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Unity Solution Conference 2015レポート。Unityを取り巻くVR環境の最新動向を見る
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印刷2015/12/07 21:58

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Unity Solution Conference 2015レポート。Unityを取り巻くVR環境の最新動向を見る

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 12月4日に東京秋葉原にあるUDX NEXTで開催された「Unity Solution Conference 2015」の基調講演に続く仮想現実(以下,VR)関係の講演の様子をまとめてお伝えしたい。ちなみに,これは,ゲームエンジンとして知られるUnityを非ゲーム用途で使うための情報を集めたイベントとなっている。
 基調講演に続いて大きく取り上げられたのは,最近ではゲーム以外でも積極的に活用されているVR関連の話題だ。3D処理を得意とするUnityだけに,先端的な話題も多く集まっている。今回は,その震源地の一つともいえるOculus VRとちょっと変わったところからVRを推進するハコスコの講演を紹介しよう。

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 Oculus VRから登壇したのは池田輝和氏だ。“パートナーシップリード”という聞き慣れない役職を担う氏は,国内のパートナー各社との間でビジネスを進めるといった役のようだ。それもあって今回は技術的な話ではなく,ビジネス的な話が中心となっていた。
 改めて語られたのは,同社がどういう会社なのかということだった。同社のミッションとはなにか,ビジネスモデルはどうなっているのかなどといったトピックで話は進められた。
 Oculusが目指すものは次の言葉に集約されている。

 あらゆる体験を,どこでも,誰とでも

 そのために開発されたデバイスがVR対応ヘッドマウントディスプレイ(以下,hmd)「Rift」「Gear VR」で,Riftは来年の1月〜3月までに発売されることが再確認されていた。すでに発表されているものだけではなく,ローンチ時に数十のタイトルが出揃う見込みとのこと。
 また,スマートフォンでVRを実現するソリューションとして同社とSamsungが共同開発しているGear VRは,すでに北米で発売されており,日本での発売も年内に予定されている。

まもなく日本での発売も行われると思われるGear VR。Oculus VRの設計・開発,Samsungの製造となる。ジャイロセンサーなど一部の処理をGear VR側が行うことでスマートフォンの負担を減らし,性能を上げているという
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 こうしたVR環境が実現できると,多くの人はその映像に触ってみたいと考える。そこで登場するのが「Touch」だ。会場では,言葉ではなかなか説明しづらかったTouchの操作デモムービーも紹介されていた。YouTubeでも公開されていたので,以下に掲載しておこう。


 このようなデバイスを用意して業界を牽引するOculusだが,デバイスの販売が主目的ではないという。ハードウェアについては,ほぼ原価で販売して普及を図り,ソフトウェア販売プラットフォームのほうで収益を上げるというのが同社のビジネスモデルだ。

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  あらゆる体験を,どこでも,誰とでも

という言葉からも分かるように,Oculusがターゲットとしているのはゲームコンテンツだけではなく,あらゆる体験であり,非ゲーム分野でも多くの作業が行われている。OculusでもVR空間内に映画館を作るといった試みが行われているほか,Touchを使ったVR空間でのモデリングツール「Meduim」のデモムービーが紹介され,ゲームのみならず多方向に展開されるVRの世界を垣間見せていた。


 プラットフォームを広げていくために欠かせないのが「快適なVR体験」だ。VR酔いについては,デバイスに依存する部分とコンテンツに依存する部分に分かれるとし,デバイスに依存する部分については,すでに可能な限りの手を尽くして遅延の減少などに努めている。コンテンツに依存する部分については,同社の知見がベストプラクティスガイドとして公開されている。

 「あらゆる体験を,どこでも,誰とでも」というコンセプトををよりよく実現するために,同社は多くの作業を続けている。それは,

  すべては快適な体験のために

行われていると,池田氏は強調していた。


低価格層から普及を狙うハコスコの展開


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 続いてハコスコの藤井直敬氏が登壇し,同社の取り組みや目指しているものについて語った。まず「ハコスコ」というものについて確認しておこう。ハコスコは,スマートフォンをダンボールで包むように組み込んだ簡易型のHMDである。ダンボール製ということで安価なのが魅力だ。Amazonなどでは1000円ほどで購入できる。
 これと似たものにGoogle Cardboardがあるが,そちらが両眼での立体視を前提としたVR HMDであるのに対し,ハコスコの基本形はあくまで単眼のHMDとなっている(両眼立体視のものもある)。

ハコスコのいろいろ
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 なぜハコスコが単眼を基本としているのかというと,藤井氏は元々理化学研究所でSR(代替現実:Substitutional Reality)を研究してきており,SR用の簡易端末として誕生したという経緯があるからだ。SRとはどんなものかというのについては,公式サイトにある動画を見てもらうのが分かりやすいだろう。

2012年にソニーのAV用HMD「HRZ-T3」にカメラを付けたVRデモが東京ゲームショウで行われたのを覚えている人はいるだろうか。あれも理研のSR技術を使ったものとなる。ちなみに,画面に映っている被験者はサイバーコネクトツー社長の松山 洋氏だ
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 HMDにはカメラからの映像が主として表示されており,そこに時系列をずらして録画された映像やCG映像を混ぜ込むことで現実空間と仮想空間の境目をなくしていくような技術である。両眼でもできなくはないだろうが,全周映像の録画が難しそうなのと,いろいろと処理が倍になるのは避けられない。さらにいえば,スマートフォンのカメラは単眼であり(表裏にはあるが),コストダウンも考えれば単眼HMDに落ち着くのも納得のいく話かもしれない。
 本来,ハコスコはVR HMDではなく,SR HMDと呼ぶのが正しいのであろう。デバイスとしてはSR端末はVR端末の上位になるので(カメラが付いている),当然ながらVRアプリの実行も可能だ。

ハコスコの施策号機
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 そんなハコスコが目指すのは,VR/SRのマス層への普及だ。藤井氏が研究で扱ってきたようなHMDは,金型から起こして数千万円のコストがかかり,軍用などだともっと高価とのことで,Riftなどの専用デバイスの登場は諸手を上げて歓迎しているようだ。ただ,それでもまだ一般層には高価だろうというのが,藤井氏の感覚である。
 ハコスコはスマートフォンを使ったVRデバイスである。本来なら,スマートフォンに相当するデバイスをなんとしかして売るところから始めなければならないのだが,現代は「10万円以上するような高性能なデバイスを,誰もがすでに所有している」という状況であり,これを利用しない手はないということであろう。
 試しに作ってみたら意外といけそうだったとのことで,理研の社内ベンチャーとして立ち上げられたのだという。目的はSRの社会実装のためであるという。

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 広くスマートフォン一般を相手にしていることからか,ハコスコがメインターゲットとしているVRコンテンツは,いわゆる360度動画となっている。同社のサイトでは,多くの動画が提供されており,専用アプリで再生可能だ。ハコスコでは,ハードウェアと再生アプリ,動画配信プラットフォームをすべて備えている。

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 ビジネスモデル的には,視聴は無料で,特定のチャンネルを開設する場合に料金を取るというものになっている。基本的にはプロモーションツールの一つという位置付けだと思っていいだろう。

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 また,ダンボール部分に印刷を施すことで,利用各社オリジナルデザインのハコスコを簡単に作成できる点もアピールされていた。ちなみに,こういったオリジナルハコスコの第1号がUnityのものだったとのこと。

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 さて,このような360度動画にどれくらい需要があるのかという点に疑問を抱く人もいるだろう。最初は面白がっていてもすぐに飽きてしまうのではないだろうか。VR動画には強い思い入れを持つ人が多くいるらしいという事例が語られた。
 それは,とあるバンドのミュージックビデオを360度版で作成したものの例だ。普通のミュージックビデオであれば数回見ればそれで終わりなのだが,ハコスコを使ったものでは長く見続けている人も多いそうだ。システム更新で1年ほど前にリリースしたミュージックビデオが見られなくなったときには,驚くほどたくさんの苦情が寄せられたのだという。

 現在は360度動画が中心ではあるものの,前述のように元々はSR端末として作成されたのがハコスコだ。いずればSRを使った一般アプリも登場してくるのだろうか。
 現状でも,イベントなどではSR端末としてハコスコが利用されているという。美術館やアミューズメント施設などでの応用例が紹介されていた。

ハウステンボスで実演されている「ナイトメア・ラボ」
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鏡を模したディスプレイとカメラ,VR HMDにより5レイヤーの映像を合成する「The Mirror」
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 Riftのリリースでは現状での最善を尽くされたVRコンテンツが提供されることは間違いない。そして,ハコスコでは手軽に扱える範囲のVRが展開されて裾野を広げていく。このようなデモの作成にはUnityが多く使われており,VR分野での浸透度はかなりのものといえるだろう。本格的にVRが始動することになる来年の展開が楽しみだ。


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