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Access Accepted第532回:パルマー・ラッキー氏がFacebookを退社。今後のVR産業はどうなる?
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印刷2017/04/10 12:00

連載

Access Accepted第532回:パルマー・ラッキー氏がFacebookを退社。今後のVR産業はどうなる?


 2017年3月31日,VRヘッドマウントディスプレイ「Rift」を開発したことで知られるOculus VRの共同創設者,パルマー・ラッキー(Palmer Luckey)氏がFacebookを退社した。同氏はOculus VRを創設して本格的なVR HMD事業をスタートさせると,2014年にはFacebookが約20億ドルでOculus VRを買収したことで,世界中から注目を集めることになった。現在のVR HMD市場を切り開いた立役者と言える,この青年の隆盛と衰微にスポットライトを当ててみよう。


大学中退のラッキー氏を認めた“VRのゴッドマザー”


 まずは,少々脱線した話題から始めたい。米国時間の3月29日から31日にかけて,カリフォルニア州サンノゼのSan Jose Convention Centerにおいて,VR業界向けカンファレンス「Silicon Valley VR Expo 2017」(SVVR2017)が開催された。その2日目には起業家や研究者が短めのスピーチを行っていく,珍しいスタイルの合同基調講演が行われていた。

“VRのゴッドマザー”と呼ばれるノニー・デ・ラ・ペーニャ氏。Oculus VRを創業したラッキー氏の活動にスポットライトを当てた人物でもあり,その研究活動は南カリフォルニア大学の公式チャンネルで確認できる
 登壇者の1人に,VR(仮想現実)やAR(代替現実),そしてMR(複合現実)についての研究開発を行うEmblematic GroupのCEOであり,南カリフォルニア大学のリサーチフェローでもあるノニー・デ・ラ・ペーニャ(Nonny de la Peña)氏がいた。2014年度に発行されたFast Company誌では「世界を創造的にする13人」として名前が挙がり,“VRのゴッドマザー”という異名を持つ人物でもある。

 2000年代からVRテクノロジーや表現の研究に没頭していたというペーニャ氏。だが,彼女の存在が世に知られることになったのは,2012年1月のサンダンス映画祭に出展された「Hunger in Los Angeles」だろう。
 これは,ロサンゼルスの福祉施設で行われた食事提供活動に列を作っていた男性が,糖尿病の副作用によって昏倒(糖尿病性昏睡)してしまったものの,周囲の人は処置の仕方が分からずに見守るしかなかったという事件をVR世界で表現するプロジェクトである。誰かが録音していた人々の叫び声や会話をそのまま利用して臨場感を高めるという,「Immersive Journalism」(没入型ジャーナリズム)と呼ばれる手法が開拓された。

 2012年と言えば,まだVRデバイスが商業的には出回っていなかった時代だ。ペーニャ氏のチームも“表現者”であり,テクノロジーについては専門家が揃っておらず,個人製作のVR HMDを使用するしかなかった。そして,「Hunger in Los Angeles」に使われた何ともブサイクな形状のVR HMDを開発したのが,当時19歳の青年だったパルマー・ラッキー(Palmer Luckey)氏だったのだ。

2012年,VR映像としては初めてサンダンス映画祭に出展された「Hunger in Los Angeles」。アメリカの大都市に住む貧困層の現実をVRで表現した
Rift


ゲーム業界の名プログラマー,ジョン・カーマック氏との出会い


 ラッキー氏は高校卒業後,カリフォルニア州立大学ロングビーチ校にてジャーナリズムを専攻していた。しかし,VRテクノロジーへの興味が高じて自主退学を選び,自宅のガレージでVRデバイスを自作しつつ,プロトタイプ機の制作費を捻出するために携帯電話の修理業を行っていた。
 その後,前述の「Hunger in Los Angeles」を機に,ラッキー氏は南カリフォルニア大学のエンジニアとしての仕事を得るが,そこも数か月後には離れている。その起点になったのが,2012年6月に開催された「Electronic Entertainment Expo 2012」(E3 2012)だった。

 ラッキー氏の進路を変えたのは,VRに興味を持つエンスージアスト達が集まるフォーラムで意気投合したジョン・カーマック(John Carmack)氏である。ラッキー氏が試作デバイス向けにカスタマイズした「DOOM III BFG Edition」を見たカーマック氏は,その青年の将来性を見出すことになる。
 このとき,のちにOculus VRの共同設立者となるミドルウェア開発会社Scaleformのブランドン・イリベ(Brandon Iribe)氏ミカエル・アントノフ(Michael Antonov)氏をはじめ,Valveのゲイブ・ニューウェル(Gabe Newell)氏マイケル・アブラッシュ(Michael Abrash)氏(2014年,Oculus VRに移籍)らにも,ラッキー氏は自らの試作品を披露している。

E3 2012に参加し,メディアや開発者に試作機を見せていたラッキー氏

 2012年8月になると,ラッキー氏はKickstarterのクラウドファンディングキャンペーンによって,VR HMD「Oculus Rift」への出資を募る。カーマック氏やニューウェル氏らゲーム業界の著名人が支持を表明したことで大きな話題となり,目標額の25万ドルを遥かに超える243万ドル超の支援を獲得した(関連記事)。

カーマック氏はE3 2012において,「DOOM III」を使ったVR版のプロトタイプデモを自ら紹介していた
 面白いことに,Riftのクラウドファンディングキャンペーンが成功した直後の「QuakeCon 2012」では,カーマック氏が基調講演に登壇し,多くの時間をVRの未来について語っていた(関連記事)。その翌年の「QuakeCon 2013」でもカーマック氏は登壇し,数日後,id Softwareに籍を残したままOculus VRのCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)に就任している(関連記事)。
 カーマック氏は2013年11月にid Softwareを退社することになるが,その後に掲載されたUSA Today誌のインタビュー記事では次のように語っている。

「(id Softwareに)在籍して,これまで手がけてきたテクノロジーや仲間と一緒にゲームの開発を継続したいと思っていたが,その願いは叶いませんでした。id SoftwareではVR分野に関わる機会がないことが明らかになったため,私はZeniMax Mediaとの契約を更新しなかったのです」

 ここから,パルマー氏とカーマック氏という異端児を擁するOculus VRと,id Softwareの親会社であるZeniMax Mediaとの法廷闘争が加速していくことになった。


Oculus VRとZeniMax Mediaの法廷争い


 FacebookがOculus VRを約20億ドルで買収すると発表したのは,2014年3月のこと(関連記事)。その後,同年5月にはZeniMax MediaがOculus VRを告訴した関連記事)。
 訴状の内容は非常に複雑だが,要点をまとめると「カーマック氏がid Software在籍時に手がけていたVR向けソフトウェアの開発技術は,id SoftwareおよびZeniMax Mediaが所有するものである。カーマック氏をはじめとするOculus VRに移籍した複数のメンバーによって,それらが不当に盗み出された」というものだ。Oculus VRのラッキー氏やイリベ氏らも,NDAに抵触するとして訴えられた。

 カーマック氏と言えば,基本的に24時間を仕事の時間と割り切っているような性格で,仕事と趣味の境界が極めて曖昧な人物だ。2000年から参加していたArmadillo Aerospaceでの宇宙事業を見ても,それが表れている。過去にはゲームエンジンの開発が一段落して6週間の休暇を取ると,大量の書物とノートPCを手にしてホテルの部屋に籠り,新しいプログラミング技術を学び直したという。
 そんなカーマック氏であるだけに,本業の傍らVR向けのコード開発や過去作品の移植などを並行して進めていたことは容易に想像がつく。こうした職人的な“古い慣習”と,2009年にid Softwareを買収したZeniMax Mediaがもたらした“新しい慣習”の違いが,もはや私怨とも思える泥沼の法廷劇につながったようにも見える。

id Softwareの創業者4人のうち,最後まで在籍していたのがカーマック氏。氏の退社後,2016年にリリースされた「DOOM」が,同社にとって久々のヒット作になったというのは何とも皮肉だ
Rift

 2017年2月2日にテキサス州の陪審が下した判決では,ZeniMax側の主張が全面的に認められ,Oculus VRに対して5億ドルの賠償を命じた(関連記事)。現在,Oculus VRは上訴を検討しており,カーマック氏自身も2009年のid Software売却時,設立者として2250万ドルの受け取りを終えていないとして訴訟を起こしている。まだしばらくは,両社の論争が続くことだろう。

 話を少し戻そう。2014年3月にFacebookがOculus VRを約20億ドルで買収したことにより,共同創設者のラッキー氏は7億3000万ドルの資産評価額を持つ大成功者となった。Forbes誌が選出する「40歳以下の起業家ランキング」では,2014年以来,3年連続で20位台につけている。
 現在でも若干24歳の青年というラッキー氏だが,いまだにTシャツや短パン,サンダルといったラフな格好でどこにでも出かけるし,コスプレイヤーである彼女の影響から奇妙な出で立ちの写真がネットで公開されている。世間からは,まだ大人になり切れていない奇人として見られることも多い。

発表当初のRift(DK1)は,こんな形をしていた
Rift


政治活動を批難されたラッキー氏の凋落


 そんなラッキー氏だが,FacebookやOculus VRではどのような役割を期待されていたのだろうか。次回作の開発なのか,それとも“VRの顔”やビジョナリーとしての広告活動なのか。いずれにせよ,掲示板サイト「Reddit」にたびたび実名で出没しては,ときに不謹慎な言動をしてしまうラッキー氏にとって,「VR産業の立役者」としてチヤホヤされるのは重責だったと思われる。

 アメリカ大統領選の真っ最中だった2016年10月には,ラッキー氏が政争に大きく巻き込まれてしまう。Nimble Americaという非営利団体の立ち上げに際し,1万ドルを献金していたことが明るみに出たのだ。
 この一件については,「第513回:パルマー・ラッキー氏の『政治活動』が招いたもの」で紹介しているが,補足しておくと政治団体への献金自体は違法なものではないし,その行為がとがめられる必要はない。しかし,共和党のドナルド・トランプ候補(当時)への支持を表明していたNimble Americaは,「フェイクニュース」を使って,民主党のヒラリー・クリントン候補を貶めることを目的にした過激な活動を行っていた。
  ちなみにゲーム業界を含むITセクターは,ビル・クリントン大統領時代の「情報スーパーハイウェイ構想」や知的職業向けの移民政策で恩恵を受けたこともあり,民主党支持者が多い。

2015年8月にはTime誌の表紙を飾ったラッキー氏。この写真をネタにさまざまなミーム(コラ画像)が反響を呼び,今でもNerdistなどに保存されている。当時は「愛嬌のある新しいタイプの実業家」という捉えられ方だった
Rift
 ラッキー氏はインターネットを使った新しい活動への興味から献金しただけと述べ,直接的な関与は否定している。しかし,FacebookやOculusの幹部,同社のプラットフォームにゲームを提供していた開発者は,ラッキー氏が政治的に同調していないことを表明せざるを得ない状況になった。実際,クリントン候補の支持者がRift向けにゲームを開発することをキャンセルするというケースも起こっている。
 これを機にラッキー氏は表舞台に出ることも,インターネットで発言することもほとんどしなくなった。

 そして,SVVR2017の会期中である2017年3月31日,前年には基調講演のスピーカーとして招かれていたラッキー氏がFacebookを退社したことが明らかになった(関連記事)。同氏の今後については定かではないが,2016年12月にはイリベ氏もOculusのCEO職を辞している。イリベ氏は当時のブログで,同社に新設されたPC部門のリーダーに就くと表明したが,Oculus全体を率いる新CEOの座はいまだに空いたままだ。

 調査会社であるSuperdataのステファニー・ヤマス(Stephanie Llamas)氏が,SVVR2017の会期中に報告したところによると,2016年度のRiftの販売台数は24.3万台に留まる。HTCの「Vive」の42万台と比べると,遅れをとっているようだ。
 Oculusは3月にRift本体とTouchのセットで200ドルに値下げすることで,果敢にユーザー拡大を狙っているが,GamesIndustry.bizが伝えているように,VR産業への影響力を残したままOculusの旧体制を解体する構造改革を行っていく可能性もある。そこには,決して良いパブリックイメージを持たなくなったラッキー氏の存在価値は認められなかったのかもしれない。
 まだ若く,資金力も豊富なラッキー氏だが,今後はどのような形で業界に関わっていくのだろうか。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。

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