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印刷2012/08/21 00:00

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[CEDEC 2012]自分の“得意”と“役割”を考えてみてください――カービィやスマブラの生みの親・桜井政博氏による基調講演「あなたはなぜゲームを作るのか」

 国内最大のゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC 2012が,パシフィコ横浜にて8月20日〜22日の間に開催されている。セッション数は実に209。いまや国内のみならず,世界屈指の規模のゲーム開発者カンファレンスとなったCEDECだが,その講演の開催初日,一番目の基調講演を行ったのは,「星のカービィ」「スマッシュブラザーズ」の生みの親として知られるゲームデザイナーの桜井政博氏だ。


 桜井氏といえば,上記の大人気シリーズを中心として,数々の名作を生み出してきたゲーム制作者。最近では「新・光神話 パルテナの鏡」を作り上げ,そして次回作として,「スマッシュブラザーズ」の最新作をバンダイナムコゲームスと共同で開発中であることがアナウンスされたのも記憶に新しい。
 桜井氏の前に挨拶をしたCEDECの会長・鵜之澤伸氏(バンダイナムコゲームス代表取締役)によれば,なんでも「スマッシュブラザーズ」の最新作を制作するにあたって,桜井氏は,まずオフィス(バンダイナムコ未来研究所)のすぐ側に家を引っ越してくるところから始めたそうで,鵜之澤氏も「彼は非常にこだわりをもってる男です」とコメント。妥協のない仕事ぶりでも有名な桜井氏だが,これはその徹底さの一端を感じさせるエピソードとも言え,とても興味深い。

 さて,桜井氏の今回の講演題名は,「あなたはなぜゲームを作るのか」というもの。日本屈指の……いや,世界屈指のゲームデザイナーの一人と言っても過言ではない桜井氏が,なぜこの時期にこういったテーマを選んだのか。桜井氏はCEDECへの出席もこれが初めてだったそうで,その意味でも開始前から内容に興味をそそられる講演であった。

 肝心の講演内容は,桜井氏自身のゲーム業界へ入る経緯とゲーム業界の歴史とをオーバーラップさせる形で進められ,序盤から中盤にかけては,ゲーム業界の歴史と,その時その時の桜井氏自身の話を,その後,次第に氏のゲームに対する考え方や,今回の本題である「なぜゲームを作るのか」にフォーカスしていく――といった内容となっていた。
 とくに後半は,桜井氏らしい非常に“味のある深い内容”で,幼少期よりさまざまなゲームに触れ,ゲームの発展と共に青春時代を過ごしてきた氏が,社会に出て行くにあたって“仕事”というものをどう捉えたのか。なぜゲームを作るという仕事を選んだのか。「仕事とは」「ゲームとは」,そしてそれらを「社会的役割」という観点から見た場合にどう見えるのか……などなど,聴衆に語りかけるような,いろいろと考えさせられる講演となっていた。


幼少〜少年期:画面の中のものを操作ができる感動


 簡単な挨拶を済ませたあと,桜井氏は,まず登壇の経緯を簡単に解説した。そもそも登壇依頼については,サイバーコネクトツーの松山 洋氏から「(CEDEC委員会の)圧倒的な支持を受けての登壇依頼だった」と聞かされたそうで,それに対して「いやいや,何をおっしゃいますやら……私の考えなんて,刊行されている『桜井政博のゲームを作って思うこと』を読めばだいたい分かるのではと思ったのですが」と冗談めかしながら振り返り,「しかし,せっかくの機会でしたので,ぜひ皆さんと一緒に楽しんでいければと思っています」と続けた。

 ただ,「とはいえ,お伝えしたいことがとくにあるわけではありません」とのことで,「皆さんゲームを作っていらっしゃる方々なので,みなさん独自に頑張ればそれでよいのだ,と私自身は思います」という。この辺りは,公の場で自身の考えをひけらかすことには控えめな桜井氏らしい発言だが,「それでも,なにかしら考えの一助になれば」と,登壇依頼を受けることにしたのだそうだ。
 また今回の講演は,あくまで「ゲーム制作者に向けたもの」だとのことで,その点を強調していたのもとても印象的。そこを汲んだうえで,今回の話の内容(メッセージ)を受け取ってほしいと念を押す。

 ともあれ,氏はこの講演を「私の人生はコンピュータゲームの成長と共にある」としながらゲーム業界を振り返り進めていったわけだが,当の桜井氏が生まれたのは1970年。幼年期,少年期を過ごすことになる1970年代というのは,ゲームが社会的/商業的に大きな一歩を踏み出した時代である。「PONG」(1973)のようなゲームを皮切りに,それが“一人遊び”ができるようになった「ブロックくずし」や,社会現象を巻き起こした「スペースインベーダー」(1978)などが登場。当時を振り返りながら桜井氏は,「画面の中のものを操作ができることに対する強烈な感動を覚えた」と語る。

 1980年代に入ると,携帯ゲーム機の「ゲーム&ウオッチ」(1980)が登場,そしてコンソールゲーム機の先駆けとなる「カセットビジョン」(1981)が発売されるなど,ゲームは一気に多様化の様相を見せ始める。この頃から,すでにアーケード,コンソール,携帯ゲームといったジャンルが未成熟ながらも生まれており,桜井氏は,「私の少年時代は,すでにいろいろなゲームに触れられる時代でもありました」と振り返る。
 また,各社がホームコンピュータを一斉に立ち上げたのも,この1980年の初頭だ。FM-8/FM-7,PC-8801/PC-6001,IBM PC,ぴゅう太などなど……,これらの単語でピンと来るのは例外なくオッサンだと思うが,その頃海外では,「Ultima」(1980)や「Wizardry」(1981)といった,コンピュータRPGの始祖にして雛形ともいえる作品が誕生している。まぁ,これも4Gamerの読者なら説明の必要はないだろう。

 そして1983年には「ファミリーコンピュータ」が発売される。その後のゲーム業界に決定的な影響をもたらした本機だが,当時,その登場を目の当たりした桜井氏も,「私の目から見ても,ファミリーコンピュータは圧倒的でした。映像も,音楽も,操作性も,そしてゲームの面白さも。すべてが揃っていました」という感想を抱いたそうだ。ファミリーコンピュータは,一部のマニアの嗜好品だったコンピュータゲームを,誰もが遊べる“一般的な遊び”にしたはじめての国産ゲーム機といっても,決して言い過ぎということはないだろう。
 桜井氏は「ファミリコンピュータはゲームの世界を大きく広げました。私も,これはヤバイと思って,貯金をはたいて買った記憶があります。もちろん,ボタンが四角い奴です(笑)」と当時を懐かしむ。
 一方,1983年といえば,PCゲームが大きな躍進を遂げ始めた年でもあった。「ドアドア」「ポートピア連続殺人事件」「信長の野望」などが相次いで発売されるなど,ゲームという分野で多彩なジャンルが花開き始めたのもこの頃だったのだ。

 1984年に入ると,桜井氏が「自分の進路に大きく影響を与えた」と言う,「ファミリーベーシック」が登場する。ファミリーベーシックとは,ファミコンにキーボードをつなげて簡易的なプログラム(2KBまで)が組めるというもの。高価なPCが買えなかった桜井氏は,これでファミコンとプログラムの基礎が学ぶことができたのだという。曰く,パラメーターなどを実際に入力しながら試していくことで,「どう設定すれば,動きにどう感情が出るのか。数字で決めていく鍛錬ができた」とのこと。
 子供時代にゲームがなかったゲーム制作者を“第一世代”とするならば,桜井氏は,幼少期からゲームを親しんできた“第二世代”とも言うべきクリエイターである。この世代(あるいはもう少し若い世代もだが)のクリエイターは,“ゲームを作るという遊び”をどこかしらで体験していることが少なくなく,雑誌を見ながらプログラムを組んでゲームを遊んでいたという人が非常に多い。ゲームを遊ぶ≒ゲームを作るだった世代の人達だ。桜井氏の場合は,それがファミリベーシックだった……というあたりは,なんとも趣深い話である。


少年〜青年期:お弁当だって,スタッフロールを出したら凄い人が関わっているに違いない


 1985年に入ると,ゲームはさらに大きな変化を迎える。ファミコンでは「スーパーマリオブラザーズ」が発売され,アーケードでは大型筐体ゲームが人気に。ゲームの情報を専門に扱う雑誌も,この頃から登場し始めた。ゲームというものを軸にして,大きな産業/文化が出来上がっていった過渡期の時代,とも言えるかもしれない。
 さらに1986年になると,当時は画期的だった「ディスクシステム」のソフトとして,「ゼルダの伝説」や「メトロイド」「悪魔城ドラキュラ」など,後々まで続くヒットシリーズの最初の作品が誕生。さらに国民的RPGとなった「ドラゴンクエスト」も1986年に発売されるなど,ゲームはその勢いをさらに増していくことになる。

 さて。一方で,その頃すでに15歳になっていた桜井氏は,進学を控えて自分の“進路”について考え始めていた。そしてその当時,氏がぼんやりと考えていたことは,

 「人は人の仕事によって生かされている」
 「その道のスペシャリストが世界を築いている」


ということだったという。……さすがというべきか,なんとも大人びた少年だと思うのは筆者だけだろうか。筆者が15歳の頃なんて……(以下略)。ともあれ,桜井氏はさらに,

 「例えばですが,コンビ二のご飯を一つとってみても,そこにどれだけの工数や技術や,あるいは工夫が詰め込まれているか分かりません。単純においしく作る努力もそうですが,何かを育てる人,運ぶ人,仮に昼食一膳を見て,関わっている人をスタッフロールにしてみたならば,おそらくは数百人,もしかしたら数千人の人が関わっているはずなんですよね」

と語りかける。“ご飯のスタッフロール”という切り口がなんとも面白いわけだが,同時に「それは確かに」と納得させられる視点でもあろう。氏は当時,「私たちの生活というのは,膨大な人の仕事の上に成り立っているのです。その恩恵を受けながら私たちは生きている。それぞれの専門家が特化することで,よりよい世界が作られている」と考えたのだという。そして「とにかく特化した方が有利だ」と考えた桜井氏は,5年制の高等専門学校に入学を決める。いやはや,筆者が……(以下略)。


青年〜社会人:早く実践の場に進みたい!


 桜井氏が高校時代を過ごした,1987〜1988年前後は“群雄割拠”とでも言うべき時代だった。
 次世代の表現力を持った「PCエンジン」(1987)や「メガドライブ」(1988)が相次いで発売され,ファミコンでは「ドラゴンクエストIII」(1988)が社会現象とも言える空前の大ヒットを記録した。さらに1989年には,これまた大ヒットを記録する「ゲームボーイ」が登場。翌1990年には,ファミコンの後継機「スーパーファミコン」が満を持して発売される。ファミコン発売からここまで,10年を待たずしてこの変化の起こりよう,改めて振り返ってみると凄まじいものがあるだろう。

 そんな状況のなか,「一刻も早く一端のエンジニアになって,早く実践の場に進みたい!」と考えていた桜井氏だったが,高専の授業のあり方には疑問を感じ,早々に普通高校に転入。この頃から,「自分はゲームを作れるのではないか」と思い始め,バイトをしながら(バイト代を注ぎ込んで)ゲームの研究に明け暮れる高校生活を続けていたそうだ。
 桜井氏は,

 「面白いつまらないは関係なくて,どんどん遊んで,楽しさが生まれる感触を体で感じることが重要だと思いました。ただ,アイデアメモみたいなものはとらなかったですね。血肉となること,呼吸をするように楽しさを感じることが重要だと考えていました」

と当時を振り返る。そして高校卒業後,HAL研究所にゲームデザイナーとして入社を果たす。
 なんと新卒でゲームデザイナーという職種の人材募集がかかっていた時代だ。桜井氏は「ラッキーでした。きっとバブルだったんでしょうね。入ってきたばかりの新人にいきなりディレクターを任せるようなことは,なかなか難しかったと思うんですが。ともかく,そのようなことが許されておりました」という。――ただ入社後,19歳で「星のカービィ」の企画書を書き,21〜22歳でゲームそのものを作り上げたというエピソードは,やはり“ラッキー”だけではあり得ない話だろう。



ゲーム業界人として:桜井氏の仕事の流儀


 さて。晴れてゲーム業界入りを果たした桜井氏は,ご存じのように,そこからさまざま有名タイトルの開発に携わる。
 講演では「ゲームデザイナーとディレクターの両方を務めた作品のみ紹介する」というスタンスだったのだが,それでも「星のカービィ」シリーズを筆頭に,「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズ,「メテオス」「そだてて!甲虫王者ムシキング」,そして「新・光神話 パルテナの鏡」など,そうそうたるタイトル名が並ぶあたり,やはり並の開発者ではない。さらに氏の凄いところは,関わった作品が“すべからく面白い”というところでもあるのだが,他にも,「名前を出してないが,監修などを務めた作品はたくさんあります」という。

 また,桜井氏が手がけるゲームの特徴的なところは,その時代時代の“時勢”ともいうべき世の中のニーズ/需要,あるいは「そもそものゲームの需要」といったことに立ち返り,それをゲームのシステムにキチンと落とし込んでる部分である。「星のカービィ」では,コアユーザー向けのゲームばかりになりつつあった当時のコンピュータゲームの流れに懸念を示し,徹底的に“ゲームの初心者”を見据えることで大きな成功を収めているし,「スマッシュブラザーズ」では,複雑化する格闘ゲームに一石を投じる「蓄積ダメージシステム」や,「画面外に飛び出すとミスになる」という,独自性の高いシステムを取り入れた。

 「スマッシュブラザーズを作っていた当時は,格闘ゲームが厳しくなりつつある時代でした。というのも,覚えたコンボを,ひたすら狙うような,非常に難しいゲームになっていたからです。とても初心者が入れる余地はありませんでした。それに,私はゲームはもっとアドリブ性に富むべきだと考えていました。だから,だったらダメージを食らうごとにリアクションを大きく変えたらいいんじゃないかと考えたのが,蓄積ダメージシステムの始まりなんですね」

 氏のゲームデザインの流儀は,これまでの発言(講演や書籍)を見る限り,非常にロジカルで,かつ丁寧な考察の積み重ねによるところが大きいと感じるわけだが,その“基本”ともいうべき考え方が,「リスクとリターン」の関係性である。これを桜井氏は「自分がゲームを作るうえで,もっとも重視している理論だ」という。
 簡単に説明すると,「リスクとリターンは表裏一体であるべき」という考え方で,桜井氏は,それぞれを以下のように定義している。

 リスク :プレイヤーに押し寄せる驚異や危険性
 リターン:その驚異を排除すること,もしくはその過程


これは例えば,スペースインベーダーを例にすると,

 ・自機も敵も,弾は正面にしか飛ばない
 ・敵を倒すには,敵に近づく(正面に捉える)必要がある
 ・つまり,近づくと弾があたってやられるリスクが増えるが
  一方で,こちらの弾が当たるリターンも増える

という話で,桜井氏は「リスクを冒してリターンを得る,この駆け引きこそがゲームの本質だ」という。ただ,「この話は,以前ほかの講演ですでにやっているので,今回はさらっと流しますが」として,軽く押さえる程度で済ませていたのが少し残念。まぁ,この手の話は,講演の最初に紹介していた氏の著書でも書かれているので,興味がある人は購入してみると良いかもしれない。また,氏は最後に,「こういう講演をしておいてなんですが,ゲーム性がゲームの楽しみのすべてではありません」「また,ゲーム性を上げると一般性が下がるという言説もありますが,そのあたりの結論は皆様にお任せします」と付け加えていた。

 ちなみにこの手の話題で筆者が印象に残っているのは,氏が過去に語っていた「ストリートファイター」の昇竜拳コマンドの話だ。敵の攻撃に対してリスクのある入力(ガードの反対……,つまり前方向から始まる操作)をさせる一方で,成功すると無敵という大きなリターンに与える仕様を,桜井氏はとても褒めていた。この解説は,個人的に膝を打つ思いだったのを記憶をしている。

※昇竜拳コマンド:623+パンチ


改めて「あなたはなぜゲームを作るのか」


 大まかなゲームの歴史,そして桜井氏の個人史を一通り解説し終えたあと,ここでようやく,今回のテーマである「あなたはなぜゲームを作るのか」に立ち戻った。なんだか随分と前振りが長かったような気がするが,むしろ本題はここからだ。
 桜井氏は,ゲームは“あくまで嗜好品である”としながらも,自分の好みでゲームは作っていないと語る。ゲームを作る動機にしても,「好きだから」や「人を楽しませたい」という気持ちよりも,「向いているから」や「得意だから」という感覚の方が大きいという。

 「自分自身で楽しみたいなら,もっとハードなゲームを作ります。そうでなければ、初心者向けの『星のカービィ』なんて作品は出て来ませんよね」
 「例えば,シューティングゲームにしたって,私自身は良い音楽に乗って弾を撃ってれば気持ちよい!と思っていますが,パルテナの鏡では,音声を盛り込んだり演出面を頑張っていたりします。それは,(多くの人に遊んでもらうために)私が必要だと思ったからです。なぜなら,そうすることが私の役割だからです」


 桜井氏は「きちん役割をもって(認識して)ゲームを作ることが大切だ」という。そして,「自分の社会的な役割が何か」を考えることが大切だと,聴衆に訴える。

 「こういう話をすると,ついつい『自分にそんな大それたものはない』と考えてしまいがちですが,そんなことはありません。そもそも,ここにいる方(来場者)はだいたいゲームを作っている方ですから,それはすなわち,普通の人にはないスキルも持っている(ゲームの)スペシャリストということです」

 社会的役割……というと大仰に聞こえるかもしれない。ただこれは,氏が先に話した「人は人の仕事によって生かされている」という話と合わせて考えると,非常にシンプルな話なのだと分かる。そもそも,人間社会における「仕事」とは,それがどんなものであっても,だいたいが「特化したもの」「切り出したもの」なのが常で,それはアルバイトの仕事でさえそういうものである。どんな分野でもあっても,仕事とは,スペシャリストがやることであり,同時に常に社会貢献なのだ。

 ただ,だからといって,何でも良いというわけでは,もちろんない。よりよい仕事をするために,言い換えれば,よりよく社会に貢献するためには,やはり“自分の特性”を生かした仕事をする方が好ましいのは確かだ。結局,じゃあ自分にできること,自分の特性,つまるところ「自分の役割」とはなんなのかという命題に立ち返るわけだが,このあたりは,もう人に教えてもらうような話でもないだろう。

 「自分の役割をなんとか見つけてほしい。その時,ゲーム業界にこだわる必要はまったくないでしょう。大きな視野で自分の役割というものを考え,捉えるべきだと思います。ただ,自分の役割が何かを考えるにあたって,変に謙虚なのはよくありません。なぜなら,それが行き過ぎると,自分の特性を隠すことになってしまうからです。外面は謙虚にしておいた方がいいですが,ときには自惚れるくらいがちょうどいい――そんな場合があることも忘れないでください」

 大きな視点を意識した場合,ゲーム制作者であるなら「ゲームの社会的役割」を考えることも大切だと桜井氏は言う。
 ただ,この点に関して氏の見解はシンプルで,曰く「それに,人が欲しいと思えるものを作って,その対価を得られるだけでも社会貢献になっていると私は思います。だから,ゲーム制作者というのは,人が欲しいと思うもの,楽しいと思えるものを追求していけばいいのです。もちろん,反社会的なものは駄目ですが」とのこと。
 生活必需品ではなく,あくまで嗜好品でしかないゲームだが,それでも人に欲しいと思ってもらえさえすれば,それはちゃんと意味があるものなのだというのが,桜井氏の考えのようである。
 最後に桜井氏は,「必要と思われる人材」についても触れつつ,

 「社会に貢献するためには,得意なことを突き詰めればいいと思います。『時代』と『得意』なことを考えて,自らの役割を磨く。それは,いつの時代にも求められることだと思います」

と述べながら,講演を締めくくった。


生きていく(ゲームを作っていく)うえで見据えるもの


 さて,随分と長々と書いてきたが,ここまで話を聞いて,読者はどんな感想を抱いただろうか。なに? 話が抽象的に聞こえるって? うーん,そうだろうか。少なくとも,筆者はそうは思わない。

 というのも,桜井氏は「なぜゲームを作るのか」という業界人なら誰もが考える命題(……考えますよね?)に対して,単に「好きだから」「嬉しいから」といったことだけではなく,その先にある答えをちゃんと見つけているのではないかと思えるからだ。
 もちろん,そういった感情もないことはないだろうが,生きていく(ゲームを作っていく)うえで氏が見据えているものは,連綿と受け継がれる人間の歴史と社会,そして,その恩恵の上に成り立っている(生かされている)自分が,お返しに何ができるのかということであり,そこに対して,彼は「ゲーム作り」という答えを得たという話なのではないか。

 これは例えば,何気なく息を吸って生きている自分の生命が,その歴史を辿ると何万年,何十万年,あるいは何億年という歴史を経て受け継がれているものだということにハタと気が付いて,その重大さに改めて気が付くように。人間社会の重厚さに気付くことと,他人の仕事に対するリスペクトの精神が,彼の仕事(ゲーム作り)に対するモチベーションになっている……そんな話だったような気がしてならない。

 正直に言うと,今回の講演は,もっと「日本のゲーム業界かくあるべき」といった,いわゆる“業界に寄った”話になるのかと思っていた。講演のテーマが一見すると“そういう雰囲気”のものに見えたし,なにより,日本のゲーム業界を代表する桜井氏が,今この時期にCEDECで講演する意味といったことを考えると,「きっとそういう話なのだろう」と短絡的に思い込んでいたところが,少なからずあったのかもしれない。

 ――しかし。今回の講演内容は,ゲーム業界の歴史に合わせて自分の歴史を振り返り,ゲームに対する愛情やこだわりを全面に出しながらも,結論としては,「ゲーム業界にこだわらず,もっと広く自分の役割を探そう」というものであった。これが一体何を意味するのか……。いろいろなことを考えさせられる,想像以上に“深い講演”だったように思う。

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