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[CEDEC 2010]現役の社会科学系研究者3人がゲームとその周辺を考える。「実はこんな研究やってます――社会科学編」レポート
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セッションは,国際大学GLOCOM 研究員 助教 井上明人氏が,社会科学研究とゲームの関連性について概論を述べ,芝浦工業大学 システム理工学部 准教授 小山友介氏と,東京工業大学 エージェントベース社会システム科学研究センター 特任講師 七邊信重氏の2名の研究者が,いくつかのテーマについて語るという形で進められた。
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社会科学サイドからのゲームに対する“目線”
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まず示されたのが「ゲームの発売延期率の推移」だ。ゲームが発売延期になるのは珍しくないが,それがどう推移しているかを調査したのだという。着眼点としては面白い。
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小山氏は「習熟度や内部ノウハウが溜まっていっている」のではないかと推測していたが,それ以前に,ゲーム/ソフトウェア開発の方法論/開発手法が,PlaySatation当時に比べると大きく進歩していることも見逃せないだろう。たとえば,今回のCEDECでもアジャイルソフトウェア開発(迅速な開発を行うためのソフトウェア開発方法論の総称)に関するセッションがいくつか組まれていたりもする。
アジャイルを始めとする開発手法が系統的に研究,実践され,初代PlayStation当時に比べてソフトウェアの開発効率が向上した結果として発売延期タイトルが減っている……というのならハッピーだが,そこまで踏み込んだ調査は行われていないようだ。その点が,個人的にはやや食い足らないかなと感じさせられた。
続いて示されたアマチュアの創作活動に関する調査だが,Web上の調査とのことでサンプルがいささか偏っており,断定的なことは言えない部分が多かった。アマチュアのゲーム制作者にはプロが多く混じっているという調査結果は興味深いが,あくまでWeb上の調査であるという点に関しては踏まえておく必要がある。
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まず,成長著しい新興国ではPCと携帯電話が先に普及しており,その中にゲーム専用機が入り込むのは難しいのではないか,という点。ハイエンドPCの性能は現時点でゲーム専用機のそれを超えているので,どうしてもPCゲーム中心の市場が形成されるのではないかと,氏は予測しているのだ。
ただ,PCでゲームを遊ぶには,起動するまでの煩雑な手間が必要だ。また,ゲームのことだけを考えるなら,コストパフォーマンス的には当然,PCよりもゲーム専用機が勝っている。ゲーム専用機が入り込める余地自体は,まだ十分にあるように思える。
もう1つの根拠は,新規ゲーム機の立ち上げリスクが大きくなっているという点だ。例として氏は,PlayStation 3の立ち上げ時の原価率や歩留まりに関する話題を展開した。
日本のゲーム業界はゲーム専用機に偏っており,氏はその点について警鐘を鳴らす意図があったと筆者は見ている。その気持ちは分かるのだが,残念なのは氏が挙げた理由を裏付ける,しっかりしたデータと分析が提示されなかった点だ。たとえば,新興国におけるゲーマーの意識調査などのデータがあれば,氏の自説の説得力は高まったはずだ。
日本のゲーム業界側からすれば,社会科学サイドはまだ「外野」だろう。それだけに,しっかりした調査や分析を行った上での有益な議論が行われないと,両者が良い形で歩み寄ることは難しいかもしれない。最後の短いトークセッションで井上氏が「ゲーム業界内の調査が難しい」と漏らしていたのが象徴的だ。
少々厳しいことも書いてしまったが,裏を返せば,CEDECのような開かれた場での,ゲームに関する社会科学研究は歴史が浅く,データ不足の部分が大きいということだろう。
同人界と商業界の連携でゲームが発展する
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海外にはMOD文化があり,アマチュアがMODを開発しWeb上にアップして楽しむといったことが普通に行われている。そうした中から「新しい技術が生まれたり,新しい作品が生まれたりして,そこから出てきた優秀な人材が大規模開発に参加する」(七邊氏)という良いサイクルがある。日本ではそうした協力関係が薄いのだが,ご存じのように同人ゲームの世界は拡大してきている。
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日本のゲーム業界も,アマチュアのパワーを取り込もうと試みた過去はある。現在はあまり目立った動きはないようだが,その点をどう分析しているのか筆者から質問してみたところ「以前はWindows上でゲームが作りにくいという時代だったが,現在はWindows上でゲームが作りやすくなり(同人ゲーム側が)無理にコンシューマに寄っていく必要はないと考えているようだ」と七邊氏は答えていた。
それでも,同人界と商業界が協力していくことで,ゲームを発展させられるだろうというのが七邊氏の意見だ。そのためにはどうしたらいいのか,というあたりが,七邊氏の研究からさらに見えてくると,商業界の側も動きやすくなるかもしれない。
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アタリは1980年代に米国で普及したゲーム機で,ソフトを含めて順調に市場を拡大させていったが,1982年に突如としてゲームソフト市場が急収縮,株式市場にまでダメージを与えてしまった。これがアタリショックだ。
粗製濫造されたゲームタイトル……いわゆるクソゲーが増え,市場が飽和したためというのが定説だが,井上氏は「その説には疑問を感じる。再検証の必要がある」と述べていた。
アタリショックは現在のゲームビジネスにも影響を与えており,たとえばゲーム専用機向けにリリースされるタイトルをコントロールするプラットフォーマーのビジネス手法は,アタリショックを参考にしたものとも言われている。しかし,そこまで大きなインパクトを与えた事件にもかかわらず,大規模かつ本格的な調査/検証は,さほど行われていなかったりする。
アタリショックは,ゲーム業界にとっては未だに伝説のトラウマでもあり,社会科学からの目線で分析される価値がある事件だろう。社会科学とゲーム業界のより良い関係を構築するためにも,お三方の研究活動とその成果に期待したい。
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