インタビュー
独立系新興デベロッパの国産オンラインゲーム「MonsterTrail Online」が,間もなくお披露目か
実は4Gamerでは,11月上旬に韓国で行われたゲームショウ「G★2007」の会場で,エンタドライブの代表取締役である久永智之氏と遭遇し,その場で軽くインタビューを行っている。なんせ,これまでエレクトロニック・アーツやEidos Interactive,そしてカプコンなどでPCゲームを中心に扱ってきた久永氏が,G★2007のB2Bホール周辺にいたのだから,その目的が気になるのは当然のこと。
ただし,その時点では「まだ不確定要素が多すぎるので,記事にはしないでください」とのことだったので,これまで掲載を見送ってきた。だが今回,ティザーサイトが公開されたことで,そろそろ表立った動きを始めるのでは? とインタビューの掲載を打診。その結果,本記事が出来上がったという次第である。エンタドライブが現在準備を進めているのは,果たしてどんな作品になるのだろうか……?
「MonsterTrail Online」は,来春正式サービス開始か
あ,久永さんじゃないですか。
久永智之氏(以下,久永氏):
お,こんにちは。取材ですか?
4Gamer:
久永さんも取材……ではないですよね。G★2007へは,視察ですか? それとも……?
久永氏:
一言で言ってしまうと商談です。
4Gamer:
商談というと,新作の買い付けですか? それとも,公式サイトで触れてる開発中の新作を売り込みに?
久永氏:
開発中のタイトルの目処が立ってきたので,韓国やタイなどのパブリッシャとミーティングをするために来たんです。
4Gamer:
お。日本でもまだ発表すらされていないですよね? もしかして,日本でのサービスは後回しで,オンラインゲーム市場の大きい韓国を優先するということなんでしょうか?
久永氏:
いえいえ,そんなつもりはありませんよ。
日本では来春に正式サービスをして,それから韓国などでの展開を考えているんです。
4Gamer:
来春……って,けっこうすぐですよね,もう。
どんなゲームなのかもそうですが,そもそもタイトルすらまだ発表されていないということを考えると,本当にそんなに早く? と思ってしまうのですが。
久永氏:
大丈夫ですよ(笑)。今のところ,来春には正式サービスに持って行ける手応えをつかんでいます。ただ,オンラインゲームを開発してサービスするというのは会社にとって,初めての経験ですから,不測の事態がないとは言えないですけどね。
4Gamer:
詳しい発表をしてこなかったのは,発表だけしてサービス開始がズルズル遅れてしまうことへの危惧もあったから,という感じですか。
久永氏:
もちろん,それはありますね。
初めてのことだらけなので,最初のテストは“テクニカルテスト”という位置づけで,サーバーの負荷とか,通信回りのプログラムの出来栄えをチェックするつもりなんですよ。もう,ホントに「テスト」です(笑)。まだ日程は決まっていないのですが,近々お知らせできると思います。
4Gamer:
そのゲームって,求人情報にも載ってた“シミュレーション要素を持った新作”ですよね?
久永氏:
そうです。ちょっとだけお話してしまうと,MMORPGではないカジュアルゲームであり,少なくともオンラインゲームとしてはあまり例のないタイプのものなんですよ。
4Gamer:
オンラインゲームとしては……? ということは,家庭用とかではすでにあるタイプなんですね。
久永氏:
ええ。そういう意味では,日本的なゲームとも言えるかもしれません。
4Gamer:
正直,さっぱり分かりません(笑)。
久永氏:
まだ言えないんです,すみません(笑)。
オンラインゲームとしては,あまり前例のないゲームになる
でも,今回ミーティングをしている韓国やタイのパブリッシャには,当然内容を説明しているわけですよね。その反応はいかがでしたか?
久永氏:
今回,10数社と会合を持ったのですが,そのうち三分の一からは「このゲーム性は韓国では受けない」と言われてます。そしてほかの三分の一は「新しいのは分かるけど,面白いのかどうかが分からない」と。
4Gamer:
ほうほう。
久永氏:
でも残りの三分の一……実はこれ,大手ばかりなんですが,「ぜひやりたいから,早くテスト環境を!」という好反応だったんです。
4Gamer:
大手ばかりがそういう反応を示すというのは,面白いですね。
久永氏:
やっぱり大手のほうが,新しいジャンルに手を出す余力があるということなんでしょうね。それに大手は,これまで何もないところから市場を切り開いてきて,その結果として今のポジションがあるわけです。なので,新しいことをやらない限り,これまで以上の市場を獲得できないということが経験上分かっているんだと思うんです。
4Gamer:
そこまで“新しい”というと,今回のG★2007に類似しているタイトルはない……ということですか?
久永氏:
ないですね。最近,韓国ではMMORPGがハイテク競争になっていく一方で,カジュアルゲームも活発になってきています。でもスポーツにしろFPSにしろ,フライトシミュレーションっぽいものにしろ,基本的にはアクション要素が強いものばかりなんですよね。でも,現在私達が開発しているのは,アクションではなく,シミュレーション要素を持ちながら,カジュアルに楽しめるものなんです。
4Gamer:
というと,興味を示してもらえなかったパブリッシャは,「アクションじゃないから」という理由だったのですか?
久永氏:
そうかもしれませんね。
別に奇をてらった作品ではないので,日本のゲームファンに話をしたら,たぶん「ああ,なるほど!」と思ってもらえる内容だと思います。ただ,そういうゲームが韓国ではこれまで出てきていなかったようで。言われてみれば確かにないですね。
なので今回の打ち合わせでは,一緒に新しいジャンルを楽しむゲーマーを育てましょうと,そういう話をしてきました。
4Gamer:
単発の作品だけではなく,新たなジャンルを牽引していこうという意志もあるわけですね?
久永氏:
ええ,日本的なゲームで韓国のオンラインゲーム市場を引っかき回せたらいいな,と。もちろん,現地パブリッシャの要望に応じて,キャラクターや内容に手を入れるつもりはありますけど。
4Gamer:
では,韓国でのサービスは,いつ頃を目指しているのでしょうか。
久永氏:
内容に手を加えず,テキストの翻訳だけ……ということでも,日本での正式サービス開始から3〜6か月程度は必要だと考えています。内容にまで手を入れるとしても,6か月遅れぐらいでなんとかしたいですね。
4Gamer:
では,来年の夏ぐらいには韓国でも?
久永氏:
そうなるといいですねぇ。まあ,なにより日本での予定が順調に進めば,ですけどね。
4Gamer:
ではとりあえず,その予定が発表される日を楽しみにしています。
ゲームの内容については,はぐらかされてしまった印象だが,先日のティザーサイト公開時に明らかになった「MonsterTrail Online」というタイトル(だと思われる)と,この久永氏の話にも出てくる“日本的”“シミュレーション要素”“アクションではない”“韓国にはいままで存在しないタイプ”,そして「走る! 育てる! つながる!」というキャッチコピーなどを合わせて考えてみると,何らかの育成系シミュレーションゲームになるのではないかと思われる。それが走ったりつながったりするとなると? いや,ただ単に,“オンライン”という意味で“つながる”だけかもしれないが……などなど,あれこれ予想は尽きない。
なお今回,この記事を掲載するにあたり,今後のスケジュールについての最新情報を問い合わせてみたところ,「近日中に発表したいことがあります」との回答が得られた。来春には正式サービスが始まるということを考えると,早ければ年内にも何らかの発表がありそうだ。また続報を入手次第,あらためてお伝えする予定なので,今しばらくお待ちいただきたい。
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