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  • 発表日:2009/06/02
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L3なし,3コアで8980円。「Athlon II X3 435/2.9GHz」レビュー掲載
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印刷2009/10/20 13:01

レビュー

L3なしで9000円のトリプルコアCPUはありやなしや

Athlon II X3 435/2.9GHz

Text by 宮崎真一

»  AMDの低価格マルチコアCPUが,さらなる拡充を果たした。今度はL3キャッシュ非搭載で1万円程度の販売価格が見込まれるトリプルコアCPUだ。ゲーム用途ではキャッシュが有効ということを考えると,やや不利な点は否めないが,実際のところはどうなのか。宮崎真一氏による評価をお届けしたい。


 日本時間2009年10月20日13:01,AMDは,エントリー市場向けのクアッドコア&トリプルコアCPU,

  • Athlon II X4 600e/2.2GHz(133ドル)
  • Athlon II X3 435/2.9GHz(87ドル)
  • Athlon II X3 425/2.7GHz(76ドル)
  • Athlon II X3 405e/2.3GHz(102ドル)
  • Athlon II X3 400e/2.2GHz(97ドル)
    ※カッコ内は北米市場における想定売価

Athlon II X3 435。OPNは「ADX435WFK32GI」となっていた
画像集#002のサムネイル/L3なし,3コアで8980円。「Athlon II X3 435/2.9GHz」レビュー掲載
を発表した。開発コードネーム「Rana」として知られていたAthlon II X3は,L3キャッシュを搭載しないAthlon IIシリーズにとって,初のトリプルコアモデルとなる。

 4Gamerでは,5製品の発表に先立って,AMDの日本法人である日本AMDから,発表時点におけるAthlon II X3シリーズ最上位モデルで,11月20日にメーカー希望小売価格8980円(税込)で発売予定となっているAthlon II X3 435(以下,X3 435)の貸し出しを受けることができた。そこで今回は,低価格帯における同製品の立ち位置を探ってみることにしたいと思う。


L2キャッシュは1コア当たり512KB

Propusの3コアバージョンか


CPUパッケージは938ピン仕様のAM3。Socket AM3/AM2と互換性がある
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 冒頭でも述べたとおり,X3 435は,L3キャッシュを搭載しない,Athlon IIシリーズのCPUだ。L2キャッシュ容量は1コア当たり512KB。169mm2というダイサイズや,95WというTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は,PropusコアのAthlon II X4 600シリーズと同じなので,乱暴にまとめてしまえば,「Athlon II X4 630/2.8GHz」(以下,X4 630)からコアを1基減らした代わりに,動作クロックを100MHz引き上げたものということになる。
 AM3パッケージを採用し,DDR3-1333およびDDR2-1066対応のデュアルチャネルメモリコントローラを採用するのも,もちろんPropusコアのAthlon II X4と同じだ。

 さて今回は,Athlon IIファミリー内におけるX3 435の立ち位置を確認すべく,比較対象として,X4 630のほか,容量6MBのL3キャッシュを搭載したトリプルコアの上位モデル「Phenom II X3 720 Black Edition/2.8GHz」,X4 435と動作クロックが同じデュアルコアCPU,「Athlon II X2 245/2.9GHz」(以下,X2 245)を用意。また,X3 435と動作クロックや価格帯が近い「Pentium Dual-Core E6500/2.93GHz」(以下,E6500)も加えることにした。各製品のスペックは表1のとおりである。
 ただし,機材調達の都合上,X4 245は,「Athlon II X2 250/3.0GHz」の倍率変更で実現した個体を用いるので,この点はあらかじめお断りしておきたい。

※1 発表当初,Athlon II X2 200シリーズが内蔵するメモリコントローラはDDR3-1066およびDDR2-800対応とされていたが,今回の新製品発表に合わせる形でスペックがアップデートされている
※2 X3 435は日本AMDによるメーカー希望小売価格。ほかは2009年10月20日現在における4Gamer調べの実勢価格
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X3 435に対する「CPU-Z」(Version 1.52.1)実行結果
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 動作環境は表2のとおり。テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション8.2準拠となるが,テストスケジュールの都合,そして,GPU負荷が非常に大きく,CPUの性能差がスコアに表れにくいという理由により,「Crysis Warhead」のテストはカットすることにした。CPU性能差を見るという観点から,「高負荷設定」は省略。さらに,解像度も1024×768ドット/1280×1024ドット/1680×1050ドットの3パターンに絞った。

 また,グラフィックスカードに「ATI Radeon HD 5770」搭載製品を用いた関係で,ATI Radeon HD 5700シリーズのレビュー時と同様,「バイオハザード5」については,英語版公式ベンチマークソフト「Resident Evil 5 Benchmark」を用いる。つまり本タイトルに関しては,「『ATI Catalystが日本語版を正しく認識できない』という問題が解決した場合の期待値」を見ることになる。

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ゲームにおけるL3キャッシュの優位性を再確認

もっとも,X2 245からの上積みは相応にある


 というわけで,テスト結果を見ていくことにしよう。
 グラフ1は「3DMark06」(Build 1.1.0)の総合スコアをまとめたもの。マルチスレッド対応を果たしている3DMark06で同一クロックのX3 435とX2 245とを比較すると,スコアは8〜9%ほど,前者のほうが高い。
 上位3CPUのスコア差はそれほど大きくないが,厳正に比較すると,X3 720に対してはL3キャッシュ分,X4 630に対しては1コア分だけ,X3 435のスコアは低めである。

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 3DMark06のデフォルト設定となる,解像度1280×1024ドットの「標準設定」において,CPUスコアを抜き出したものがグラフ2だ。3DMark06は,キャッシュ周りの影響が少なく,CPUのコア数がスコアを左右するという,マルチスレッド対応型のビデオトランスコード系アプリケーションにおける性能を推し量るヒントになるようなスコアが見られるが,ここだと,動作クロック分のわずかな違いはあるものの,X3 435とX3 720のスコアはほぼ同じところに収まっている。
 一方,デュアルコアのE6500に対して26%,X2 245に対しては44%高いスコアを示している点からは,トリプルコアの意義も見て取れよう。

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 実際の3Dゲームから,まずグラフ3は,「Left 4 Dead」の結果である。
 4GamerのCPUレビューでは再三繰り返してきているように,ゲームではL2やL3といったキャッシュの効果が大きく影響しがちだが,ご覧のとおり,容量6MBのL3キャッシュを持つX3 720が完全に頭一つ抜け出している。
 面白いのは,同じ2.9GHzで動作するX3 435とX2 245で,L2キャッシュ容量が1コア当たり512KBの前者のほうが,同1MBの後者よりも10〜15%高いスコアを示していることと,3コア&2.9GHzのX3 435と4コア&2.8GHzのX4 630とで比較した場合には,スコア差が3%程度しかないこと。軽度のマルチスレッド最適化が行われているLeft 4 Deadにおいては,2〜3コアまではコア数,それ以上はキャッシュがパフォーマンスを左右しやすいといえそうだ。

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 続いて,「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)の結果をまとめたものがグラフ4となる。
 Call of Duty 4で注目したいのはX2 245のスコアで,X3 435やX4 630を上回っている。これは,本タイトルが,キャッシュの総容量ではなく,より高速なL2キャッシュの容量が“効く”プログラムになっているためだ。こうなるとX3 720はやや不利で,一方,共有2MBのL2キャッシュを持つE6500が台頭してくる。

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 英語版の公式ベンチマークソフトを用い,「低負荷設定」で実施したバイオハザード5では,キャッシュの総容量とCPUのコア数がスコアを大きく左右した(グラフ5)。Phenom IIとAthlon IIは,モデルナンバーどおりにきれいな階段状のグラフとなっており,X3 720ではL3キャッシュが,X4 630では4コアが有効に機能していることが分かる。
 X4 435が,コア数の違いを武器に,X2 245に対してつけたスコアの差は,7〜10%程度だ。

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 グラフ6は,「ラスト レムナント」のテスト結果になるが,全体的には,「Left 4 Deadほどではないが,キャッシュの総量がスコアを左右している」印象だ。GPUボトルネックが生じている1680×1050ドットを除いても,それほど大きなスコア差はないものの,やはりX3 720におけるL3キャッシュの存在は看過できない。

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 パフォーマンス検証の最後は「Race Driver: GRID」(以下,GRID)。結果はグラフ7に示したとおりで,一言でまとめるなら,「コア数の影響がキャッシュの総容量による影響よりも大きいが,おおむね『バイオハザード5』と同じ傾向」といったところだ。X3 435は,トリプルコアCPUであることの優位性を,X2 245やE6500に対して十分に発揮できている。

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コア数に応じて消費電力は増加

リテールクーラーでCPU温度は50℃未満に


 本稿の序盤でも説明したとおり,ベースとなるCPUウェハが同じということもあり,X3 435のTDPは95Wで,X4 630と同じ。X2 245の65Wからは大きくなってしまっている。
 では実際のところ,“Propus引く1コア”で,消費電力はどこまで下がっているのか。いつものように,ログを取得できるワットチェッカー,「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を計測してみることにした。

Cool’n’Quetを有効にすると,アイドル時の動作クロックは最低で800MHzに下がる
画像集#005のサムネイル/L3なし,3コアで8980円。「Athlon II X3 435/2.9GHz」レビュー掲載
 テストに当たっては,OSの起動後,30分放置した時点を「アイドル時」,CPUやメモリなどに負荷を掛けることができるocbase.com製ストレステストツール「OCCT」(Version 3.1.0)を30分間連続実行し,その間で最も消費電力が高かった時点を「高負荷時」とする。なお,アイドル時は,CPUの省電力機能「Cool’n’Quiet」および「Enhanced Intel SpeedStep Technology」有効時と無効時のそれぞれでスコアを取得することにした。

 その結果はグラフ8のとおりだ。トリプルコアCPUであるX3 435の消費電力が,X2 245と比べて高くなってしまうのはやむを得ないが,アイドル時で10W弱,高負荷時で24Wというのは,少なからぬ違いという印象だ。一方,X4 630との比べる限り,消費電力は確実に低く,全体的にざっくりまとめると,X3 720とほぼ同じレベルにまとまっている。L3キャッシュの有無を考えると,X3 435のスコアはもう少し低くてもいいような気はするが……。
 ちなみに定格電圧は,X3 435が0.875〜1.425Vなのに対して,X3 720は0.850〜1.425Vである。

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 アイドル時と高負荷時におけるCPU温度を,「HWMonitor Pro」(Version 1.07)から測定した結果をまとめたものがグラフ9となる。
 テスト時の室温は20℃。システムは,PCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態で室内におかれた状態だ。CPUクーラーは,最近のAMD製リテールボックスに付属する共通のクーラー(※今回はAthlon II X2 250のボックスに付属のもの),E6500は同製品のリテールボックスに付属するクーラーを用い,それぞれ,PWMによるファンコントロールを行いつつ比較したが,X3 435のCPU温度は,高負荷時でも50℃未満。X3 720とは対照的で,CPUの温度という観点では,L3キャッシュを搭載しないことがプラスに作用したと述べてよさそうだ。
 また,X4 630と比べても高負荷時の温度は低く,どちらかというとX2 245のスコアに近い。

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まったくもってモデルナンバーどおりの結果

悪くはないが,既存の自社製品が強力なライバルに


 総じて,ゲームにおけるX3 435の性能は,X2 245以上,X4 630以下という,極めて順当なところに収まっている。ただ,クアッドコアの恩恵を得にくいゲームタイトルだと,X3 435でもX4 630と肩を並べる場面が見られたことは,指摘しておく必要があるだろう。
 序盤でも紹介したとおり,メーカー希望小売価格は8980円(税込)。実際に販売されているCPUだと,11月20日のX3 435発売までに店頭価格が変わる可能性はあるので,その点は注意してほしいが,少なくとも10月20時点の店頭価格で比較するなら,X4 630よりも,X3 435のほうがコストパフォーマンスに優れるCPUだといえる。

 しかし,AMDの低価格CPUを語るたびに“問題”となるのが,X3 720の存在である。X3 435との価格差は3000〜4000円程度になるので,大きいといえば大きいが,それだけ得られるメリットもあったりするからだ。また,「とにかく1万円という予算を重視しつつ,できる限りコア数の多いCPUを手に入れたい」という人にとっては,1万円前後で購入できる「Athlon II X4 620/2.6GHz」が強力な選択肢になるという現実もある。

 その意味でX3 435は,「予算は1万円。このなかで,できる限り高い動作クロックを維持したまま,なるべくコア数が多いCPUを手に入れたい」という,かなり限定的な需要に向けたCPUということになるだろう。
 同時にAMDにとっては,狭い価格帯にひしめき合っているCPUのラインナップを,そろそろ整理しなければならない頃合いではなかろうか。
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