAMDは何を発表したのか
 報道関係者向けの事前説明会「CES TECH DAY」でRyzen関連のアップデート詳細を語ったのはAMDのJim Anderson(ジム・アンダーソン)氏だ。

 第2世代Ryzenのスペック面について,氏が開示したのは,GLOBALFOUNDRIESの12nm LP FinFETプロセス技術を採用して製造され,マイクロアーキテクチャは現行世代の「Zen」を小幅改良し,より高クロックで動作するようにした「Zen+」になり,Ryzen Mobileこと「Ryzen Processor with Radeon Vega Graphics」(以下,便宜的にRyzen Mobileと表記)で初めて採用された動作クロック制御機能「Precision Boost 2」を採用して,2018年4月にリリース予定であることのみ。製品ラインナップや,細かな仕様は現時点で未公開だ。

第2世代Ryzenは4月にデビュー予定
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 第2世代Ryzenに“Ryzen 2”“Ryzen II”といったブランディングはなく,モデルナンバーを2000番台へ引き上げることで,第1世代との区別を行うとのこと。AMDは「Ryzen Desktop 2000」というシリーズ名を与えている。
 気になるのは,2000というモデルナンバーを,第1世代RyzenベースのCPUコアを統合したRyzen Mobileがすでに採用していることだが,Anderson氏は「これはPrecision Boost 2を採用するため」と述べていた。AMDとしては,採用するプロセス技術でもマイクロアーキテクチャでもなく,Precision Boost 2の有無で,第1世代と第2世代のRyzenを区別しているようだ。
 実際,筆者の取材によれば,第2世代RyzenのZen+マイクロアーキテクチャは,Zenマイクロアーキテクチャと大きく変わっていないとのことである。

第2世代RyzenシリーズのキモとなるPrecision Boost 2だが,技術的な詳細はRyzen Mobileのレポート記事を参照してほしい。簡単に紹介しておくと,動作クロック制御をより柔軟に行うようにして,常に高クロックでCPUの各コアを駆動できるようにしたもの,といったところだ
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 なお,第2世代RyzenベースのRyzen ThreadripperとRyzen PROは,2018年下半期に登場予定という。

Ryzen ThreadripperとRyzen PROの第2世代モデルは2018年後半の登場予定
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 Anderson氏はまた,第2世代Ryzenに合わせて,新しいチップセットとなる400シリーズを投入することも明らかにしている。デスクトップPC向けの最上位モデルは「X470」だ。

第2世代Ryzenに合わせて400シリーズチップセットが登場予定
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 AM4プラットフォームなのは変わらないため,現行の300シリーズチップセットを搭載するマザーボードでも第2世代Ryzenシリーズは利用でき,また400シリーズチップセットと第1世代Ryzenを組み合わせることも可能。ただし「第2世代Ryzenは,X470チップセットとの組み合わせでフルポテンシャルを発揮できる。このあたりの詳細はリリース直前に解説したい」(Anderson氏)とのことだった。

AMDは,Enmotusの「FuzeDrive」技術のカスタム版を,AM4プラットフォームにおけるHDD用のSSDキャッシュ機能として提供することを発表している。すでにOSが入っているHDDを高速化するソリューションとして訴求することになるようだ。要するに,Intelの「Rapid Storage Technology」に含まれる「Smart Response Technology」対抗である
画像集 No.007のサムネイル画像 / [CES 2018]西川善司の3DGE:CES 2018でAMDは何を発表したのか 画像集 No.008のサムネイル画像 / [CES 2018]西川善司の3DGE:CES 2018でAMDは何を発表したのか
AMD純正クーラー「Wraith Cooler」の新モデルとなる「Wraith Prism」も発表となった。約1677万色から選べるLEDイルミネーションが目を惹くが,キモはファンやヒートパイプがソケットの外形領域から大きくはみ出ないよう配慮したことにあるそうだ。MicroATXやMini-ITXといった手狭なフォームファクタで,メモリモジュールやグラフィックスカードとの干渉を避けるべく配慮したという
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Radeon RX Vega 64&56比で規模を大幅に縮小し,電力性能を追求したRadeon Vega Mobile


Scott Herkelman氏(Vice President and General Manager, AMD Radeon Technologies Group, AMD)
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 Radeon関連のアップデートについて語ってくれたのは,Scott Herkelman(スコット・ハーケルマン)氏である。

 GPU部門であるRadeon Technologies Group(以下,RTG)から2018年に登場する最初の目玉製品は,ノートPC向け単体GPUであるRadeon Vega Mobileだ。
 リリース時期は未公開ながら,すでにサンプル出荷は始まっているそうで,氏は壇上で,そのサンプルを掲げてみせた。

写真左がRadeon Vega Mobileだ。右はRadeon RX Vega 64(とその下位モデルである「Radeon RX Vega 56」)のGPUパッケージ
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小型のGPUダイと1基のHBM2を搭載するRadeon Vega Mobile。AAAタイトルを高いフレームレートでプレイできるという
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 ダイサイズや製造にあたって採用するプロセス技術,演算ユニット数に代表される各種スペックも一切が未公開だが,氏の掲げたサンプルパッケージを見る限り,GPUの規模はデスクトップPC版「Radeon RX Vega 64」と比べて大幅に削減されていると見られる。

 Herkelman氏が強調していたのは,チップサイズが小さいことと,厚みが薄いこと,そして省電力性能に優れることなどだ。
 ノートPC向けの単体GPU製品という扱いだが,AMDがこれまで行ってきた製品化戦略を振り返れば,ミドルクラスもしくはエントリークラス市場に向けたデスクトップPC用GPUとしての製品化もなされる可能性は高いと思う。

Herkelman氏が示した,Radeon Vega Mobileの訴求ポイント
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 なお,半年前までであれば,こういう場で登壇するのはミスターRadeonの異名を取るRaja Koduri(ラジャ・コドゥリ)氏だったわけだが,2017年11月9日の記事でお伝えしているとおり,氏はIntelへ移籍してしまった。そこで以前NVIDIAでGeForce部門のジェネラルマネージャーも務めたこともあるHerkelman氏が登壇したということなのだろう。

 Koduri氏の退職後,空位となったRTGトップの座は社長兼CEOであるLisa Su(リサ・スー)博士が兼任している状態が続いているので,やはりその影響は相応に大きかったのだと推測されるが,一方で「円満退職だった」という情報もある。だとすると,AMDとの関係は良好なままIntelへ移籍した可能性もあるわけだ。
 思い返せば,Koduri氏は2009年に当時のATI TechnologiesからAppleへ移籍し,2013年に出戻る形で帰還した“実績”がある。なのでひょっとすると……という気もするが,いずれにせよ,2018年のRTGは,Koduri氏なしで前へ進んでいくことになる。


7nmプロセス世代に関する言及は最小限


 速報記事では「4つの新製品」の1つとして紹介した,GLOBALFOUNDRIESの7nmプロセス技術採用版Radeonだが,これについて,速報記事以上の情報はほとんどない。2018年中にサンプル出荷開始というステータスなので,リリースは2019年以降だろう,くらいか。

ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)や機械学習向け「Radeon Instinct」用として登場予定となっている,AMD初の7nmプロセス技術採用GPUは,2018年中のサンプル出荷開始予定だ
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デスクトップPC向けRaven Ridgeは2月12日に登場。ノートPC向けはRyzen 3が追加に


 最後はAPUの話題である。
 まずデスクトップPC向けには,開発コードネーム「Raven Ridge」(レイヴンリッジ)ベースの製品が,「Ryzen Desktop Processor with Radeon Vega Graphics」として北米時間2月12日に登場予定と明らかになった。前述のとおり,モデルナンバーは2000番台で,ラインナップは以下のとおりとなる。

  • Ryzen 5 2400G:4C8T,CPU定格3.6GHz,CPU最大3.9GHz,GPU演算ユニット数11基,メモリコントローラ情報未公開,cTDP 45〜65W,北米市場におけるメーカー想定売価169ドル(税別)
  • Ryzen 3 2200G:4C4T,CPU定格3.5GHz,CPU最大3.7GHz,GPU演算ユニット数8基,メモリコントローラ情報未公開,cTDP 45〜65W,北米市場におけるメーカー想定売価99ドル(税別)

   ※cTDP:Configurable TDP

2000番台のモデルナンバー末尾に「G」と付くのがデスクトップPC向けAPUということになる
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 ノートPC向けのRyzen MobileだとRyzen 7を名乗っていた「4コア8スレッド対応モデル」がデスクトップPC向けではRyzen 5になり,GPUの演算ユニット数が1基増えているというのは興味深い。デスクトップPCではCPUのRyzenがあるためシリーズ内でのランクは下がり,一方で熱設計や消費電力設計に余裕があるためRyzen Mobile比でスペックは上がっているということなのだろう。

 Anderson氏は,「この2製品に関して注目すべきはコストパフォーマンスである」と強調していた。確かに,4コア8スレッドのZenコアと演算ユニット数11基のVegaコアがセットで税別169ドルというのは,かなり魅力的と言えそうだ。
 余談気味に書いておくと,「演算ユニット数11基」というのは,「Xbox One S」に代表される通常版XboxのカスタムAPUに統合されるGPUコアの「演算ユニット数12基」に近い。そこからおおよそのグラフィックス性能は推し測ることができる。

「同じクラスのIntel製CPUとNVIDIA製GPUを組み合わせたシステムと比べ,60%のコストで同等の性能を実現できる」と,Anderson氏はRyzen 5 2400Gの魅力を訴えていた
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 なお,AMDはRyzen Desktop Processor with Radeon Vega Graphicsのリリースに合わせて,デスクトップPC向けRyzen全体に対する価格改定を実施する。AM4プラットフォームの最上位モデルである「Ryzen 7 1800X」が499ドル(税別)から349ドル(税別)まで下がるなど,インパクトはなかなか大きそうだ。

AMDが予告している価格改定リスト
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 一方のRyzen Mobile側では,2017年10月に「Ryzen 7 2700U」と「Ryzen 5 2500U」がリリース済みだが(関連記事),CES 2018のタイミングではその下位モデルとなるRyzen 3の2モデルが,以下のとおり発表となった。

  • Ryzen 3 2300U:4C4T,CPU定格2.0GHz,CPU最大3.8GHz,GPU演算ユニット数6基,メモリコントローラ情報未公開,cTDP 標準15W
  • Ryzen 3 2200U:2C4T,CPU定格2.5GHz,CPU最大3.4GHz,GPU演算ユニット数3基,メモリコントローラ情報未公開,cTDP 標準15W

Ryzen Mobileのラインナップ。左の2つは発表済みで,今回の新製品は右の2つとなる
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 両製品とも,プロセッサとしてはRaven Ridgeそのもの。製造上の都合でCPUコアやGPUコアの一部を不活性化したモデルという理解でいい。
 AMDのターゲットは,TDP 15W程度の薄型ノートPCや2-in-1,エントリークラスのゲーマー向けノートPCとのことだ。

「薄型ノートに高性能を」というのが,Ryzen MobileにおけるRyzen 3のコンセプト
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 AMDはまた,2018年第2四半期中に,商用向け選別版「Ryzen PRO with Radeon Vega Graphics」もリリースすると予告している。
 こちらは通常版のRyzen Mobileと同一のプロセッサコアを採用しつつ,ミドルハイクラス以上のモバイルワークステーションや基幹業務向けノートPCへの搭載を想定した製品だそうだ。プロセッサ自体の長期保証や,メモリ内容の暗号化といったハードウェアサポート機能が有効になっている。

Ryzen Mobileにも「PRO」バージョンの設定が加わる
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 登場予定となっている製品ラインナップは以下のとおりだ。

  • Ryzen 7 PRO:4C8T,CPU定格2.0GHz,CPU最大3.4GHz,GPU演算ユニット数10基,メモリコントローラ情報未公開,cTDP 標準15W(※基本仕様はRyzen 7 2700Uと同じ)
  • Ryzen 5 PRO:4C8T,CPU定格2.0GHz,CPU最大3.6GHz,GPU演算ユニット数8基,メモリコントローラ情報未公開,cTDP 標準15W(※基本仕様はRyzen 5 2500Uと同じ)
  • Ryzen 3 PRO:4C4T,CPU定格2.0GHz,CPU最大3.4GHz,GPU演算ユニット数6基,メモリコントローラ情報未公開,cTDP 標準15W(※基本仕様はRyzen 3 2300Uと同じ)

ノートPC向けRyzen PROと競合製品とのスペック比較
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 ところで,今回の発表においてAMDはRaven Ridgeのメモリコントローラ周りに関してとくに言及していないが,Ryzenの仕様上,DDR4メモリモジュールをメインメモリとしてもグラフィックスメモリとしても用いることになる。そのため,Vegaアーキテクチャで特徴的な,「HBM2を巨大なキャッシュとして取り扱う」という「HBC」(High Bandwidth Cache)システムは省略されており、「HBCC」(High Bandwidth Cache Controller)も搭載していない。
 HBCは,GPUとHBM2が直結されていてこそ意味をなすアーキテクチャであり,CPUとGPUとが共有するメモリコントローラの先にあるメモリシステムで利用する意味はないから,半ば当然の話ではあるが。


AMDお気に入りの多段階発表は年始にマッチする!?


 4ジャンルの新製品以外では,AMD独自の映像表示システム「FreeSync」に関するアナウンスもあった。
 それによると,HDMIベースのFreeSyncに対応する現行および将来のRadeonは,ファームウェアやドライバのアップデートにより,HDMI 2.1で規定される「Game Mode VRR」(VRR:Variable Refresh Rate)に対応するとのことだ。

 Game Mode VRRについてはHDMI 2.1の解説記事が詳しいが,メカニズムとしてはFreeSyncに近いので,対応してくるというのも納得のいくところだ。なにしろ,CES 2017のHDMI Forumブースでは,Game Mode VRRのデモをFreeSyncで代行していたくらいなのだから。
 このメッセージは,NVIDIAのG-SYNCに対して大きなアドバンテージになりそうである。

RadeonはHDMI 2.1のGame Mode VRRをサポートするとのこと。注意が必要なのは,8K解像度の120fps伝送を含むHDMI 2.1そのものに対応するわけではないということだ。Game Mode VRRの対応のみを行うということである
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Mark Papermaster氏(SVP, CTO Technology & Enfineering, AMD)
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 というわけで,以上がCES TECH DAYにおける発表内容の大筋である。イベントにはCTOのMark Papermaster(マーク・ペーパーマスター)氏が登壇し,Lisa Su氏の語った技術ロードマップの補足などを行ったりしていたが,本稿では割愛する。
 掻い摘まんでおくと,Papermaster氏のキーメッセージは,「競合のIntelやNVIDIAに対して一歩先の製造プロセス技術を積極的に活用して製品を製造していく」というもの。7nmプロセス版のRadeon Instinctなどは,その最たる事例と言うことができるだろう。

先進製造プロセスの活用面において,競合に対して今後,一気に追い付いていくという所信を表明していた
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世界中を騒がせている「CPUの脆弱性」に関する公式見解もPapermaster氏は述べていた。CPUの脆弱性に関する詳細は1月5日の記事を参照してほしい
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 最近,業界では「メディア泣かせ」と言われるAMDの多段階発表方式も,こうした「年の初め」に行われるのであれば,メディア側もユーザー側も,今後に向けていろいろと準備や心構えができるのでありがたく,またワクワク感も高められて悪いことばかりではないなと,と個人的には思ったりもした。

 今回の発表を踏まえつつ,2018年も,IntelそしてNVIDIAと戦うAMDの姿に注目していきたい。

[CES 2018]AMDが「2018年の新製品」を予告。第2世代RyzenやRyzen Mobile,ノートPC向けVegaなどが登場予定


AMD公式Webサイト

Radeon Technologies Group公式Webサイト(英語)

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