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印刷2015/07/18 00:00

プレイレポート

今から始める「Europa Universalis IV」。購入からプレイの流れまで,細かくレクチャー

「Europa Universalis IV」を遊んでみよう


 「Europa Universalis」シリーズはスウェーデンのゲームメーカー,Paradox Interactiveの代表作というべきストラテジーだ。全世界で高い人気を獲得し,Paradoxを一躍スターダムにのし上げた作品でもある。
 15世紀〜19世紀初頭,つまり,ヨーロッパ勢が勃興期を迎えた世界を舞台に,各国の政治,経済,宗教的挙動などを細かく,そして歴史ファンでも納得のそれっぽさで再現しているところが最大の特徴となる。一応の勝利条件はあるものの,実際にプレイしている人の多くは勝ち負けよりも,むしろ状況と過程を楽しむ,そういうゲームでもある。

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「Europa Universalis IV」公式サイト


 シリーズの最新作となる「Europa Universalis IV」(以下EU4)は,プレイした人にはたいへん評判のいいゲームだ。しかし,日本語版をリリースする予定だった会社が解散してしまったため,現在のところ日本語版の予定は未定という状況にあり,これは日本中のストラテジーファンにとって大変惜しい話だ。

 そこで,主要DLCが一通り(新大陸モノが2本,旧大陸モノが4本)出揃い,今後とも有料DLCと無料パッチの二本柱でゲームのアップデートを進めていくという方向性の見きわめがついたこの段階で,EU4の魅力を,シリーズ前3作とからめ,さらに実際のプレイに則してお伝えしたい。
 シリーズ従来作のプレイヤーだが最新作を遊んでいないという人も,「Europa Universalis」というタイトルは聞いたことがあるが,まだプレイしたことがないという近世ストラテジーファンも,最新作がどういうアンバイの作品になったのか,ぜひチェックしてほしい。

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まずはプレイまでのステップを,手取り足取りで


・体験版を体験しよう
 今回は「プレイを開始するまで」についても,簡単に説明したい。
 日本におけるEU4の入手方法として最も簡単なのは,Valveのゲーム配信システム「Steam」で買うことだ。嬉しいことに,SteamにはEU4の無料体験版が用意されている。これによってゲームの雰囲気が分かるだけでなく,所有するPCでEU4が快適にプレイできるかどうかも判断できる。個人的な見解としては,前作「Europa Universalis III」(以下,EU3)がストレスなく動くスペックなら,EU4も問題なく動くだろう。ストレスがあるなら,ここでPCを強化するか,ゲームのグラフィックスオプションを下げることになる。
 ちなみに,EU4の「地形モード画面」(Terrain Mapmode)は美しいぶん,PCパワーを要求するが,普段は国別に色分けされた「外交モード画面」(Diplomatic Mapmode)しか使わないので,グラフィックスオプションを下げても,それほど影響はないと思う。

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Steam「Europa Universalis IV」紹介ページ


 無料体験版のさらにいいところは,自分の英語力がこのゲームをプレイするのに十分かどうかを測るのにも役立つことだ。もちろん世の中には「オレはブルターニュをフランス語版でプレイする予定なんだ」とか「私はザクセンをドイツ語版で」とかいう人もいると思うが,ぶっちゃけ,そういう人はこの記事を読む必要はない。

 脱線したが,無料体験版では充実したチュートリアルに加えて,ポルトガル,オーストリア,トルコの3か国が一定年数プレイできるので,明らかに3時間以上は遊べるだろう。これはお得。で,遊んで面白かったら次のステップ,つまり,すぐ買うか待って買うかに進むことになる。

・すぐ買うか待って買うか
 知っている人も多いと思うが,Steamは頻繁にディスカウントセールを実施する。値引きのタイミングには一定の法則性もあるものの,正確な予測は困難だ。そのため「Steamのゲームは,買うところもゲーム」と言われる。
 もしあなたに十分な資金があるなら,時間は金銭に換えがたいので,すぐに買おう。資金不足なら,体験版をやりつつセールのタイミングを待ちたい。なお,Steamは円ドル相場の変動には対応しておらず,40ドルのものはだいたい4000円ぐらいで買える仕組みなので,為替市場に目を配る必要はない。

・DLCも入れよう
 SteamにおけるEU4のセールでは,ほとんどの場合,本体の値引率と(最新のもの以外の)DLCの値引率が連動する。したがって,「本体と一緒に,どのDLCを買うか」をあらかじめ考えておくのもよさそうだ。実際,EU4はDLC次第で相当の変化を見せる。

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 小さなDLCの中には,単にユニットの見かけを変えるだけのものもあれば,EU4があまり中心として取り上げていないイベントを集中強化するもの(EUシリーズの前の時代に全盛期を迎えたが,EUではチョイ役になってしまった東ローマ帝国専用のイベント集とか,EUのあとの時代に全盛期を迎えるが,EUではまだチョイ役に過ぎないアメリカ合衆国専用のイベント集とか)がある。

 大きなDLCは,ゲームシステムに新たなルールを導入する。例えば,南北アメリカ大陸の形状をランダムに生成して,意外な新大陸発見の楽しみが味わえる「Conquest of Paradise」や,共和政体用のルールを大幅拡張した「Les Publica」などだ。
 個人的な意見を述べれば,部隊編成の手間を大幅に軽減してくれる「Art of War」は強くおすすめできるDLCであり,また政府が内政,外交,軍事のどの分野を重視するか選択可能になる「Les Publica」は割とおすすめできるDLC。あとは,サイフとの相談だ。

・時代と国家を選ぼう
 製品版を手に入れたら,いよいよゲームを立ち上げ,プレイする時代と国家を選択することになる。もし,強く心を引かれている時代や国家があるなら,難度など委細構わずこれを選択すべきだろう。なぜなら,そういうゲームだからだ。
 とくにないのであれば,人にもよるが,初期シナリオがおすすめだ。理由はまず,超巨大国家が少ないこと。もう一つは,詳細は後述するが「特徴群」(Ideas)を選ぶ楽しみがあることだ。最初の瞬間から大方の特徴群が仕上がっている1776年のアメリカ合衆国とか,それはそれで面白いのだが,やはりこのゲーム,国の特徴を一から自分でデザインしていく楽しみは捨てがたい。
 というわけで,国家選択に関しては……

  • 比較的滅亡しにくく
  • 助言者(Advisor)を3人雇っても財政バランスが赤字化しない収入があり
  • 弱い敵が周囲におり
  • 序盤で海洋戦略を無視することが可能で
  • 序盤で神聖ローマ帝国ルールも無視できる
  • ヨーロッパのどこかの国

がオススメになる。以上の条件に当てはまる第一候補はフランスで,第二候補はモスクワ大公国(後のロシア)だ。

 さて,ここからは誰でもそれなりにプレイできる「うまし国」,フランスでのサンプルプレイの模様をお届けしよう。


サンプルプレイ「新教フランスに挑む」


 フランスは,手なりにプレイすれば手なりに伸びる国だ。したがって,ここではなんらかの「歴史のif」を楽しみたい。というわけで,今回は“新教フランス”を追求してみよう。新教フランスのありかたは,2通り考えられる。

 1つは「寛容な新教フランス」で,ユマニスト思想を体現し,国内の宗教的多様性に寛容な形だ。王室が新教を奉じるのは,単に旧教国であるスペインとオーストリアと教皇に喧嘩を売りやすいからだ。
 もう1つは「不寛容な新教フランス」で,国内をルター派またはカルヴァン派で統一し,宮廷では日々新教の祈祷を行うもの。実際に宗教を統一できれば,「寛容な新教フランス」に比べて国内治安は良好になる。

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 さて,フランスには往々にして3種類の宗教が混在することになるという経験則に従えば,「寛容な新教フランス」が有利なのは間違いないが,それではつまらないので,ここはあえて「不寛容な新教フランス」を目指してみたい。
 以下のリプレイでは,「なんとなくその気になってもらう」ことを主目的として,史実を織り交ぜたり織り交ぜなかったりする小説風に進めて,そこに適宜解説を加えていくことにしたい。したがって,文中の「シャルル7世ヴァロワ」から始まるフランスの指導者はプレイヤーのことを指す。では,参りましょう。


百年戦争から異端弾圧へ


アニョロ:こういう手紙がございますが。
大僧正:わしにお渡し。
アニョロ:まあ,そのような事。罪になります。
大僧正:ローマ教会の僧侶の言いつけに従っていれば,何であろうと罪にはならぬものじゃ。
――アルフレッド・ド・ミュッセ


初期状況。紫がブルターニュ,灰緑がプロヴァンス
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 1444年。英仏百年戦争は,フランス有利に進行しつつあった。イングランド・ブルゴーニュ同盟の切り崩しに成功したシャルル7世ヴァロワは次の手を考えていた。イングランドを討つもブルゴーニュを討つも可能は可能だが困難を伴う。両国と戦うためには,まず,国内諸侯を従えねばならない。

解説
 「Europa Universalis II」(以下,EU2)やEU3と異なり,EU4ではフランスの群小諸侯はフランス王の属国ではない。しかも,イングランドやブルゴーニュは早期に同盟を固める傾向がある。

 それゆえ,王がまず命じたのはプロヴァンス領アンジューとブルターニュ領ナントに対する領有権文書の捏造であった。丸一年を経て見事な古文書が仕上がったとき,王は感嘆し,ブルターニュ公の後見人でありパリ宮廷に軟禁中のアルトゥール・ド・リシュモンを晩餐に招き,これを見せて誇った。リシュモンはそのできばえの見事さを嘆賞したのち,「将来フランスの偽造のわざは,数知れぬ嘆きの種となることでございましょうな」と言ったので,王はリシュモンに毒杯を勧めてこれを斃した。後世リシュモンが「義しき判官」と呼ばれるようになったのは,この一件による。

解説
 「あらゆる戦争に口実(Casus Belli)が必要」「口実なしに戦争を始めると,国内安定度(Stability)が下がって内乱が頻発し,国際的信用が失われる。そして,他国から敵視される」のはEUシリーズの大きな特徴だ。シリーズを重ね,いろいろな部分が変更される中,「口実の必要性」こそが変らぬシリーズの根幹といえる。
 ただしEU3以降の名物「隣接する領土に対する領有権の捏造」は今回も健在,というか,国策選択によって得られる特徴の一つに「領有権高速捏造」があるくらいだ。
 まったくの余談だが,百年戦争の名将リシュモンはパッチのバージョンによって,初期シナリオのフランスにいたりいなかったりする。最新のパッチではいないので,たぶんこういうことでもあったのではないかと適当に考えたストーリーだ。

 王は速やかに兵を進めブルターニュを討った。百年戦争の名将デュノアは,ブルターニュ軍を速やかに壊滅させた。

ナントの合戦。グラフィックスはEU3からそこそこ強化された
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 だがこれを見たプロヴァンス,ロレーヌは英国と結んでブルターニュを攻めた。王はブルターニュを服属させたが,これは,ブルターニュを守って三国と戦う義務が王に生じたことを意味する。

英仏の戦端開く。昨日の敵は今日も敵,頼れる味方は我一人
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 最後の馬上槍試合が行われたのも,この戦争の中である。これを描く画面の文章は,あまりにも名文であるため,ここに訳出した。
 「最後の馬上槍試合。風の中に何かを感じる。やがて近代の急迫によって騎士道は死に絶え,騎馬武者は醒めて思う夢と同じ,過去のものとなろう。世は変りゆく。だが今は最後の試合に,駆けよ,フランスの騎士達よ

最後の馬上槍試合
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解説
 EUシリーズが英語でも割と簡単にプレイできる理由と,日本語版があればさらによい理由の双方が,まさにここにある。つまり,イベントの選択肢とその結果を読むためには中学程度の英語力で大丈夫なのだが,ゲームの進行には直接関係のない,全体の雰囲気を生み出すフレーバーテキストを読むには,それなりの英語力が要求されるのだ。

 仏軍は苦戦したが1448年,折良く英国でバラ戦争が起き,英軍はこれに忙殺された。王はロレーヌを服属させ,プロヴァンス,イングランドから領土を奪って戦を終えた。
 かくて百年戦争はフランスの勝利で幕を閉じた。フランス国民は束の間の泰平をことほぎ,王権は強化された。

宿願成る
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解説
 EU2では,随所にある意味,めっちゃ強引な国別歴史イベントを盛り込むことで,「それっぽい歴史」と「それっぽい結末」を生み出していた。しかしEU3では,どの国でも状況次第で起き得るランダムイベントが大幅に強化された一方,国別イベントは完全にオミットされている。
 のちにオンオフ選択が可能になったものの,オンの場合もより常識的な形でしか起きず,これは,「それっぽい結末」より「それっぽい過程」を生み出すことを重視したためだろう。このEU4はその中間で,ランダムイベント中心ながらも国別イベントもかなりある。バラ戦争もその一例だ。

 1455年,イベリア半島のアラゴン王国が有力な同盟者を持たぬことを知った王は,間を置かずカスティリヤと組んでアラゴンに侵攻し,その領土を奪った。
 シャルルは男児が夭折したため女児ジャンヌが後を継いだ(ジャンヌ1世)。この名をジャンヌ・ダルク由来のものとした文人もあるが,現にシャルル七世の祖母もジャンヌ・ド・ブルボンであり,むしろヴァロワ王家には珍しくない名と見るべきだろう。

解説
 EU2には原則として史実と同じ王と将軍が登場するが,EU3,EU4は原則として「シナリオ開始時の王と将軍のみ史実準拠。以後はランダム生成」となった。まあEU3の場合,あとで史実準拠も選択可能になったので,EU4もそのうちDLCでそうなるだろう。


 1462年,高名の修道士某が「煉獄は存在せず。祈りによって,死者の霊魂が天国へ行くのが早まることはない」と説いて,教会の腐敗を糾弾した。ジャンヌは眉をひそめ,某を異端として焼いた。

異端を焼く
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解説
 どうやらEU4の場合,「すべてのカトリック国家の王侯が,教会と組んで働いた不正」の総量が一定の値に達した時点で,プロテスタント運動が起きるという,他に類を見ない画期的なシステムを採用しているようだ。
 したがって,プレイヤーがカトリック圏全体の利益を考えないならば,できるうちに少しでも多くの不正を働き,利を得ておくべきということになる。


異端弾圧から宗教改革へ


宗教改革の中にある悪寒を起こさせるような,いらいらさせるような,暴君的なものの一切が,カルヴァンにある。
――オギュスト・ディード

 1469年,仏女王ジャンヌは東方のブルゴーニュ公と争っていたが,この戦でブルゴーニュ公が後継なく討死し,ブルゴーニュは2つに分割された。プファルツが東の半ばを得,フランスが西の半ばを得た。ジャンヌ女王はイングランド,サヴォワと戦って東方国境を確定した。

解説
 EU4ではめったに見られない,強力な歴史イベント。たぶん「フランス,ならびに神聖ローマ帝国内のいずれかの国」へ領地分割がなされるのだと思うが,詳しいことは不明で,起きないこともあるので注意が必要だ。

 1480年,高名な修道士某が教会の腐敗を糾弾した。ジャンヌは眉をひそめ,某を異端として焼いた。
 1487年,カスティリヤがグラナダを攻めてこれを下した。レコンキスタ(再征服)の完了である。フランスはカスティリヤと同盟を結んでいたため聖戦の求めに応じたが,仏兵は結局,フランス国境を一歩も出なかった。カスティリヤ宮廷は,これを不満としたかもしれない。
 1490年,フランスがサヴォワと戦ったとき,カスティリヤはフランスを助けず,同盟を破った。
 1492年,フランスはカスティリヤの破約を不満として,これを討って領土を奪った。
 1506年,フリースラントの修道士マルチン・ルターはローマ教皇庁の腐敗を非難し,教会改革を説いた。ルター派は,みるみるうちにドイツを席巻した。
 1512年,本来ラテン語によって読まれるべきものであった聖書が,ルター派の手によってフランス語に訳され,ブルターニュ,ガスコーニュの諸地方に流布した。
 1521年,ピカルディの人ジャン・カルヴァンは,パリ大学神学部に学んで才英の名が高かった。パリ大学総長が就任演説をしたとき,その演説がルター派的に過ぎるとされ,総長は亡命した。カルヴァンもまた演説原稿を書いた疑いを受けてエルヴェシア(スイス)のベルヌへ亡命して,この地で「キリスト教綱要」を発表した。これがカルヴァン派のおこりである。

カルヴァン派おこる
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 同年,事態を重く見た老女王ジャンヌは病床にあって,パリ大学神学部を反宗教改革のための対抗宣伝者養成機関とすることを命じた。

解説
 EU3で取り入れられた大きな要素が「国策」(National Idea)であり,これはつまり「自国文明の進歩に伴い,プレイヤーが自国の特殊能力を選択する」というものだった。これにより,プレイヤーは自分の国家の特徴をデザインでき,その気になれば,例えば完全陸戦型のイングランドで大陸を席捲することも可能だった。
 デッキ構築型のカードゲーム/ボードゲームなどとも一脈通ずるものがあるが,余談ながら,傑作ボードゲーム「ストラグル・オブ・エンパイア」(アークライト)も,この「国ごとの特徴をデザインする」部分が非常に面白く,しかもEUシリーズと重なる18世紀を舞台に,欧州列強となって世界で覇を競うというもの。EU3のファンには強くおすすめできる。

 一方のEU4には「プレイヤーが選択可能な特徴」「国特有の,変更不可能な特徴」の双方が用意されている。これにより,「この国特有のこの特徴と,選択可能なこの特徴を組み合わせると,こんなすごいことができるんじゃないか」という思考が誘発され,複数の国で複数回プレイする意欲がわきやすくなっている。このへん,とてもうまいデザインだ。

 ここでは,プレイヤーが選択可能な特徴群の中から宗教特徴群(Religious Ideas)を選択した。この特徴群には「Missionary Schools」(通常1人しかいない宣教師の数が+1される),「Divine Supremacy」(宣教師の改宗能力が,大幅にアップする)などのステキな特徴が大量に含まれており,宗教改革に積極的に対応したい場合,早めに上記の宗教特徴群を取得しておくことをおすすめする。ゲーム中,プレイヤーは最大8つの特徴群を取得できる。

 老女王ジャンヌ没後,アンリ3世ならびにアンリ4世ヴァロワは4度のカスティリヤ戦,2度のポルトガル戦を戦ってこれを破り,1574年イベリア半島を統一した。アンリの次の狙いはイタリア半島であった。

これがわしのレ・レコンキスタや!
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解説
 この「アンリ4世ヴァロワ」は,ゲームが自動生成した国王で,実在のアンリ4世ブルボンとは別人だ。

 だが危機は,アンリの膝元にあった。パリ大学の巨大な反宗教改革宣伝機構は存在していたが,機能していなかった。神学部教授の給金は年俸450リーヴルという巨額のものだったが,実際には役人が支払いを拒み,1リーヴルも支払われぬ年さえあった。
 パリ住民の大勢はカルヴァン派となり,パリ宮廷の貴婦人の枕元にはカルヴァン派の祈祷書が置かれた。

 1582年,アンリ四世は北イタリアへ兵を進め,異端の討伐を口実に教皇と結んでカルヴァン派のサヴォワを討った。サヴォワの征服はフランス国内のカルヴァン派の比率を危険なほどに増大させ,パリ市内はおろか宮中すら不穏となった。
 1583年,ここに至ってアンリ四世は熟慮の末,とんぼ返りを打つことにした。国教のカルヴァン派化である。

今だ,今こそ変心だ!
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 カルヴァン派の僧侶達がカルヴァン派の商人達と結ぶことで,パリ大学神学部には膨大な金が流れこんだ。パリ大学の休眠中だった反宗教改革宣伝機構は一夜にして活発な宗教改革宣伝機構と化したが,少数の教授が寛容を説いて焼かれた。

 カルヴァン派共同体の中で信仰の熱情は沸騰し,フランスの一部,いわゆるカルヴァン派のフランスは安寧となった。それは10年という,欧州の命運を左右するのに決して短くない時間にわたって持続するものだった。ある廷臣は,王に宛てた書状に書き記した。「真の信仰に対するわれらの愛はきわまりなく,わが国びと達はこれを知って安心立命にあります。われらが心すべきは,一にかかって国びとの死後の運命にあります」

献身者の愛
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 一方,いわゆるカトリックのフランスではこれまで弾圧されてきたカルヴァン派が蜂起し,偶像破壊を叫んで教会を襲った。
 滑稽だったのは,教皇庁とフランスの同盟自体は維持されたことだった。アンリ自身は終生カトリックであり,私的な場ではカトリックの儀式によって礼拝したとする史家も少なくない。

解説
 EU2などでは,改宗に伴って自動的に同盟が破棄される仕様だ。今回は,最後の最後に教皇庁画面で教皇への影響力を使って国家の安定度を上げ,直後に改宗するという詐欺同然の手法を使った。


宗教改革から,ローマの占領まで


「へー,何でございますって。あなた様が邪教(ユグノー),いや新教徒(プロテスタン)でいらせられるって……」と,主人は肝をつぶして叫んだ。
――プロスペル・メリメ


 先に述べたごとく,フランス国内のカルヴァン派は偶像破壊を叫んでカトリック教会を襲った。それは,カタロニア地方においてもっとも激烈であった(ウルジェイの惨劇)。
 これと時を同じくしてカルヴァン派の旗手・仏王アンリは,教皇と組んで北イタリアで3度ヴェネチヤ・ルッカ同盟と戦った。この戦争の最中,ローマは激烈な一揆に襲われた。人々は世の終りを確信した。

ウルジェイの惨劇。どこもかしこも大混乱
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 イタリアのカルヴァン派の避難民は混乱を避け,こぞって仏領北イタリアへ押し寄せた。アンリの宮廷は,必ずしも宗教的なものばかりではない情熱から喜んでこれを受け入れ,戦争の口実とした。
 教皇とルッカを分け取ったのち問題となったのは,今や教皇とフランスが直接国境を接しており,しかも教皇領の住民の過半はカルヴァン派であるということであった。

17世紀前半の宗教状況
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 1625年,仏王ジャック1世はヴェネチアを討ち北イタリアを統一した。いまやフランスは東は神聖ローマ帝国,南は教皇領に接していた。
 1628年,フランスは教皇領と手を切り,宿敵イングランドと組んで教皇領を席捲した。教皇庁の外交努力は,当然というべきか周到で,ハンガリーやリトアニアの騎士が遠いイタリア戦線へ数多く参戦した。だが,彼らはフランスの銃兵によってことごとく倒された。あるいは15世紀の「最後の騎馬試合」の歌がフランスの将軍の胸をかすめたかもしれない。

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サレルノの残敵掃討
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リトアニア騎士の最後

 1630年,フランスはローマを得た。カルヴァン派の聖職者達は,この都を悪徳と退廃の都,第二のバビロンと呼んで破壊と略奪をほしいままにした。複数の枢機卿が,亡命か刑死か転向の運命を選んだ。

ついにローマ獲得
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解説
 本作において,ローマの支配は複数の利益をもたらす。その一つは,宣教師の数が+1されることで,この利益はもちろんカルヴァン派でも得られる。

1630年の状況
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 だが急速な拡大はフランス国内の矛盾に再び火をつけ,各地に反乱が頻発した。ジャックの治世の残りは反乱の鎮圧に費やされることになった……。

解説
 国家には中核州(Core Provinces)があり,中核州以外の領土を持っていると過剰拡大(Overextension)が生じる。そして,過剰拡大の値が100に達すると,恐るべき頻度で反乱が起きる。今回は,筆者がローマ欲しさに計算を怠ったため,過剰拡大が100に達してしまったのだ。
 EU2に比べてEU3は,うまく考えれば,どこまででも伸びられる,伸びしろの高いゲームだった。EU4はEU3をベースにしつつ,歯ごたえのあるバランスを指向しており,「強いプレイヤー国に対する対抗同盟の存在」「マンパワーの枯渇」「過剰拡大ペナルティ」などがうまく機能しているという印象だ。
 実のところ,EU3で最強と謳われたフランスでさえ,外交をミスるとジリ貧に陥ることは珍しくない。今回のテストプレイを振り返ってみると「たまたまツイていた」部分が少なくいことが自分でも分かる。例えば,ブルゴーニュの西半分がフランス領となり,東半分が強力なオーストリアではなくプファルツのものとなったあたりだ。

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 というわけで,一段落したところで,そろそろプレイの幕を下ろそう。ゲームの雰囲気はよく分かってもらえたと思う。
 カルヴァン派のフランスがここから先どちらへ行くか,については複数の選択肢があるはずだ。幸い,イングランドの北米植民が遅れてるので,旧大陸だけでなく新大陸を席捲するのも面白い。また,これまで手出しを避けてきた神聖ローマ帝国を征服し,ローマ帝国の領土を再現することも可能でありそうだ。ただし,これらの両方を行った場合,プレイヤーの情報処理能力を大きく超えたプレイが要求されそうだが。



まずは体験版から始めてみよう


 以上のように,EU4はEU3をベースにEU2の特色を盛り込んだシステムになっており,従来作のプレイヤーにとっては,非常に納得のいく手堅いゲームデザインになっているのだ。もちろん,近世史が好きな人,近世史における特定の国や文化に興味のある人に向けてなら,たとえシリーズ未プレイだとしても胸を張っておすすめしたい。
 必要なPCスペック,および英語力については,冒頭にも書いたように体験版で確認できるので,興味のある人は,ぜひ体験版をダウンロードしてほしい。

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「Europa Universalis IV」公式サイト

  • 関連タイトル:

    Europa Universalis IV

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