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[COMPUTEX]七色に光るCherry MXキースイッチ搭載キーボードは,なぜCorsairから登場するのか。CherryとCorsairの担当者に聞く
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印刷2014/06/09 00:00

インタビュー

[COMPUTEX]七色に光るCherry MXキースイッチ搭載キーボードは,なぜCorsairから登場するのか。CherryとCorsairの担当者に聞く

Vengeance K95 RGB
Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
 COMPUTEX TAIPEI 2014で,Corsairが,ゲーマー向けキーボード「Vengeance K70 RGB」「Vengeance K95 RGB」を発表した。2014年6月3日の記事でお伝えしたとおり,両製品は,「Cherry MX RGB」という新型のメカニカルキースイッチを搭載し,光る色をさまざまにカスタマイズできるのが最大の特徴だ。

 では,このCherry MX RGBというスイッチは一体どんなもので,Cherryブランドを展開する独ZF Electronicsは,なぜCorsairとの協業を選んだのか。そして,Cherry MX RGBを採用するキーボードにはどんなメリットがあるのだろうか。
 今回4Gamerでは,台湾市内のホテル「Grand Hyatt Taipei」内に設けられたCorsairのプライベートスイートで,Cherryブランドのキースイッチに関するマーケティングや製造など全般を統括するディレクターであるManfred Schöttner氏,そしてCorsairでキーボードとマウスのプロダクトマネージャーを務めるJason Christian氏へ,順番に1対1で話を聞くことができた。せっかくの機会ということもあり,Cherry MX RGB以外についてもいろいろ質問してきたので,ぜひチェックしてもらえればと思う。

左からManfred Schöttner氏(Director, Electronic Systems, Product Line, Computer Imput Devices, ZF Friedrichshafen)とJason Christian氏(Product Manager, Keyboards and Mice, Corsair)。Cherryブランドを展開するZF Electronicsは,自動車業界でよく知られたZF Friedrichshafen(ZFフリードリヒスハーフェン)の子会社である


青と茶,赤軸はゲーマーのために開発した

〜Cherryの偉い人に聞くその歴史


4Gamer:
 初めまして。さっそくですが,まずはCherryというブランドについて聞かせてください。ZF Electronicsの前身であるCherryがキースイッチを手がけたのはいつ頃のことなのでしょうか。

Manfred Schöttner氏:
 Cherryがキースイッチの開発を始めたのは1970年代の終わり頃です。1980年代になって「Cherry MX」キースイッチを誕生させて以来,2013年までに約40億個のキースイッチを供給してきました。
 この分野で我々は,過去30年以上にわたって豊富な経験を積み,技術の最適化を行ってきたのです。

4Gamer:
 現在,キーボード用のスイッチは何種類くらいのラインナップがありますか。

展示品のVengeance K95 RGBは,Cherry MX RGBの赤軸モデルを搭載していた
Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
Manfred Schöttner氏:
 ゲーマー向けということでは,ご存じだと思いますが,黒と青,茶,赤の4種類ですね。

4Gamer:
 ゲーマー向け以外も含めるとどうでしょうか。PC市場でもたまに,緑,なんてものを見かけたりしますが。

Manfred Schöttner氏:
 いい質問ですが,そうですねえ……。少なくとも100種類以上はあるんじゃないでしょうか。オフィス向けや工業向け,POS向けなど,分野ごとにカスタマイズしたスイッチを手がけていますので,それくらいにはなります。

4Gamer:
 100以上ですか。それはすごいですね。
 ゲーマー向けに存在している4種類のキースイッチですが,これらはいつ頃登場したのでしょうか。少なくとも日本では最初に黒と茶があったように記憶しているのですが。

Manfred Schöttner氏:
 我々の認識では,PCゲーム用のキーボード市場が急成長し始めたのは3,4年ほど前です。
 それまでCherry MXは,オフィス向けで広く使われていたのですが,それを誰か――主に中国の人々ですが――がゲームに使い始めて,「これはメンブレンスイッチを採用するキーボードよりずっといいぞ」ということになったようです。

 彼らがキーボードメーカーに「これは何というキースイッチを使っているのか」と聞いてきたのが,すべての始まりでした。それをきっかけに我々とゲーマー向けキーボードメーカーのやりとりが始まり,2009年以降,前年比2倍以上の勢いでPCゲーム用キーボード市場が成長し始めたわけです。

4Gamer:
 それはつまり,黒と青,茶,赤という4種類のキースイッチは2009年より前から存在していて,2009年以降,ゲーム用に使われることになった,ということですか。

Manfred Schöttner氏:
 最初からあったのはCherry MX Blackだけですね。「ゲーム用キースイッチ」を手がけ始めてから,最初に開発したCherry MX Brownは,多くのゲーマーから支持されました。いまでも“茶軸”はとても高い支持を頂いているキースイッチですが,それ以外の打鍵感覚を求める人もいて,青や赤が誕生し,今の4種類になりました。

4Gamer:
 ということは,黒を除く3種類のキースイッチは,文字どおり「ゲーマーのために作られたもの」だと。

Vengeance K70 RGB
Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
Manfred Schöttner氏:
 そのとおりです。もともと“黒軸”はオフィス向けのキーボードの定番として評価を受けていました。それをゲーマーが「ゲーム用」として評価してくれて,それを踏まえて,残る3種類のキースイッチをゲーマーのために開発したという経緯です。

4Gamer:
 黒軸以外のキースイッチを開発するときに,ゲーマー,たとえばプロゲーマーの意見を集めたりはしたのでしょうか。

Manfred Schöttner氏:
 もちろんです。キースイッチの打鍵感について,PCゲーマーの意見を多く集めました。
 我々は高品質のキースイッチを開発するプロフェッショナルです。しかし,それぞれの分野に向けて特化した製品は,「その分野のプロフェッショナルが何を求めているのか」を知らなければとうてい開発できません。ですから,PCゲーム向けのキースイッチを開発するにあたっては,当然のことながら,プロゲーマーの意見も参考にしているのです。

4Gamer:
 主にどの地域でゲーマーの意見を聞いたのですか?

Manfred Schöttner氏:
 主に中国ですね。私達のキースイッチがPCゲームに向いていると最初に評価してくれたのは中国のゲーマーでしたから。

4Gamer:
 青と茶,赤はいずれも主に中国のゲーマーの意見を取り入れて開発されたもの,ということですか。

Manfred Schöttner氏:
 そうです。

4Gamer:
 その中では,先ほどもお話が出たように,Cherry MX Brownが,世間では最も人気があると言われています。実際のところ,地域ごとにキースイッチの人気が異なっていたりといった傾向は出ていたりしますか。

Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
Manfred Schöttner氏:
 地域ごとの傾向というよりは,キーボードベンダーの採用傾向によるところのほうが大きいと思います。キーボードベンダーが非常にいい製品を出すと,それに採用されているキースイッチのシェアが上がる,というわけです。
 もちろん,4種類のキースイッチすべてを採用するキーボードベンダーも多いですが,ゲーマーが欲しいと思うキーボードにCherry MXが採用されていることのほうが重要ではないかと見ています。

4Gamer:
 ちなみに,キーボード用のメカニカルキースイッチ市場におけるCherry MXのシェアというのはどれくらいですか。

Manfred Schöttner氏:
 だいたい90%程度ですね。

4Gamer:
 ほぼ独占ですね。そんなCherryのビジネスの中でゲーマー向けのスイッチが占める割合はどれくらいなのでしょうか?

Manfred Schöttner氏:
 そうですね……。およそ30%から35%くらいでしょうか。


なぜCherryはCorsairを

協業パートナーに選んだのか


4Gamer:
 CherryブランドとCorsairのコラボレーションによる結果として,Cherry MX RGBを搭載するキーボードがCOMPUTEX TAIPEI 2014で正式発表されました。
 Corsairさんのプライベートスイートでこんなことを聞くのも失礼ですが,なぜ,パートナーとしてCorsairを選んだのでしょうか。端的に述べて,ゲーマー向けキーボード市場でCorsairより大きなシェアを持つメーカーは他にもいくつかありますよね。

Manfred Schöttner氏:
 ご指摘のとおり,Corsairの市場シェアはナンバーワンではありません。しかし,我々とCorsairが協力すれば,ナンバーワンになれるだけの製品を開発できる。それだけの技術力をCorsairは持っていると我々は考えました。
 いつの日か,Corsairは現実の市場シェアでもナンバーワンになるでしょう。だから我々はCorsairをパートナーに選んだのです。

4Gamer:
 ゲーマー向けキースイッチの分野で,Cherryブランドが他社と協業するのは今回が初めてだと思いますが,ほかのジャンルではいかがでしょう。こういうのは珍しくないことなのですか。

Manfred Schöttner氏:
 今回行ったCorsairとの協業において,Corsairは一定期間,Cherry MX RGBを優先的に利用できますが,こういうパートナーシップを組んだのは今回が初めてですね。私が記憶する限り,過去に同じような協業をしたことはないはずです。

4Gamer:
 つまり,Cherry MX RGBは,一定期間,Corsairにのみ供給されるわけですね。ZFグループのような大企業体にとって,コスト的には見合わない気もするのですが……。

Manfred Schöttner氏:
 このCherry RGBという製品の特徴を考えたときに,十分なハードウェア技術やソフトウェア技術を持っている企業でなければ,製品を活かしきることはできないと考えたのです。そのノウハウをもたらしてくれるCorsairと,一定期間の独占供給を行うことは,ビジネス的にも大きな意義があると考えています。

4Gamer:
 そういうことですか。納得できました。
 ちなみに「一定期間」とはいつまでですか。

Manfred Schöttner氏:
 2014年12月31日までです。ですから,来年になれば,Corsair以外のキーボードベンダーもCherry MX RGBを採用できるようになります。

4Gamer:
 そのCherry MX RGBスイッチですが,Corsairが採用するのは青と茶,赤ですね。Cherryとしては黒も用意しているのでしょうか。

Manfred Schöttner氏:
 ええ。4軸すべて用意しています。

4Gamer:
 これらのスイッチ自体は,既存のCherry MXとまったく同じ特性を持つという理解で大丈夫ですか。

Manfred Schöttner氏:
 そうです。既存のCherry MXとフィーリングはまったく同じです。

4Gamer:
 Cherry MX RGB自体は,Corsairの協業によってゼロから開発したのでしょうか。それともCorsairとの協業が決まる前から開発は始まっていましたか。

Manfred Schöttner氏:
 以前から開発を始めていた技術です。開発を進めるなかで,Corsairとのコラボレーションが決まったという経緯があります。

4Gamer:
 「光るCherry MX」という意味では,キースイッチのカバー分にLEDユニットを1基搭載するものが長らく採用されてきました。Cherry MX RGBは半透明の筐体が目を引きますが,LEDユニットはどのように実装されているのですか。

Schöttner氏が紙の上に書いてくれた,キースイッチとLEDの模式図。図の左下に見える楕円部分がLEDで,基板上に実装されている
Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
Manfred Schöttner氏:
 従来も3mm径のLEDを搭載するキースイッチはありましたが,Cherry MX RGBは,あれらとはまったく異なる実装になっています。
 具体的には,透明な筐体の下,基板上に,表面実装型のLEDユニットを直接取り付けています。基板上にあるLEDの光が,半透明な筐体素材を通して見えると。

4Gamer:
 ということは,今回のCherry MX RGBという製品は,半透明の筐体を採用したキースイッチと,その下に取り付けられる表面実装のLEDの両方を合わせた製品ということですね。

Manfred Schöttner氏:
 そのとおりです。半透明素材のキースイッチと表面実装型LEDの両方をCherry MX RGBとして供給します。

4Gamer:
 表面実装のLEDについてですが,これはRGBという名前のとおり3色と考えていいですか。

Manfred Schöttner氏:
 RGBの3色が一体になったタイプの表面実装LEDを使っています。RGB個々のLEDはマイクロスコープを使えば見えるかもしれませんが,裸眼では見えないといえるレベルです。

4Gamer:
 実機を見ると,白が非常にきれいだったので,RGBに加えて白色LEDも埋め込んであるのかと思いましたが,それは,RGBが一体になったLEDユニットを使っているからなんですね。

Manfred Schöttner氏:
 そのとおりです。



「“Cherry互換”のキースイッチよりも

Cherry MXのほうが優れている」


4Gamer:
 最近,大手のゲーマー向け周辺機器ブランドが,Cherry MX互換的なキースイッチを採用していますよね。あれをどう思っていますか。

Manfred Schöttner氏:
 実のところ,中国にある多くのメーカーが長年にわたって私達の製品のコピーを生産しています。(4Gamerも)日本の皆さんには,これらはコピーでオリジナルではないよと教えてあげてください(笑)。
 コピー製品について,ネガティブなことを言おうとは思っていませんが,それらの製品をラボでテストしてみても,(性能や耐久性の面で)我々の製品を超えたことはありません。我々はメカニカルキースイッチを誰よりも長く手がけて製品の性能を向上させてきました。実際,我々の製品が最も優れている思っています。

4Gamer:
 ゲーマー向けのキースイッチでは,東プレが手がけている静電容量タイプもコア層に人気があります。あちらについてはどう見ていますか。

Manfred Schöttner氏:
 良いと思うスイッチを選ぶのはゲーマーですから,東プレのスイッチがいいというゲーマーもいるでしょうし,Cherry MXスイッチがいいと思うゲーマーもいる,それでいいと思っています。

4Gamer:
 ちなみに,そのCherry MXスイッチでは,いまも新しいキースイッチを開発していますか。将来,5個めのキースイッチや,Cherry MX RGBのような派生モデルが出てくると期待していていいのでしょうか。

Manfred Schöttner氏:
 もちろんです。いま開発中の新しい技術に関しては,いずれ皆さんにお知らせることができるようになるでしょう。Corsairは,将来の技術に関しても共に手がけていく大切なパートナーだと考えています。


“低解像度ディスプレイ”のような

表現を行えるVengeance RGBシリーズ


 続いてはCosairのJason Christian氏だ。プライベートスイートにおけるスペースとスケジュールの都合で,氏には,Schöttner氏へのインタビュー後に話を聞くこととなった。

4Gamer:
 よろしくお願いします。
 さて,Cherry MX RGBを搭載するVengeance RGBシリーズは,一般的なLEDバックライト付きのキーボードに比べると,当然のことながらコストが高くなりますよね。より安価なVengeance K70 RGBでも169.99ドルとのことで,あまり普及しないのではないかという懸念もあるのですが,その点についてはどうお考えですか。

Vengeance RGBシリーズは「世界初のキーボード」として訴求される
Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
Jason Christian氏:
 その点はまったく心配していませんよ。
 確かに単色バックライトのキーボードであれば130〜150ドル程度で購入でき,その価格帯には優れた製品も多くあります。それと比べると,Vengeance RGBは20〜30ドルほど高くなりますが,「誰も見たことがない,世界で初めての技術を採用した製品」ですから,価格に見合う価値があるといえます。
 キーボードマニアやヘビーなゲーマーなら,きっと我々の製品を評価してくれるはずです。

4Gamer:
 キートップが――あえてキートップと言いますが――いろいろな色で光ることのメリットは具体的に何なんでしょう?

開発途上版の設定用ソフトウェアに用意される色調整機能。レイヤーで管理できるようになっており,たとえば「地の色を敷いておいて,その上に,うねうねと動くアニメーションを,ブロック分けしつつ複数重ねる」といったこともできる。レイヤーの数は事実上無制限だが,「重ねすぎるとなんだか分からなくなるから勧めない(笑)」とChristian氏
Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
Jason Christian氏:
 大きく分けて2つあります。1つは,アプリケーションやゲームごとに,使うキーの色をカスタマイズできるということです。キーごとに光らせたり光らせなかったり,光らせるときも色を変えたりできる。これが最大のメリットでしょう。

4Gamer:
 それは,「アプリケーションごとにプロファイルを持たせることができて,プロファイルごとに光る色を変えられる」ということですか。

Jason Christian氏:
 そのとおりです。ゲームタイトルごとにプロファイルを作成しておけば,あるゲームを起動すると,そのゲームタイトルのプロファイルが自動的に読み込まれ,ゲームに関連付けられたキーのバックライトやマクロが適用される仕組みです。

色設定ウインドウ(左)とアニメーション設定ウインドウ(右)。Corsair社内でも驚かれるほど,設定項目は多岐にわたっているそうだ。およそ考えられるたいていの光らせ方に対応できるという
Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming) Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)

4Gamer:
 では,2つめのメリットは?

開発途上版の設定用ソフトウェアは,すでに日本語表示に対応していた。細かなカスタマイズができるため,ソフトの使い方が分からないとお手上げになりそうだが,チップヘルプも含め,社内の日本人スタッフが校正に入って,きちんと対応しているという
Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
Jason Christian氏:
 もう1つの利点は,パーソナライズができるということです。たとえば私は個人的にASUSTeK ComputerのゲームPCを好んで使っているのですが,Vengeance RGBシリーズなら,同社のゲーマー向け製品における統一カラーである赤色で,キーボードの色も統一できます。個人の好みに合わせてカラーコーディネートできるわけです。
 Cherry MX RGBを搭載するVengeance RGBシリーズなら,どんな色にもLEDを変えられるというのが,大きなメリットですね。

4Gamer:
 これまでも色を変えられるという製品はありましたが,やってみると白が青っぽくなっていたりとか,思ったような色にならないということがありました。今回のVengeance RGBは,ぱっと見る限り,そういう心配がいらない雰囲気ですが,実際のところはどうでしょう。

Jason Christian氏:
 Vengeance RGBシリーズでは,そういった「発色の不自然さ」が出ないように設計しています。

 ポイントは大きく分けて2つあるのですが,1つは,(Schöttner氏も述べていたように)Cherry MX RGBで採用されている表面実装型LEDでは,赤緑青のLEDが1か所に集積されているため,3色のLEDを個別に実装したバックライトと比べると,明確に色ムラが出づらくなっています。
 2つめですが,実はVengeance RGBシリーズの開発にあたって,パナソニックの協力を得ています。パナソニックはサインボード(※大量のLEDを使ってメッセージや画像を表示するボード)の技術を持っているのですが,同社と協力して,Vengeance RGBシリーズのための制御用LSIを設計しました。これによっても色ムラを抑えています。

開発途上版の設定用ソフトウェアで,ささっと日本の国旗を表現してくたChristian氏。設定完了まで十数秒といったところだった。もちろん,これを動かしたりすることもできる。氏の言うとおり,ディスプレイ的に利用できるのだ
Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
4Gamer:
 表示周り専用にパナソニックと共同開発を行ったんですか。それはびっくりです。

Jason Christian氏:
 でしょう? 言ってしまえば,Vengeance RGBシリーズは,(キー1個1個がドットに相当する)低解像度ディスプレイのような作りなんですよ(笑)。

4Gamer:
 LSIはCorsairとパナソニックとの共同開発なのですか。

Jason Christian氏:
 正確に言うと,パナソニックが開発し,我々がカスタマイズとコントロールソフトウェアを担当しました。

4Gamer:
 LED周りはいかがでしょう? このあたりはZF Electronics製ですが,Corsairならではのカスタマイズは入っているのですか。

Jason Christian氏:
 Cherry MX RGBではキースイッチの筐体とキーキャップを通して光が外に出てきます。そこで我々が重視したのは,自然なフルカラーを高い輝度で発光することができ,かつ,消費電力を抑えられるということです。Vengeance RGBシリーズでは,そのようにカスタマイズしたLEDを使っています。

4Gamer:
 確認させてください。つまり,Cherry MX RGB自体は当然のことながらZF Electronics製ですが,LED周りにはCorsairの意見がかなり採用されているということですか。それとも協業のなかで,御社がLED周りを開発したということでしょうか。

Jason Christian氏:
 「キースイッチの基板にLEDを載せてキーを光らせる」というアイデア自体はZF Electronicsのものです。
 そこから先,キーボードへ実装するところは,我々と彼らとの間の協業で開発してきました。なので,はっきりした役割分担があるかというと説明が難しいところもあります。ただ,パナソニックのLSIを使って個々のLEDを制御するところと,オリジナルのCherry MX RGBにあったLEDに対するカスタマイズ,そして,制御用のソフトウェアは,間違いなく我々が担当したところですね。

4Gamer:
 今のご説明ですっきりしました。
 ちなみに,ZF Electronicsとの共同開発はスムーズに進みましたか?

Jason Christian氏:
 はい。というか,共同開発するなかで,我々とZD Electronicsの求めるものがかなり近いことに気づかされました。それは技術を追求する姿勢であったり,非常に高い製品の品質を求める企業哲学という部分だったりするのですが,そういう部分で非常によく似ているな,と。
 一方で,先にお話ししたように,私は自分自身がゲーマーですし,Corsair社内にもゲーマーがとても多いので,「ゲーマー向けのキーボードはどうしたらいいのか」とい部分では,我々から彼らの側に多くのフィードバックを行うこともできました。

4Gamer:
 LED以外に,Vengeance RGBシリーズの開発にあたってチャレンジングだったところはありますか。

Jason Christian氏:
 大きく2つのチャレンジがありました。1つはコストです。現実にゲーマーが買える手頃な価格に抑えながら,高い品質の製品に仕上げなければならないという点で多くの苦労がありました。北米市場の価格はK70 RGBが169.99ドル,K95 RGBが189.99ドルですが,この価格に抑えるのが非常に大きな課題でした。

Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
 もう1つはソフトウェアの開発です。このキーボードではキースイッチの下に埋め込まれたRGBのLEDを駆動して,たてとえば美しい光のアニメーションを実現したり,ユーザーが光の色をカスタマイズしたりといったことをソフトウェアで制御する必要があります。また,プロファイルとしてそれらを保存できなければなりません。そのための使いやすいソフトウェアを開発するのに苦労しました。……まだ開発中ですけど(笑)。

4Gamer:
 消費電力面ではどうですか? たとえばキーごとに単色のLEDを搭載するキーボードと比べると,消費電力はどの程度違ってくるでしょうか。

Jason Christian氏:
 具体的な数字は手元にありませんが,Vengeance RGBシリーズは2系統のUSB接続で駆動するので,2ポート分の電力供給で賄えているのは確かです(※つまり5W以内。一般的なLEDバックライト付きキーボードとそれほど大きくは変わらないことになる)。
 Vengeance RGBシリーズの開発にあたって,ACアダプター駆動にはしない,というのも,実現目標になっていました。

4Gamer:
 ACアダプター駆動という可能性もあったんですね。それと比べるとずいぶんすっきりしました。
 さて,最後の質問です。これはお会いしたら絶対に聞こうと思っていたのですが,最近,“非Cherry”のメカニカルキースイッチを採用してゲーマー向けキーボードを作るメーカーも出てきましたよね。そういうスイッチを検討したりはしなかったのでしょうか。

Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
Jason Christian氏:
 検討したこと自体はあります。しかし,打鍵感のバラ付きのなさや,優れた打鍵感といったものを,Cherry MXは,ドイツの精密加工技術によって高いレベルで実現しています。Cherry MX以外のキースイッチではななかなかこうはいきません。なので,CorsairとしてはCherry MXこそがベストなゲーム用キースイッチであると判断した次第です。


年内はVengeance RGBのみが入手可能

「光るゲーム用キーボード」の決定版か


Vengeance RGBシリーズではもう1製品,「Vengeance M65 RGB」というレーザーセンサー搭載ワイヤードマウスもリリース予定となっている
Corsair Gaming(旧称:Vengeance Gaming)
 というわけで,ZF Electronicsにゲーマー向けキースイッチの歴史や考え方などから始めて,Cherry MX RGBキースイッチの概要,そしてVengeance RGBシリーズのセールスポイントまで聞いてみた。結果,長い記事になってしまったが,単なる「バックライトが七色に光るメカニカルキーボード」にはなっておらず,ユーザーが指定したとおりの色で光るよう設計されていたり,設定用ソフトウェアで徹底的なカスタマイズできるようになっていたり,消費電力への配慮があったりと,技術的にもかなり見どころが多いと判明したのは収穫だった。

 インタビュー中にSchöttner氏が述べたとおり,Cherry MX RGB搭載のキーボードは,少なくとも2014年いっぱいはCorsairからしか販売されない。ゲーマー向けキーボードを自分の希望どおりの色や光らせ方でライトアップしたいなら,夏以降の国内発売に向けて,予算を確保しておくのがよさそうだ。(インタビュー:佐々山薫郁,構成:米田 聡)

CorsairのRGBシリーズ特設ページ(英語)

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