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「世界初の外付け液冷ユニット付きゲームノートPC,お値段60万円」の価値は? ASUS「ROG GX700VO」をテスト
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印刷2016/03/11 00:00

レビュー

「世界初の外付け液冷ユニット付きゲームノートPC,お値段60万円」の価値は?

ROG GX700VO

Text by 米田 聡


ROG GX700VO(型番:GX700VO-GC009T)
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ASUSコールセンター 0800-123-2787(平日9:00〜18:00,土日9:00〜17:00時)
実勢価格:60万円前後(※2016年3月11日現在)
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 脱着可能な外付け液冷ユニットが付属するという強烈な仕様で,2015年秋の発表以降,世界規模で高い注目を集めていた,「R.O.G.」(Republic of Gamers)のゲーマー向けノートPC「GX700」。それが最終的に,「ROG GX700VO」(型番:GX700VO-GC009T,以下 GX700VO)として国内発売となった(関連記事)。

 税込で約60万円という価格は端的に述べて強烈だが,その実力はどれほどのものなのだろうか。4Gamerでは,短期間ながらGX700VOの製品版サンプルをASUSTeK Computer(以下,ASUS)から借りることができたので,可能な限りテストした結果をお伝えしてみたい。


大型キャリーケース入りのモンスターノートPCはG-SYNC&30キーロールオーバー対応


R.O.G.デザインのキャリーケースがこれ。一般に「65リッターサイズ」と呼ばれる,大型のケースである。やろうと思えばこれで旅行にも行けるだろう
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 発表会のレポート記事にもあるとおり,GX700VOは,大型のキャリーケースに収まった状態で段ボールに入っている。なので覚悟はしていたのだが,それでも,筆者の手元へ届いた段ボールを前にすると「おお」と声が出るほどの迫力があった。

 キャリーケースの中はスポンジで埋まっており,切り抜かれた部分にGX700VO本体と外付け液冷ユニット,付属品などが入った状態で固定されている。

キャリーケースを開けたところ(左)。写真左側にノートPC本体やマニュアルなど,右側に液冷ユニットやACアダプターが入っていた。右は一式を取り出して並べたところだ
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GX700VOとThermal Dock
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 ひとしきり驚いたところで,GX700VOとはどんなPCなのかを,あらためて確認しておこう。
 そのスペックは下にまとめたとおりだが,本体側のポイントは,デスクトップPC向けの「GeForce GTX 980」(以下,GTX 980)を搭載するところだ。そして,このデスクトップ版GTX 980をフルパワーで駆動させるべく,ASUSが「Thermal Dock」(サーマルドック)と呼ぶ外付け液冷ユニットを組み合わせることができるというのが,その最大の特徴となる。

●GX700VOの主なスペック
  • 液晶パネル:17.3インチIPS,解像度1920×1080ドット,ノングレア(非光沢),G-SYNC対応,垂直リフレッシュレート75Hz
  • CPU:Core i7-6820HK(4C8T,定格2.7GHz,最大3.6GHz,共有L3キャッシュ容量8MB,Unlocked)
  • チップセット:Mobile Intel CM236
  • メインメモリ:PC4-17000 DDR4 SDRAM SO-DIMM,合計容量32GB(チャネル構成未公開)
  • GPU:GeForce GTX 980(グラフィックスメモリ容量8GB)
  • ストレージ:SSD(容量256GB)×2(RAID 0)
  • 光学ドライブ:非搭載
  • キーボード:英語108キー(バックライト付き)
  • 有線LAN:1000BASE-T
  • 無線LAN:IEEE 802.11ac
  • スピーカー:内蔵2ch
  • 外部インタフェース:Mini DisplayPort×1,HDMI×1,Thunderbolt(Type-C)×1,USB 3.1(Type-C)×1,USB 3.0×3
  • OS:64bit版Windows 10 Home
  • 保証期間:1年間(本体およびバッテリー,ACアダプターが対象),30日間(液晶パネルの輝点ゼロが対象)

液晶パネルは17.3インチワイド。IPS方式を採用している
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 ハードウェアを順番に見ていこう。まずは本体からだが,GX700VOは,17.3インチで解像度1920×1080ドットの液晶パネルを搭載することもあり,机上を占めるサイズは429(W)×309(D)mmとかなり大きい。ただ,厚みは3335(H)mm(※突起含まず)で,縦横サイズと比べると相対的に薄く感じる。
 ちなみに重量は約3.6kg。ASUSとしてもモバイルは想定外だろうが,自宅の中で持ち運ぶ程度であれば問題なさそうだ。

実使用時にはそれほど気にならなかったが,画面が真っ黒になると,若干の輝度ムラを確認できた
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 G-SYNC対応,垂直リフレッシュレート75Hz仕様の17.3インチということで,パネルはLG Display製と思われるが(関連記事),視野角は文句なしに良好。また,バックライトのムラも,ある程度は確認できるものの,実使用時においてはまず気にならないレベルに抑え込まれている。表面がノングレア(非光沢)加工であることもあり,ゲームで使いやすいパネルと述べていいだろう。

角度を変えながら液晶パネルを撮影したもの。IPS方式ということもあり,角度依存が少ない。ノングレア加工なので,極端な斜めから見ると白浮きが見られるものの,気になるのはそのくらいである
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 キーボードは潔い英語配列で,日本語配列モデルの用意はない。超ハイエンドモデルとなるGX700VOだけに,生産数も限られるはずなので,わざわざ日本語配列のバリエーションを用意する余裕はないということだと思われる。
 筐体自体が大きなうえに,日本語配列と比べてキーの数が少ない英語配列ということで,10キーパッドを備えるフルキー仕様ながらも配列には無理がない。標準的な19mmピッチがしっかり確保されており,とても入力しやすいキーボードだ。

GX700VOは,10キーパッドを付きの英語フルキー配列を採用する
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 ただ,より重要なのは,このキーボードが最大30キーの同時押しをサポートしていることのほうだと思う。
 下に示したのは,Microsoftが公開しているWebアプリ「Keyboard Ghosting Demonstration」で調べてみた結果だが,実際に最大30キーの同時押しをしっかりと確認できた。両手の数よりも多くのキーを認識できるので,事実上の全キー同時押し対応と言ってしまっていい。

Keyboard Ghosting Demonstrationでテストした結果。28キーがオンになっているが,実際にはスクリーンショットを撮るために押した[Print Screen]キーを合わせて29キーが有効となっている。公称の30キーには1つ足らないが,これは単純に,筆者が片手で押せる物理的な限界だったためだ
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 さて,メインキーボードの左奥にはカメラのアイコンが付いたキーと,[M1]〜[M5]キーが並んでいる。カメラのアイコンが付いているキーは,従来もR.O.GブランドのPCで添付されてきた「XSplit Gamecaster」を起動するキーだ。XSplit Gamecasterはゲームのストリーミング配信を行う機能を持つツールで,GX700VOにもプリインストールされており,無期限のプレミアムライセンスが利用できる。ただ,せっかくGTX 980を搭載するのだから,ここはカスタマイズしてShadowPlay用に転換できてもよかったようには思う。

 [M1]〜[M5]キーのほうはカスタマイズが可能な,いわゆるマクロキーだ。プリインストールされている「ROG MacroKey」というソフトを使うと,アプリの起動とキーマクロ,指定したページをWebブラウザで起動と,3つの機能を割り当てることができる。
 キーマクロは,そもそもソフトウェアベースで,登録したマクロの編集はキーストロークの削除と遅延時間の変更だけとシンプル。なので,あまり活用できそうもないが,アプリのショートカットとして使う分には,便利ではなかろうか。

ROG MacroKey。[M1]〜[M5]キーに3種類の機能を割り当てられる。割り当てた組み合わせはプロファイルとして最大3つ保持可能だ。右はROG MacroKeyからキーマクロを登録している例。遅延の事前設定は行えるものの,後からの編集は行えない
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10キーパッド部,一般的なキーボードで[Num Lock]キーのあるところに,R.O.Gのイメージロゴが入ったキーがある
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 10キーパッドにはR.O.G.ロゴマークの入ったキーも見えるが,これは「ROG Key」で,「ROG Gaming Center」というツールを起動するショートカットキーである。このROG Gaming Centerは重要なツールなので,後段で紹介したいと思う。

 なお,ここまでの写真で気づいた人も多いだろうが,キーボードは赤色のLEDバックライトを備えており,[Fn]+[F3/F4]キーで,消灯を含む4段階の調光が可能だ。

LEDバックライトは調光が可能。なお,[W/A/S/D]キーはキーの側面が赤くなっているが,これは塗装であり,バックライトとは関係ない
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 キーボードの両サイド,具体的には[Tab]キーの左と10キー部にある[+]キーの右にあるグリッドはスピーカー孔だ。内蔵スピーカーは2chで,音質は「それなり」である。「ノートPCらしい音質」と言えば,イメージしてもらえると思う。
 ただ,GX700VOは最大384KHzのサンプリングレートに対応するESS Technology製のD/Aコンバータ「Sabre HiFi DAC」と同社製のヘッドフォンアンプを搭載しており,ヘッドフォン出力時の音質は非常によい。ゲームプレイ時に聞くサウンドはヘッドフォンかヘッドセットで,ということになるはずだ。
 なお,サウンド周りでは,再生音やマイクのエフェクト関連設定を行える「ROG Sonic Studio II」も利用できる。

プリインストールのROG Sonic Studio II。再生音の調整やマイクのノイズ低減といった設定を行える
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 最後に本体側のインタフェースだが,これらは本体の左右に散った仕様で,外部ビデオ出力やThunderbolt 3といった端子は右にまとまっている。DisplayPortとHDMI,そしてThunderbolt 3を用いることで,最大3台の外部ディスプレイを接続できる仕様だ。
 ちなみに本体両側面のスリットはスピーカー用。側面からも音を出すことで,音質をクリアにしようという意図で設けられているようだ。

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本体向かって左側面。本体奥側(写真左)からUSB 3.0(Type-A)×2,3.5mmミニピン×2(マイク入力,ヘッドフォン/光デジタル出力),SDメモリーカードスロットという並びになる
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こちらは右側面。本体手前側(写真左)からUSB 3.0(Type-A)×1,HDMI(Type A)×1,Mini DisplayPort×1,Thunderbolt 3(Type-C)×1,RJ45(1000BASE-T)

 特徴的なのは本体背面で,詳細は後ほど紹介するが,外付けの液冷ユニットを接続する都合もあって,背面にあるのはそれ関係のインタフェースとACアダプター端子のみとなっている。

畳んだ状態で本体正面から(左)。左手に5個のLEDインジケータが見えるが,これらは左から準に電源,バッテリー充電状態,ストレージアクセス,機内モード,Num Lockのものとなる。右は本体背面で,Thermal Dock接続用インタフェースとACアダプター接続端子のみがある
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大型の外付け液冷ユニットは意外にも(?)容易に着脱可能


Thermal Dock正面向かって左側面にACアダプター接続端子がある
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 次は液冷ユニットだが,その前に電源の話を済ませておきたい。GX700VOのACアダプター接続端子が本体背面にあるというのは前段で述べたが,実のところ,本製品にACアダプターは標準で2個付属している。GX700VOを単体のノートPCとして使うときに使う小型のものと,GX700VOを外付け液冷ユニットたるThermal Dockと組み合わせて使うときのものだ。
 ノートPC本体側とThermal Dock側ではそもそも接続端子の形状が異なるので,間違って差すということは起こらない。また,Thermal Dock用のACアダプターは,Thermal Dock経由でGX700VO本体にも給電を行うため,使うACアダプターは片方のみとなる。

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ノートPCとして使うとき専用ACアダプター。190W級で,サイズは165(W)×76(D)×32(H)mm,重量は670gとなっている。やや大柄だが,持ち運べないこともない
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こちらが水冷ユニット側のACアダプター。330W級のハイパワーである。サイズは198mm(W)×100mm(D)×43mm(H),重量は1.2kgだった。基本的に据え置き用という理解でいい

Thermal Dockを後方から。まるで大型のBluetoothスピーカー的だが,両サイドにあるのは液冷用ラジエータだ
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というわけでThermal Dockだが,これがまた,非常に大きい。サイズは417(W)×368(D)×114(H)mm(※突起部含まず)で,PC本体と合体させた場合,奥行きは実測で500mm以上必要になる。重量は4.8kgあり,また,デザインも独特だ。未使用時に片付けるというのも難しく,机上におけば相当に場所を食うシロモノである。
 上から見ると,メッシュ状をした金属パネルの奥に2つのスリットが見えるが,ここにラジエータとファンが取り付けられている。

液冷ユニットたるThermal Dockを4方向から撮影したところ
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 いつもの4Gamerならここで分解に進むところだが,今回はGX700VOの試用期間が短く,また,分解が難しい構造になっていたため,内部構造の確認は断念せざるを得なかった。なので,発表会における内部見本の写真を掲載しておきたいと思う。
 ちなみにGX700VOのマニュアルには,「冷却液が有毒なので,冷却ユニットや本体を決して分解しないように」と,繰り返し記述があった。

こちらが,ASUSの発表会で展示されていた内部見本。後方2か所にラジエータが見えるが,その下にファンが埋め込んである。イメージとしては,CPUやGPU用の簡易液冷ユニットを2つ連ねたものに近い
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 GX700VOとの接続インタフェースは,もちろんGX700VOの背面インタフェースと対になっている。両端の突起は,位置決め用のガイドで,中央の赤い電源端子の両端に,液冷ユニットのロック用フック,さらにその外側にあるのが冷却液を通すパイプだ。

Thermal Dock側にある両サイドのピンと本体側のガイド穴によって,液冷パイプと電源端子がズレなく合体する仕組み。また,Thermal Dock側のフックが本体をロックして,いきなり外れるというような事故を防いでいる
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 電源と液冷パイプがノートPC側と結合するという大がかりな仕掛けから,脱着はとても厄介なのではないか,液漏れは……と,いろいろ心配になると思うのだが,結論から言うと,あっけないくらい簡単だった。
 Thermal Dock側の「GX700VO本体を載せるベースプレート」部分には,奥側に2つの位置決め用ポール,手前側に2つのフックがある。これをGX700VO本体底面側の穴と合わせて置き,最後にThermal Dockの後方にある大きなノブを押し下げれば,本体と液冷ユニットの結合が完了する仕掛けだ。

取り付けの流れを確認しておこう。まず,Thermal Dock側のベースプレートにポールとフック,GX700VO側にある4か所の穴を確認
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次に,ベースプレートのポールとフックに本体の穴を合わせて,本体をプレートに置く
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最後にThermal Dock側の大きなノブを押し下げる。これで結合完了だ
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 付属のマニュアルによると,GX700VOとThermal Dockの結合が不完全な場合,アラームが鳴るとのことだが,筆者が試用している間,そういう事態は一度も生じなかった。よほど無神経な置き方をしないかぎり,液冷ユニットとの結合が不完全になることはないのではなかろうか。

イジェクトボタン
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 なお,取り外しはさらに簡単で,Thermal Dock本体の手前側にある,[Push]と書かれたイジェクトボタンを押すだけである。イジェクトボタンをEjectボタンを押すと本体が手前にずれ,ロックが外れて本体を持ち上げられるようになる。

 なお,液冷ユニットの着脱は,PCの稼働中でも可能だ。正直,稼働中に脱着を行うと液漏れが起きる危険がありそうな気がして怖いのだが,実際にやってみるとそういうことは起きなかった。この点,非常によくできているなと感心させられた次第である。


専用コントロールパネルから3段階+手動の動作モード設定が可能


 言うまでもないが,液冷ユニットたるThermal Dockを装着すると,GX700VOはプロセッサの冷却能力が一気に向上するわけだが,それを活かすために,GX700VOは4つの動作設定を用意している。そして,その設定を行うために使うのが,先に後述するとしたROG Gaming Centerである。

 ROG Gaming Centerは,10キー部の[ROG Key]を押すことで起動できる,プリインストールのツールだ。そのスクリーンショットは下に示したとおりで,レイアウトがごちゃごちゃして分かりづらいのだが,重要なのは「Turbo Gear」と書かれている横にある[>>]アイコンで,これをクリックすると,動作設定を行う「Turbo Gear」を呼び出せる。

ROG Gaming Center。ごちゃごちゃして分かりにくいのだが,重要なのはTurbo Gearだ。右下は各種ユーティリティの起動用ショートカットが並んでおり,ここでは左右にスクロールさせながらお目当ての機能を選ぶことになる
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 下は,液冷ユニットを取り付けた状態で,Turbo Gearを呼び出したところだ。Turbo Gearには「標準」「最適化」「最高」という3つのプリセットと,手動制御の可能な「手動」,合計4つの動作モードがある。

Turbo Gear。上に4つのプリセット「標準」「最適化」「最高」「手動」が並ぶ。スクリーンショットは「最高」を選択した状態で,その下に並んでいるのは,現在のCPUおよびGPUのステータスである。あくまで「現在の」ステータスであって,設定値ではない
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GX700VOの単体運用中にTurbo Gearを起動したところ。選択できるのは「標準」「最適化」のみとなっている
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 面白いのは,「最高」「手動」の2設定だけは,Thermal Dock接続時のみ選択可能な項目であるということだ。GX700VO単体での利用時だと,両項目はグレーアウトして選択できなくなる。
 ちなみに,Thermal Dock接続時にデフォルトで選択されているのは「最高」設定で,GX700VOの単体運用時には「最適化」設定が選ばれていた。

 ASUSによると,「最高」設定はCPUの動作クロックが最大4GHzになり,またGPUの動作クロックもベースクロック比で約43%高くなるという。一方,「最適化」に関する情報はなく,また,「標準」もCPUクロックが最大2.7GHzになるということしか情報がない。このあたりは後段で検証する必要があるだろう。

「手動」設定では,けっこういろいろ弄れる。GPU関連の設定が可能なのは,さすがR.O.G.といったところか
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 なお,「手動」で選択できるのは,CPUのベースクロック(BCLK)と,4コアの動作倍率,メモリモジュールに対するXMPプロファイルの適用有効/無効切り替え,GPUおよびグラフィックスメモリのクロックオフセットだ。ちなみに,3D性能に影響が大きいGPUベースクロックオフセットは最大+250MHz,グラフィックスメモリの動作クロックは最大+300MHz(1200MHz相当)の指定が可能だった。

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本体天面部。Light BarというのはR.O.G.ロゴマークを挟むように走っている2つのラインのことだ。色の設定は行えない
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ROG Gaming Centerの「ゲーミングプロファイル設定」で,いま挙げた各種設定を行える
 Turbo Gear以外でROG Gaming Centerが持つ機能にも簡単に触れておこう。
 ROG Gaming Centerからは,液晶パネルの色合いを設定する「Splendid」や,ESS Technology製ヘッドフォンアンプの有効/無効切り替え,押したキーのバックライトを点灯させる「HotZone」の有効/無効切り替え,本体天面の装飾ライト「Light Bar」の点灯/消灯切り替えや,[M1]〜[M5]キーの設定,[Windows]キーの無効化といった設定を行って,それらを,最大4つのプロファイルとして保存し,ゲームなどの実行ファイルと関連付けておくことができる。
 関連付けると,ゲームなどを実行したとき,設定がまとめて切り替わる仕組みだ。


液冷ユニットの有無で挙動は何が変わるのか。条件を変えながらテスト


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 ROG Gaming Centerを見ていて気になるのは,やはりThermal Dockとの接続時にのみ利用できるTurbo Gearの設定「最高」で何が変わるのか,というところだろう。
 そこで今回は,「最高」「最適化」「標準」の3プリセットでGX700VOがどのような挙動面の違いを示すか,チェックしてみることにしよう。今回は,Thermal Dockに接続したうえで「最高」あるいは「最適化」を選択した状態と,Thermal Dockを接続しない状態で「最適化」あるいは「標準」を選択した状態,合計4パターンでテストを行うことにした。「手動」はできればテストしたかったのだが,今回は冒頭でも触れたとおり,貸出期間が短く,手動でのオーバークロックを十分に検証する時間が取れないことから,対象から省いている。
 「最適化」を2パターン入れたのは,Thermal Dockの有無がスコアに与える影響を見るためだ。

 実行するテストは,4Gamerのベンチマークレギュレーション17.0から,「3DMark」(Version 1.5.915)と「Far Cry 4」,そして「ファイナルファンタジーXIV 蒼天のイシュガルド」公式ベンチマーク(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)をピックアップ。さらにレギュレーション18世代を先取りする形で「Fallout 4」と「Project CARS」を追加した。両タイトルのテスト方法は,スコアをまとめた段で紹介したい。

 搭載するGPUがデスクトップPC向けのGTX 980ということで,グラフィックス設定は「高負荷設定」およびそれに準拠したもので統一。テスト解像度は,パネルのネイティブである1920×1080ドットに加え,今回はDSR(Dynamic Super Resolution)による2715×1527ドットのテストも実行することにした。ノートPCの場合,外部ディスプレイ出力というのもあり得るだろうが,GX700VOの場合はG-SYNC対応で,本体側の液晶パネルを使うケースが多いだろうという考えから,このようにしている。

 そのほかテスト環境はのとおりとなる。

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文字どおり「デスクトップPC並み」の性能が得られる「最高」設定。「最適化」は液冷ユニットの有無で結果に違いが


 まずは,4通りの動作設定で何が変わるのか,3DMarkを使い,ざっくり探ってみることにしよう。
 グラフ1は,Fire StrikeとFire Strike Extreme,Fire Strike Ultraにおける 「Graphics score」をまとめたものだ。基本的には,すべてのテストで「最高」+Thermal Dockが頭一つ飛び抜けたスコアを残し,それ以外は僅差となっている。
 「最高」設定は「標準」に対してGPUクロックが約43%上昇するとされるが,「標準」とのスコア差は約27%。GPUクロックの伸びを考えると妥当なところではなかろうか。
 一方,僅差となった「最適化」の2条件では,厳密に見ると,Thermal Dock接続時のほうが,GX700VOの単体実行時と比べて2〜3%程度スコアが高くなった。液冷効果で,より高い動作クロックに入る時間が長くなっているとはいえそうだ。なお,GX700VO単体で動作させる限り,「最適化」と「標準」の間には,ほとんど誤差程度の違いしか見られない。

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 続いてグラフ2は,3DMarkのCPU性能テストとなる「Physics score」の結果をまとめたものだが,端的に述べて,不思議な結果となった。
 ASUSによると,「最高」設定ではTurbo Boost有効時最大3.6GHzのクロックを,4GHzまでクロックアップするという。Thermal Dockを接続した状態で「最高」と「最適化」を比べると「最適化」に対して「最高」設定が11〜12%増のスコアを残しているので,ここだけを見ると妥当な印象はある。
 だが,Thermal Dockを取り外した状態の「最適化」が「最高」に迫っているのだ。これが解せない。一体何が起きているのだろうか。その判断はひとまず保留して,次に進もう。

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 総合スコアをまとめたグラフ3グラフ1と同じ傾向だが,これは3DMarkのスコア計算方法からすると妥当なところである。

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 以上,CPUクロックの制御周りには多少なりとも疑問が残るものの,「最高」設定だと文句なしに高い性能を狙えることと,「最適化」設定では液冷ユニットの有無によって性能に若干の違いが生じることが分かる。
 では,その傾向は実ゲームでも確認できるだろうか。グラフ4は「Far Cry 4」の「ULTRA」プリセットにおけるスコアをまとめたものだ。

 「最高」のスコアは文句なしに高い。GX700VO単体動作時の「最適化」と比べて33〜55%も高いスコアというのは見事である。
 「最適化」におけるThermal Dock有無の影響は,3DMarkと比べて明らかに大きい。とくに1920×1080ドットにおけるスコア差は約27%で,これは看過できないだろう。というか,GX700VO単体動作時の「最適化」はなぜか「標準」比で95〜96%程度に留まってしまっている。
 どうしてこういうことが起こるのかの判断は後ほど検証することにして,ここでの判断は保留したい。

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 スコアそのものに関していえば,1920×1080ドット時の「最高」が示した88.3fpsというスコアは,液晶パネルの75Hzという垂直リフレッシュレートも超えており,実に立派だ。Thermal Dock接続時の「最適化」ともども,Far Cry 4を快適にプレイできる水準にある。

 続いてはFallout 4だ。ここでは,「Shadow of Steel」というクエストで「ブラザーフッド・オブ・スティール」(BoS)の武装ヘリ「ベルチバード」に乗って移動シーンのフレームレートを,「Fraps」(Version 3.5.99)から1分間計測する。このシーンは,プレイヤーの操作が必要がなく,会敵もないため,それらの不定要因によるフレームレートのブレが起きず描画負荷は高い。なので,テストには最適だ。
 フレームレートの計測は2回行い,2回のフレームレートの平均をスコアとする。選択するグラフィックス設定プリセットは,Fallout 4における最高画質となる「ウルトラ」である。

 結果はグラフ5のとおりだが,描画負荷が高い2715×1527ドットの結果は3DMarkとよく似た傾向を示している一方,1920×1080ドットだと異なる傾向になっている。描画負荷が相対的に低い1920×1080ドットではCPU性能の影響を受けやすくなるはずだが,3DMarkのPhysics Scoreは成績ばらついているため,あまり参考になりそうもないのが残念だ。
 強いて言えば,「最高」設定とその他のスコア開きがあまり大きくない点は,そのGPUクロックに対してCPUの性能が追いつかずにフレームレートが頭打ちになった結果といえるかもしれない。

 Fallout 4では最低ラインを40fpsとして,できれば50fps以上は欲しいところなのだが,Thermal Dock接続時は2715×1527ドットでこのラインをクリアしている点に注目したい。また,液冷ユニットなしの「標準」でも1920×1080ドットなら問題なくクリアしてきており,このあたりはGTX 980効果ということになりそうだ。

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 FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチにおける「最高品質」の結果がグラフ6だが,ざっくりとした傾向をまとめると,「標準」,「最適化」,液冷ユニット+「最適化」,「最高」の順でスコアが高くなっている。
 特徴的なのは「最適化」設定の2条件で,1920×1080ドットでGX700VO単体動作時のスコアが対Thermal Dock接続時で約87%のところ,2715×1527ドットでは約98%まで詰めている。このような特徴は,Far Cry 4のスコアにも見られたものだ。どうしてこんなことが起きているのかは,後のテストに委ねることにしたい。

 スクウェア・エニックスの示す指標の「非常に快適」のラインを超えてきたのは,2715×1527ドット条件だと「最高」のみ。ただし,かなりギリギリだ。1920×1080ドットであればスコア10000超えなので,1920×1080ドットでG-SYNCを味わいながら,というのが,FFXIVの正しいプレイスタイルということになるだろう。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのスコアを表示します
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高負荷設定における「PERFORMANCE」メニューの指定内容。初回起動時,PCの環境によって自動的に設定されるが,それをちまちまと変更している。なお,「VISUAL FX」では,「Screen Dirt」のみ無効化し,残りを有効化した。Screen Dirtを有効化すると,むしろ描画負荷が低くなる可能性があるためだ
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 最後は本稿独自テストとなるProject CARSである。ここでは,用意したリプレイデータを再生し,それをFrapsから計測する。リプレイデータは3分以上の長さがあるため,冒頭から2分間のフレームレートを2回取得し,その平均をスコアとして採用することにした。
 問題はグラフィックス関連の設定で,Project CARSではほかのタイトルにおけるグラフィックス設定プリセットに相当する選択項目がない。設定のうち,フレームレートに影響を与えるのは,メイン画面から「Options」−「Visuals」と選択した先にある「VISUAL FX」の設定群と,「PERFORMANCE」にある設定群の2つだ。前者はエフェクトを左右し,後者はグラフィックスの品質を左右するわけだが,今回は,できる限り高いグラフィックス設定を行い,さらにTexture Filteringを「Anisotropic 4x」に,Anti-Aliasingの設定を「MSAA」として,それを「高負荷設定」として採用した。

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 その結果がグラフ7である。
 全体の傾向はここまでとあまり変わらないのだが,それだけに,1920×1080ドット時のスコアでGX700VO単体動作時の「最適化」と比べて約65%にまで落ち込んでいるのはなかなか目を引く。GPUクロック制御が影響を与えているのかもしれないが,それについては後段で触れたい。

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空冷時でもGX700VOの筐体温度は意外に低め。液冷ユニット接続時は文句なし


 ここまでのテスト結果から,基本的には設定から期待されるとおりの性能が出ているといえるが,Thermal Dockと接続していないときのスコアはタイトルごとにバラついているように見える。もう少し突っ込んで述べるなら,Thermal Dockの有無によってGPUクロックの制御法に大きな違いがある可能性を指摘できよう。
 そこで,「最適化」設定時にThermal Dockの有無でスコア差が大きく付いたFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを使い,1920×1080ドット条件で,ベンチマークが1周する間のGPUクロックを,「GPU-Z」(Version 0.8.7)のログ機能から追ってみることにした。

 グラフ8は,「最適化」設定の2条件,そして参考までに「最高」設定も加えて,GPUクロックの推移をまとめたものだ。
 ベンチマークの開始と終了を正確に合わせるのは難しいため,3つのグラフで横軸のタイミングが揃っていない可能性があることはあらかじめお断りしておきたいが,Thermal Dockの有無で,GPUクロックの推移はまったく異なることがはっきり確認できよう。スコアのバラつきは,「どれだけ長い時間,高いクロックに入っているが」が液冷時と空冷時で異なることに起因すると見て間違いなさそうだ。

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 具体的な数字を見てみると,Thermal Dockを接続して液冷する場合,「最高」設定では最大クロックである1227.7MHzでほぼ安定する。「最適化」設定の場合,かなりの割合で最大クロックの1189.7MHzに入ったが,一方,空冷時の「最適化」設定だと,最大クロックは液冷時と同じながら,最大クロックに入る時間は露骨に少なくなるわけである。

 さて,グラフ9は,動作クロック推移と同時にGPU-Zから取得したGPU温度推移を追ったものである。「最高」設定では60℃前後,液冷を伴う「最適化」では51℃前後で安定するのに対し,空冷だと右肩上がりに温度が上がり続け,最終的には60℃台後半にまで温度が上がっていっているのが分かる。
 ただ,「GTX 980で60℃台後半」という空冷時の温度は決して高くない。もちろん,8分以上が経過した時点でまだ温度は上がりきっていない可能性があるので,まだ増大する可能性がないことはないが,それでも,優秀なクーラーを搭載した単体グラフィックスカード並みだとはいえそうである。

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 そのときの筐体温度はどうなっているだろうか。ここからは,チノー製サーモグラフ「TP-U0260ET」で撮影したサーモグラム(温度分布画像)で見ていこう。

空冷時のGX700VO,「最適化」,アイドル状態におけるサーモグラム
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 右のスクリーンショットは,GX700VOを単体で動作させた状態で「最適化」設定を行い,室温21℃の環境において,アイドル状態で30分間放置した直後の筐体温度である。サーモグラフの仕様上,サーモグラムは左右反転しているため,サムネイルではそれを再度反転させて,実態に則したものにしているが,人の手が触れるキーボード周りは30℃前後だ。
 なお,最も温度が高いのは液晶パネルの左下あたりだった。

空冷時のGX700VO,「最適化」,FFXIV 蒼天のイシュガルド ベンチ30分実行後のサーモグラム
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 次に,空冷のまま,FFXIV 蒼天のイシュガルド ベンチをループモードで実行し,30分間実行し続けた直後の結果を見てみよう。
 右がそのサーモグラムだが,発熱部位はキーボードの中央奥寄りに移動したものの,最大で35.1℃しかない。「GTX 980をノートPCの筐体に詰め込んだ」ことからイメージされる爆熱さとはほど遠い結果だ。GX700VOは,液冷ユニットを接続していない状態でも,問題のない温度で動くよう,温度制御がなされているようである。

 参考までに,「標準」設定で同様のテストを実行した例も下に掲載しておくが,筐体温度は更に低くなる。

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空冷時のGX700VO,「標準」,アイドル状態におけるサーモグラム
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空冷時のGX700VO,「標準」,FFXIV 蒼天のイシュガルド ベンチ30分実行後のサーモグラム

 では,液冷ユニットを装着するとどうなるだろうか。Thermal Dockと接続し,「最高」設定にした上で30分放置したアイドル時と,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを30分間連続実行し直後の結果も見てみよう。
 テスト中に室温が若干上がったため,アイドル状態で30分放置したときの表面温度は32℃台になっているが,そこから30分間ベンチマークを実行し続けても,表面温度はなんと約1℃しか上昇しなかった。Thermal Dock側で放熱が行われるため,本体ではなく,周辺の空気の温度が上がっているが,GX700VO側の表面温度は,ほとんど何も変わっていないと言ってしまっていいだろう。

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液冷時のGX700VO,「最高」,アイドル状態におけるサーモグラム
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液冷時のGX700VO,「最高」,FFXIV 蒼天のイシュガルド ベンチ30分実行後のサーモグラム

 以上から,「GX700VOでは,空冷時において,筐体温度がむやみに上がらないよう,かなり緻密にプロセッサの温度制御を行っている可能性が高い」と言える。そのため,空冷時のスコアは,そのときの筐体温度や室温の影響を受けやすくなり,結果,前段におけるベンチマークスコアのバラツキを生んだのだと筆者は推測している。

 気になる動作音はどれほどか。ここでは,コルグ製のレコーダー「MR-2」をGX700VOの本体側液晶パネル正面から30cmのところに置いて,空冷時の「最適化」と液冷時の「最高」,計4パターンを録音してみた。ぜひ聞いてみてほしい。

SOUND PLAYER:このブラウザは未対応です。PCをご利用ください。
※再生できない場合は,Waveファイル4点をまとめたZIPファイルをダウンロードのうえ解凍し,手元のメディアプレイヤーで再生してみてください。

 空冷時に負荷をかけて30分経過した時点のファン動作音は,「シャー」という,かなり耳につくものだ。薄型筐体なので音の周波数が高めになるのは致し方ないが,快適でないのも確かである。

 一方,Thermal Dockに接続した状態は,まず,アイドル状態で放置した状態がやたらと静かだ。連続した負荷がかかると,「ブーン」という低いファンノイズおよび振動が生じるが,それでもかなり静かだと言っていい。

 ちなみに,「手動」で液冷クーラーのファン回転数を最大まで上げると,相応に大きな音になったが,今回のテスト中,「最高」設定でそこまでファン回転数が上がることはなかったため,録音していない。実使用環境における動作音はいま聞いてもらった音という理解で大丈夫だと思う。


消費電力はACアダプターで賄える範囲。液冷時はOCマージンも


 最後に,システム全体の消費電力も確認しておきたい。
 テストにあたってはゲーム用途を想定し,無操作の状態が続いてもディスプレイの電源がオフにならないようコントロールパネルの電源設定で設定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。また,ノートPCであることを考慮して,アイドル時の消費電力はコントローロパネルの電源設定で「バランス」を選択した場合と,「高パフォーマンス」を設定した場合の2通りを選択している。

 結果はグラフ10に示したとおりだ。「最高」の設定では290W弱がピークとなった。液冷ユニット側のACアダプターは320Wクラスなので,十分に余裕があるといえる。また,Thermal Dock接続時の「最適化」設定における消費電力は,意外に低い。最大でも210Wだった。

 一方,空冷時の「最適化」設定だとピーク時186W, 「標準」設定は同184W
で,ほとんど変わらない。ノートPC単体用のACアダプターは190Wクラスなので,余裕があるといえばあるが,かなりギリギリだ(※バッテリーパックもあるので,実運用にあたって大きな問題はないはずだが)。
 なお,アイドル時は「バランス設定」のスコアが興味深い。先ほど,30分も放置すると,液冷ユニットのファンやポンプは極めて低い回転数で動作していることを指摘したが,その結果として,空冷時と大差のない消費電力値になるようである。

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明らかに万人向けではないが,本当に欲しい人の期待には応えてくれること間違いなし


 以上,GX700VOを駆け足でチェックしてきた。巨大な外付けユニットがあるため,ノートPCが元来持つ「使わないときにはコンパクトに収納できる」というメリットを粉砕するという,ある意味で大変アグレッシブなPCだが,性能面でどうしても不安定なマルチGPU構成や,外付けGPUに頼ることなく,とにかく高い3D性能を得られるという点では,夢のようなマシンともいえるだろう。

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 純然たるノートPCとして使う限り,GX700VOの3D性能は,「デスクトップ版GTX 980搭載モデル」から期待されるものに届かないが,その代わりに,スペックを考えると薄い筐体を実現できている。また,Thermal Dockと接続して液冷化し,「最高」設定にすれば,まさにデスクトップ版GTX 980そのものの性能を発揮できる。ASUSはこのあたりの使い分けや,それを実現するためのハードウェア制御に,とても真面目に取り組んでいる印象だ。
 しかも,事実上のNキーロールオーバー対応キーボードや,優秀なヘッドフォン出力など,「スペックだけ高い」PCになっていないのもいい。

 冷静になって考えてみると,ハードウェアの構成を豪華にしても,GTX 980搭載のデスクトップPCであれば,ざっくり25〜30万円もあれば手に入れることができる。コスト重視なら20万円以下というのもまったく不可能ではない。それだけに,「GTX 980搭載PCで約60万円」というのは,控えめに述べても常軌を逸している。また,運用面においても,机上で奥行きをかなり必要とするので,下手をするとデスクトップPC以上に取り回しは大変になるだろう。無責任に「お勧め」と言うわけにはいかない。
 ただ,GX700VOが,ある種の「ゲーマーの夢」を形にしたマシンなのも間違いないところだ。正直,GX700VOに心から惹かれる人は,日本全国に10人いるかどうかだと思うが,その人達の期待には,確実に応えてくれるだろう。

 個人的には,せっかくの技術だけに,この技術を受け継いだ,より安価なモデルが出てくることにも期待したい。

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