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「MAXIMUS VI FORMULA」フォトレポート。黒い装甲板をまとったゲーマー向けマザーボードの特徴を写真でチェック
そのなかでもとくに注目を集めたのが,第4世代Coreプロセッサに対応するマザーボードの新製品として披露された,ゲーマー向けのフラグシップモデル「MAXIMUS VI FORMULA」である。
MAXIMUS VI FORMULAは,2012年8月に発売された「Maximus V Formula」の後継となる製品で,Intel 8シリーズチップセットの最上位モデル「Intel Z87 Express」(以下,Z87)を搭載したマザーボードだ。発売時期は9月の予定で,メーカー想定売価は4万5000円前後とされている。
MAXIMUS VIシリーズでは,すでにオーバークロッカー向けの「MAXIMUS VI EXTREME」が発売済みで,実勢価格4万4000〜5万円程度(※2013年8月20日現在)で流通中だ。つまり,このままいけば,MAXIMUS VI EXTREMEとおおむね同程度の価格でMAXIMUS VI FORMULAは店頭へ並ぶことになるわけだが,果たしてどのあたりが「ゲーマー向けのフラグシップモデル」となっているのだろうか。今回4Gamerでは,量産ラインを使ったサンプルボード(※量産前の最終確認に使う個体)を入手できたので,その特徴を写真メインでお伝えしてみたい。
基板の保護と放熱を兼ねる「ROG Armor」
バックプレートは鋼鉄製
一目で分かるMAXIMUS VI FORMULAの特徴が,マザーボードの表と裏を覆っているカバー「ROG Armor」である。
基板を表と裏の両方からカバーで覆う構造と聞いて,ピンと来た人も多いだろう。耐久性重視のASUS製マザーボードブランド「TUF」(The Ultimate Force)に属する
実際,鋼鉄製のバックプレートは,SABERTOOTHシリーズのそれと同じく,放熱板,そして,パーツの着脱時に生じるテンションからマザーボードを保護する補強板として機能するようになっているという。
ROG Armorは,プラスネジでネジ留めされているだけなので,自己責任を覚悟すれば,外すのは簡単だ(※もっとも,一度PCケースに組み付けた後は,取り外すまでが大変だが)。というわけで外してみると,バックプレートの内側,ちょうど電源部の裏側部分に,ゴム状の熱伝導シートが貼られているのを確認できた。これにより,電源部の熱を,大きなバックプレートいっぱいに拡散しようしているわけである。
トップカバーの裏側。空洞だが,エアフローを整えていそうな気配は確かにない |
拡張スロットの周囲を覆っており,グラフィックスカードの熱からマザーボード基板を守るという |
そそっかしい筆者などは,PCケースへのマザーボード取り付け作業や,各種パーツ類を付け外しするときなどに,ねじや小さな部品,はては工具を基板上に落としてヒヤッとすることも珍しくない(※それでマザーボードを壊したこともある)。その点,マザーボード表面のほとんどを覆うトップカバーがあれば,思わぬ事故から部品や基板を保護するのにも役立ちそうだと感じた。マザーボードをPCケースに装着せず,むき出しで使っているような人にも,このトップカバーは破損防止に役立つのではないだろうか。
電源部の冷却機構は「CrossChill」に変更
空冷・液冷両対応はそのまま,形状を簡素に
外観面で目に止まるもう1つの特徴が,CPU用の電源部に,空冷と液冷の両方に対応した冷却機構「CrossChill」を装着している点だ。ASUSでは,
電源部に空冷・液冷両対応のヒートシンクを付けるという手法は,前モデルであるMaximus V Formulaでも採用されていたものだ。ただ,Maximus V Formulaのヒートシンクに比べると,ROG Armorで覆われるという理由もあってか,CrossChillの形状はかなりシンプルになっている。空冷・液冷両対応ヒートシンクでは,パイプを取り付けるためのコネクタがヒートシンク上に突出していることが多いのに対して,CrossChillでは突出部がなく,ヒートシンク上にはパイプの継ぎ手を取り付ける穴が開いているだけだ。
左はMaximus V Formulaのヒートシンク「Fusion Thermo」。右がMAXIMUS VI FORMULAのCrossChillで,形状は大きく様変わりした。継ぎ手の取り付け穴はゴムのカバーで覆われている |
CrossChillに液冷システムを取り付けるには,上面の穴にパイプをつなぐための継ぎ手を装着して,そこにパイプを差し込む。継ぎ手用のねじ穴は,液冷システムでは一般的に使われている「G1/4インチ規格」に対応しているとのことで,
ASUSは去る8月10〜11日に都内の秋葉原UDXでエンドユーザー向けイベントを開催し,そこでMAXIMUS VI FORMULAを用いた液冷のデモ機を展示していたが(関連記事),そこでは,L字型の短い継ぎ手を使ってパイプとCrossChillを接続することで,パイプの長さを抑えた冷却システムが構成されていた。システム内に配置するパイプを短くしたり,冷却能力に合わせてパイプの太さを選べたりできるというのは,たしかに利点といえるだろう。
ASUSの資料より,CrossChillの構造と対応する継ぎ手に関する説明スライド |
液冷ユニットを接続したデモ機。L字型の継ぎ手でパイプを接続している |
電源部のヒートシンクに触れたついでに,電源部も見ておきたい。
MAXIMUS VI FORMULAの電源部は,「Extreme Engine DIGI+ III」と呼ばれている。ASUSの資料や製品情報ページでは,Maximus V Formulaで採用されていた「Extreme Engine DIGI+ II」との違いが分かりにくいのだが,基本的にはマイナーチェンジ的な改良版という理解でいいようだ。
その一方で,コンデンサに「10K Black Metallic Capacitor」を採用する点は,前モデルと変わっていない。電源部は,大きな変更こそないものの,電力効率が若干の改善を果たし,温度がやや上がりにくくなったと理解すればいいだろう。
独自のミニ拡張カードmPCIe Comboが改良
M.2に対応したmPCIe COMBO IIに
拡張スロットやインタフェース類をチェックしてみると,まず目を引くのが,I/Oインタフェース部の隣にある独自仕様のコネクタと,そこに装着する小型拡張カード「mPCIe COMBO II」カードの存在だ。
mPCIe COMBO II(とそのコネクタ)は,前モデルであるMaximus V Formulaに付属していた小型拡張カード「mPCIe Combo」の改良版である。元になったmPCIe Comboは,mini PCI Express 2.0スロットとmSATAスロットを備えた小さい拡張カードで,mini PCI Express側に,IEEE 802.11a/g/n対応の無線LAN
(以下,PCIe)スロットやSATAポートを使うことなく無線LANコントローラやmSATA SSDを利用できますよ,いうのが売りだったわけだ。
マザーボードとmPCIe COMBO IIはPCIe 2.0 x1で接続されているため,これにM.2対応SSDを装着しても性能面で大きな期待はできない。とはいえ,早くもM.2インタフェースに対応してきたという点を,デスクトップPCのマザーボードとして珍しい特徴と言うことはできるだろう。
I/Oパネルの左隣に見えるコネクタが,mPCIe COMBO II用コネクタ(左)。マザーボード上にピンヘッダが突き出ていたmPCIe COMBOとは形状が変わった。付属のmPCIe COMBO IIカードを装着するとこうなる(右)。左横のケーブルは無線LANアンテナとの接続用で,I/Oパネルのシールドにはめ込む仕様 |
x16スロットはいずれも第4世代Coreプロセッサが持つPCIe 3.0 16レーンに接続されており,CPUに近い側のスロットから順に,以下のような構成が可能だ。ちなみに,すでに発売されているMAXIMUS VI EXTREMEは,x16スロットを4本備えているので,MAXIMUS VI FORMULAは拡張スロットの数でそれに及ばない。
- x16+x0+x0
- x8+x8+x0 (2-way SLI/CrossFire時)
- x8+x4+x4 (3-way CrossFire時)
なお,従来製品となるMaximus V Formulaでは,チップセット側のPCIe 2.0コントローラにPCIeブリッジチップを接続し,x4スロットを1つ用意していたが,MAXIMUS VI FORMULAではPCIeブリッジチップを使っておらず,x4スロットも持たない。x4スロットを必要とするデバイスは少ないので,コスト削減のために削除されたのだろう。
ちなみに,MAXIMUS VI FORMULAのマニュアルによると,Z87がサポートするSATAポートの5番めと,mPCIe COMBO IIカードのM.2スロットは排他となっているため,M.2側を使用する場合,SATAポートの5番めは無効になるとのことだ。
USBは3.0が6ポートに,2.0が4ポート。ビデオ出力端子はDisplayPortとHDMIが各1ポートで,そのほかには7.1ch出力とライン/マイク入力に対応した3.5mmミニピン端子×6,光角形のデジタル出力端子×1,1000BASE-T LAN端子が並んでいる。
なお,MAXIMUS VI FORMULAはオンボードの有線LANコントローラとして,Intel製の「Ethernet Connection I217-V」(WGI217V)を採用している。最近のゲーマー向けマザーボードでは,Qualcomm Atheros製のゲーム用LANコントローラ「Killer E2200」を採用する製品が増えているが,Killer E2200を採用しても,ネットワーク帯域幅が確実に向上する一方,ゲームにおける体感性能が何か変わったりはしないので(関連記事),ASUSは「コストに見合わない」と判断したのではなかろうか。
名称の混乱はともかく,サウンド機能の基本的な要素は,Maximus V Formulaのそれを継承している。マザーボード上でアナログ回路部分を物理的なシールドによって分離する構造や,SupremeFXのロゴが入ったEMI保護カバーでHD Audio CODECチップを覆う点,ヘッドフォン用のOPAMP(オペアンプ)として,Texas Instruments製のヘッドフォンアンプ「TPA6120A2」を採用している点などは,従来のSupremeFXと同じだ。
では何が変わったのかというと,赤いカバーに包まれた独WIMA製のフィルムコンデンサを採用してきた点と,フロントパネルのヘッドフォン出力用にCirrus Logic製の2ch D/Aコンバータ「CS4398」を採用した点が挙げられる。ASUSはアナログヘッドフォン出力時のS/N比120dBを謳っており,ここには相当自信があるようだ。
余談だが,Maximus V Formulaには外付けのUSBサウンドデバイス「Thun
ゲーマー向けの機能は少ないが
価格を気にしないなら選択する価値はあり
4万5000円前後というメーカー想定売価は,安いとは言えないものの,ROG Armorの見た目は所有欲をくすぐる面があり,自作PCの組み立てやパーツ交換のときに,基板がきちんと保護されているというのは安心感をもたらす。また,ゲームPCに組み込んで使う場面を考えても,機能面でとりたてて不足を感じる部分は見当たらない。
価格の高さが気にならないのであれば,第4世代CoreプロセッサベースのゲームPCを自作したいという人にとって,MAXIMUS VI FORMULAは悪くない選択肢になるのではないだろうか。
MAXIMUS VI FORMULA 製品情報ページ(英語)
- 関連タイトル:
Republic of Gamers
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(C)ASUSTeK Computer Inc.