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[GDC 2012]「Crysis 2」のローカライズはこうして行われた。次々と襲ってくる問題に立ち向かったCrytekのローカライズ担当者の奮闘
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印刷2012/03/07 21:14

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[GDC 2012]「Crysis 2」のローカライズはこうして行われた。次々と襲ってくる問題に立ち向かったCrytekのローカライズ担当者の奮闘

Crytekにて「Crysis 2」のローカライズマネージャーを務めたJudith Matz氏
画像集#001のサムネイル/[GDC 2012]「Crysis 2」のローカライズはこうして行われた。次々と襲ってくる問題に立ち向かったCrytekのローカライズ担当者の奮闘
 2012年のGame Developers Conferenceの特徴の一つに,「Localize Summit」と名付けられた一連のレクチャーがある。タイトルどおり,「ローカライズ」に関するパブリッシャやデベロッパの講義を聞くもので,グローバル化が進む欧米のゲーム業界でローカライズが注目されていることがよく分かる。

 似ているようで意外と違うヨーロッパと北米の市場の特徴を,大手メーカーや地元の専門企業が解説するといった大局的な視点のものから,ローカライズ担当者が自分の体験した苦労話を聞かせてくれるものまで,講義の色合いはさまざまだが,北米時間の3月6日に行われた「Crysis Management: Localization from Developer's Perspective」は後者に属するレクチャーだった。スピーカーはCrytekのJudith Matz氏で,同氏は2011年にリリースされたFPS「Crysis 2」のローカライズマネージャーを務めた。

Matz氏のローカライズ担当者のイメージ。一般的には辞書編纂者のように思われており,実の母は娘がCrytekでランボーのように働いていると思い,そして自分は猫を追うカウボーイのような変な仕事をしている気がしていたという
画像集#003のサムネイル/[GDC 2012]「Crysis 2」のローカライズはこうして行われた。次々と襲ってくる問題に立ち向かったCrytekのローカライズ担当者の奮闘

 Matz氏によると,実はCrytekにローカライズ専門の部署はなく,彼女はもともとフェイシャルアニメーションデザイナーとして雇われたとのこと。しかも,前作「Crysis」のローカライズ担当者はすでに退社しており,誰かに相談したくても,話を聞く相手もいなかったという。

 Matz氏が仕事を始めたとき,Crysis 2は日本を含む11か国で発売される予定の,同社初のマルチプラットフォームタイトルだった。特別版などを含めて製品のラインナップは14種類。ゲームには18のムービーが登場し,そこで表示されるテキストは約6万語におよんだという。

 台詞(せりふ)の分量も約6万語で,同じ文字数のキャプションが付く。音声ファイルの数は1万,もちろん,後からリリースされるパッチにも文字や音声が含まれる。ローカライズは,これらすべてを対象に行わなくてはならないのだ。

 どのようなアセットを用意するのか? いつまでに用意するのか? 誰に手伝ってもらえばいいのか? ゲームの制作にどのような影響を与えるのか? と,分からないことだらけだったとMatz氏は言うが,さらに,Q&Aやメンテナンスなどに必要な書類のローカライズ,通訳に与えるガイドライン,テキストの入力方法,フォントのライセンスの取得方法,ムービーのローカライズ,ゲーム画面への影響など,メモを取るこちらも疲れてしまうくらい,やるべきことが多かったという。

やるべきことが次々に襲ってくる
画像集#002のサムネイル/[GDC 2012]「Crysis 2」のローカライズはこうして行われた。次々と襲ってくる問題に立ち向かったCrytekのローカライズ担当者の奮闘

 とくに,ムービーのローカライズが大変だったとMatz氏は述べる。最初は全言語を収めたムービーを制作して対応しようとしたものの,ファイルサイズが3GB以上になってしまい,PC版とPlayStation 3版では大丈夫だったが,Xbox 360版ではゲームを入れる場所が無くなってしまった。そのため,混乱を覚悟で各国語版のムービーを各国語向けの製品に入れることにしたのだが,想像したとおり混乱してしまったとのこと。

 リリースの直前,担当者から「冒頭の潜水艦のシーンで,ゲーム内のディスプレイに映しだされるネイサン・グールド博士がフランス語になっている」と言われて青くなったこともあったという。

 フォントもまたやっかいな問題で,ヨーロッパ言語では問題のないサイズなのに,中国語ではファイルサイズが大きくなり,想像以上にディスクスペースを圧迫した。

 ゲーム中の会話を収めた音声ファイルは,トータルで約3時間。これが音声のローカライズをする8か国分あるので,総計で24時間になる。膨大な量の音声ファイルを整理するため,それぞれのファイル名に「言語名」と「プラットフォーム」を足して対応したが,それでもファイルのセット違いが多発。一番困るのは,正しいのか間違っているのか見極める方法がないことだった。

 こうした問題に対してMatz氏は,ムービーのキャプションを入れるツールや,ファイルの整合性をチェックするツールなどを制作して対応した。いずれも素朴な感じのツールだが,無いよりはましだったようだ。そうして,数々の苦労を乗り越え,なんとかローカライズを完成させたのだ。

画像集#004のサムネイル/[GDC 2012]「Crysis 2」のローカライズはこうして行われた。次々と襲ってくる問題に立ち向かったCrytekのローカライズ担当者の奮闘
ムービーのキャプションを容易に入れられるツール
画像集#005のサムネイル/[GDC 2012]「Crysis 2」のローカライズはこうして行われた。次々と襲ってくる問題に立ち向かったCrytekのローカライズ担当者の奮闘
ファイルの整合性を取るツール

 個人的には,こうしたローカライズ作業をパブリッシャでなくデベロッパが行うことと,Crytekの看板タイトルのローカライズが,一人の女性の双肩にかかっていたことが興味深い。もっとも,Matz氏によれは,結局は多くの人々を巻き込んだとのこと。まあ,そうですよね。

 ちなみにこの講義の直後,Blizzard Entertainmentが「StarCraft II」シリーズのローカライズに関する講義を行った。世界数か国にローカライズ担当の人員を置き,テキストや音声は当然として,インゲームのムービーで主人公が投げるグレネードの落書きまでローカライズするBlizzardに比べ,Matz氏は乏しいリソースでがんばったという感じが伝わってくる。

 ローカライズを終えて,改善されたこと,気づいたこと,できなかったことをリストアップして,次につなげようとしている同氏。ローカライズを上手にこなすためのツールを提案するとか,地元のローカライズメーカーとの連絡を密にすべきだったと語るなど,大変な目に遭いながらも積極的な様子であった。Crytekの次回作のローカライズは,より精度の高いものになることだろう。

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ローカライズの仕事を終えて,実感したこと
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ローカライズに便利なツールの提案

仕事に対する自己分析。改善されたこと(黄色)と,気づいたこと(オレンジ)
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