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「FORIS FS2735」レビュー。144Hz・2560×1440ドットのIPS液晶搭載で圧倒的に多機能なEIZO製ディスプレイが持つ実力に迫る
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印刷2015/12/23 00:00

レビュー

圧倒的に高スペック&高価格なディスプレイの実力に迫る

FORIS FS2735

Text by 米田 聡


FORIS FS2735
メーカー:EIZO
問い合わせ先:EIZOコンタクトセンター
実勢価格:13万5000〜15万円程度(※2015年12月23日現在)
FORIS
 ゲーマー向けディスプレイは久しくTN液晶パネルの独擅場だったが,垂直リフレッシュレート144Hzに対応したIPS液晶パネルの出荷が始まってからは,画質と高速リフレッシュレートを併せ持つ製品が,高価格帯に登場してきている。今回取り上げるのは,そんな「IPS&144Hz」対応液晶ディスプレイの1つであり,AMDが推進するディスプレイ同期技術「FreeSync」にも対応するEIZO製品「FORIS FS2735」(以下,FS2735)だ。

 FS2735は,ディスプレイパネルそのもののスペックが高いだけでなく,AndroidおよびiOSスマートフォンからディスプレイ設定を変更できるアプリとして12月4日にリリースされた「G-Ignition Mobile」(Gイグニションモバイル)からもディスプレイ設定を行えたり,暗部だけでなく高輝度状態における視認性も改善する機能を搭載したりと,周辺の強化も目立つ。では,そんな高スペック&高機能ディスプレイは,13万5000〜15万円程度という実勢価格(※2015年12月23日現在)に見合う投資といえるのだろうか。4GamerではEIZOから製品版を入手できたので,徹底的に検証してみたいと思う。

 長くなるので,覚悟して読み進めてほしい。


組み立てやすく,必要十分の機能を持った筐体。額縁周りのすっきりしたデザインに注目


 テストに先立って,まずは外回りをチェックしてみよう。
 製品ボックスから取り出したFORIS FS2735は,本体とスタンド台座の2ピース仕様となっている。正確を期せば,スタンド脚部を外すと100×100mm仕様のVESAマウントを露出できるようになっているから3ピース仕様なのだが,普通に組み立てるだけならスタンド脚部を外したり付けたりする必要はない。

FORIS
製品ボックスの内容物一式。本体とスタンド脚部は取り付け済みだ。そのほか付属品は,赤いケーブルバンドと,電源,USB 3.0,DisplayPortのケーブル計3本
FORIS
本体とスタンド脚部を取り外したところ。100×100mm仕様のVESAマウントが姿を見せる。ディスプレイアームに取り付けたい場合も安心だ

FORIS
 スタンド台座は,よくあるネジ式ではなく,ステンレスの板バネを用いたロック機構となっていた。4か所あるツメを合わせてロック側に回せば簡単にロックできる。一方,取り外すときは,底面に見える黒い樹脂製のノブ凸部の先端を引き上げるとロックが外れ,簡単に外せるようになっている。

取り付けるときは,左のように軽くツメの場所を合わせてから,時計回りにスタンド台座を回せばOK。右が固定できた状態だ。取り外すときは凸型の樹脂製の黒いノブの先端を上に引き上げてロックを外し,スタンド台座を反時計回りに回せばいい
FORIS FORIS

本体中央,赤いラインとスタンド脚部の間にある凹みは,持つときに役立つ取っ手。これがかなり便利だったりする
FORIS
 取り付けた状態の背面は,EIZOロゴと赤いラインが目を惹くものとなっている。FPSゲーマー向けディスプレイ「FORIS FG2421」ほどは尖っていないながらも,相応に目立つシルエットになっていると述べてよさそうだ。
 最後にケーブルを配線したら,赤いリング状のケーブルホルダーをスタンド脚部に取り付けて束ねてやれば,組み立て完了である。

最近のFORISではお馴染みのケーブルホルダー。どう使うかは自由なので,使いやすいようにまとめてみよう。なお,ちょっと分かりにくいが,写真右端には2系統のUSB 3.0ポートがある
FORIS FORIS

接続インタフェース群
FORIS
 なお,ビデオ入力端子はDisplayPort 1.2×1,Dual-Link DVI-D×1,HDMI 1.4(Type A)×2の4系統で,アナログ入力は非対応。別途,USB(Type-B)×1と,アナログのサウンドライン入出力も備える。
 HDMI入力で対応できるのは,解像度1920×1080ドット時に垂直リフレッシュレート120Hz,2560×1440ドット時に60Hz。144Hzに対応できるのはDisplayPort接続時と,解像度1920×1080ドットのDVI接続時のみだ。

FS2735は2chのステレオスピーカーを内蔵するが(左),その音質は「100円ショップのラジオの音」だ。せいぜい「音が鳴っているのを確認できて便利」程度なので,ビデオとサウンドを同時にFS2735へ入力するときは,本体向かって左側面のヘッドフォン出力端子か,ライン出力端子経由で外部機器へサウンドを出力すべきだろう
FORIS FORIS

 組み立て後のサイズは横幅が約630mmと,かなり抑えられているが,これはFS2735が狭額縁仕様だからだ。額縁の幅は実測約6mm。しかも本体正面側にはボタン類がないので,正面からの見た目はとてもすっきりしている。

額縁のサイズは実測約6mm(左)。額縁部には3つのLEDインジケータとEIZOロゴだけというシンプルなデザインだ(右)
FORIS FORIS

縦表示させたところ,下側をスタンド台座を密着させたときの高さは机上から天頂部まで実測約675mmだった。幅は同363mmとなる
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 高さは,机上から頂点までの高さを実測約390〜510mmの範囲で,無段階に調整可能。最も低い状態と最も高い状態との間には120mmもの違いがあるわけで,試してみると,一般的なディスプレイと比べてかなり調整の幅が広く感じる。

 ちなみに,高さ調整の幅の柔軟性を生かして……かどうかは分からないが,FS2735は画面の左右90度縦回転をサポートしている。

高さ調整の幅はこんな感じ
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 チルト(前後回転)は−5〜35度に対応。脚部の途中にヒンジが組み込まれており,折れ曲がり方がユニークだ。ヒンジの位置を画面中央より下に配置にしたことで,一般的なディスプレイ製品よりも,上向きの角度を大きく調整できるようになった。ただ,ここまで大きく傾ける必要があるかというと,正直,疑問も残った。

 それ以上に気になったのは,画面サイズに比べて台座が小さい点で,サイズが210(W)×200(D)mmしかないこともあり,画面を縦回転させたりチルトさせたりするとき,FS2735はスタンド台座ごと動いてしまいやすい。なので,本体を倒してしまわないよう,注意する必要が出てくる。
 これは,スイーベル(左右回転)機能を持たないにもかかわらず,台座ごと左右回転しやすいのと同義だったりもするのだが,個人的には,もう少し安心感のあるスタンド台座のほうがよかったように思う。

角度調節のヒンジが低い位置にあるため,上向き方向により大きく傾けられる。ただ,あまり角度調節しやすい仕組みとはいえないのが残念なところか
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本体背面側のOSD操作系。写真左から電源,少し離れて「コントロールボタン」と呼ばれるスティック兼ボタン,「カラーモード切替ボタン」「入力信号切替ボタン」である
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 ところで,先ほど「額縁にはボタンがない」と紹介したが,いわゆるOSD操作系は本体向かって背面右手寄りのところにまとまっている。前面から手探りでも使いやすいよう,1つは上下左右に操作できるスティック兼用ボタンになっているのだが,その隣にあるボタンを“誤爆”しやすかったりして,お世辞にも使いやすいとは言いがたい。とくに,最初の一押しが悲惨で,「コントロールボタンの押下でOSDメニューを出そうとして電源を切ってしまう」誤操作が頻発した。
 物理的なボタンではなく,G-Ignition Mobileなどを使う前提だから,最低限の操作性を確保できればそれでいいということなのだろう。


画質に妥協はなく,発色は極めて良好。新機能も使う価値がある


 FS2735がIPSパネルを搭載するというのは冒頭で紹介済みだが,その表面加工はノングレア(非光沢)である。ただ,普通よりキメの細かいノングレア処理のためかどうか,ノングレア処理にありがちな,斜めから見たときに生じる画面の白っぽさは抑えられており,「ハーフグレア」と称しても通りそうなほどになっている。
 視野角は上下左右178,コントラスト比は1000:1,輝度は350cd/m2,中間調(gray-to-gray)の応答速度は4msというスペック。応答性で不利なIPSパネルなので仕方ないといえばそれまでながら,応答速度はゲーマー向けモデルとして最速レベルではない。

 実際に画面を見ると,発色は極めて良好で,とかく画質面には妥協が見られる一般的なゲーマー向けディスプレイとは格の違いを感じる。EIZOによれば,FS2735では機能追加のためにASIC(≒カスタムチップ)を刷新しており,結果,画質が従来のFORISと比べても向上しているそうなのだが,映り込みを抑えながらも色味をスポイルしない仕上げになっていて,色の乗りが非常にいい。

暗闇で液晶パネルの品質をチェックしたところ。視野角178度のIPSパネルらしい発色がどの角度からも確認できる。ノングレア加工にありがちな,斜めから見た時の白っぽさも抑えられているのは見どころだ
FORIS FORIS FORIS

 ディスプレイの各種調整は,OSDメニュー,そして冒頭でも紹介したG-Ignition Mobileのほか,PC上で動作するソフトウェア「G-Ignition」を使っても行える。「OSDメニューから設定できて,G-Ignition MobileおよびG-Ignitionからは行えない設定」は,後述するBluetooth関連を除けば,普段まず使わないものばかりなので,基本的にはG-Ignition MobileおよびG-Ignitionから行うことになるだろう。
 G-Ignition MobileはGoogle PlayもしくはApp Store,G-IgnitionはEIZOのサポートサイトからダウンロードできる。

G-Ignition MobileをGoogle Playで入手する

G-Ignition MobileをApp Storeで入手する

G-IgnitionをEIZOのサポートページで入手する


 というわけでここからしばらくはPC用ユーティリティであるG-Ignitionを使って,各種設定をチェックしていきたいと思う。G-Ignitionは,付属のUSB 3.0ケーブルでPCとFS2735を接続した状態でインストールすれば,常駐し,利用できるようになる。

G-Ignition初回起動時のウインドウ。ちなみにG-Ignitionは,原稿執筆時点の最新版となるバージョン3.0でFS2735に対応した
FORIS

カラーモード選択のプルダウンメニュー
FORIS
 FS2735は画質のプリセット用に「カラーモード」を備えており,メイン画面のプルダウンメニューで好みのカラーモードを選択できる。いずれのカラーモードでも選択後に[カラー調整]ボタンをクリックすると,現在のカラーモードをカスタマイズできる仕様だ。
 カラーモードは,ユーザーが自由にカスタマイズできる「User1モード」〜「User6モード」,ゲーム用とされる「Gameモード」,動画観賞用の「Cinemaモード」,標準色空間であるsRGBに調整された「Web/sRGBモード」,目の疲れを抑えるとされる「Paperモード」の合計10個で,フルカスタマイズに対応するのはUser1モードからUser6モードの6個である。

左はGameモード,右はUser1モードの,それぞれカラー調整メニュー。EIZOによるプリセットとなるGameモードではRGB各色のゲイン(≒強度)の調整がグレーアウトしているのに対し,User1モードでは全項目をカスタマイズ可能だ
FORIS FORIS

ガンマ調整のプルダウンメニュー
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 カラー調整のメニューでは,コントラストや色合いといった一般的な設定に加え,色温度は4000Kから10000Kまで100K刻み,ガンマ値は1.6から2.8まで0.1刻みで設定できるほか,プリセットとしての「RTS」「FPS」「sRGB」「Paper「Power」も選択可能だ。
 ちなみに,色温度やガンマをここまで広く細かな単位で設定ができるディスプレイは,ゲーマー向けモデルはもちろんのこと,一般ユーザー向けモデルでもあまりない。実際,EIZOによれば,同社のカラーマネジメント対応ディスプレイシリーズであるColorEdgeでもまだ対応できていないとのことで,FS2735で新ASICを搭載する効果はこんなところにも出ているわけだ。
 ハードウェアキャリブレーションに対応していないのを除けば,プロ用ディスプレイに匹敵する性能を持つとEIZOは胸を張っていたが,確かにこの設定項目を見ると,納得する部分がある。

 それはともかく,本稿ではゲーマー向けの新機能を押さえておくことにしよう。まずは,新しくなった「Smart Insight」からだ。
 おさらいがてら紹介しておくと,従来のSmart Insightは,暗部の視認性を高める機能だった。これ自体は,名称や,微妙な効果の違いこそあれ,他社のゲーマー向けディスプレイでもよく搭載されているので,それほど珍しいものではない。

 ただ,暗部の視認性を高める機能に共通する難点として,「効果を有効化すると,暗部は確かに見やすくなるものの,明るいシーンだと白っぽく靄がかかったようになり,かつ,輝度が高い部分だと白飛びして,何が表示されているのか分からなくなることがある」という弊害も発生することがある。
 その実例として,先にBenQ製のゲーマー向け24インチディスプレイで,4Gamerの(新しい)リファレンス機である「XL2430T」が持つ暗部視認性改善機能「Black eQualizer」を「代表的な例」として,先に見ておくことにしたい。

 下に示したのは,PlayStation 4(以下,PS4)用タイトル「Bloodborne」を実行し,「ヨセフカの診療所」内の暗いシーンをXL2430Tで表示させたところだ。
 ここでは,Black eQualizerのレベルを「0」,つまり無効にした状態と,Black eQualizerのレベルを12――画像モード「FPS」のデフォルト値――設定した画面を並べてあるが,Black eQualizerを有効化すると,確かに暗部の視認性が向上しているのが分かる。

XL2430Tで,BloodborneにおけるBlack eQualizerの効果を確認したところ。ここではディスプレイをカメラで撮影している(以下同)
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 効果は見事といったところだが,これが明るいシーンになってくると事情が変わってくる。
 今度はPC板「Fallout 4」を使うが,ここでは,ダイナミックレンジ拡張やカラー調整を行うMOD「Realistic Lights Shadows and Color Overhaul」を導入し,High Dynamic Range(HDR)風の画面になるよう変更のうえ,XL2430TのBlack eQualizer無効時と有効時で比較してみることにした。それが下の写真で,もともと十分に明るいシーンが,Black eQualizerを12に設定すると,コントラストが失われ,全体に靄がかかったような絵になってしまった。これが一般的な「暗部視認向上機能の難点」というわけだ。

XL2430Tで,Fallout 4におけるBlack eQualizerの効果を確認したところ。左がBlack eQualizerを0に設定して無効化したところ,右が12に設定して効果を最大化したところとなる
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G-Ignitionのカラー調整メニューにある「彩度拡張」のスライダーが,白飛び抑制機能のものとなる
 この問題に対策するため,EIZOが行ったのが,新世代Smart Insight「Smart Insight Demolition」(スマートインサイトデモリション)の導入である。Smart Insight Demolitionでは,EIZOの産業用ディスプレイで採用済みの,「監視カメラなどで撮影した映像で靄がかかっているところをはっきり見せる機能」である「Defog」をゲーム用に流用。それによって彩度を調整し,白飛びを抑えているとのことなので,かなり本格的だ。

 では,実際の効果を見てみることにしよう。ここでは,先ほどBlack eQualizerで問題が生じたFallout 4の例を使ってみる。

 FS2735では,Smart Insightの強度として,プルダウンメニューから「オフ」と「1」から「5」の6段階で設定できる。また,彩度拡張はスライダーで「オフ」および「1」から「10」の11段階で設定可能となっている。なのでまずは,彩度拡張をオフに指定のうえ,Smart Insightの設定値を変化させた状態の写真を下のとおり並べてみた。
 Smart Insightの暗部視認性向上は先のBlack eQualizerに比べると抑えめながら,強度を上げていくとBlack eQualizerと同じように白っぽくなっていくのが見て取れよう。

左から順にSmart Insightの設定オフ,1,2,3,4,5。XL2430TのBlack eQualizerほど極端ではないものの,設定値を上げると輝度の高い部分が白飛びする
※いずれも画像をクリックすると写真全体を表示します
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 以上を踏まえ,続いてはSmart Insightを5に固定のまま,彩度拡張のスライダーを動かしてみた。11枚の画像をずらずら並べるのも逆に分かりにくそうなので,ここでは1,3,5,7,10と変化させた様子を下に並べてみている。
 強度を上げていくと,彩度が変更されて徐々に色が濃くなっていき,白飛びしていた岩や空の色合いが戻ってくることが確認できる。一方で,彩度拡張の値を上げすぎると,色がキツくなっていくのも分かる。

Smart Insightの設定を5にした状態で,左から順に彩度拡張設定を1,3,5,7,10と切り替えていったところ。(彩度拡張の値を上げても暗部視認性はほとんど損なわれないことがわかる。ただし,やりすぎると色がキツくなる
※いずれも画像をクリックすると写真全体を表示します
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 もっとも,「彩度拡張を行ったら暗部の視認性が低下する」のでは本末転倒だ。そこで,Bloodborneを用い,Smart Insightと彩度拡張を組み合わせて,さまざまに設定を行ってみた。その結果が下の写真群だが,彩度拡張を行っても暗部視認性は損なわれていない。しかし,彩度拡張の値を大きくしすぎると,ここでも色が変わってくるので,やはり加減が必要になってくる。

左から順に,彩度拡張をオフのまま,Smart Insightの設定をオフ,1,2,3,4,5。と切り替えていったものSmart Insightはオフから1に切り替えるだけで効果が得られ,1から5の間は効果がゆるやかに変わる設定になっていた
※いずれも画像をクリックすると写真全体を表示します
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Smart Insight設定を5のまま,彩度拡張を13,5,7,10と切り替えている。彩度拡張の値を上げても暗部視認性はほとんど損なわれない。ただし,やりすぎるとやはり色がキツくなる
※いずれも画像をクリックすると写真全体を表示します
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 以上のテストから,Smart Insightと彩度拡張を適切に調整すれば,暗い部分は見やすく,明るいシーンでも白飛びを抑えられる設定を実現できそうだ。同時に,彩度拡張をやりすぎると画面全体の色合いが変わってしまうので,Smart Insightと彩度拡張の強度バランスは,うまく取る必要がある。
 いずれにせよ,いまやゲーマー向けディスプレイでは当たり前になってきている暗部の視認性向上機能を,Smart Insight Demolitionがさらに一歩進化させたとはいえそうである。

 続いて,同じく画質関連の機能である,見かけ上の解像度を引き上げる超解像技術「Smart Resolution」の効果も,ここで簡単にチェックしておきたい。
 Smart Resolution自体はEIZOの従来製品でも普通に採用されているのだが,今回取り上げるのは,GameモードにおいてSmart Resolutionが標準で有効化されているためだ。おそらくは,FS2735のパネル解像度が2560×1440ドットで,据え置き型ゲーム機に代表される,解像度1920×1080ドットのゲーム画面を表示させたときに,ドットバイドット表示にならず,引き伸ばし処理が入るために,その対策として有効にしてあるのだと思う。ならば,どれだけ効果があるかどうかを確認しておこうというわけである。

 Smart Resolutionの設定は,スライダーから「オフ」もしくは「1」〜「5」の合計6段階。ここでは,Fallout 4の画面を1920×1080ドットで出力し,それに対してSmart Resolutionの設定を変更しながら撮影してみることにした。
 その結果が下に並べた写真で,サムネイルではその一部を拡大してあるため,必要に応じて拡大画像も見てもらえればと思うが,蔦やテクスチャの細部に注目するとSmart Resolutionの強度と効果の関係がよく分かる。個人的にはエッジエンハンスメント全開な強調画像はあまり好みではないが,オフと1の間にかなりの違いがあるのは確かなので,1920×1080ドットの映像をフルスクリーンで表示するときは,おまじない的に1や2で有効化しておくのも手ではなかろうか。

左から順にSmart Resolutiontの設定オフ,1,2,3,4,5。2560×1440ドット解像度のパネルに1920×1080ドットを出力しているため,Smart Resolutionオフでは多少のボケ感があるのに対し,Smart Resolutionを有効化するとその改善を図ることができた。ただし,設定値を上げ過ぎると輪郭が強調されすぎて不自然になる
※いずれも画像をクリックすると写真全体を表示します
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 もう1つ,FS2735は,垂直リフレッシュレート120Hz以上かつ解像度1920×1080ドット設定時,1フレームおきに黒フレームを挿入することで映像の動きをシャープに見せる「ブラーリダクション」も搭載している。
 ただ実のところこれは,FORIS FG2421が搭載して話題を集めた「Turbo240」と基本的に同じものだ。あえていえば,FG2735では最大リフレッシュレートが144Hzなので“Turbo288”相当といえるが,効果も基本的には変わっていないので,本稿ではその存在だけ触れておく次第である。具体的な効果を知りたい場合は,FORIS FG2421のレビュー記事を参照してもらえればと思う。なお,一応付記しておくと,FreeSyncとの併用はできない。

※お詫びと訂正
 初出時,ブラーリダクションについて,「FS2735では,パネル解像度2560×1440ドット表示時には使えない」と説明していましたが,これは誤りです。お詫びして訂正いたします。


 FS2735自体の機能ではなく,G-Ignition側の機能として,2015年10月に「G-Ignition Drive」が追加されたことも,ここで紹介しておく必要があるだろう。
 G-Ignition Mobileは,簡単にいえば,カスタマイズしたカラー調整設定を世界中のFORISユーザーと共有できる機能だ。自分で特定のゲーム向けによい設定ができたと思ったらEIZOが運営するクラウドサーバーへアップロードしたり,逆に,EIZOが提供している,もしくは世界中のユーザーがアップロードした設定をダウンロードしてインポートしたりすることができるようになっている。一般的なゲーマー向けディスプレイだと,同じディスプレイでも個体ごとに色味が微妙に異なるというのはよくある話なので,出荷時に色味が調整されているFORISシリーズだからこそできる芸当といえるかもしれない。

G-Ignitionのトップメニュー(再掲)。Gameモード選択時は暗くなって選択できない
FORIS
 G-Ignitionのトップメニューにある[インポート][エクスポート]の両ボタンは,カラーモードのUser1モード〜User6モードを選択したときのみ有効になる。そのとき,ちらかをクリックすると,専用のメニューへ入れる仕掛けだ。
 初回のみ,クラウドサーバーを使うためのアカウント登録が必要だが,メールアドレスとニックネーム,パスワードを登録するだけなので,とくに面倒はないだろう。
 ちなみに,インポートするだけであれば,アカウントの登録は必要ない。

初回はゲストアカウントでのログインとなるので,右上にあるアイコンをクリックして「新規登録」(左)。右は新規登録用のダイアログだ。ここに必要事項を登録するだけでOK
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 インポートは,User1モードからUser6モードのうち,「現在メイン画面で選択されているカラーモード」に,クラウドサーバー上にある設定データを上書きするものだ。
 トップ画面で[インポート]ボタンをクリックすると下の画面が現れる。その左ペインでタイトルを選択すると,そのタイトル向けにクラウド上で公開されている設定データが右ペインに並ぶので,そこから良さそうな設定をクリックして,さらに[インポート]ボタンをクリック。すると,現在のカラーモードにその設定が上書きされるという流れになる。

右欄でタイトルを選んで左欄でインポートしたいデータを選択する。ここで示したDragon Age: Inquisition用の設定は筆者がテスト的にエクスポートしてみたものだ。筆者しかエクスポートしていなかったので,右上ペインには1個しか表示されていない
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 一方,User1モードからUser6モードのうち,「現在メイン画面で選択されているカラーモード」の設定内容をクラウドサーバー側へアップロードするのがエクスポートだ。エクスポートは簡単で,トップ画面から[エクスポート]をクリックすると現れる下の画面に,対象となるタイトル名とコメントを記し,この画面にある[エクスポート]ボタンをクリックするだけである。

 クラウドサーバーへアップロードというと抵抗があるかもしれないが,「一般公開する」のチェックを外しておけば,誰にも公開しない個人的な設定としてG-Ignition Driveに置いておけるので,その点は安心(?)だろう。
 今後,EIZOは,提携しているプロゲーマーがカスタマイズしたカラーモードを増やしていくと予告しているので,FS2735を購入したら,定期的にチェックしてみるといいかもしれない。

「Fallout 4用に設定した内容」をエクスポートしようとしているところ。エクスポートにあたっては,ゲームタイトル名とコメントの入力が必須だ。「一般公開する」のチェックボックスは標準ではオンだが,チェックを外すと個人的な設定データとしてG-Ignition Driveに保存できる
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 なお,以前からG-Ignitionに実装されていた,ゲームタイトルとカラーモードを紐付けて,ゲームを実行すると自動的にカラーモードが切り替わるようにする「オートカラー」や,キーボードショートカットでカラーモードを切り替えたりできるようにする「ホットキー」は,もちろんFS2735でも利用できたので,念のため付記しておきたい。

オートカラーとホットキーは健在。ディスプレイの電源オン/オフすらホットキーで行えるのは,さりげなく便利だ
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G-Ignition Mobileは「フルスクリーンでのゲームプレイ時におけるディスプレイ設定変更」を可能にする


 以上,ねちねちとG-Ignitionとそこでできることをお伝えしてきたが,G-Ignition Mobileは,いま紹介した機能のすべてをAndroidもしくはiOSスマートフォンから利用できるようにするものという理解でいい。試した限り,Androidタブレットでも利用できたので,iPadでも利用は可能だろう。

OSDメニューのBluetooth関連項目。これだけはG-Ignitionになかった
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 FS2735とスマートフォンの接続はBluetoothだが,前段で述べた「G-Ignitionで行えない唯一の設定」が,このBluetoothペアリングである。しかも,不親切なことに,工場出荷時点ではBluetooth機能が無効化されており,さらにその説明はどこにもない。これには閉口したが,結論からいえば,OSDメニューの「Bluetooth」から「Bluetooth機能」を「オン」とし,「ペアリング」を選ぶことになる。選ぶと,OSDの表示が切り替わるので,それに従ってペアリングを行えばOKだ。

OSDメニューからペアリングを選択すると,デバイス名とパスコードが表示されるので,スマートフォン側から探索してペアリングを行うことになる。完了すると「完了しました」と表示されるので,すぐ分かるだろう。その右に受話アイコンのようなマークが出ているが,これについては後ほど触れたい
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Androidスマートフォンからペアリングしようとしている例。FS2735側のBluetooth機能さえオンにしてしまえば,難しいことは何もない
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 ともあれ,Bluetoothでペアリングすると,スマートフォンがFS2735のリモコンになる。PC上で動作するG-Ignitionの場合,マウス操作でさくさくと設定を変更できるメリットがある一方,フルスクリーンでのゲームプレイ中には設定を微調整できないというデメリットがあるのに対し,G-Ignition Mobileでは,いつでもディスプレイ設定を変更できるのが強みだ。まずG-Ignitionで大枠を設定のうえ,実際にゲームをプレイしながら,それこそ前述したSmart Insightや彩度拡張の設定値などをG-Ignition Mobileで微調整していくというのが,うまい使い方になるのではないかと思う。

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Android版(左)とiOS版(右)のG-Ignition Mobileメイン画面
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着信通知用アイコンが表示されたところ
 Android版でもiOS版でもユーザーインタフェースは基本的に同じで,メイン画面の最上段中央部に並んだアイコンは左から設定,インポート,エクスポート,スマートフォン連携。スマートフォン連携というのは,FS2735とペアリングしたスマートフォンに通知が入ると,そのアイコンを表示するというもので,ゲーム中に電話が鳴ったり,LINEのメッセージが届いたりしたとき,視覚的に把握できるようになっている。

 どの通知を画面に表示させるかを設定するのが,いま紹介したスマートフォン連携機能用アイコンで,これをタップすることによって設定画面を呼び出せる。
 「モニターへの転送」で,連携機能の有効/無効を切り替えられるようになっており,その下には,スマートフォンにインストールされているアプリのうち,通知に対応したアプリが並ぶ。ここでアイコンを選択しておけば,通知がFS2735の画面に表示されるという仕掛けである。
 ただ,初期設定ではなんでもかんでも通知するようになっていて,正直,そのままにしておくとかなりうざったい。必要でないものは片っ端から無効化することを強く勧めたい。

スマートフォン連携の設定画面(左)。列挙されたアプリを選択すると,通知用アイコンを設定可能だ(※駐車禁止の標識を左右反転させたようなグレーのアイコンを設定すると,当該アプリの通知を無効化できる)。EIZOによると,今後,このアイコンは増やす予定があるそうで,2016年の早いタイミングで,往年のナムコ製ゲームタイトルのキャラクターなどを配信する予定があるという
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メイン画面で[カラー調整]ボタンをタップすると,ディスプレイ側のカラー調整データがスマートフォンへダウンロードされるのだが,それには若干の時間がかかる
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 さて,カラー調整も含め,できることはG-Ignitionと同じと述べたが,1点だけ,G-Ignitionとは異なることがある。それは,Bluetooth経由のデータ伝送となるため,読み出しや書き込みに若干の時間がかかることだ。

 また,Androidスマートフォンに限っては,操作に対するラグも少なからず発生する。iPhoneの場合,G-Ignition Mobile側の操作とディスプレイ側の反応にラグはほとんどないのだが,Androidスマートフォンの場合,コンマ数秒〜数秒のラグが発生してしまうのだ。しかも製品によっては,ラグは一定ではなく,同じ操作でもバラついてしまい,けっこうストレスが溜まる。

iPhone 6をペアリングした状態。ここでは輝度を調整しているが,指でスライダーを操作すると,それに反応してほぼリアルタイムでディスプレイ側の輝度が変化する。ちなみに,筆者手持ちのAndroidスマートフォン「Xperia Z4 SO-03G」でも,iPhone 6ほどではないが,不満はないレベルで快適だった。ただ,「Xperia A SO-04E」だと,我慢できないとまでは言わないが,かなりもっさりした反応になっていた
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 EIZOによると,この違いは,搭載するBluetoothコントローラ(やドライバソフトウェア)の出来不出来が原因で生じているという。iPhoneは優秀なBluetoothコントローラを搭載しているが,Androidスマートフォンの場合,製品によってバラバラであり,ハイエンドのコントローラを搭載している場合は若干のラグで済むのに対し,そうでないコントローラを搭載した端末だと,かなり遅れるケースがあるとのことだった。
 どのAndroidスマートフォンなら快適,というデータはまだ揃っていないようだが,仮に判明したとしても,G-Ignition Mobileのためにスマートフォンを買い換えるというのは現実的でない。Androidスマートフォンを使っている人は,この点,覚悟が必要なので,憶えておいてほしい。

G-Ignition Mobileでやるかという疑問も残るが,インポートやエクスポートも問題なく行える
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「IPSならではのもっさり感」は残るが,それ以外の速度性能は優秀


 ここからは速度性能のテストに入っていきたい。
 公式の内部遅延は「0.05フレーム未満」で,リフレッシュレート144Hz時には0.35ms未満という数値が公開されているFS2735の表示遅延や液晶の応答速度をチェックしてみよう。

 すでに軽く触れているとおり,今回,ディスプレイのリファレンス機を,24インチ,解像度1920×1080ドットで垂直リフレッシュレート144Hz対応のBenQ製品であるXL2430Tへ変更している。解像度こそFS2735と異なるものの,144Hz設定時の遅延比較が可能になった。なのでテストは,DVI対応のGefen製DVIスプリッタ「1:2 DVI DL Splitter」(型番:EXT-DVI-142DL)を用いて,グラフィックスカードからの出力を分配して行うことになる(※)。

※1:2 DVI DL Splitterはその仕様上,対応できる垂直リフレッシュレートは解像度を問わず最大85Hzなのだが,今回のテストでは1920×1080ドット144Hzに対応できてしまった。
 その理由だが,このスプリッタは,2つの出力ポートのうち1番側に接続したディスプレイのEDID(Extended Display Identification Data)をPC側に送る仕様だ。PCのグラフィックスカードは,1番側に接続したディスプレイの仕様に従った映像信号を送り出す。そのため,1番側に接続したディスプレイの機種によって,スプリットできるリフレッシュレートが変わるという現象が起こることが実験を通して分かってきた。今回はXL2430Tを1番側に接続することによって,144Hzのリフレッシュレートを問題なくスプリットすることができた,というわけだ。
 なお,余談めいた話になるが,1:2 DVI DL SplitterはDual-Link DVI-D対応なので,スペック的には330MHzのドットクロックに対応できる。1920×1080ドットで垂直リフレッシュレート144MHzの場合,要求するドットクロックは360MHz近いので,仕様上は足りていないのだが,動作マージンでなんとか持っているということなのかもしれない。

 いずれにしても,できてしまったのはラッキーということで,垂直リフレッシュレート144Hz環境における表示遅延(内部遅延ともいう)を見てみよう。今回はテストツールとして,144Hz表示に対応できる「RefreshRateMultitool」を利用した。

 RefreshRateMultitoolは,任意の数のグリッドを画面に表示させ,グリッドをリフレッシュレートと同期しながら反転させていくツールだ。今回は,そんなRefreshRateMultitoolの表示を,ソニー製のハイスピード撮影対応コンパクトデジタルカメラ「RX100IV」から960fpsで撮影する。

 FS2735はSmart Insight,Smart Resolutionともに無効化し,液晶パネルの応答速度を向上させるオーバードライブのみを,最も強い選択肢である「強」に変更した。
 なぜオーバードライブのみ変更したのか,先回りして説明しておくと,FS2735は,TNパネルを搭載するXL2430Tと比べ,液晶パネルの応答速度が遅いためだ。FS2735側のオーバードライブは強のほかに「普通」「オフ」があるが,これらを選択すると,応答速度差ばかりが目立ってしまい,肝心の表示遅延が分かりにくくなる。事前検証で,オーバードライブの強度を変えても表示遅延に影響はないことを確認済みだが,むしろ普通やオフを選択してしまうと,応答速度の問題でFS2735がやたら遅く見えてしまうので,強を選ばざるを得なかったともいえる。

 一方,比較対象となるXL2430Tでは,画像モードを「FPS1」とし,スルーモードにあたる「インスタントモード」をオン,オーバードライブにあたる「AMA」(Advanced Motion Accelerator)を「高」に設定した。これまでリファレンス機として使ってきた「XL2410T」と同じ,表示遅延の少ない設定にしてあるという理解でいい。

 その結果が下のムービーだ。左がFS2735,右がXL2430Tで,いずれも画面には12×12のマスが並び,白反転したマスが,左上から右下へとリフレッシュレートに合わせて移動していく。言い換えると,左上から右下へ白反転のマスが移動するのに1秒かかっているわけだ。撮影は960fpsで行っているため,1フレームあたりの時間は約1.06msとなる。
 結果のムービーでは,どうしてもFS2735側の液晶応答速度――液晶が白に変わり,そして黒に戻るまでの時間の遅さ――が目立ってしまうのだが,コマ送りしていくと,隣のマスがオン(白)に切り替わるフレーム自体は,FS2735とXL2430Tで変わらないのを確認できる。表示遅延はXL2430Tと同等か,違いがあるとしても筆者の環境では測定限界以下となる1.06ms以下の差しかなさそうだ。


 同じ設定で,Smart InsightとSmart Resolutionが表示遅延に与える影響を見てみたものが下のムービーだ。ムービーは「Smart Insight設定を5」「Smart Insight設定を5,彩度拡張を10」「Smart Insight設定を5,彩度拡張を10,Smart Resolution設定を5」の3パターンをまとめたものだが,画像処理を入れても表示遅延に影響がないのが分かるだろう。このあたりはさすが,画像処理系を自社開発できる強みといったところか。


 さて,順番は前後するが,表示遅延のテストで「目立つ」と述べた応答速度も確認しておく必要がありそうだ。
 FS2735が搭載する液晶パネルの中間色応答速度は4msで,IPS液晶パネル搭載モデルとしては決して遅いわけではないものの,TN液晶パネルを採用するゲーマー向けディスプレイたるXL2430Tは,最も短くなる設定時に1msだ。これが,先ほど強に設定したオーバードライブ設定を変更することで,どう変わるかを,やはり960fpsの高速撮影で比較してみることにしよう。

 下に示したムービーは,User1モードの初期設定で,オーバードライブのみをオフ,普通,強と変化させたものだ。
 テストのツールにはEIZOがユーザー向けに公開している「Motion Blur Checker(Beta)」を利用。テストパターンをドット単位で横スクロールさせて,ディスプレイの一部を近接撮影しているが,テストパターンのスクロールに伴う応答が,オフより普通,普通より強といった具合に改善しているのが分かる。
 その効果はあまり顕著なものではなく,その代わり,強に設定してもあまり不自然な映像にならないのも見どころだ。オーバードライブ機能を強く適用しすぎると,不自然な輪郭が表れるなど,副作用の出る製品も多いが,FS2735でその心配は無用だ。なので,ゲーム用途では基本「強で固定」でいいように思う。


 ちなみに下のムービーは,XL2340Tで応答速度が1msになるよう,「AMA」を「高」に設定のうえ,やはり960fps撮影したものだが,横スクロール時の応答のシャープさはFS2735を圧倒している。液晶の応答速度を求める場合は,依然としてTN型液晶パネルに強みがあることを思い知らされる結果だ。


 というわけで,FS2735の表示遅延はゲーマー向けディスプレイとして十分に小さい一方,応答速度はTN型の高速パネルには及ばないという,当たり前といえば当たり前の結果となった。応答速度は画質とのトレードオフみたいなものなので,この部分は致し方なしといったところだろうか。少なくとも,FS2735を「究極のゲーマー向けディスプレイ」的に紹介している例があれば,眉に唾を付けたほうがいいのは確かだ。


FreeSync対応は柔軟ながら,Radeon Softwareが出た今や,設定変更の必要はない


一種のメンテナンスメニューといえる管理者設定。ここにFreeSyncの設定変更機能がある
FORIS
 冒頭でも触れたとおり,FS2735はFreeSyncに対応しているのだが,FS2735のFreeSync対応には1つ,面白い試みが見られる。
 FreeSyncは常に変化するゲームのフレームレートにディスプレイのリフレッシュレートを同期させる技術となるため,FreeSync対応ディスプレイが対応できるリフレッシュレートには,ある程度の幅がある。そしてFS2735の場合,その幅は標準では56〜144Hzなのだが,この設定を変更できるようになっているのだ。
 設定項目は隠し機能になっており,FS2735の電源をいったんオフにしてから,コントロールボタンを上に倒しながら電源ボタンを押して,「管理者設定」を開くと,その下の「信号フォーマット」から選択できるようになっている。

 信号フォーマットは標準のものも含め,以下の4つから選択可能だ。

  • FreeSync(高):FreeSync対応かつ対応リフレッシュレート56〜144Hz(※標準)
  • FreeSync(低):FreeSync対応かつ対応リフレッシュレート35〜90Hz
  • DisplayPort 1.2:DisplayPort 1.2に変更(FreeSync非対応)
  • DisplayPort 1.1:DisplayPort 1.1に変更(FreeSync非対応)

 「DisplayPort 1.2」と「DisplayPort 1.1」は互換性のための選択肢で,初期状態のDisplayPort 1.2aで不具合が生じるときのための設定である。普通は使わないと考えていい。
 FreeSyncの動作に影響を与えるのは「FreeSync(高)」と「FreeSync(低)」で,後者を選択することで,FreeSyncによるリフレッシュレートの範囲を35〜90Hzと低めにシフトできる。

 EIZOによると,これは,FreeSyncに対応するRadeonで以前,「ゲームのフレームレートが,FreeSyncで規定されるリフレッシュレートの下限を下回ると,表示上の不具合が生じる」問題があったため,それに対処すべく用意したものだそうだ。
 しかし,AMDは,グラフィックスドライバ「Radeon Software Crimson Edition 15.11」で「Low Framerate Compensation」という機能を実装し,問題をドライバレベルで解決した。したがって,これからFS2735を購入するユーザーがFreeSync(低)設定を選択する必要はまずないだろう。

STRIX-R9FURY-DC3-4G-GAMING
3連ファン仕様の大型クーラーを搭載する,OC仕様のR9 Fury
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:テックウインド(販売代理店) info@tekwind.co.jp
実勢価格:8万4000〜9万円程度(※2015年12月23日現在)
FORIS
 では,本当にFreeSync(高)のままで大丈夫なのか。今回は「Radeon R9 Fury」搭載のASUSTeK Computer製グラフィックスカード「STRIX-R9FURY-DC3-4G-GAMING」を用い,テスト開始時点の最新版である「Radeon Software Crimson Edition 15.11.1」を導入して,実際の挙動を確認してみよう。

 テストには「Project CARS」のリプレイ機能を使う。レースゲームだけに画面の動きが大きく,FreeSyncの効果が分かりやすいためだ。また,Project CARSは,アンチエイリアシングの設定を変更することによって,描画負荷,ひいてはターゲットとするフレームレートをかなり自由に変えられるため,フレームレートが可変するテストには最適と考えたというのもある。

 というわけで,下に示したムービーは,Radeon SettingsからFreeSyncを有効化のうえで,Project CARSのアンチエイリアシング設定を変更するこで,100fps前後,50fps前後,25fps前後とターゲットのフレームレートを変更しながら,やはり960fpsの高速撮影を行った結果である。どのテスト条件でも,FreeSyncが有効に機能し,画面のがたつきやテアリングが抑えられていることを確認できると思う。
 とくに注目したいのは,フレームレートがFreeSync(高)の最低リフレッシュレートである56Hzを若干割り込んだ50fps前後と,大きく下回る25fps前後のときの結果で,とくに違和感が残る描写にはなっていない。スムーズさが保たれており,確かにFreeSync(低)設定をわざわざ選ぶ必要はなさそうだ。


 念のためFreeSync(低)設定も試してみたのだが,むしろ,操作上の面倒が増えた印象だった。
 まず,FS2735の管理者設定メニューで「FreeSync(低)」に切り替えても,Windows側(もっというとRadeonのドライバ側)では接続されているディスプレイを144Hz対応ディスプレイと認識する。そのため,ゲームのディスプレイ設定でも「2560×1440ドット/144Hz」の選択が可能だ。

 だが,この状態でゲームを開始すると,フレームレートが低く抑えられてしまう。下のビデオは,Project CARSで100fps前後のフレームレートが得られる設定にしたうえで,FreeSync(低)に切り替えて実行している様子だ。本来であればFreeSync(低)の上限である90fpsに抑えられるべきフレームレートが,72fpsで抑えられてしまった。


Radeon Softwareで「ディスプレイ」を開き,「AMD FreeSync」にカーソルを合わせると,接続されているFreeSync対応ディスプレイが対応するりフレッシュレートの範囲が表示される。これはFS2735側でFreeSync(低)に設定したときのものだが,下限のリフレッシュレートは正しいものの,上限のリフレッシュレートは90Hzになっていない。この認識問題が,ドライバ側の制限というわけである
FORIS
 EIZOによると,これはRadeon SoftwareがFS2735のFreeSync(低)設定における最高リフレッシュレートを90Hzと正しく認識できていないことが原因だという。FreeSync(低)設定時は,ゲーム側のリフレッシュレート設定を90Hzに切り替えることで,上限の90fpsを得られるようになるそうだ。

 ただ,そこまでするメリットは,正直なところ感じない。Radeon Softwareを導入する限り,基本的にはFreeSync(高)のままで構わないはずだ。どうしてもトラブルが出たときだけFreeSync(低)の導入を検討する,くらいに理解しておくのがいいと思われる。


最高速ではないが,最高レベルの画質と性能,機能を実現した,ゲーマー向けの万能ディスプレイ


FORIS
 予告どおり長々とFS2735を見てきたが,EIZOの謳い文句どおり,見るべき要素の非常に多いディスプレイだった。
 まず,解像度2560×1440ドットIPS液晶パネルを搭載することで,ゲームに留まらない使い勝手のよさを確保。そのうえで,垂直リフレッシュレート144Hz対応で,いわゆるヌルヌル表示に対応し,G-IgnitionとG-Ignition Mobileからゲーム用の設定を簡単にカスタマイズできるようにし,画質設定をカスタマイズしても表示遅延はまったく影響を受けないようにし,さらにRadeonと組み合わせればFreeSyncも利用できたりできるのだから,完成度は非常に高い。

 個人的には,そのなかでも画質と,G-Ignition Mobileが白眉と感じた。プロ用ディスプレイと遜色がないとされる画質は,目を奪われるほどで,とくに,FalloutでHDR表示を有効化したときは,FS2735で見てからXL2430Tを見るとがっかりするくらい,見栄えには違いがある。
 また,フルスクリーンでのゲーム中でも簡単に画質設定の微調整を行えるG-Ignition Mobileは,使って初めて便利さが分かる機能だと思う。

 ゲーマー向けディスプレイとして不満があるとすれば,応答速度がTNパネルには及ばないという,IPSパネルの持つ宿命と,「現状,モジュールを搭載するしかない」という不便さをEIZOが避けた結果,NVIDIA独自のディスプレイ同期技術「G-SYNC」に対応せず,日本で大多数を占めるGeForceユーザーがFreeSyncの恩恵を受けられないことくらいだろうか。

FORIS
 FS2735は,最高速のゲーマー向けディスプレイではないが,高解像度の高速パネルと,最高レベルの画質と機能を持ったディスプレイである。13万5000〜15万円程度(※2015年12月23日現在)という実勢価格なので,さすがに万人向けとはいわないが,解像度2560×1440ドットで垂直リフレッシュレート120fps超級,かつ画質のよいゲーマー向けディスプレイを探しているのであれば,買って後悔することはないと述べておきたい。一度購入すれば,長く使っていけるはずだ。

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EIZOのFS2735製品情報ページ

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