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「World of Tanks」の世界大会「The Grand Finals 2016」熱戦に沸いた現地の模様をレポート。Wargaming.netの主要人物達が語る今後のe-Sports展望も
アメリカやEU,アジア,そしてロシアなど,世界各地で行われた予選リーグ「Wargaming.net League」の2015-2016シーズンを勝ち抜いた12チームが集い,世界一の座を争った決勝大会。本稿では,今年で3回めを迎えた世界大会の模様と,同社のCEOであるVictor Kislyi氏や,e-Sports部門の中心人物であるMohamed Fadl氏,Alexey Kuznetsov氏に,本大会や今後のe-Sportsの展望などを聞いたインタビューを合わせてお伝えする。
なお,各試合はTwitch.tvやニコニコ動画にて生中継も行われ,ニコニコ動画では初日の模様が16日23:59まで,2日めが17日23:59まで視聴可能だ。世界のトッププレイヤー達の激闘が気になる人は,本稿と合わせてこちらもチェックしておこう。
「World of Tanks」公式サイト
「The Grand Finals 2016 グループリーグ」
ニコニコ生放送視聴ページ(タイムシフト)
「The Grand Finals 2016 決勝大会」
ニコニコ生放送視聴ページ(タイムシフト)
NATUS VINCEREとHELLRAISERSの対戦で
開幕したグループリーグ
今回の会場に選ばれたのは,前大会の会場であるExpo XXIの倍以上となる4000人近くが収容できるというTorwar Hall。e-Sportsの人気が高い同国とあって,平日の開催となった初日も,11:00に始まった開幕セレモニーの時点で多くの人で賑わいをみせていた。
大会初日に行われたのはグループリーグ戦だ。12チームが3チームずつの計4つのグループに分かれて戦い,各グループの上位2チーム,計8チームが翌日の決勝トーナメントへ進むこととなるのだが,その中で特に注目を集めたのが2014年大会を制した第1回王者NATUS VINCERE(以下,Na'Vi)と,2015年開催の第2回大会を制した前回王者HELLRAISERSという,CISの2チームが同組となったグループCだ。しかも同じグループになっただけではなく,その両チームの対戦が本大会の開幕戦となり,試合前から会場は熱気に包まれていた。
【出場チーム】
・ASIA AND PACIFIC REGION(アジア・大平洋地域)
EL GAMING / GOLD BASS
・CIS(ロシア及びCIS(独立国家共同体)各国)
NATUS VINCERE(Na'Vi) / NOT SO SERIOUS(NSS) / HELLRAISERS
・EUROPE(ヨーロッパ)
WOMBATS ON TANKS / TORNADO.ROX / KAZNA KRU
・AMERICAS(北米)
ECLIPSE / SIMP / RED CANIDS
・CHINA(中国)
YaTo GAMING
試合形式は7人編成の各チームによる「強襲戦 / 防御戦」(Attack / Defence)だ。両チームが攻撃側と防御側に分かれ,攻撃側は2か所ある敵陣地のうち1か所を確保すること,防御側は試合時間の10分の間,2か所ある陣地を守り抜くことがそれぞれの勝利条件で,もちろん敵チームを殲滅することでも勝利となる。このルールにおいて対戦し,グループリーグと決勝トーナメントは5勝先取,決勝は7勝することでチームの勝利が決定するのだ。
基本のルールは前大会とあまり変わらないが,使用できる車輌の上限がTier 10に引き上げられ,さらにThe Grand Finals 2016では,2016年3月に実装されたばかりの9.14アップデートが適用されるなどの大きな変更もあった。このあたりの変化にいかに対応した戦略や戦術を立て,それをチーム全体が理解して実践できるかが本大会の大きなポイントとなっていた。
その意味において,タイトル奪還を目指す第1回王者Na'Viは,グループリーグの時点から別格といった印象だった。注目の開幕戦となったHELLRAISERSとの1戦も,序盤はほぼ互角の戦いが続いていたものの,各プレイヤーがそれぞれの役割をしっかり理解し動いているNa'Viは,連携が不安定だったHELLRAISERSを“安定感”で差をつけて徐々にリードしていった。さらに軽戦車をスピンさせて壁に立てかけ,それを頑丈なTier10の重戦車でカバーして敵陣を占領するという,9.14アップデートならではの動きを使用した奇策も用いるなど,手堅さや安定感だけではなく,その戦術の幅広さも披露した。結果Na'Viは初戦を制し,2戦めのアジア代表GOLD BASSにも危なげなく勝利して,堂々1位の成績でCグループ突破を決めた。
YaTo GAMINGが残ったものの,残念ながら敗退となってしまった日本も属するアジアサーバーの代表2チーム。前大会で準優勝となったEL GAMINGは,9.14のアップデートについて「これまでにできなかった動きが増えたことにより,戦術や戦略の幅が広がった」とポジティブに受けとめられたが,それでもチームとしてはルール変更に対応しきれなかったと敗因を述べた。また,CISとEUのレベルの高さについて,その差を埋めるためにも,「アジアサーバー内だけではなく,もっと海外サーバーのチームと積極的に試合をしたい」と語った。
今後のe-Sports展開について,
Wargaming.netの主要人物達が語る
絶好調のNa'Viがこのまま王座を取り戻すのか,それとも前年王者のHELLRAISERSが連覇を果たすのか……はたまた本来の力を隠しているダークホースが突如登場するなんていうことも? そんな気になる本大会の結果は後半へ続く。ということで,本大会中に聞くことができたWargaming.netのCEO,Victor Kislyi(ビクター・キスリー)氏,e-Sports部門のAlexey Kuzbetsov(アレクセイ・クズベツォフ)氏,Mohamed Fadl(モハメド・ファダル)氏の3名の,本大会やe-Sportsの今後の展望についてのインタビューをお届けしよう。
年々大きくなっていくe-Sports全体の流れがあることはもちろん,「これまでの失敗や問題点に向き合い,解決に取り組んだ結果が,3年で大会をここまでの規模に成長させることができたと信じている」と語った同社のCEO,Kislyi氏。今後のさらなる発展のためにはプレイヤー数の拡大が重要とし,普通のプレイヤーとプロプレイヤーの垣根をなくし,誰でも各種大会に参加できる環境を作っていきたいという思いを述べた。
そのために,これまでゲーム外のWebサイトなどから登録が必要だった,The Grand FinalsにもつながるBronzeやSilverといったリーグ戦などの各種大会に,ゲームクライアント内から出場登録ができるようにする予定であることを明かした。また,e-Sportsの大会用に生まれた7vs.7という対戦方式だけではなく,実際のマルチプレイモードで親しまれている15vs.15のe-Sports大会の実施を考えているという。
e-Sportsに限らず,どんな人でも興味を持ったら気軽にトライできる道筋を作り上げるとともに,対抗意識や競争心,そして剣道や騎士道のような,概念としての“道”も育てたいと語ったKislyi氏。WoTともコラボを行っているアニメ「ガールズ&パンツァー」のような,WoTにおける“戦車道”が生まれるのであればとても楽しみなところだ。
次に話を聞いたのは,同社のe-Sportsの大会におけるゲームバランスの調整や大会ルールの作成を行う,Competitive Gamingのオフライン部門のヘッドを務めるKuzbetsov氏。Kislyi氏と同様,気軽に大会に参加できる環境づくりを重要と考えるKuzbetsov氏は,自分のレベルにあった大会を簡単に検索したり,そこから大会にエントリーできるという,「トーナメントマネジメントシステム」を作成中であることを明かした。Kislyi氏が予定として語ったことは,すでに実現するために動いていたのだ。
そして本大会について,9.14アップデートを採用した意図を聞くと,プロのプレイを通して新たな車輌の動かし方や戦術や戦略の立て方を見せたいという「本アップデートのお披露目をしたかった」と語った。そして,軽戦車を横倒しにして拠点を抑えるという,さっそくこの変更点を使用したNa'Viの奇策について,普通に思いつかない戦術をこの大舞台で披露してくれたことに満足しているようだった。今後,ゲームのバランスを崩してしまうような影響のあるものが出てしまった際はルール変更もあるかもしれないが,このような奇策を生み出してゲームを面白くしてくれることにはポジティブに受けとめているそうだ。
また,CISとEUが他サーバーより格段に上のレベルにある現状について聞くと,「もちろんこの問題は認識しており,良い解決方法も常に考えている」と語ったり,全体のレベルが追いつき並ぶために,前述のEL GAMINGが希望していたような対外試合を円滑に行える方法を考えていると述べた。e-Sports用の特別アカウントを提供するという具体的な方法も考えてはいるが,前述の「トーナメントマネジメントシステム」を活用してプレイヤーが自然に増え,レベルが向上していくことを理想に,良い環境作りに力を入れているそうだ。
最後にWoTをe-Sportsの一大タイトルとして,ここまでの規模に築き上げた功労者である,Competitive Gamingのグローバル部門ヘッドのFadl氏に,本大会と今後について聞いた。ルールに合わせた試合のゲームバランスやマップ作成,そして観客が見ていて楽しい試合にするという,あらゆるバランス調整が大変だったというTier10。そういった苦労の末,Tier10が導入できた2015-2016シーズンは,これまで以上に視聴者からの満足しているという声が届き,配信の視聴者数にもつながったことに「大きな達成感と誇りと感じている」と語った。
続いて,Kislyi氏が構想を語った15vs.15のe-Sports大会について「2017年の実現に向けて動いている」と,具体的にこのプロジェクトは進行していることを明かした。15人というプレイヤー数だと,チームを作成するための人数集めも大変ではという疑問を投げかけると,「もともと1つのクランには100人が所属しているので,その中から集めることは難しくないはず」と答え,また,1チームが人数が増えることで賞金額も上がるのではという質問には「もちろんスポンサーとも相談を進めているが,金額だけではなく実際に選手達に求められる形でのサポートも考えている」と,賞金以外にも得るものが大きい大会にしたいという思いがあるとのこと。
PS4版WoTや,「World of Tanks Briz」(PC / MAC / iOS / Android),そして「World of Warships」など,すべてのタイトルにe-Sportsの可能性があると信じているというFadl氏。最後に,「将来的にはオリンピックのような各タイトルのエリートが集まるような大きな大会を開きたい」という展望を笑顔で語り,インタビューを締めた。
会場ではプロプレイヤーに挑める試遊イベントが開催
プロプレイヤーによる「World of Warships」の対戦も
「誰もが気軽に大会に参加できるものに」という同社の取り組みは,すでに本会場でも行われていた。7vs.7のチーム戦という大会と同じルールでゲームが試遊できるPC版体験ブースでは,試遊参加者が実際にプロチーム達と対戦でき,さらに対戦後にアドバイスをもらったりディスカッションしたりする時間が設けられていた。筆者が見に行ったときは,ディスカッションはポーランド語で行われていたために,どのような会話をしていたのか分からなかったが,彼らの真摯に語り合う様子を見て“垣根をなくす”という取り組みは,少しずつながら現実に進んでいるように感じた。
プロプレイヤーと対戦できるとあり,常に長蛇の列ができていた試遊スペース |
試遊スペースの隣には,試遊スペースで行われているバトルをVRで観戦できるブースも |
また,2日めのメインステージでは,プロプレイヤー達によるWorld of Warshipsのエキシビションマッチも行われた。これも,今後のe-Sports展開のためのテストという面はもちろん,プロのプレイを通してゲームの面白さを知ってもらうことや,挑戦したいという気持ちを育てることにつながっているという。会場で観戦する際に,何が起きているか分かりづらいといった点もあったが,今後World of Warshipsがどのようにe-Sportsタイトルとして大きくなっていくかも注目だ。
ファイナルでもNa'Viは圧倒的な強さをみせる
決勝戦のラストラウンドは意外な結末に
そのNa'Viに決勝戦で対峙したのはHELLRAISERSだ。Na'Viと反してなかなか調子が上がらず,苦戦の多かったHELLRAISERSだったが,前年王者の意地をみせてここまでたどり着いたのだ。
決勝はとてもドラマに満ちた結末となった。速攻で敵陣を奪うなど2連勝を飾ったHELLRAISERSだったが,それでも崩れない冷静さを持ったNa'Viが得意のマップMINESなどで強さをみせ逆転。このまま開幕戦のようにNa'Viがリードした結末を迎えるかと思いきや,一度のインターバル明けからはHELLRAISERSの動きも冴えだし,6-6のイーブンまで持ち込んだ。
7勝めを掛けた最後の一戦はまさかの展開となる。試合開始4分の時点でHELLRAISERSが2台,Na'Viが1台と,HELLRAISERS数的優位に立ったのだが,その1分後に,高台に陣していたHELLRAISERSの1台が,後ろより詰め寄せてきたNa'Viの攻撃を避けようとした際にそのまま滑り落ち,岩場に挟まれて身動きが取れなくなってしまったのだ。数字の上では2vs.1でも,これにより実質1vs.1。制限時間も考え敵陣を占領しに向かったHELLRAISERSの“動ける方”だったが,ここでも冷静さを欠かなかったNa'Viが,木の中に隠れて陣地を占領している敵車輌に,遠距離射撃を一撃で決めて撃破。身動きのとれない1台を残したHELLRAISERSにとっては無情な時が流れ,試合終了時間を迎えて防衛成功となったNa'Viがチャンピオンに返り咲いた。
見ている人にとって分かりやすく楽しめるものにという意識を強く持ち,ここまでの規模に育て上げられた本大会。実際に子供連れの家族やカップル,女性だけのグループといったさまざまな観客が集まっていた会場を見て,すでにゲームファンのイベントという枠を超えているように感じた。WoTはもちろん,同社のゲームが今後どのようにe-Spotsという分野で広がりをみせ,そして大きくなっていくのか要注目だ。
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