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単体製品投入見送りで仕切り直される「Larrabee」。HPC用プロセッサ&統合型グラフィックス機能へと2分化へ
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| IDF2009SFで,PCケースに入った状態ながら,実働デモが公開されたLarrabee搭載グラフィックスカード |
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| Intelの広報写真より。Larrabeeのウェハを持つ,Patrick P. Gelsinger氏(Senior Vice President and General Manager, Digital Enterprise Group, Intel ※写真公開時) |
実際のところ,Larrabeeに関しては,2009年9月中旬に米カリフォルニア州サンフランシスコ市で開催された開発者向け会議「Intel Developers Forum 2009 San Francisco」(以下,IDF2009SF)開催中から,半導体業界関係者やグラフィックス業界関係者たちの間で,「計画がキャンセルされる」という噂が飛び交っていた(関連記事)。同会議では,Larrabeeを搭載したグラフィックスカードのエンジニアリングサンプルが披露されたにも関わらず,である。
その背景には,Larrabee計画の旗振り役であったPatrick P. Gelsinger(パット・ゲルシンガー)上級副社長が突然退社したことと,ソフトウェア環境整備の遅れがあったようだ。
製品化見送りの要因はソフトウェア周りの遅延か
Larrabeeは当初,2009年中にも,パフォーマンスグラフィックス市場へは「GeForce」や「ATI Radeon」対抗,並列コンピューティング市場へは「Tesla」や「FireStream」の対抗として,単体カード製品が投入される計画だった。
しかし,45nmプロセス技術を採用して製造された初代Larrabeeは,その消費電力や発熱量の多さに対して処理性能が十分とは言えず,「演算処理性能でも一世代前のハイエンドグラフィックス製品に及ばない状態だった」と,同製品のエンジニアリングサンプルを供給されていた複数のデベロッパ関係者が証言している。
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ただ,HPC(High Performance Computing)業界関係者が,「Larrabeeは,並列コンピューティング向けプロセッサとしては,決して失敗作ではない」と述べていることは押さえておきたい。
Intelは,11月にオレゴン州ポートランドで開催されたスーパーコンピュータ関連の国際会議「SC09」において,4K×4Kの行列積演算性能を測るベンチマークテスト「SGEMM Performance Test」において,オーバークロック動作ながら1TFLOPSを超えるパフォーマンスを披露している。同テストを,GT200ベースのTeslaで実行すると370GFLOPS程度になるので,特定の演算性能だと,NVIDIA(やAMD)のGPUを超える面も見せていたことになる。
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よく言えば,「CPU並の柔軟性を持つグラフィックスチップ」ということにもなるわけだが,問題は,その命令セットを活かすソフトウェア環境の整備が遅れたことに引きずられて,DirectXをはじめとするグラフィックスAPIへの対応が大幅に遅れてしまった点にある。とあるゲームデベロッパ関係者によれば,Larrabeeは,DirectX 10への最適化すら,十分とはいえない状態だったようだ。
Epic GamesのCEOにして,Unreal Engineの開発者であるTim Sweeney氏が肯定的なコメントを残しているように,Larrabeeのプログラマブル性の高さそのものが,間違ったアプローチだったわけではない。むしろ,同製品の評価に関わった複数のゲームデベロッパは,口を揃えて,グラフィックス機能実装に向けたIntel側のリソースの少なさを嘆いていたので,この「ソフトウェア環境の整備遅れ」こそが,Larrabee製品化見送りの主要因になったと見ていいだろう。
2方向へ分岐するLarrabee計画
とはいえ,IntelがLarrabee計画を断念したわけではない。Larrabee計画をよく知る人物は,「LarrabeeもTick Tock(チック・タック)モデルで開発が進められている。(つまり,今回の話は)最初のフェーズがキャンセルされただけだ」と語っている。
IntelのLarrabee計画は,45nmプロセス技術で16コアを統合する「Larrabee1」(開発コードネーム)と,そのシュリンク版に当たり,32nmプロセス技術で最大24コアを統合する「Larrabee2」(同)が進められていた。IntelがIDF2009SFで2010年の市場投入を示唆していたのはLarrabee2であり,今回,計画が見直されたのも,このLarrabee2だ。
さらに,Intelはアーキテクチャの拡張を施した「Larrabee3」(開発コードネーム)の開発も進めており,「その計画に変更はないと聞いている」(同関係者)とのこと。ただしLarrabee3は,グラフィックス処理用のGPUというより,並列コンピューティング処理性能を高めたHPC市場向けチップとしての色が濃いとされている。Intelは,このLarrabee3計画を,2010年中にも,開発者に向けて提示する意向のようだ。
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当初,そのタイミングは,次世代CPUアーキテクチャ「Sandy Bridge」(サンディブリッジ,開発コードネーム),Sandy Bridgeをベースに22nmプロセス技術へとシュリンクする「Ivy Bridge」(アイヴィブリッジ,同)の後継,つまり,次次世代のCPUアーキテクチャ世代からになると見られてきた。Larrabeeで実装される16way(512bit幅)のベクタ演算拡張命令であるLNIは,Sandy Bridge世代で実装される8way(256bit幅)ベクタ演算拡張命令である「AVX」(Advanced Vector eXtentions)の延長線上にある命令拡張なので,このタイミングというのは不思議な話ではない。
ただ,前述の関係者は,「自分が知る初期計画とは変わっているかもしれない」と断りながらも,「Larrabeeを簡略化したスモールコア計画も存在していた。そのコアなら,AVXでグラフィックス機能を実装することもできるはず」と述べている。つまり,最短では,Ivy Bridge世代でLarrabeeベースの新世代グラフィックス機能を統合してくる可能性も,ゼロではないというわけだ。もちろんこれには,AMDのFusion計画がアップデートされたことを受けて,Larrabeeベースのグラフィックスコア統合を急ぐ必要が生じてきたというのも,無関係ではない。
ただ,統合計画の,前倒しが実現するかどうかは,あくまでも「ソフトウェア環境が予定どおり整うかにかかっている」(同関係者)。まだまだ不透明な状況だ。
Intelに近い,複数の業界関係者は,「Larrabeeは(今後,)HPCと統合型グラフィックス機能としての開発が優先される」と見ており,それに合わせて,グラフィックスカード単体製品の投入は望み薄と見る動きが広がっている。いずれにせよ,製品開発表明から4年が過ぎたLarrabee計画が,今回の仕切り直しでどの方向に向かうのか,Intelの最終判断が明らかになるのは来年以降になりそうだ。
- 関連タイトル:
Knights(開発コードネーム,旧Larrabee) - この記事のURL:
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