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ATI Radeon HD 2600
  • AMD
  • 発表日:2007/05/14
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Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
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印刷2007/10/11 12:22

レビュー

ATI Radeon HDシリーズ初のデュアルGPUカードは“使える”のか

GC-D26XT2-F5

Text by Jo_Kubota

»  ATI Radeon HD 2000シリーズを搭載する初のデュアルGPUカードが登場した。デュアルGPUカードは,その使い勝手や価格などから,どうしてもマニア向けの域を脱し切れていないが,新世代GPUを搭載した今回の製品はどうだろうか? Jo_Kubota氏が分析する。


GC-D26XT2-F5
メーカー:Info-Tek Taiwan(GECUBE)
問い合わせ先:マスタードギガ(販売代理店) TEL 03-5753-5898
実勢価格:4万7000円前後(2007年10月11日現在)
画像集#002のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
 Info-Tek TaiwanのGECUBEブランド(以下GECUBE)がリリースした「GC-D26XT2-F5」は,2個の「ATI Radeon HD 2600 XT」GPUを1枚のカードに搭載した,デュアルGPUカードだ。
 「双子座」から取られたと思われる「Gemini 3」という愛称があるので,以下本稿ではGC-D26XT2-F5という型番表記ではなくGemini 3と呼ぶが,Gemini 3は,カード1枚でCrossFire動作が可能なのが最大の特徴である。
 デュアルGPUカードというのは,汎用性が高そうに見えて,実際にはドライバの対応などが問題で使いにくく,ニッチな,レアモノマニア向けに留まることが多かったわけだが,果たしてミドルレンジGPUを2個搭載したGemini 3はどうだろうか? 今回はGECUBEの販売代理店であるマスタードギガからサンプルを借用できたので,その可能性を探ってみたい。


Gemini 3動作の仕組みと

ハードウェアの特徴をチェック


ATI Catalystをインストールすると,GC-D26XT2-F5はCrossFire構成として認識される
画像集#003のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
 いきなりで恐縮だが,極めて厳密に述べるなら,Gemini 3で実現されているのは,CrossFireではない。AMDによれば,CrossFireでは「グラフィックスカードがどのような構成で接続されているか」をチェックしに行くため,マザーボードのBIOS側の対応が必要になる。その点Gemini 3(などのデュアルGPUカード)では,マザーボードをチェックする機構が省かれているため,マザーボード側の対応なしに,プラットフォームを問わず動作するという。
 まあ,Gemini 3で実現されていることはCrossFireそのものなので,ゲーマー的には「1枚でCrossFireを実現するカード」という理解でまったく問題ないのだが,マザーボードとの互換性に関する部分は,記憶に留めておくのもアリかと思われる。

 さて,テストの前にカードをざっと見てみよう。カード長は210mm(※突起部除く)で,「ATI Radeon X1950 Pro」の220mm強と比べても短く,別段大きい印象がない点を,あらかじめ述べておきたい。カードサイズが原因でPCケースに取り付けられないという問題は,まず生じないはずだ。

画像集#004のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
6ピンの外部電源コネクタは接続必須。クーラーはオリジナルデザインで2スロット仕様だ
画像集#005のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
(CrossFireを利用しなければ)デジタル/アナログRGB(DVI-I)出力4系統を利用可能

画像集#006のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
カード背面にも銅製のヒートスプレッダを装備する
画像集#007のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
ヒートスプレッダを外すと,メモリチップが見える

画像集#008のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
GPUクーラーを取り外したところ。中央に見えるのがPLX Technology製のPCI Expressブリッジチップ「PEX 8547」だ
画像集#009のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
2個のGPUはPEX 8547を介して,いずれも16レーン接続。ちなみにチップ自体の消費電力は4.9Wとされる

試用した個体が搭載していたのはQimonda製の2nsモデル,HYB18T512161B2F-20だった。512Mbit品となる同製品をGPU当たり8個搭載し,512MB×2を実現する
画像集#010のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
 COMPUTEX TAIPEI 2007のレポート記事でも説明されているとおり,Gemini 3が搭載するメモリチップはDDR2 SDRAMだ。この理由についてGECUBEは「GDDR3メモリを選択したときと比べて,CrossFire動作時の性能はほとんど変わらなかったので,コストを重視した結果」と説明する。

 というわけで,そのCrossFire動作時におけるパフォーマンスを見ていくことにしよう。
 比較対象としては,GDDR3メモリ版のATI Radeon HD 2600 XT搭載カードのほか,「ATI Radeon HD 2900 XT」「GeForce 8600 GTS」「GeForce 8800 GTS」搭載製品も用意している。

画像集#011のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
SAPPHIRE HD 2600 XT
定番の2600 XT搭載製品
メーカー:Sapphire Technology
問い合わせ先:アスク(販売代理店) info@ask-corp.co.jp
実勢価格:1万6000円前後(2007年10月11日現在)
画像集#012のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
HD2900XT-D2V-P512D3
貴重なハイエンドの選択肢
メーカー:Tul
問い合わせ先:アスク(販売代理店) info@ask-corp.co.jp
実勢価格:5万2000円前後(2007年10月11日現在)

画像集#013のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
8600GTS-256A3
価格が魅力の8600系最上位
メーカー:Albatron Technology
問い合わせ先:アスク(販売代理店) info@ask-corp.co.jp
実勢価格:2万4000円前後(2007年10月11日現在)
画像集#014のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
8800GTST
リファレンス仕様の版320MBモデル
メーカー:Albatron Technology
問い合わせ先:アスク(販売代理店) info@ask-corp.co.jp
実勢価格:4万2000円前後(2007年10月11日現在)

Gemini 3の動作クロックはコア800MHz,メモリ1GHz相当(実クロック500MHz)
画像集#015のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
 このほかテスト環境は表1のとおり。試用したグラフィックスカードのスペックは表2にまとめた。Albatron Technologyの8800GTSTだけ,10MHzほどリファレンスクロックよりコア/メモリクロックが高いものの,基本的にはリファレンスクロックの製品を揃えたつもりだ。
 
 注目は,ミドルレンジの2枚に対してGemini 3が明確なアドバンテージを持てるか,そして,ATI Radeon HD 2900 XTにどこまで迫れるか,といったところになる。

画像集#016のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
画像集#017のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載

 テストした解像度は1024×768/1280×1024/1600×1200ドットの3パターン。ベンチマークテスト方法は4Gamerのレギュレーション4.1に準じるが,今回はテストに費やせる時間が短かったため,「高負荷設定」でのテストは省略。「標準設定」のみで計測した点をあらかじめお断りしておきたい。
 なお,細かい点だが,以下Gemini 3以外はグラフィックスカード名ではなくGPU名で表記する。


ポテンシャルは高いものの

スケーリングの安定感が課題


 まずは「3DMark06 Build 1.1.0」(以下3DMark06)と「3DMark05 Build 1.3.0」(以下3DMark05),2大3Dベンチマークソフトのスコアから見ていこう(グラフ1,2)。Gemini 3は,ATI Radeon HD 2600 XTのシングルカードに対して,3DMark06で45〜50%,3DMark05で35〜42%のスコア上昇を見せる。CrossFireによるスケーリングがうまくいったときには,3〜5割程度のパフォーマンスが見込めそうだ。
 一方,ハイエンドGPUを前にすると,絶対的に届いていない点も指摘しておく必要がある。

画像集#018のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
画像集#019のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載

 両3DMarkの結果を踏まえ,ゲームパフォーマンスのチェックに入って行きたい。
 グラフ3は,FPS「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」(Version 1.0004)のテスト結果で,さすがに3DMarkほどではないものの,CrossFire動作の効果は出ている。ATI Radeon HD 2600 XTのシングルカード比で32〜37%なので,まずまずだ。
 ただ,CrossFire動作でも,GeForce 8600 GTSに及ばないのは少々問題。ATI Radeon HD 2600 XT自体の最適化が,そもそも進んでいないような印象を受ける。

画像集#020のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載

 そして,より深刻なのが,ATI Radeonに最適化されている「Half-Life 2: Episode One」の結果だ。スコアはグラフ4のとおりだが,明らかにスケーリングがうまくいっていない。Half-Life 2: Episode One自体はCrossFireによるスケーリングに対応しているので,冒頭で述べた“厳密にはCrossFireでない”という事実が影を落としているものと思われる。

画像集#021のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載

 続いてはTPS「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下ロスト プラネット)のスコアである(グラフ5,6。レギュレーション4.1の設定だとミドルクラスのGPUには荷が重いが,それに目をつぶっても,Snowでシングルカードよりスコアが(若干ではあるものの)低下しているのはいただけない。
 一方,主にCPUパフォーマンスがスコアに影響するCaveのスコアを見てみると,興味深いことに,Gemini 3のスコアが上昇している。ATI Radeon HD 2600 XTのシングルカード時と比べて31〜37%向上なので,「なぜCaveでだけスケーリングが有効なのか?」と思ってしまうが,Snowの結果からして,CrossFireが機能しているとはいえない。ここは,グラフィックスメモリ容量の効果と見るべきだろう。ロスト プラネットは非常に“グラフィックスメモリ食い”のタイトル。それだけに,比較対象となるシングルGPU仕様のATI Radeon HD 2600 XTカードの倍となる,GPU当たり512MBという容量が効いたと考えるのが妥当だ。そう考えると,高解像度でGemini 3とGeForce 8600 GTSがいい勝負になる点も納得できる。

 なお,ロスト プラネットにはオプションに「マルチGPU」という項目が用意されているが,オン/オフを切り替えてもスコアに大きな変化はなかった。そのため今回は「オン」のスコアを採用したことを付記しておきたい。

画像集#022のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
画像集#023のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載

 続いてRTS「Company of Heroes」のテスト結果に移るが,ここでは「グラフィックスメモリ320MB版GeForce 8800 GTSに迫る」という,理想的な結果になっている(グラフ7)。グラフィックス演算性能よりも,大量のキャラクタデータやフィールドデータでグラフィックスメモリを消費するタイプのゲームにおいては,GPU当たり512MBの効果は絶大といえそうだ。

画像集#024のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載

 最後にグラフ8で示したのが,「GTR 2 - FIA GT Racing Game」(Version 1.1)のスコアだが,Company of Heroesと同じく,Gemini 3のスコアは良好だ(グラフ8)。高解像度で最大47%のスコア上昇という,GPUスケーリングのお手本のようなスコアになった。

画像集#025のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載


消費電力は予想の範囲内

むしろ気になるファンの動作音


 消費電力についてもチェックしておこう。Windows XPを起動し30分放置した直後を「アイドル時」,3DMark05を30分間連続実行し,最も消費電力の高かった時点を「高負荷時」として,それぞれの時点における消費電力をワットチェッカーで計測した結果をまとめたのがグラフ9だ。

 スコアはCPUなどの省電力機能を無効化した状態で計測したものだが,もともと低消費電力のATI Radeon HD 2600 XTだけに,2個搭載したときの消費電力も,そう無茶な値にはなっていない。さすがに高負荷時の消費電力は高いが,それでもATI Radeon HD 2900 XTのそれを下回っており,デュアルGPU+ブリッジチップ仕様ということを考えると,妥当なラインといえよう。

画像集#026のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載

 なお,今回のテスト構成ではGemini 3のGPU温度を計測できなかった。また,ファンの音について付記しておくと,アイドル時でもそれなりにうるさく,ゲームをプレイするとファン回転数が上がって,間違っても静音仕様とは呼べない。交換できそうなGPUクーラーも見当たらないため,静音化はかなり難しそうである。


悪い製品ではないが

では,果たして誰向けなのか?


製品ボックス。サンプルということもあり,今回は付属品を確認できていない
画像集#027のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
 2007年10月11日時点におけるGemini 3の実勢価格は4万7000円前後。比較対象として用意したSAPPHIRE HD 2600 XTの実勢価格は1万6000円前後で,他社製品もたいていは2万円以下で購入できることを考えると,Gemini 3は「ベラボーに高いわけではないが,安くもない」ことになる。

 Gemini 3とほぼ同じ価格――むしろより安価なことが多い――でグラフィックスメモリ320MB版のGeForce 8800 GTSを購入できること,そして,CrossFireのパフォーマンスは魅力的であるものの100%の効果を期待できるわけでは決してないことを考えると,コストパフォーマンスは微妙。いま手元に4〜5万円あるなら,素直にハイエンドのグラフィックスカードを購入すべきだ。

画像集#028のサムネイル/Radeon HD 2600 XT×2を搭載のデュアルGPUカード「Gemini 3」レビュー掲載
 おそらく,Gemini 3が持つ最大のメリットは,CrossFireを無効化したときに,1枚のグラフィックスカードで最大4画面のデジタル/アナログRGB出力を行える点にある。オンラインゲームなどのクライアントを四つ同時に実行して,さらにそれらを一定の体感速度でプレイしたい。そういった限定された用途に向けては,相応に価値のある製品といえるのではなかろうか。
 換言すると,Gemini 3もやはり,マニア向けの製品なのだった。

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    ATI Radeon HD 2600

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