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「ストV」プロ格闘ゲーマー8名による,1泊2日の初心者強化合宿「Red Bull Gaming U 2016」レポート。気になる講義の内容やいかに
これまで,「Halo 4」や「ぷよぷよテトリス」といったタイトルで開催されてきたこのイベントだが,今回の課題タイトルは,多くのプロプレイヤーが主戦場にしている「ストリートファイターV」(PS4 / PC)ということで,豪華な講師陣が集結。ウメハラ氏,ときど氏,sako氏,ボンちゃん氏,ふ〜ど氏,板橋ザンギエフ氏,マゴ氏,ハイタニ氏という,いずれも世界の第一線で活躍している8名が集まった。
レクチャーは,それぞれの講師が3名の生徒を担当する形で,1日目はそれぞれの指導方針に沿って練習や座学が,そして2日目には,生徒と講師がチームを組んで臨む「Red Bull Gaming U 2016トーナメント」が行われた。
本稿では1日目の様子を中心に,各プロプレイヤーがどんな教え方をしていたのかをレポートしていこう。
「Red Bull Gaming U 2016」イベントページ
「ストリートファイターV」公式サイト
講師ごとに異なる方針の指導が行われた1日目
1日目は,まず各講師の挨拶からスタート。続いて生徒達による対戦会へと流れていった。各講師達は,ここでの対戦の内容や使用キャラクターによって,自分が担当するチームに目星をつけていく。
この後,講師陣によるドラフト会議によって,それぞれが担当する生徒が決まったが,この段階では生徒達にはまだ知らされていない。生徒達は8つの部屋に分かれて待機しており,そこへ担当講師が訪れることで,初めて自分達の講師を知る仕組みになっていた。
各講師がどう初対面の挨拶をするか,そして生徒達はどう反応するかという点は,講師陣もお互いに気になっていた様子。扉の外では,ほかの講師が興味津々で見守っていた |
初っ端から生徒とハイタッチをしていたマゴ講師。つかみは上々? |
各講師と生徒の顔合わせ後は,2日目のトーナメントへ向けた練習と座学が開始された。ここからは,各チームがどのような練習をしていたかを,紹介していこう。
ウメハラ組(同志社大学)
- つく氏選手(使用キャラ:いぶき / 4368LP)
- くに選手(使用キャラ:春麗 / 0LP)
- しろり選手(使用キャラ:リュウ / 8881LP)
講義開始前には「人に教えられるのも教えるのも苦手」と語っていたウメハラ氏だが,実際に講義が始まると,自分なりの考え方を生徒へしっかりと伝え,リラックスした状態で生徒の対戦を観戦する姿が見受けられた。
「目先の勝利にこだわるのではなく,今までとは違う視点からゲームをできるようになってもらいたい」と話していたとおり,具体的なテクニックよりも「このゲージ状況ではお互いに何が狙えるのか,そこからどのような読み合いが発生するのか」というような「ゲームの考え方そのもの」を中心に教えているようだった。生徒に何かを強制するのではなく,自分なりに考えるきっかけを与えようとしていると感じられた。
ときど組(駒澤大学)
- ぼくふぃ選手(使用キャラ:アレックス / 0LP)
- てんご選手(使用キャラ:ケン / 3117LP)
- ふみや選手(使用キャラ:ララ / 3538LP)
駒澤大学チームの3名は,格闘ゲームサークル「駒格」のメンバーとのこと。この部屋ではホワイトボードを使い,生徒3人それぞれが目指すべき戦い方を書き出したうえで,明日に控えた本番に向けて,当たる可能性が高いキャラクター順にキャラ対策をしていくという計画性の高い練習が行われていた。
熱心な指導の最中には,ときど講師から「そう! 今のいいよ!」といった檄も飛んだ。理論と情熱を兼ね備えたときど講師ならではの教えに,生徒達も熱心に耳を傾けていた。
ホワイトボードを使いながら熱く語るときど講師。予備校の授業のワンシーンのようだ |
ときど講師は本イベントにおける各キャラクターの使い手の数を書き出し,キャラ対策に優先度をつけていた。こういった対策をしていたのはこのチームくらいだろう |
sako組(常葉大学)
- エルシャール選手(使用キャラ:ケン / 10000LP)
- さわっぴ選手(使用キャラ:リュウ / 75LP)
- さわかん選手(使用キャラ:リュウ / 0LP)
常葉大学チームは,本イベントにどうしても参加したかったというエルシャール選手が,未経験者のさわっぴ選手とさわかん選手を誘って結成したチームとのこと。そのためこの部屋では,初心者であるさわっぴ選手とさわかん選手に対しては,sako講師がコマンド入力やコンボといった基礎の課題を与えて練習をさせ,上級者であるエルシャール選手に対しては,sako講師自らが手加減なしの対戦を行い,改善すべき点などのアドバイスを送るという形で指導が進められた。
練習のかいあって,初心者だった2人も夜には試合を行えるレベルにまで上達しており,本イベントに誘ったエルシャール選手も喜んでいるようだった。
ボンちゃん組(新潟大学)
- らちお選手(使用キャラ:ララ / 10094LP)
- ベガ選手(使用キャラ:ラシード / 6040LP)
- ノキ選手(使用キャラ:レインボー・ミカ / 6040LP)
新潟大学チームの選手達は平均レベルが高く,ボンちゃん講師の指導もそのぶん熱が入ったものとなった。他大学と比べても,密度の高い講義が行われ,とくにララ使いのらちお選手にいたっては,プレイヤー数が少なめのキャラクターということもあって,知識面ではボンちゃん講師よりも詳しい部分があった様子。そのため,この場面では何を狙うのが正解かといったことを,両者が意見を出し合いながら探っているような場面も見られた。
また,こちらの部屋では「対戦動画を皆で見ながら,試合のポイントとなる点や重要なテクニックを学ぶ」といった学習方法が取られていた。講師といえども,すべてのキャラクターに精通しているわけではないので,こういったやり方はある意味,賢い選択かもしれない。
ふ〜ど組(慶應義塾大学)
- ズミ選手(使用キャラ:ケン / 12030LP)
- きぬこ選手(使用キャラ:レインボー・ミカ / 0LP)
- 斬選手(使用キャラ:ケン / 948LP)
生徒同士の実力差が大きく離れているこのチームでは,生徒同士の対戦はほとんど行わず,勝つためのテクニックや考え方を,ふ〜ど講師が各個人に教えていくスタイルで講義が進められた。
ふ〜ど講師がとくに重視していたのは各ゲージの使い方で,例えばゲージは余らせておかずに早めに消費することや,どういった場面でゲージを使うのが効果的かといった,ゲージマネジメントに焦点が置かれていた。勝利の秘訣を的確に掴むことに定評があるふ〜ど講師だけに,より実戦的で勝利に直結する要素を効率的に教えている印象だった。
板橋ザンギエフ組(神戸電子専門学校)
- まっこりん選手(使用キャラ:ラシード / 3054LP)
- くろずうう選手(使用キャラ:ケン / 2643LP)
- うりうり選手(使用キャラ:ザンギエフ / 5759LP)
板橋ザンギエフ講師は,まず「生徒のモチベーションを上げる」ことを目標と掲げて指導に挑んでいた。細かいテクニックを教えるのではなく,講師・生徒同士で和気あいあいと対戦をしながら,その合間にアドバイスを送るという方法がとられており,ほかの部屋と比べて和やかなムードが流れていたのが印象的だ。
またオンライン対戦を利用しての練習にもいち早く取り組んでおり,「#RedBullGamingU」のハッシュタグを使ってTwitterで対戦相手を募集し,次々と対戦をこなしていた。
そうした雰囲気もあってか,この部屋の生徒達には疲労の色が見えず,ほかの部屋の生徒達よりも遅い時間まで練習をこなしていたという。「生徒のモチベーションを上げる」という講師の狙いはうまくいったようである。
マゴ組(秋田大学)
- yuki選手(使用キャラ:かりん / 3057LP)
- みうりんぐ選手(使用キャラ:春麗 / 3172LP)
- ryo選手(使用キャラ:未定 / 0LP)
マゴ講師は持ち前のキャラクターでいち早く生徒達と打ち解け,この部屋では非常に楽しげな雰囲気で練習が行われていた。初心者であるryo選手には,マゴ講師が張り付き形で手ほどきが行われ,とくにコンボ練習を中心に行っていたようだった。
一方,実力の近いyuki選手とみうりんぐ選手は,2人で対戦を行いながら,ときにマゴ講師にアドバイスをもらうという形で練習を行っていた。楽しげな雰囲気ながらも,「春麗のコンボは締めをミスりやすいから,大会では安定するほうを選んでいこう」というようなアドバイスが飛び交っていて,なかなかに実戦的な内容だったようだ。
「おっうまいね,センスあるんじゃない?」「……おっとミスしたね,褒めたから調子乗ったでしょ?」といったやりとりをしながら教えるマゴ講師。コミュニケーション能力の高さは,講師陣の中でピカイチかも |
楽しげな雰囲気からは一転,ホワイトボードを使って真剣に講義をする場面も |
ハイタニ組(東京大学)
- ドス選手(使用キャラ:春麗 / 3609LP)
- ちゃつぼ選手(使用キャラ:かりん / 3884LP)
- ちょぐ選手(使用キャラ:バイソン / 3000LP)
ハイタニ講師は,そのプレイスタイルから「野生的な勘を頼りにプレイしている選手」と(生徒達からも)思われていたが,いざ講義が始まってみると,その内容は意外にも論理的なものとなっていた。「ケンに対しては,この距離で立っていると表裏の二択を食らうから距離を取る必要があるけど,下がっているだけだと画面端に追いやられてしまうので,あえて前に出て○○を狙うのも必要」といったように,読み合いの具体例を示しながら説明が行われた。その分かりやすい内容に,生徒達も感心しているようだった。
こうして数時間の練習・座学が行われたあとは懇親会が開かれ,特設会場でケータリングの夕食が振る舞われた。食事休憩後は再び練習が再開。2日目のトーナメントへ向けて,各々がさらなる練習に励んでいたようだ。
そして迎えた2日目。トーナメント優勝はボンちゃん率いる新潟大学チーム
そして迎えた2日目の「Red Bull Gaming U 2016トーナメント」。本大会は,変則4on4のシングルエリミネーション形式で行われた。変則というのは,まず生徒同士の3on3で星取り戦を行い,この結果が3-0となった場合は3勝した側の勝利。2-1となった場合は講師同士で対戦し,この結果3-1となれば3勝側の勝利だが,2-2で並んだ場合は,改めて生徒代表による最終戦により,勝利を決するというルールである。
ほぼすべてのカードで講師同士の対戦までもつれこむという激戦が繰り広げられたこのトーナメントを制したのは,ボンちゃん講師の率いる新潟大学チーム。決勝戦の相手となったふ〜ど講師率いる慶應義塾大学チームは,ズミ選手のケンが目覚ましい活躍を見せたが,講師対決をボンちゃん講師が制したことで,新潟大学に勝利がもたらされた。ふ〜ど講師もこの日,板橋ザンギエフ講師,ハイタニ講師を倒して勢いに乗った状態だったのだが,教え子を勝利させるべく奮闘するボンちゃん選手には一歩及ばなかったようである。
こうして幕を閉じた「Red Bull Gaming U 2016」。2日間で教わった内容が,トーナメント本番で活かせたプレイヤー,あるいは力が及ばなかったプレイヤーもいただろうが,プロプレイヤーと共に練習に励んだ2日間は,どの参加者にとってもかけがえのない財産になったに違いない。
今後のストリートファイターVのイベントシーンにおいて,今回の参加選手達の成長した姿が見られることに期待しつつ,レポートの締めとしたい。
「ストリートファイターV」公式サイト
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(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2016 ALL RIGHTS RESERVED.
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