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DuraProブランドの第1弾となるGTX 980 Tiカード「DuraPro-GTX980Ti-6GB」を試す。「安心して使えるプレミアムブランド」が持つ価値とは
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印刷2016/02/20 00:00

レビュー

玄人志向発,「安心して使えるプレミアムブランド」が持つ価値とは

玄人志向 DuraPro-GTX980Ti-6GB

Text by 宮崎真一


DuraPro-GTX980Ti-6GB
メーカー:玄人志向
実勢価格:10万8000〜11万2000円程度(※2016年2月20日現在)
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 玄人志向と聞くと,「初心者向けのサポートはほとんど得られないが,その代わり,日本中どこでも売っており,しかも安価」というイメージを持つ人が多いのではなかろうか。とくに,4Gamer読者にとって身近なグラフィックスカードのハイエンドモデルだと,高価な買い物になるため,少しでも安いものがほしいとき,積極的に玄人志向を選ぶという人も多いと思う。

 そんな玄人志向が,新しいグラフィックスカード製品ブランド「DuraPro」(デュラプロ)を2016年1月29日に立ち上げた(関連記事)。DuraProというのは「Durability」(耐久性)と「Professional」(本格的な,プロ用途の)を組み合わせた造語で,「PCの自作や,購入したPCに対するグラフィックスカードの差し替えに自信があるわけではない一方,グラフィックスカードの購入には興味があり,また,一度購入したら安心して長く使いたい」という,若いユーザーをターゲットにしているとのことだ。

DuraProの基本コンセプト
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 その基本コンセプトは,「2年間のメーカー保証」「国内での全品出荷前検査」「メールによるユーザーサポート」。失礼を承知で端的にまとめるなら,これまでの玄人志向の方向性とは180度違うブランドということになる。

 今回取り上げるのは,そんなDuraProブランドの第1弾となる「GeForce GTX 980 Ti」(以下,GTX 980 Ti)搭載グラフィックスカード「DuraPro-GTX980Ti-6GB」である。玄人志向と密接な関係にあるグラフィックスカードメーカー,GALAXY Microsystemsが製造を担当した製品だ。DuraProのコンセプトに沿うよう,玄人志向と(GALAXY Microsystemsのブランドである)GALAXが強力し,開発を行ったというが,果たしてこれまでの玄人志向とは何が違うのか。第1弾製品を通じ,新ブランドの狙いを詳らかにしてみたい。



3スロット占有タイプの赤いクーラーを搭載。さて,「DuraProらしさ」は?


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 さっそくカードを見ていこう。
 DuraPro-GTX980Ti-6GBは,オリジナルの基板デザインを採用したグラフィックスカードだ。DuraPro-GTX980Ti-6GBの補助電源コネクタは8ピン×2という構成で,どちらにも8ピンケーブルで電力を供給しなければ起動しなかった。
 カード長は実測約286mm(※突起部除く)で,GTX 980 Tiリファレンスカードの同268mmと比べると約18mm長い。100mm角相当のファンを2基搭載したGPUクーラーは3スロット仕様と,“縦方向”にも大きいデザインになっている。

無銘の搭載クーラーは,基板をほぼすっぽり覆う大きさ。側面から見ると3スロット仕様なのも分かる
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 ちなみに,クーラーに埋め込まれたLEDは白色なのだが,一般的なPCケースへ差したとき上を向くカード背面側のLEDは赤色ということもあり,全体にかなり赤いカードという印象がある。もっといえば,LEDが埋め込まれているのは「GAME SOUL」と書かれたロゴ部で,「GAME SOULって何? DuraProじゃないの?」という,至極当然の疑問も浮かぶのだが。

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カード背面側には補強板兼ヒートシンクにして,ノイズ対策にもなっているという金属板を搭載。これまた赤い
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調べてみると,GAME SOULというのは,GALAXが海外市場で展開している製品シリーズ名のようだと分かった

ファンの軸を覆う部分には「魂」と「G」をもじったようなロゴマークがあった。これもGAME SOULシリーズそのままなのだろう
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 なお,クーラーが搭載する2基のファンは,アイドル時にも低速で回り続ける。最近は回転の止まる仕様が流行だが,ケース内のエアフローを考えると,アイドル時でもファンは停止しないほうがいいと考える人がおり,そういった人のため,DuraProでは「止まらないファン」を採用したのだという。
 ただ個人的には,プレミアムなブランドとするなら,ファンを止めるかどうかはユーザーが選べるようにするほうがいいのではないかと考えている。グラフィックスBIOS(VBIOS)を2つ搭載し,切り替えられるようにして,それぞれどういうメリットデメリットがあるかを説明したほうが,ブランドの立ち位置に即していると思うのだが,どうだろうか。

外部出力インタフェースはDisplayPort(1.2)×3,HDMI(2.0,Type-A)×1,Dual-Link DVI-I×1。インタフェース部の左上部に見えるのがプッシュ式スイッチである。ちなみに後で気づいたのだが,玄人志向の製品情報ページには情報があった
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 実は,そう考えるに至ったのには理由がある。DuraPro-GTX980Ti-6GBは,外部出力インタフェース部にプッシュ式のスイッチを搭載しているのだが,それに対する説明が製品ボックスの外にも中にもなく,試行錯誤しているうちに思いついた次第だ。

 さて,このスイッチ自体は無銘の動作クロックモード切り替えスイッチで,GTX 980 TiのリファレンスクロックがGPUのベース1000MHz,ブースト1075MHz,メモリ7010MHz相当(実クロック1752.5MHz)のところ,工場出荷設定では,GPUのベースが1025MHz,ブーストが1114MHzと,順に約2.5%,3.6%高くなっている。それが,このスイッチを押した状態でPCを再起動すると,GPUのベースが1190MHz,ブーストが1404MHzと,リファレンス仕様比約19%,31%も高くなった。

 ただ,DuraPro-GTX980Ti-6GBのクロックアップ設定はこれで終わりではない。製品ボックスに付属のDVD-ROMから「XtremeTuner Plus」をインストールすると,「EZY-MODE」という“一発クロックアップ設定”を利用可能になるのだ。
 EZY-MODEを有効化すると,GPUコアベースクロックが50MHz,メモリクロックが330MHz相当高くなる。さらに,GPU Boost 2.0の電力ターゲットも100%から116%へ上がって,ブーストの上限枠を拡大できるのである。

XtremeTuner Plus。右下部にある[EZY-MODE]ボタンをクリックするだけで適用できる(※無効化するには[RESET]ボタンを押せばいい)。手動でのクロックアップ設定も可能で,GPUコアクロックはプッシュ式スイッチを押す前,もしくは押した後を基準として−90〜+1000MHzの範囲を1刻み,メモリクロックは−402MHz相当〜+7010MHz相当の範囲を2刻みで設定できる。「ADVANCE MODE」を選ぶと,GPUコア電圧は0.825〜1.200Vの範囲を0.001V刻み,メモリ電圧は0〜+80mVの範囲を10mV刻みで調整できる
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 EZY-MODEは,プッシュ式スイッチによるクロックアップ設定と併用できるため,DuraPro-GTX980Ti-6GBは以下のとおり,計4パターンの自動クロック設定を適用できることになる。なお,ブーストクロックのすぐ後ろに付記したカッコ書きは,後述するテスト環境で確認したブースト最大クロックである。

  • スイッチOFF:GPUベース1025MHz,GPUブースト1114MHz(最大1240MHz),メモリ7010MHz相当
  • スイッチOFF+EZY-MODE:GPUベース1075MHz,GPUブースト1164MHz(最大1290MHz),メモリ7340MHz相当
  • スイッチON:GPUベース1190MHz,GPUブースト1291MHz(最大1404MHz),メモリ7010MHz相当
  • スイッチON+EZY-MODE:GPUベース1240MHz,GPUブースト1341MHz(最大1454MHz),メモリ7340MHz相当

 なお,いま挙げた4種の自動クロックアップ設定は,DuraProによると,すべて「通常の使用内」として,保証対象になるとのことだ。手動でもりもりと動作クロックや動作電圧を上げるとなると話は別だが,カード側で提供されている範囲であれば安心して使えるという理解でいい。

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 ずいぶんリッチな自動クロックアップ設定だが,DuraProブランドの製品として抱える大きな問題は,EZY-MODEをはじめとするXtremeTuner Plus関連の説明が,製品ボックスにも,製品情報ページにもないことだ。
 もちろん,メールサポートが受けられるのだから,DuraPro専用メールサポート窓口に問い合わせれば教えてもらえるのだろう。ただ,自作PCのスキルを決して多くは持ち得ていない人が,意を決してゲームPC用の交換用グラフィックスカードを買ってきたら,まずは差してベンチマークの1つも回してみたいと思うのが人情である。

付属の(薄い)英語マニュアル×2と,XtremeTuner Plusなどが入っている光学メディア。マニュアルに書いてあるのは,マザーボードへの差し方やドライバのインストール法といった,通り一遍のものだけだった
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 にもかかわらず,製品ボックスと付属マニュアルでは「DuraPro-GTX980Ti-6GBの取り付け方法」も「標準搭載するプッシュ式スイッチの使い方」も「XtremeTuner Plusユーティリティの使い方」も,何1つ説明していない。付属しているのは,日本語非対応の,しかもGeForceシリーズ共通の簡易マニュアルだけである。プッシュスイッチが何をするためのものかだけはかろうじて製品情報ページに説明があるが,その程度だ。玄人志向の製品ならそれでもいいだろうが,DuraProというブランドの基本コンセプトと照らし合わせるに,これはお粗末にすぎるだろう。


カード基板もクーラーもなかなか豪勢


GPUクーラーを外したところ(左)と,カード背面側の金属板を留めるネジに貼ってある封止シール(下)。補強板を外そうとすると保証が切れる
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 カード自体をもう少し細かく見てみよう。
 GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為であり,取り外した時点でDuraProの2年保証は失効する。その点は注意してほしいが,特別に取り外してみると,大型GPUクーラーは,GPU上のヒートシンクから,5本の8mm径ヒートパイプが2ブロックに分かれて放熱フィンへ伸び,それを2基のファンで冷却する構造であることが分かる。ヒートパイプのうち3本がGPUから遠いほうの放熱フィンへ熱を運び,残る2本はGPU側の放熱フィン全体へ熱を拡散するようになっているようだ。

 GDDR5メモリチップは,熱伝導シートを介してGPU側のヒートシンクと触れており,メモリ冷却は抜かりなしといったところ。また,電源部の熱は,GPUから遠いほうの放熱ブロックが一部伸びて,熱伝導シート経由で触れるようにもなっている。

金属板を外したところ(左)とカード背面側(右)。金属板はノイズ対策にもなっているとのことだが,電源層のグラウンドがこの板によって接地されているわけでもないので,大きな期待は望めそうにない。効果ゼロではないとは思うが
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GPUクーラーのヒートシンクおよび放熱フィン(左)と,2基のファンが搭載されたカバー(右)。放熱フィンは2ブロック構造を採っており,計5本のヒートパイプでGPUと接したヒートシンクとつながっている
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 クーラーを取り外した状態で基板を見る限り,電源部のVRMは8+2フェーズ構成。Driver-MOSFETはリファレンスカードが55A対応のFairchild Semiconductor製「FDMF6820A」を搭載するのに対し,DuraPro-GTX980Ti-6GBではInternational Rectifierの「IR3555M」になり,1基あたり60Aまでの電流に対応できるようになった。つまり,オーバークロックによる電流量の増加に対応できるようになったわけだ。
 ちなみに組み合わせられるコンデンサは,リファレンスカードのチップ型から,DuraPro-GTX980Ti-6GBではアルミ缶タイプのものに置き換わった。部材の調達の都合上か,必要なスペックを満たすコンデンサがチップ型ではなかったとか,そういう理由によるのだろう。

 なお,基板上に並ぶメモリチップはSK Hynix製GDDR5 SDRAM「H5GQ4H24MFR-R2C」(7Gbps品)だった。これはリファレンスカードと同じものなので,XtremeTuner PlusからEZY-MODEを適用した場合,メモリクロックはチップのクロックを超えて動作することになる。


4つのクロック設定すべてでテストを実施

レギュレーション18.0からFallout 4のテストを先取り


 では,テスト環境に話を移そう。今回,比較対象にはGTX 980 Tiリファレンスカードと「GeForce GTX TITAN X」(以下,GTX TITAN X)リファレンスカードの2枚を用意した。つまり,クロックアップモデルたるDuraPro-GTX980Ti-6GBで,GTX 980 Ti比でどの程度高い性能を発揮し,最上位モデルであるGTX TITAN Xに対してどう立ち回るかを見ようというわけだ。
 今回は,全4種の自動クロック設定すべてでテストを行う。以下,グラフ中に限り,DuraPro-GTX980Ti-6GBを「DuraPro 980 Ti」と表記しつつ,そのとき4つのクロック設定を「ON,EZY」「ON」「OFF,EZY」「OFF」としてカッコ内に付記するので,この点はあらかじめお断りしておきたい。
 そのほかテスト環境はのとおりとなる。

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 テスト方法は,基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション17.0に準拠。ただし,現在レギュレーション18世代の準備中ということで,今回は17.0から「3DMark」(Version 1.5.915)と「Far Cry 4」「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の3つに絞りつつ,18世代を先取りする形で,「Fallout 4」のテストを追加している。ゲームベンチにおけるテスト解像度は3840×2160ドットと2560×1440ドットの2パターンだ。

Fallout 4の新しいテストより
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 Fallout 4におけるテスト方法の詳細は後日あらためてお伝えする予定だが,簡単にいうと,武装ヘリに乗るシーンを利用し,当該シークエンスにおける1分間の平均フレームレートを「Fraps」(Version 3.5.99)で測定するというものになる。テストは2回実施し,その平均をスコアとして採用するルールだ。武装ヘリは毎回同じルートを飛行し,「人の操作」という不確定要素を取り除くことができるため,十分に信頼できるスコアが得られると判断している。
 なお,テストにあたって採用するグラフィックス設定は「ウルトラ」「中」の2パターンとなる。

 最後に「お約束」を述べておくと,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,テストにあたってマザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。これは,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性を排除するためだ。


プッシュ式スイッチ,EZY-MODEとも確実に効果アリ。最大ではGTX 980 Ti比で2割増しに


 テスト結果を順に見ていきたい。
 グラフ1は,3DMarkの結果だが,まず,“素”のDuraPro-GTX980Ti-6GBは,GTX 980 Tiリファレンスカード比で5〜6%程度高いスコアを示した。プッシュ式スイッチを押すとその差は14〜16%程度,さらに,EZY-MODEの有効化で,スコア差は約20%にまで広がっており,自動クロックアップ機能の効果はかなり高いと評価していいだろう。
 自動クロックアップ機能を適用する前の状態のDuraPro-GTX980Ti-6GBが,GTX TITAN Xとほぼ互角に立ち回り,プッシュ式スイッチとEZY-MODEの併用で14〜15%程度高いスコアを示す点にも注目しておきたい。

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 続いてFar Cry 4のテスト結果がグラフ2,3となる。
 Far Cry 4において,DuraPro-GTX980Ti-6GBはGTX 980 Tiに対して3〜7%程度のスコア差を付け,プッシュ式スイッチの利用で9〜15%程度,さらにEZY-MODEの有効化で13〜20%程度高いスコアを示した。描画負荷が高ければ高いほどスコア差は開く傾向にあり,その意味では3DMarkの結果を踏襲しているといえそうだ。

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 グラフ4,5はFallout 4の結果だ。従来示してきたFallout 4のテスト結果とは比較できなくなっている点に注意してほしいが,Fallout 4でもスコアのバーが階段状に並んでいることを確認できよう。プッシュ式スイッチとEZY-MODEをいずれも有効化した状態のDuraPro-GTX980Ti-6GB(ON,EZY)がGTX 980 Tiに対して最大約20%のスコア差を付けているのはここでも同じ。ただ,解像度2560×1440ドットでは約6%と,スコアが詰まった。

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 FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチの結果がグラフ6,7となる。「標準品質(デスクトップPC)」の2560×1440ドット条件だと描画負荷が低く,それゆえ相対的なCPUボトルネックが発生し,スコアが頭打ちしているが,それ以外のテスト条件では,自動クロックアップの効果をはっきり見て取れる。プッシュ式スイッチとEZY-MODEを併用したDuraPro-GTX980Ti-6GBは,ここまでのテスト結果と同様,GTX 980 Tiに対して14〜20%ものスコアギャップを生んでいる,といった具合だ。
 さすがに,「最高品質」の解像度3840×2160ドット条件だと,スクウェア・エニックスが示す指標の最高水準「非常に快適」のラインであるスコア7000には届いていない。ただ,上から2番めの指標である「とても快適」のスコア5000は大きく上回っており,十分に立派といえる。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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動作クロックの引き上げで消費電力は最大で50W近く上昇。GPUクーラーは十分な冷却性能を備える


 もともとがオリジナルデザイン採用のクロックアップモデルであり,さらにクロックアップ機能も充実しているということで,消費電力がどれだけ増えているのか気になる人も多いだろう。今回も,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を利用して,システム全体での消費電力を測定,比較してみたい。
 テストにあたってはゲームでの利用を想定し,ディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。

 その結果はグラフ8のとおり。アイドル時はDuraPro-GTX980Ti-6GBの4条件できっちり64Wに揃っており,GTX 980 Ti比だと4W高いが,まあこれは,大した問題ではないだろう。
 一方のアプリケーション実行時は,まず,自動クロックアップ機能を適用していない状態でもGTX 980 Ti比で7〜41W程度高い数字になった。プッシュ式スイッチを押すと32〜53W,そこからさらにEZY-MODEも有効化すると35〜57Wも高い消費電力値を示すに至っている。動作クロックの引き上げによる代償は高い印象だ。

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 続いて,GPUクーラーの冷却性能を確かめておきたい。3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.8.6)から温度を取得した結果がグラフ9となる。
 室温24℃の環境で,PCケースに組み込まない環境におけるテスト結果となることを断ってから続けると,ファンが回転し続けることもあり,アイドル時におけるDuraPro-GTX980Ti-6GBのGPU温度はいずれも30℃未満と低め。高負荷時も軒並み70℃台であり,3スロット仕様の大型空冷クーラーは仕事をしていると言ってよいだろう。

 最後に,そのGPUクーラーの動作音だが,これは実際の音を聞いてもらったほうが早いことから,下に録音データを用意した。これは,カードに正対する形で30cm離れた地点にマイクを置き,アイドル状態で1分間放置してからFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを実行したときのファンの動作音を録音したものとなる。
 聞いてもらえれば分かるが,DuraPro-GTX980Ti-6GBが搭載するファンの動作音は,「静音性に優れる」とまではいえないものの,PCケース内で利用する前提なら問題ないレベルの動作音だといえる。コイル鳴きは多少聞こえるものの,こちらもそれほど大きくなく,ハイエンドカードであること考えれば及第点を与えられる。

SOUND PLAYER:このブラウザは未対応です。PCをご利用ください。
※再生できない場合は,Waveファイルをダウンロードのうえ,手元のメディアプレイヤーで再生してみてください。


カード自体は魅力的だが,いまの売り方では「2年保証付き玄人志向」。今後に期待したい


 以上のテストから,DuraPro-GTX980Ti-6GBは,“素”の状態でもGTX TITAN Xを上回る性能を持ち,充実の自動クロックアップ設定でさらなる高みを目指せるグラフィックスカードとまとめることができるだろう。3スロット仕様のクーラーは人を選ぶと思うが,カード自体は大いに魅力的だ。

製品ボックス
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 問題は,そんなDuraPro-GTX980Ti-6GBから,「DuraProらしさ」が微塵も感じられないことである。DuraProが高い性能の提供に特化したブランドなのであれば,今回のテスト結果は実に素晴らしいと思うのだが,冒頭でも紹介したとおり,DuraProというのは,PC自作趣味から入ったのではなく,ゲームをプレイしたくてPCプラットフォームを選んだため,オールドゲーマーほどにはPCハードウェアの知識を持たない,新しい世代のPCゲーマーに向けたブランドである。そして,その観点からすると,DuraProの第1弾製品は,魅力をまったく欠いている。

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 とくに「百歩譲っても論外」だと断じたいのは,カードの着脱やドライバのインストール,ユーティリティソフトの使い方がマニュアルに書かれていないどころか,そもそも製品個有のマニュアルが付属していないこと。あえて書かせてもらうが,これで「安心して使えるプレミアムブランド」と言うのは悪い冗談だ。

 繰り返すが,DuraPro-GTX980Ti-6GB自体はよい製品である。だが,現状では,10万8000〜11万2000円程度(※2016年2月20日現在)という強気な価格設定だけが目立つ,「2年保証付きの,高価な玄人志向」になってしまっている。
 DuraProのコンセプト自体は,もちろん,大いに歓迎できる。今後,玄人志向から独立したDuraPro独自の公式Webサイトと,自作に不慣れな人向けの専用日本語マニュアル,購入後だけではなく購入前から相談できる窓口あたりが揃ってくると,国内のグラフィックスカード市場において,面白い存在となる可能性も,まだ十分にあるだろう。
 道は相当に長いが,これからに期待したい。

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玄人志向のDuraPro-GTX980Ti-6GB製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    GeForce GTX 900

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