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印刷2008/10/12 02:31

イベント

[TGS 2008#080]TGSフォーラム「マネジメントセッション」。銀行や投資家からみるゲーム会社&知財立国日本を目指して

 多くのゲーム業界関係者が集まる東京ゲームショウ。それに合わせて開催される「TGSフォーラム」は,ゲームビジネスにまつわる様々な講演を行う,業界人向けのイベントだ。10月9日に行われた「マネジメントセッション」では,「国境と業種の垣根をともに乗り越え,世界に羽ばたくゲーム企業のマネジメント戦略」と題して,ゲーム会社の経営者に向けた講演が行われた。
 マネジメントセッションに登壇したのは,みずほ銀行のビジネスソリューション部の逸見圭朗氏と,監査法人トーマツの公認会計士である伊藤雅之氏,そしてTMI総合法律事務所の弁護士 升本喜郎氏三谷英弘氏の4名。逸見氏はゲーム制作における資金調達やファイナンスについての話を,伊藤氏はゲーム会社におけるM&A・経営統合を含めたマネジメントの話,そして升本&三谷氏の両名は,今後日本のゲームビジネスがより一層世界へ展開していくうえで重要になる,契約・ライセンス上の注意点などについて語っていった。

 まず最初に講演を行ったのは,みずほ銀行の逸見氏。逸見氏は「なんでこんなところにみずほ銀行が?と思われるかもしれませんが,私どもは,かれこれ8年くらいコンテンツ(アニメ,音楽,ゲームなど)についての投資を行っております。もう150〜160作品,投資金額で言うと50〜60億円規模に達しています」と自己紹介を行いながら,「投資を受けてビジネスを行うからには,良いゲームを作ればよいというわけではありません。広告や流通なども含め,投資したお金を回収できてはじめて“成功”と言えるのです」と解説。続いて「ゲームに限らずコンテンツビジネスは,知的財産権(IPR)がベースの事業になりますが,IPRを金額で評価する方法は未だに確立されていません」と,投資対象として見たときのゲームビジネスの難しさを説明する。

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 金融機関から見た評価方法が確立されていないということは,投資を受けられない/受けにくいというのと同義だ。逸見氏は「ゲーム会社の皆様は,プロジェクトを立ち上げる際にどうすれば資金を調達できるのか。ここが悩みの種だと思います」としたうえで,「資金調達という意味では,アニメなど映像系のコンテンツが一歩先に進んでいるのですが,制作委員会制などを含め,資金調達方式の一層の多様化が今後は求められると思う」と,様々なケースに合った資金調達を意識すべきだいう。
 また氏は,「ご参考までに,金融機関が投資をする際にどういう点に注目しているかをご紹介したい」と,投資のポイントと銘打った箇条書きのリストを提示。企画段階からユーザーに行き届くまでの事業フローまで,要するに総合的なビジネス評価が行われているという雰囲気なのだが,これを見る限り,中小の事業者が投資を受けるまでの道のりは,やはり相当難しそうな印象はある。この話の中で,アニメ制作会社のIGポート(Production I.G)の資金調達の事例がグラフで提示されていたのだが,最初のヒット作となった「攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL」が自己資金で制作というあたり,いろいろと示唆に富んでいるような気がしないでもないのだが。

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 まぁ,投資家や金融機関から信頼されるためには,結局のところまず実績を作らなければならず(当然ではあるが),それをどうやって行うかという点こそが最大の問題ではある。大作ひしめく昨今は,中途半端な開発費で作ったゲームがそもそも市場で成功しにくいという事実もあるからだ。また常に新規性が求められるコンテンツ(エンターテイメント)制作事業で,過去の実績をベースにしたやり方には疑問符が付いてしまうこともあり(次の時代にもウケるのか,という問題だ),ゲームファンドも含めて,コンテンツの資金調達に関する昔からの難題は,未だ解決されないままではあるように思える。
 ただ,成功した作品(ライセンス)を担保にした資金調達が“普通にできる”ということは,それはそれで非常に大事なことだし,事業を拡大する一つの手段であることは確かだろう。

 ちなみに講演の中で逸見氏は,「私の立場で言うと問題もあるのですが,正直にいうと,コンテンツ系の会社さんがIPO(株式公開)するのは,やめておいた方がいいと思う」と,ストレートに語っていたのが筆者としては非常に印象的であった。「投資家など第三者の目を気にしなくてはいけなくなるし,やりたいことがやりづらくなり,いろいろと大変です」と言うが,逸見氏としては,株式公開ではない資金調達のほうが,コンテンツ系の会社には合っているという考えなのかもしれない。そのあたりの詳しい理由までを聞くことはできなかったが,コンテンツ事業に投資を行っている金融機関のプロの発言という意味で,なかなかに興味深い発言だといえるだろう。

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 逸見氏の後に続いたのは,監査法人トーマツの公認会計士,伊藤雅之氏。昨今,ゲーム・エンターテインメント業界の再編が進むなかで,企業間のM&A・経営統合のニュースが後を絶たないわけだが,伊藤氏の話は,そんなM&A・経営統合についての内容である。

 伊藤氏は,「近年,大手のゲーム関連企業が経営統合をしてきています。しかし,株価という観点から見ると,かならずしも成果(企業価値向上)が出ているわけではないように見えます」「具体的な名前を出してしまうと,バンダイナムコさんやセガサミーさんなどは,経営統合後にTOPIX(東証株価指数)がむしろ下がってしまっている」と指摘しながら,経営統合は「事前の綿密な計画/目標をもって行うべき」だとし,統合の基本合意前後から,双方の企業間で十分な調整を行う必要性を語っていった。
 講演の詳細については,あまりに専門性が高いので省くが,簡単にまとめてしまえば,統合に向けて行うべき作業を淡々と説明するような内容で,「初期統合計画を策定すること」「3〜5年後を見越した統合後の事業計画を練ること」「統合によるシナジー分析を行うこと」などを説明。参考資料として,経営資源のマトリクス表やシナジーチェックリストなどが提示されていたわけだが,伊藤氏が自分で仕事を行う際には,ある程度定型のチェックリストなどを利用することで,スピーディな情報整理,分析を心がけているという話であった。シナジーチェックリストだけでも,その項目は400強にのぼると言う。
 伊藤氏は,「近年はJ-SOX法の実施などもありまして,マネジメントに関する資料をアウトプットとして残すことが重要になりました。経営統合云々に限らず,資金調達のときにも今日お話ししたような資料は必要になると思います」と語りながら,一通りの解説を終了。「マネジメント,マネジメントと言っても,それが経営者の頭の中にあるだけでは駄目。第三者が見て分かるようにしていくことが大切です」として,講演を締めくくった。

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 最後は「世界に羽ばたくゲームビジネス」と銘打って,登壇したのは,弁護士 升本喜郎氏と三谷英弘氏。日本が国家戦略としてコンテンツを海外に展開していく方針であること,そしてゲームビジネスを国際展開するときの注意点などが語られた。

 まずは升本氏が「知的財産推進計画」など,日本のコンテンツ戦略の経緯を解説しながら,「2008年6月に策定された知的財産推進計画の要諦では,“世界を睨んだ知財立国”という一文があります。要するに,国際展開が重要なキーワードになっているのです」と,デジタルコンテンツがネット上などで今以上に配信される時代に向けて,日本がコンテンツ大国を目指す意志がある旨を説明。ゲームはその中でも重要な位置を占めるだろうとしながら,政府が海賊版の撲滅活動やライセンス事業のサポートなど,さまざまな取り組みを行い,国際競争力を強化する方針であると,コンテンツ業界を取り巻く動きを紹介する。

 政府機関によるコンテンツ産業振興策というと,経済産業省のJAPAN国際コンテンツフェスティバル,通称コ・フェスタなども連想されるわけだが,ここ数年,いわゆるお役所側で「日本のコンテンツを世界で!」という動きがあるというのは,4Gamerの読者ならすでにご存じのことだろう。

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 升本氏がマクロ的な話をしたのに続いて,三谷氏が登壇。2年ほど北米に駐在していたという自身の経験を合わせながら,北米における日本コンテンツ(主にアニメ)の状況などを紹介していった。三谷氏は,VIZ Mediaというアニメや漫画などのライセンス事業を行っている北米の会社で経験を積んだらしく,後のアニメコンベンションについての話などを聞く限り,コンテンツビジネスについていろいろと詳しそうな雰囲気。熱血系?の熱い講演は,聞いていてなかなか興味深い内容であった。

 ちなみに映画,ゲーム,音楽などといったエンターテイメント産業の多くは,北米市場が世界最大の規模を誇っている。つまり,北米を制するものが世界を制す……かどうかは分からないが,国際展開するうえで,北米はもっとも重要な市場の一つ。かの国でビジネスを成功させることは,金銭的な善し悪しのみならず,大きな意味を持つ。

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 三谷氏は,「ご存じの方も多いでしょうが,北米では,日本のアニメが大きなムーブメントになりつつあります。アニメを扱ったイベント“アニメコンベンション”は,今や北米全域で開催されており,非常な人気を博しています」と説明。自身が撮ってきた(?)と思われる写真を紹介しながら,その盛り上がりの様子を語った。

 三谷氏は,コンテンツビジネスを成功させるためには「国にとらわれないコンテンツビジネスの諸問題を把握したうえで,国ごとの違いを知る必要がある」としながら,日本と北米での訴訟となるようなリスク要素の違いや,レーティングへの考え方の違いなどを解説。また近年ゲームが映画化されるケースが増えてきたことなどに触れ,ライセンス契約の注意点について話を広げていった。
 ライセンス契約については,「ハリウッドの弁護士達は,ありとあらゆる権利を持っていこうとします」と語りながら,「何かのライセンスを譲渡することで,本来の事業に支障をきたしては本末転倒。例えば,映画化権,そしてその続編の権利などを与えてしまえば,酷い内容で原作そのものをイメージダウンさせかねない映画であっても,もう差し止めることはできない」など,「何の権利を与えて,何を与えないのかは良く考えてから契約した方が良い」と,基本的な注意を促す。まぁどれとは言わないが,ゲームの映画化に酷いものが多いのは確かではあろう。

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 いろいろと多岐に及んだ三谷氏の話だったが,なかでもとくに興味深かったのは,AMV(Anime Music Video)と呼ばれる,日本のアニメやゲームの映像を編集,合成した映像作品についての話だろう。これは,日本でいうところのMADムービーに当たるものなのだが,北米では,前述したアニメコンベンションで上映会やコンテストが行われるなど,ファン活動の一つとして認められている(といっても,黙認だが)節があるのだという。
 三谷氏は,弁護士らしく法律の観点からAMVを解説。著作権法上は日本,北米のどちらも「翻案」行為に当たるとしながら,北米には「フェアユース」の概念がある点が大きな違いだとし,「ファンの活動を阻害するのはあまりよくないかもしれない」と,ある程度までは黙認するのも必要というあたりを示唆していた。
 ただYouTube上におけるAMVは,権利者側が積極的に削除申請をしているなど,フェアユースの概念があるからといって決してAMV自体が認められているわけではなく,法律的にグレーゾーン(もしろは黒)である点は間違いない。

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 三谷氏が言うには,ある程度著作権侵害が黙認されている背景には,「アメリカの司法機関は,今はテロとの戦いに手一杯で,著作権侵害ごときではなかなか動いてくれないなどといった実情もある」という。また「アメリカは,著作権に関しては厳しくて,ガンガン取り締まっているという印象があるかもしれないが,実態は企業が弁護士を雇って訴えるだとかそういうアクションであって,警察などの国家権力を使って取り締まるというのは,実は日本のほうがちゃんと行われている」など,著作権侵害に対する対応が,北米でも一筋縄ではいかない点を強調していたのは,なかなかに興味深い。
 北米では,アニメの海賊版(ファンの多くはネット経由で見てしまう)がすでに大きな問題になっているわけだが,三谷氏曰く,「日本のコンテンツが侵害されている。ぜひ動いてくださいと,日本政府が米政府に対して文字にして要求したのは,実は去年が初めてなんです」という状況なのだとか。要するに,政府レイヤーのアクションは,これからやっと動き始める(かも)という段階なのだという。
 いずれにせよ,そんな話をしながら三谷氏,そして升本氏の両名は降壇。最後には,講演者4名に向けての簡単な質疑応答を行いながら,セッションは終了した。

 さて,今回のセッションで感じたのは,ゲーム産業が世界規模の競争へと突入していくなかで,経営統合による業界再編が進んでいくだろうこと(最近では,コーエーとテクモの事例がある),そして国際展開に向けての環境整備がより一層求められていくだろう……という辺りだろうか。知財立国日本というと聞こえはいいが,その道筋は決して楽なものではない。課題を一つ一つ乗り越えていく,忍耐強さと辛抱強さが必要になるだろう。


 
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