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Mac Pro風の小型“ゴミ箱”筐体にSLIシステムを組み込んだデスクトップPC,MSI「Vortex G65 6QD SLI」レビュー
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印刷2016/04/27 12:00

レビュー

Mac Pro風の小型“ゴミ箱”筐体にSLIシステムを組み込んだデスクトップPC

MSI Vortex G65 6QD SLI

Text by 米田 聡


Vortex G65 6QD SLI(型番:Vortex G65 6QD-001JP)
メーカー:MSI
問い合わせ先:MSIサポートページ
BTO標準構成価格:33万円前後(※税込,2016年4月27日現在)
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 MSIが2016年1月のCES 2016で参考展示した,Mac Pro風の小型ハイスペックゲームPC「Vortex」。その国内販売が4月27日に始まった。
 ちょっと奇抜なゴミ箱といった感じの,小さな円筒風筐体に,2基のデスクトップPC向けGeForceを搭載し,2-way SLIで駆動させるという,アグレッシブなハードウェア構成が特徴だが,4Gamerでは2モデル展開の下位モデルとなる「Vortex G65 6QD SLI」(型番:Vortex G65 6QD-001JP)を入手できたので,構造面を中心にレポートしたいと思う。


外観とサイズは文句なしにユニーク。ユーザーインタフェースは若干ながらデザインの犠牲に


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 発表時点におけるVortexのラインナップは,「GeForce GTX 980」(以下,GTX 980)を2基搭載する「Vortex G65 6QF SLI」(型番:Vortex G65 6QF-007JP)と,今回の主役で,「GeForce GTX 960」(以下,GTX 960)を2基搭載するVortex G65 6QD SLIの2つ。要するに下位モデルを入手したわけである。

 は,そんなVortex G65 6QD SLIの主なスペックだ。GPUのほかにPCI Express Gen.3×4レーン接続のNVM Express対応SSD 2基をRAID 0で構成した,MSIが「SuperRaid 4」と呼ぶストレージアレイを起動用として採用している点が目立つところだが,それ以外は,現行のゲーマー向けデスクトップPCとしては標準的と言っていい。

※ストレージは入手した個体のもので,すべての個体で共通とは限りません
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冒頭でMac Pro風とは述べたが,実のところ,雰囲気はMac Proとは全然異なる。十分に独自性のあるデザインと言える
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 というわけなので,Vortex G65 6QD SLIについていえば,そのスペックよりも,そんなスペックが詰め込まれている小型筐体こそ注目すべきということになるかと思う。

 完全な円筒形ではないので,おおまかな実測になるが,本体サイズは約192(W)×204(D)×280(H)mmである。高さ30cm弱,直径20cm程度の円筒を思い浮かべてもらえば,サイズはイメージできるだろう。
 MSIは本体容積6.5リットルと謳っているが,いずれにせよ,2-way SLIに対応したシステムとしては,文句なしに小型のデスクトップPCだ。

「iPhone 6S」と並べたところ。スマートフォンとサイズ感を比較できるという点それ自体に注目してほしい
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横4方向から撮影したカット。こうして写真を並べるとはっきり分かるのだが,Vortexシリーズの筐体はまっすぐな円筒ではなく,上部がやや反ったような形になっており,その形に合わせたデザインが,独特な雰囲気を醸し出している
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 重量は公称約4kg。ゲーマー向けデスクトップPCとしては割と軽いほうだが,本体が小型なだけにずっしり感はある。
 正面の装備は極めてシンプルで,操作できるのは上部やや右寄りにある電源ボタンのみだ。電源が入ると,このボタンと,稲妻のように走るライン部,そして本体背面にある竜のイラスト部に埋め込まれた赤色LEDが,ゆるやかに明滅するようになっている。

「格好いいか?」と聞かれると意見が分かれそうだが,左右非対称に埋め込まれた赤色LEDが,VortexというゲームPCシリーズの大きな特徴となっているのは確かだ
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 先ほど示した写真で,本体が台座のようなもので設置面から浮いていることが見て取れたと思うが,Vortexシリーズは(Mac Proと同じく)底面吸気,上面排気仕様で,底からエアを取り込むため,机上と本体の間に隙間が設けてある。ちょうど煙突のようなエアフローで,暖められ軽くなったエアが上に向かうという,理にかなった設計である。

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真下から見るとこんな感じ。台座のようなもので浮いた底面がメッシュパネルになっていて,ここからエアを取り込む仕掛けである
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上面も大部分がメッシュパネルで,ここから排気を行うようになっている。煙突のようなエアフローをイメージするといい

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インタフェースはすべて背面側。サウンド入出力も背面のみというのは,最近では珍しいかもしれない
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少し奥まったところにACインレットがある。ACインレットは本体底面中央付近なので,若干挿しづらいが,脱落しづらい利点もある
 インタフェースは本体背面側にまとまっている。ビデオ出力はHDMI 2.0(Type A)×2とMini DisplayPort×2の合計4ポート。さらにThunderbolt 3/USB 3.1(USB Type-C)ポート2基も備えている。4基のUSB 3.0ポートとマイク入力,ヘッドフォン出力,それにS/PDIF光デジタル角形端子も背面側だ。ライン出力を持たないあたり潔いが,ヘッドフォン出力のみという仕様からすると,MSIはVortexシリーズをデスクトップで使う前提でいるという理解でよさそうだ。
 ただ,そうであれば,せめて2基程度のUSBポートは本体前面側に欲しかった。マウスやキーボード,あるいはUSBフラッシュメモリなどを接続するだけでも背面側に手を回さねばならないというのはけっこう面倒である。

 また,実際に運用してみると,DisplayPort端子がMiniのみというのも少々残念だ。VortexシリーズのようなPCを購入するような層なら,4Kディスプレイや,NVIDIA独自のディスプレイ同期技術「G-SYNC」に対応したディスプレイを選ぶという人も少なくないと思うが,そういうディスプレイ側の入力端子は十中八九標準のDisplayPort端子なので,まず間違いなくMini→標準変換のDisplayPortアダプター(かケーブル)が必要になってしまうのだ。

Killer Network ManagerのMSI向けカスタム版がプリインストールされており,Killer DoubleShot-X3 Proを利用できる
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 なお,2系統の有線LAN端子と,内蔵する無線LANモジュールはいずれもRivet Networks製。3つのネットワークインタフェースを使ってネットワークパケットの効率化を図るという技術「Killer DoubleShot-X3 Pro」にVortexシリーズは対応している。

 プリインストールのアプリケーションはそのほか,ゲームの録画や配信を行う「Xsplit Gamecaster」や,バーチャルサラウンドサウンド出力やマイクのノイズリダクションなどを利用できる,サウンド関係の統合ソフトウェアスイート「Nahimic Sound Software」など。Xsplit Gamecasterは1年間の「Premium」ライセンス付きだ。

最近のMSI製ゲーマー向けPCでお馴染みとなっているNahimic Sound Software。バーチャルサラウンドサウンド出力やマイク品質強化と,必要な機能がまとまっており,使い出がある。インタフェースはちょっと取っつきにくいが
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Dragon Gaming Centerに組み込まれている「システムチューナー」で3段階の性能モードである「Shift Mode」を設定可能。そのうち標準のSportモードではCPUの最高クロックを設定できる
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 MSIのゲーマー向けノートPCやグラフィックスカードでお馴染みのオーバークロック関連ツールとしては,プリインストールの「Dragon Gaming Center」がある。このツールに組み込まれている「システムチューナー」を使えば,CPUの最高クロックを4.0GHz〜4.6GHzまで100MHz刻みで設定可能だ。
 また,MSI製のゲーマー向けノートPC製品では定番となっているが,CPUクロックの制御方法を3段階で変える「Shift Mode」もサポートされていた。Vortex G65 6QD SLIではもっともアグレッシブにCPUクロックを向上させる「Sport」モードがデフォルトだが,静音性や省電力を優先する「Comfort」モード,「Green」モードに切り替えることもできる。なお,今回のテストにあたっては,Sportモードを利用しているが,これは,システムチューナーが,テスト終了後のアップデートで追加されたためだ。

 なお,MSI製のGPUオーバークロックツール「Afterburner」は付属メディアにバンドルされていたが,プリインストールはされていなかった。GPUのオーバークロックについては自己責任でどうぞ,ということなのだろう。


緻密に構築された内部構造を持つVortexだが,ストレージ換装周りの仕様には疑問も


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 ここからはVortex G65 6QD SLIの内部構造を見ていきたいが,それに先だって,Vortexシリーズにおける大きなトピックを1つ紹介しておきたい。
 4Gamerではこれまで,MSI製のゲーマー向けノートPCを取り上げるごとに「マザーボードやグラフィックスカードで自作系のファンを多く抱えるMSIの製品にもかかわらず,ユーザー側でメモリモジュールやストレージの交換を行っただけでメーカー保証が失われるのはいかがなものか」という話を繰り返してきた。その点,Vortexシリーズでは,メーカー保証の範囲内で,メモリモジュールとストレージの交換を行えるようになっているのだ。

 筐体を開けるにはT8のヘクスローブ(トルクス)ドライバーが必要で,“カジュアルな分解”に対してはこれがハードルなるが,本体背面にあるトルクスビスに封止シールはなく,これを取り外すことにより,ユーザーは,メーカー保証が切れる心配をすることなく,内部へアクセスできるようになっている。

6本のトルクスビスを外すと背面と側面パネルが外れて内部にアクセスできる。MSI製のPCということを考えると,これは極めて重要なポイントだ。側板の立て付けがあまりよろしくなく,脱着時はどちらもやや難儀するが,これまでできなかったことができるようになったわけで,この程度は大した問題ではない
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本体側面内部。ぱっと見だとメモリスロットは2基に見えるが(下に続く)
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 側板を取り外した状態でユーザーがアクセスできるのは,本体向かって左にあるメインメモリ用のSO-DIMMスロット4基と,右にあるM.2タイプのSSDスロット1基,そして2.5インチストレージスロット1基だ。
 入手した個体だと,SO-DIMMスロットにはSK Hynix製で容量8GBのPC4-17000モジュールが2枚差さっているので,残る2スロットに対してメモリモジュールを追加できるわけである。

(続き)標準で差さっているモジュールを外すと,その奥にもう1組のデュアルチャネルアクセス対応メモリスロットが見える(左)。奥側へのメモリモジュール取り付けも,Mini-ITXマザーボードでの自作経験があるなら難しくないレベルだ。右は標準で差さっていたメモリモジュール
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 右側でアクセスできるのは,M.2(type2280)のSSDスロット1基だ。前述のとおり,Vortex G65 6QD SLIは,容量128GBのSSDを2つ使って容量256GBのRAID 0アレイをSuperRaid 4として構成しているのだが,アクセスできるのはSSD 1枚だけなので,SSDを交換するときは,事実上,RAIDアレイを解除するということになるはずである。せっかく換装できる仕様なのに,これはちょっとどうかと思う。

アクセスできるのはRAID 0アレイの片方のみ。なので,交換はあまり現実的でない
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2.5インチストレージはカートリッジに入った状態でスロットに差ささっている。どう見ても「2本のビスを外して紐を引けば取り出せる」仕様なのだが,入手した個体ではうんともすんとも言わなかった
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 なお,一点お断りしておくと,今回入手した個体では,2.5インチストレージスロットのカートリッジを取り出すことができなかった。製品版では問題なく取り出せるとのことなので,購入した場合は,一度「取り出せるかどうか」を確認しておいたほうがいいかもしれない。

 さて,ここからは「真似をするとメーカー保証が切れる」範囲の話になる。4Gamer,そして筆者としては,レビュー記事という立場から分解を進めるが,本稿の内容を参考に分解を行う場合は,くれぐれも自己責任でお願いしたい。
 というわけで,まずは分厚い天板部を取り外してみる。
 すでに述べたとおり,Vortex G65 6QD SLIは底面吸気&上面排気仕様なのだが,それがゆえに,天板部のすぐ下には,大型のブロワーファンがある。

筐体最上部に大型のブロワーファンを搭載。これで熱の排気を行う
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 外した状態で中を除くと内部構造が見えてくるのだが,まさにヒートシンクの塊といった感じだ。上から見て中央に電源ユニットがあり,手前側の2つがGPU冷却用,奥(=本体背面側)が見える黒いユニットが電源ユニット,手前2つの大型ヒートシンクがGPU冷却用,奥側(本体背面に当たる側)に見える大型のヒートシンクはCPU用となる。

ブロワーファンを外して上から覗くと,ヒートシンクの塊といった印象を受ける。中央の黒いユニットが電源で,手前にくの字型に取り付けられているのがGPU用,奥側の大型のヒートシンクがCPU冷却用だ
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背面パネルを開いたところ
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 背面側のパネルを取り外すと,CPU用のパッシブヒートシンクが載った基板全体が見えるようになる。先ほど紹介したSO-DIMMスロットもここだ。
 また,本体底面側に,チップセットの載った基板があるのも見て取れよう。Vortex G65 6QD SLIにおいて,いわゆるマザーボードの機能は,CPUの載った基板と,この底面基板で実現しているという理解でよさそうだ。

ヒートシンクを外すと,CPUソケットや6+2+1フェーズ構成に見える電源部,そしてメモリスロットといった,たいへん“マザーボード感”のある基板が姿を見せる
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搭載するCPUは自作PC市場でもお馴染みの「Core i7-6700K」(左)。右は底面の基板に寄ったところで,「Intel Z170」チップセットの姿を確認できる。CPUとメモリモジュールの差さった基板とは,専用のカードエッジコネクタ経由で接続されている
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 一方,電源を挟んでくの字型に並んでいる基板体前面には,Mini PCI Express x16スロットの載った基板があり,そこにGTX 960のMXM(Mobile PCI Express Module)が差さっている。常識的に考えて,上位モデルであるVortex G65 6QF SLIにはGTX 980のMXMが差さっているのだろう。次世代GPUが登場したときにも換装しやすい設計と言える。

本体前面側にある2枚の基板(の片方)でパッシブヒートシンクを取り外したところ。MXMに載ったGTX 960と,MXM上のメモリチップと電源部を覆うヒートシンク,そしてそのヒートシンクを封止するシールが見える
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 今回はMXM自体も取り外してみたが,MXMに載るGPU上の刻印は「N16E-GT-A1」なので,素直に解釈するならノートPC向けの「GeForce GTX 970M」(以下,GTX 970M)ということになる。

取り外したMXM。搭載するGPU上の刻印はN16E-GT-A1だった
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 GTX 970Mは「GM204」ベースで10基の演算ユニット(=1280基のシェーダプロセッサ),192bitメモリインタフェースを統合するプロセッサだ。本来,デスクトップPC向けのGTX 960だと「GM206」ベースで8基の演算ユニット(=1024基のシェーダプロセッサ),128bitメモリインタフェースを統合するので,もうなんというか「全然GTX 960じゃない」のだが,スペック的にはGTX 970Mのほうが上なので,ユーザーとして大きな問題はないように思う。

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NVIDIAコントロールパネルの「システム情報」を見ると,GPU名はGTX 960なのだが,CUDA Core数は1280基,メモリインタフェースは192bitなので,どう見てもGTX 970Mだ。GPUのベースクロックが924MHz,メモリクロックが5010MHz相当というのもGTX 970Mと同じ
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グラフィックスメモリはSamsung Electronics製のGDDR5で,容量4Gbit(512MB),6000Mbps対応のチップが6枚でMXMあたり容量3GBだ。自己責任のオーバークロックに向け,メモリクロックのマージンはかなりあることになる

 主要なコンポーネントの構造は以上のとおりだが,直径約20センチの円筒にハイクラスのプロセッサを3基詰め込んだ根幹部分はとてもよくできていて,かつ,製造には相応に手間がかかる印象だ。システムビルダーの採用するODMメーカーが,一朝一夕に真似できるようなものではなく,この点はVortexシリーズの持つ大きな強みということになるだろう。

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 なお,電源ユニットには定格457Wという,GTX 960――というかGTX 970Mだが――を2基賄うことを考えると,まずまずという容量のものを搭載している。おそらく,GTX 980を2基搭載した上位モデルたるVortex G65 6QF SLIでは,より大きな容量の電源ユニットを採用しているのだろう。


ゲームはどれだけ動くのか。テストをセットアップ


 ここからは性能を見ていきたいと思うが,Vortex G65 6QD SLIが搭載するGPUはGTX 960とされる事実上のGTX 970Mだ。いくら2基搭載するといっても,ゲーマー向けPCとして突出した性能を期待できる構成ではない。
 なので,今回は比較対象機を用意せず,Vortex G65 6QD SLIが3Dゲームでどの程度の性能が期待できるのか十分な目安となるデータを取るに留めることにした。最新世代の3Dゲームタイトルをどの程度楽しめるか,ざっくりと調べようというわけである。

 長々とした分析や論評を加えることなく,ベンチマークの結果と目安を語っていくことにしたいと思う。

 パフォーマンスの検証に使用したのは,ベンチマークレギュレーション17.0から,「3DMark」「Far Cry 4」の2タイトルと,「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」公式ベンチマークソフト(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)。それに,次期レギュレーションとなる18世代で採用予定の「ARK: Survival Evolved」(以下,ARK)および「Fallout 4」「Project CARS」も追加した。
 いま挙げた3タイトルは,ベンチマークレギュレーション18.0におけるテスト方法がほぼ固まっているため,それに準じてテストを行っている。具体的なテスト方法はベンチマークの考察と合わせて個別に説明したい。

Predator XB1 XB281HKbmiprz
メーカー:Acer
問い合わせ先:日本エイサーカスタマーサービスセンター
実勢価格:8万2000〜9万円程度(※2016年4月27日現在)
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 なお今回のテストにあたっては,Acerの日本法人である日本エイサーから,G-SYNC対応で28インチ,解像度3840×2160ドット,TNパネル採用のゲーマー向け液晶ディスプレイ「Predator XB1 XB281HKbmiprz」の貸し出しを受けており,ゲームアプリケーションのテストにあたっては,これを使って,解像度1920×1080ドットおよび3840×2160ドットを選択している。
 本来であれば2560×1440ドット(もしくはそれに近い解像度)でもテストを行いたかったのだが,Predator XB1 XB281HKbmiprzを接続した状態だとテスト対象のゲームアプリケーションで同解像度を選択できないケースが多発したため,変則的な2パターンとなることをお断りしておきたい。

 なお,当然ながら,フレームレートに影響を与えてしまうG-SYNCはテストにあたって無効化している。用いるグラフィックスドライバは,テスト開始時点の公式最新版となる「GeForce 364.72 Driver」だ。


主要なタイトルを高画質の設定でフルHD解像度で楽しめる程度の性能を持つVortex G65 6QD SLI


 前述のとおり,Vortex G65 6QD SLIが搭載する2基のGPUはGTX 960とされる事実上のGTX 970Mなので,GTX 960とは異なる傾向のスコアが出る可能性が高い。とくに,メモリインタフェースがGTX 960の128bitに対してGTX 970Mでは192bitあるので,とくに高負荷環境におけるスコアはGTX 960の2-way SLI構成と比べて高くなる可能性が高い。
 それを踏まえてテスト結果を順に見ていこう。グラフ1は3DMark(Version 2.0.2067)の結果をまとめたものだ。4Gamerでは2015年2月28日掲載の記事でGTX 960の2-way SLIテスト結果をお伝えしている。当時とはシステムもドライバソフトウェアも3DMarkのバージョンも異なるので,直接の比較にはまったく適さないのだが,それでも,当時のFire Strike Ultraスコアである1504と比較すると,今回の3167という総合スコアに,メモリインタフェースが大きく影響している気配は感じられよう。

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 グラフ2はFar Cry 4のテスト結果をまとめたものだ。
 ベンチマークレギュレーション17.0が規定する合格ラインは,最低限が平均40fps,欲を言えば平均60fpsだが,描画負荷の低いMEDIUMでは,3840×2160ドット条件でも最低限のラインをクリアした。1920×1080ドット条件ならULTRAプリセットでも“楽勝”である。

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 続くARKでは,シングルプレイでスタートして,移動開始の座標と時間を固定した状態からGodモード(=無敵モード)を使って一定の方角に1分間歩き続け,その平均フレームレートをFrapsで計測する形をとる。2回計測して,その平均をスコアとして採用する流れである。
 グラフィックス設定のプリセットは,「Low」と「High」の2パターン。平均フレームレート55fps以上が合格点というのが,レギュレーション18世代における指標となる。

 ……と,何ごともないかのように紹介したが,DirectX 11モードで動作するARKは現在のところ,マルチGPU動作をサポートしていない(関連リンク)。そのため,今回のテスト条件でプレイアブルなフレームレートを得られるのはLowプリセットの1920×1080ドット条件に限られる。Highではかなり厳しい感じだ。

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 Fallout 4では,「Shadow of Steel」というクエストで「ブラザーフッド・オブ・スティール」(BoS)の武装ヘリ「ベルチバード」に乗って移動シーンのフレームレートを,「Fraps」(Version 3.5.99)から1分間計測する。このシーンは,プレイヤーの操作が必要がなく,会敵もないためフレームレートのブレが起こりにくく,しかも描画負荷はそこそこ高い。このシーンのフレームレートを2回計測して平均値をスコアとして採用する。
 画質のプリセットは標準設定にあたる「中」と,高負荷設定に相当する「ウルトラ」を用いた。

 スコアの目安は,ひとまずの目標が平均40fps,快適さを求めるなら平均60fpsということになるが,Vortex G65 6QD SLIは,ここでも「中」なら3840×2160ドットで合格ライン超え。1920×1080ドットであればウルトラでも問題なしというスコアを出せている。

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 グラフ5はレギュレーション17.0準拠の蒼天のイシュガルドの結果となるが,ここでは「最高品質」の1920×1080ドットで,ハイエンド環境の合格ラインとなる「5桁のスコア,平均フレームレート80fps以上」をやすやすと上回ってきた。「標準設定」なら3840×2160ドットでも,スクウェア・エニックスの示す指標で上から2番めとなる「とても快適」の枠内(5000〜6999)へ収まっている点に注目したい。

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 3Dベンチマーク最後となるProject CARSでは,「Hockenheim GP」を「RWD P30 LMP1」で実際にレースへ参加したときのリプレイデータを再生し,そのフレームレートをFrapsを使って1分計測したうえで,2回の平均をスコアとして採用する。
 Project CARSでは「グラフィックス設定のプリセット」が存在しないため,下に示した,ゲームをインストールした直後の「PERFORMANCE」設定項目を「初期設定」,また,画質を大きく左右する9項目を最も高く指定した状態を「高負荷設定」とするので,この点はご注意を。

初期設定(上段)と高負荷設定(下段)のグラフィックス設定
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 事前検証で平均40fpsがあればプレイアブルだと判断できることを確認しているが,グラフ6を見ると,描画負荷の低い初期設定では3840×2160ドットで合格ラインを超えてきた。また,高負荷設定でも1920×1080ドットであればまったく問題ないレベルだ。

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 以上,3Dベンチマーク結果をざっくりまとめると,Vortex G65 6QD SLIは,1920×1080ドット解像度で,画質をがっつり上げて最新世代の3Dゲームをプレイできる程度の性能を確保している。今回のテスト条件では2560×1440ドットを設定できないケースが多かったが,設定できるタイトルであれば,2560×1440ドットでも「高いフレームレートと高いグラフィックス設定」を確保できる可能性は十分にあるだろう。

2基のドライブに対して「CrystalDiskMark」(Version 5.1.2)を実行してみた結果も掲載しておきたい。今回は,テスト回数を9回に設定した以外はデフォルトのまま実行した。スクリーンショットは,左がSuper Raid 4構成となるSSDアレイの結果,右が2.5インチHDDの結果である。PCI Express x4接続のSSD 2台によるRAID 0アレイはさすがに速い
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消費電力もまずまず優秀。動作音も低い


 最後に消費電力を調べた結果も掲載しておこう。いつものように,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」で,システム全体の消費電力を計測してみた。
 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,ディスプレイの電源がオフにならないよう設定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とする。

 結果はグラフ7のとおりだ。最大の消費電力を記録したのはFar Cry 4実行時で,236Wだった。457Wの電源ユニットの容量から考えると,余裕しゃくしゃくという感じである。ゲーム実行時のピーク消費電力が最大でも200W台前半というのは,ハイクラス〜ハイエンド級のデスクトップPCとしては魅力的な値だ。
 ARKでやたらと消費電力が低いのは,SLIが正常に機能していないからで,これは独立系タイトルを前にしたマルチGPU構成の宿命といったところか。

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 また,この消費電力からも推測できると思うが,ゲーム実行時の発熱や騒音も極めて低い。MSIによると騒音レベルはアイドル時に22dBA,高負荷時にも最大37dBA程度だそうだが,実際,ゲームを実行していても気になるような騒音が出ないのには感心させられた。


ユニークなスタイルのPCが発売されるのは歓迎だが,本命はPascal世代か


製品ボックス
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 というわけで,Vortex G65 6QD SLIを見てきた。円筒形というのは意外と場所を取るため「隙間に押し込んで使う」というわけにはいかなかったり,本体前面にインタフェースがなかったりと,導入のためのハードルは意外と高いというのが,偽らざる印象だ。

 また,GTX 970Mを2基搭載してBTO標準構成価格が32万9800円(税込)からというのは,次世代GPU「Pascal」(開発コードネーム)の足音が遠くに聞こえ始めたタイミングとしては,やはり厳しいという印象もある。付け加えるなら,上位製品となるVortex G65 6QF SLIの場合,ノートPC向けと思われるGTX 980を2基搭載してBTO標準構成は49万9800円(税込)だ。
 その意味で現行のVortexは,「デスクトップPC向けよりも単価の高いノートPC向けGPUを,一般的なデスクトップPCよりも圧倒的に小さな筐体に搭載してきた」というこの一点に価値を見出せる人向けということになるだろう。

 ただこれは,「Vortexシリーズの市場投入により,Pascal世代で,これまでにないデザインの小型&ハイスペックゲームPCを市場投入するための準備を,MSIがほぼ完了した」ことと同義でもある。(細かい動作検証を抜きにすれば)MXMをPascalベースのものに置き換えるだけで,MSIはPascal世代のVortexを投入できるからだ。おそらくMSIとしても,“主戦場”はPascal世代と考えているのではなかろうか。
 Pascal世代でどんな仕様のVortexが出てくるのか,今から楽しみである。

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MSIのVortex製品情報ページ

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