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だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方
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印刷2012/02/25 00:00

インタビュー

だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方

作り手としては後悔が残った「DARK SOULS」


4Gamer:
 「DARK SOULS」が発売されてからしばらく経ちます。国内の新作タイトルとしては異例の35万本を売り上げ,全世界の累計出荷本数では150万本を突破したとのこと。国内外でさまざまな賞を獲得したりもしていますが,振り返ってみていかがですか。

画像集#018のサムネイル/だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方

宮崎氏:
 「DARK SOULS」に関して言えば,改めて,まずはユーザーの皆様にお詫びしたいです。
 発売直後のネットワークや,ゲームの不具合はもちろん,それ以外にも諸々ご期待に応えられなかった部分があったことに対して,決してこれで良かったとは思っていません。
 せっかく期待してゲームを購入してくれた方を裏切ることになってしまい,非常に申し訳なく思っています。

4Gamer:
 そこは率直に言って,とても「もったいない」と思わずにはいられない点でしたよね。継続的なアップデートによって,今は正常な状態でプレイできますけれど。

宮崎氏:
 本当に申し訳ないです……。

4Gamer:
 言葉は悪いかもしれませんが,これだけの結果を出したのなら,「まぁ売れたから良かったよね」と納得することもできなくはないと思うのですが……。

画像集#014のサムネイル/だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方
宮崎氏:
 いいえ,それはまったくありません。
 適切な言い方かどうかは分かりませんが,今回のことは,非常に大きな反省の機会になりました。個別にあげていくときりがないのですが,当然私自身,そしてスタッフ個々だけでなく,もう少し大きな,制作体制といったレベルでも,改善すべき部分があると感じています。

4Gamer:
 ただ,それでもPlayStation Awardsでは多くのファンが「DARK SOULS」を支持していましたよね。

宮崎氏:
 あれは……本当に嬉しかったです。多くの不具合や問題がありましたから,正直受賞できるなんて思ってもいませんでした。もちろん,そうした声に甘えてはいけませんし,むしろ叱咤激励なのだと思うべきなのですが,それでも,やはり皆で一生懸命に作ったものですから,とても嬉しかった。
 そして,これは賛否どちらもですが,声を送ってくださるユーザーさんのためにも,先ほどの反省を踏まえて,その先の「面白いゲーム」という結果を出したい。もし私に次の機会があればですが,強くそう思います。

4Gamer:
 宮崎さんは,プロデューサーとディレクターを兼任するというスタイルで開発をされてきたと思いますが,自身の立ち位置の変化についてはどうですか?

宮崎氏:
 正直な話をすると,それは反省点の大きな1つです。もう一度,この規模のタイトルで兼任するようなことはしないでしょう。

4Gamer:
 やはり,プロデューサーとディレクターの兼務はきつかったですか。

宮崎氏:
 そうですね。きつくなかったと言えば嘘になります。
 というのも,「DARK SOULS」というタイトルに対する期待値が,国内も海外も,我々の当初の予想を大きく上回ってしまいまして……。それ自体はとても嬉しいことですが,開発後半はプロデューサーとしての業務負荷がかなり大きくなり,ディレクターとしての機能を十分に果たせていませんでした。私の力不足という面もありますが,私自身が開発のボトルネックとなってしまったので,スタッフにも大きく迷惑をかけてしまったかと思います。
 当初の想定では,PVを1〜2本作って,数少ないインタビューに答えて,海外でも少しは注目されるといいなあ,くらいのつもりだったのですが,とんでもなく甘かったですね。


フロム・ソフトウェアという会社のあり方


4Gamer:
 だいぶ話し込んでしまいましたが,最後にフロム・ソフトウェアという会社のあり方,考え方みたいな部分について教えてください。

宮崎氏:
 私が答えられるものであれば。

4Gamer:
 では,フロム・ソフトウェアさんは自社IPのタイトルの開発と,パブリッシャからの受託開発という,二つの軸でお仕事をされていると思うんですけど,そこのバランスをどう考えているのだろうか,というのが気になっていて。
 昨今は,大手のパブリッシャさんほど内部に開発を持ちたがらない(コスト高になるから)傾向が強いと思うのですが。

宮崎氏:
 私としては,自社開発,受託開発は両建てでよいと思っています。経営的な視点でも,あるいはゲーム開発者としても,どちらも一長一短ありますので。

4Gamer:
 なるほど。

宮崎氏:
 経営的な視点で言えば,受託開発の方がリスクが小さいのは事実です。予算的な話もあり,大規模なラインを動かしやすいということもあります。社外と協働することで,社内にはない刺激やサポートを受けられるのも好きだったりします。
 ただ,私としては,受託開発であってもゲームデザインの主導はこちらで持っておきたいんです。そうでないと,我々が作りたいゲームを作れなくなってしまう。
 幸いにも,今はそうしたやり方で開発させて頂くことができていますが,ずっとその体制でやっていけるのかというと,まったく保証は無いわけじゃないですか。

4Gamer:
 それはそうですよね。

宮崎氏:
 そこで,我々が作りたいゲームに誰も興味を示してもらえなかった時に,それを作るための手段,もしくは我々が作りたいゲームというものを端的に示し,信用,信頼を得るためのフラグシップとして,自社開発という選択肢が必要だと思っているんです。

4Gamer:
 ああ,そういう意図なんですね。

宮崎氏:
 まあ,あくまでも私の考えですので,経営陣はまた違うのかもしれませんが(笑)。
 これは,最初のお題に近い話なのかもしれません。フロム・ソフトウェア,そしてそこにいる我々は結局何をしたいのか。「良いものを作りたい」という理想があって,そのためには何が必要になるのか。

4Gamer:
 結局,ゲームを作るという仕事に何を求めているのか,という話ですよね。

宮崎氏:
 ええ。変な言い方ですが,わざわざゲーム制作を生業に選んでいる以上,やはり外せないもの,重要なものはあるよなあと。

4Gamer:
 そもそも宮崎さんは,以前は外資系のIT会社に勤めていたんですよね。

宮崎氏:
 はい。いい会社で,何の不満もありませんでした。だけどやっぱりゲームが作りたくて,フロム・ソフトウェアの門を叩きました。
 で,ゲーム制作に従事してみて,やっぱりこれが楽しいんですよ。色々大変だったり辛かったりするけど,すごく楽しい。もちろん個人差はあると思いますが,結局フロム・ソフトウェアはそういう人たちの集まりなのだと思いますし,むしろそうであってほしいとも思います。

4Gamer:
 おっしゃることはとてもよく分かります。

宮崎氏:
 まあただ,これは最初に言ったとおり「建前」であり「きれい事」なんです。実際には,それだけではままならないことも多い。売れなければ食たべていけないわけですし。
 でも,「面白い」と「売れる」は矛盾する命題ではないので,「建前」や「きれい事」は大事にしていきたいなあ,というのが私の思いです。フロム・ソフトウェアの方向性でもあると思います。
 その上で,直すべきところは直して,面白いゲームを作っていきたい。

4Gamer:
 フロム・ソフトウェアという会社の立ち位置というか,スタンスが,少し理解できた気がします。本日はありがとうございました。

宮崎氏:
 ありがとうございました。

画像集#019のサムネイル/だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方


 個人的に宮崎氏の動向を気に掛けているのは,昨今「Demon's Souls」や「DARK SOULS」といったヒット作を作り上げたから……ではなく,彼の考え方や視点,そしてゲーム作りに対する姿勢がとてもしっかりしており,それでいて共感できるからである。そこについては,今回のインタビューを通してお伝えできたのではないかと思うが,いかがだっただろうか。

 発売当初は,致命的な不具合が大きな話題にもなったし,宮崎氏自身が語っていたように,「手放しで喜べない状態」だった「DARK SOULS」。大きすぎた期待に対して,課題を残す結果になったことは否定できない。しかし,それでもなお「DARK SOULS」という作品には,宮崎氏だからこそ作り得た部分がたくさんある――今回の取材では,改めてそれを確認した次第だ。

 幾人ものクリエイターにインタビューを行ってきて,一つ確信を持って言えることがあるとすれば,それは「素晴らしいゲームが偶然生まれることはあり得ない」ということである。なぜならゲームとは,操作一つ,画面の配置の一つ一つからして,創意工夫と試行錯誤の積み重ねを経て出来るものであり,そうである以上は,作り手にしっかりとした“芯”というか,考え方がなければまとまりようがないものだからだ。
 今回のインタビューでは,そうした宮崎氏の“芯”となる部分が垣間見えたと思うわけだが,だからこそ筆者は,今後,氏が取り組むであろう次回作に期待せずにはいられないのである。

 ともあれ,前回の「ARMORED CORE V」鍋島氏と,今回の宮崎氏。二人のプロデューサーを通してフロム・ソフトウェアとはどんな会社なのかを探ってみた今回の取材だったが,お二人の話を通じて改めて考えさせられたのは,何かを作るうえで……いや,仕事をしていくうえでの姿勢がどうあるべきか,という部分だろうか。
 自分がやっていることにしっかりと価値を見出し,日々の仕事に取り組んでいる。当たり前に見えて,そう簡単にはできないその姿勢の中にこそ,昨今,フロム・ソフトウェアが好調な秘密があるとまとめてみたい。

関連記事:
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「DARK SOULS」公式サイト

「ARMORED CORE V」公式サイト


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