Qualcomm，新型ハイエンドSoC「Snapdragon 821」の製品概要を公開。スタンドアロン型VR HMDの開発用プラットフォームも発表

　北米時間2016年8月31日，Qualcommは，Snapdragon 800シリーズの最上位モデルとなる新型SoC（System-on-a-Chip）「Snapdragon 821」の製品概要を公開した。

Snapdragon 821の製品概要

　製品型番からも想像できると思うが，Snapdragon 821は，従来製品「Snapdragon 820」（MSM8996）をベースに，CPUコア「Kryo」およびGPUコア「Adreno 530」の動作クロック引き上げを図ったものだ。CPUコアクロックは，Snapdragon 820の最大2.2GHzから最大2.4GHzになり，詳細が明らかになっていないGPUコアクロックのほうも，動作クロックは従来比で5％向上しているという。
　全体として，端末の起動時間やアプリの読み出し時間は最大で10％の短縮を実現し，また，スクロールやWebブラウザの反応速度も向上するとのことである。

　内蔵するモデム機能や無線LAN機能などにめぼしい変更点はないようだが，カメラ制御用プロセッサ「Spectre camera ISP」の対応画素数が，最大2500万画素から最大2800万画素に向上するなど，細かい点で小幅な改良が加えられているようだ。

2016年5月30日に発表されたZenFone 3 Deluxe。この時点では，Snapdragon 820を採用する予定だったが，Snapdragon 821へと変更された

　なお，Qualcommのリリースによると，ASUSTeK Computerの「ZenFone 3 Deluxe」が，世界初のSnapdragon 821採用製品になるという。
　2016年5月に発表された時点では，ZenFone 3 Deluxeの搭載SoCはSnapdragon 820となっていたので，ASUSTeK Computerは製品出荷前にSoCを変更したわけだ。つまり，Snapdragon 821とSnapdragon 820には高い互換性があり，Snapdragon 820用に設計したデバイスでSnapdragon 821を採用するのは比較的容易というのが，Qualcommのアピールしたい点なのだろう。

　またこれとは別に，ドイツ時間2016年9月1日にQualcommは，Snapdragon 820をベースとしたVR（仮想現実）対応HMDのリファレンスプラットフォーム「Snapdragon VR820」というものも発表している。
　これは，ゴーグル部分にコンピュータ部分を内蔵したスタンドアロンタイプのVR HMDを，デバイスメーカーが開発するための開発キットだ。これを元に自前のVR HMDを開発すれば開発コストを抑えられ，また，迅速に市場へ投入できるというわけである。

Snapdragon VR820。外部を認識するためのステレオカメラを備えている

　SoC部分はSnapdragon 820を使用し，ディスプレイパネルは，片眼あたりの解像度が1440×1440ドットの有機ELを採用。4K解像度相当の360度ビデオを70fpsで表示する能力があるという。また，モーショントラッキング機能や3次元サラウンドサウンド機能，Spectre camera ISPを使った視線追跡機能やハンドジェスチャの認識機能なども備えているそうだ。

　ソフトウェア開発環境としては，QualcommがSnapdragonシリーズ用の「Snapdragon Virtual Reality Software Development Kit」（Snapdragon VR SDK）を用意しているとのこと。そのほかのVR HMD向けプラットフォーム，たとえばGoogleの「Daydream」や，Microsoftの「Windows Holographic」に対応できるかどうかは明らかになっていない。

　Qualcomm製のリファレンスプラットフォームが登場したことによって，2017年には，Snapdragonベースのスタンドアロン型VR HMDが続々と登場してくることになるかもしれない。

QualcommによるSnapdragon 821のプレスリリース（英語）

QualcommによるSnapdragon VR820のプレスリリース（英語）