2016年1月14日,MSIの日本法人であるエムエスアイコンピュータージャパンは,都内にある同社会議室で,これから発売予定のゲーマー向けマザーボードに関する説明会を開催した。
今回,国内初お目見えとなったのは,「Intel X99」チップセットを搭載する「
X99A GODLIKE GAMING Carbon Edition」と,「Intel Z170」チップセットを搭載する「
Z170A GAMING PRO Carbon Edition」「
Z170A Krait Gaming 3X」の3モデル。いずれも,CES 2016でMSIが発表した製品だが,国内市場における登場時期など,新情報が得られたので,ここでまとめて紹介したい。
X99A GODLIKE GAMING Carbon Edition
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Z170A GAMING PRO Carbon Edition |
Z170A Krait Gaming 3X |
Carbon Editionとして登場した新世代マザーボード。ちなみにカーボンに見た目以外の“効能”はとくにないという
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ちなみにX99A GODLIKE GAMING Carbon EditionとZ170A GAMING PRO Carbon Editionは,MSIが新たに投入する製品シリーズ「
Carbon Edition」に属するモデルだ。ゲーマー向けマザーボードというと,黒地に赤というのが各社共通の意匠になって久しいが,Carbon Editionは,黒を基調とし,一部に薄手のカーボンプレートを貼ってあるというのが特徴となっている。
MSIによると,同社はユーザーからのフィードバックとして「
黒と赤のカラーリングに飽きた」という意見が多くあったため,ルックスの変更に踏み切ったとのことだ。
もう1枚のZ170A Krait Gaming 3Xは,
MSIが2016年8月4日に創業30周年を迎えることを記念した30周年記念モデルの第1弾となる製品だ。MSIは,今後,30周年記念モデルをいくつか投入する予定だという。
X99A GODLIKE GAMING Carbon Edition
X99A GODLIKE GAMING Carbon Editionは,従来製品「
X99A GODLIKE GAMING」の後継モデル的な位置付け。「基本的な仕様はX99A GODLIKE GAMINGを踏襲する」(エムエスアイコンピュータージャパン)が,いくつかの仕様変更が入る。
X99A GODLIKE GAMING Carbon Editionの特徴がまとまったスライド。新要素は順に紹介したい
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X99A GODLIKE GAMINGは,PCI Express x16スロットの物理的な強度を高め,重いグラフィックスカードに耐えられるようにすると同時に,EMIシールド効果によってノイズ耐性も高めてあるという「Steel Armor」を搭載していたのが記憶に新しいが,Carbon Editionでは,そんなSteel Armorを,DDR4メモリスロットにも搭載してきた。
オーバークロック用メモリモジュールなどでは,大きなヒートシンクが装着された製品も珍しくないが,そういった重量級メモリモジュールの重さに耐えられるようにし,また,高クロック動作のためノイズに弱いDDR4メモリを,EMIシールドで保護するようになっているそうだ。
なお,メモリ周りの配線をほかと隔離し,性能と安定性の向上を図る「DDR4 Boost」は,変わらず採用する。
また,興味深いのは,2016年半ばのリリースが見込まれている次世代LGA2011-v3 CPU「
Broadwell-E」(開発コードネーム)への最適化と,それに向けたメモリチューニングが施してあるとされている点だ。既存のMSI製Intel X99マザーボードもBroadwell-Eには対応するが,最適化やチューニングまで入っているのは,今回のCarbon Editionが初になるという。
CPUソケットが,LGA2011互換ながらピン数が25本多い「Turbo Socket」なのは,X99A GODLIKE GAMINGと同じで,オーバークロック関連のチューニングにもとくに変更はないとのことだった。
こちらが「別の資料」。写真で示したスライドだと発光パターンは16なのだが,こちらだと8になっていた
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もう1つ,一部の人には重要なアップデートとして挙げられるのが,X99A GODLIKE GAMINGならではのLEDイルミネーションである。埋め込まれたLED合計25個の色を約好きに設定できるのはこれまでと同じながら,設定できるエフェクトの数は8から16に増えているという。ただし,別の資料には8パターンと書かれていたりもするので,このあたりは最終製品の登場を待って確認する必要があるかもしれない。
基本仕様はX99A GODLIKE GAMINGを踏襲するので,Type-AとType-CのUSB 3.1ポートを1基ずつ搭載する点や,チップレベルで129dBのS/N比を実現したESS Technology製D/Aコンバータ「SABRE9018AQ2M」に代表される豪奢なアナログサウンド段と6.3mm標準ヘッドフォン出力端子からなる「Audio Boost 3 PRO」,有線LAN×2と無線LAN×1を併用して通信環境の最適化を図る「Killer DoubleShot X3 Pro」を搭載する点は変わらない。Nahimic製のオーディオプロセッサソフトウェアによってバーチャルサラウンドサウンド出力などに対応するのも変わらずだ
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X99A GODLIKE GAMING Carbon Editionは,2月下旬から3月にかけて店頭に並ぶ予定とのこと。合わせて,本製品と組み合わせて4-way SLIを実現するためのブリッジコネクタも今四半期中にリリースとなる予定で,さらに,提供時期未定ながら,グラフィックスカードの重さを支える“つっかえ棒”的な製品の市場投入計画もあるとのことだった。
サイドファン付きの4-way SLIブリッジコネクタ(左)と,つっかえ棒的な製品「Graphics Card Jack」(右)
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Z170A GAMING PRO Carbon Edition
Z170A GAMING PRO Carbon Editionは,従来製品「
Z170A GAMING PRO」のマイナーチェンジ版という位置づけのマザーボードで,こちらも見た目が黒くなっただけでなく,ユーザーやメディアからのフィードバックを基にした仕様変更がいくつか入っている。
Z170A GAMING PRO Carbon Editionの新要素一覧。本文では触れないが,USB 3.1(Gen.1)対応のフロントパネル用ポート(≒ヘッダピン)の数は2から4に増え,USB 2.0サポートが6から8へ増えたのもトピックといえる
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機能面から見ていくと,Z170A GAMING PROではPCI Express x16
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2,PCI Express x1
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3,PCI
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1となっていたスロット構成が,PCI Express x16
×
2,PCI Express x1
×
4となり,PCIスロットがなくなった。
また,Z170A GAMING PROでマザーボードに対して垂直に“生えて”いたSerial ATAポートはマザーボードの縁で横を向く格好に変更され,さらに,USB 3.1(Gen.2)のポートは従来のType-A
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2からType-A,Type-C各1へ変更となった。
Carbon EditionでSerial ATAやUSB周りにアップデートが入った。なお,SATA Expressポートは依然として基板に対し垂直となっている
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ただ実のところ,今挙げた3つの変更点は,いずれもZ170A GAMING PROの上位モデルとなる「
Z170A GAMING M5」と同じだ。Carbon Editionとなるついでに,上位モデルの仕様を積極的に採用し,1グレード上がったようなマザーボードだといえるかもしれない。
また,Z170A GAMING PROでは外部I/Oインタフェースの反対側に帯状のLEDイルミネーション部が埋め込まれていたのに対し,Z170 PRO GAMING Carbon Editionでは,基板の配線を模したものに変わっている。色や光り方を変えられる「Mystic Light」機能も,従来は8色,8パターンだったのが,今回は約1650万色,16パターンと,その選択肢が大きく広がった。
Intel製有線LANコントローラを搭載する点や,PCI Express x16スロットにSteel Armorを装備する点,DDR4 Boostを採用する点など,そのほかの仕様はZ170A GAMING PROを踏襲するとのこと。発売は1月22日の予定で,価格は21800円(税別)になる見込みだそうだ。
Z170A Krait Gaming 3X
冒頭で紹介したとおり,MSI創業30周年記念モデル第1弾となるZ170A Krait Gaming 3Xだが,こちらはカーボン非採用。「Krait」シリーズの最新モデルらしく,黒地に白いアクセントを施した外観になっている。
ベースモデルとなる「Z170A Krait Gaming」がZ170A GAMING PROの黒白モデル的な存在だったこともあってか,Z170A Krait Gaming 3Xの変更点は(Carbon EditionかKraitかという部分,そしてLEDイルミネーション周りを除けば)Z170 PRO GAMING Carbon Editionとまったく同じだ。
30周年記念モデルながら,とくに数量限定ということもないとのこと。こちらは今四半期中,「遅くとも2月末には」(エムエスアイコンピュータージャパン)店頭に並ぶ見通しという。
なお,30周年記念モデルのマザーボードとしては,金色の基板が特徴的な「Intel B150」チップセット搭載マザーボード「
B150M Gaming 3X」も用意しているMSIだが,こちらは「正直,昔の黄土色をしたマザーボードと何が違うのか分からない」(エムエスアイコンピュータージャパン)など,さまざまな理由により,日本市場で発売になるかはまだ決まっていないそうだ。
いずせにせよ,MSIは今後も記念モデルをさまざまな形で用意していくそうなので,自作派ゲーマー諸兄諸姉は要注目といえるだろう。