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Access Accepted第527回:Focus Home Interactiveとはどんなパブリッシャなのか? 同社の20年の歴史を支えてきたCEOにインタビュー
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印刷2017/02/13 12:00

業界動向

Access Accepted第527回:Focus Home Interactiveとはどんなパブリッシャなのか? 同社の20年の歴史を支えてきたCEOにインタビュー


 本連載をお読みになるようなコアゲーマーなら,その名前ぐらいは聞いたことがあはずのパブリッシャ,Focus Home Interactive。2017年2月には10タイトル以上が紹介されたイベントを開催するなど,今,非常に元気なゲーム企業の1つといえる。今回,同社のCEOに単独インタビューを行う機会を得た。日本ではまだよく知られていないと思われる同社について,詳しく語ってもらったので,その内容をお伝えしたい。


Focus Home Interactiveというパブリッシャ


 フランスのゲームパブリッシャ,Focus Home Interactiveは2017年2月1日〜2日,お膝元のパリのイベントホールAtelier Richelieuにおいてイベント「What's Next de Focus?」を開催し,2017年後半から2018年にかけてリリースされる同社のラインナップを紹介した。4Gamerも,アジアのゲームメディアとしては唯一,そのイベントに招待されており,発表された新作やデモについては,すでに記事として掲載した。読者の皆さんも,きっとそれらのうちいくつかに目を通してくれたはずだ。

「What's Next de Focus?」の会場になったイベントホール,Atelier Richelieuのフロントドア。場所はオペラ座の近く
Access Accepted第527回:Focus Home Interactiveとはどんなパブリッシャなのか? 同社の20年の歴史を支えてきたCEOにインタビュー
 それにしても,日本のゲーマーにとってFocus Home Interactiveとは,どのようなブランドなのだろうか? というか,そもそも同社の名前を知っている人はどれくらいいるだろうか?
 今回,「What's Next de Focus?」の会場で,CEOのセドリック・ラギャリック(Cédric Lagarrigue)氏にインタビューを申し込んだのは,そんな気持ちが筆者にあったからだ。Focus Home Interactiveの歴史やビジネス戦略を自らの口で語ってもらうことで,日本の皆さんに同社のことをより詳しく知ってもらいたかったのだ。

 1996年に設立されたFocus Home Interactiveは,当初PCゲームをメインにしており,そのため,同じくPCゲーム専門の情報サイトだった4Gamerにとって,古くからなじみのある名前だった。同社のルーツとも言える「Cycling Manager」シリーズは,2001年に「サイクリングマネージャー」というタイトルで日本語版がリリースされたし,リアルな波を再現したボートシミュレーション「Virtual Skipper」シリーズを記憶している人もいるだろう。

このキーアートを見て,出ているキャラクターの名前やタイトルを空で言える人はそれほど多くないと思うが,これからきっと増えていくはずだ
Access Accepted第527回:Focus Home Interactiveとはどんなパブリッシャなのか? 同社の20年の歴史を支えてきたCEOにインタビュー

Focus Home Interactive公式サイト


 そんなFocus Home Interactiveが,日本でパブリッシャとしての知名度を上げてきたのは,比較的最近のことだ。具体的には,GIANT Softwareの農業シム「Farming Simulator 2013」や,同社にとって初の本格的なコンシューマ機市場参入作となったCyanide Studioの「Of Orc and Men」が発売された,2012年頃からではないだろうか。
 もっとも,「名前は知っているけど,まあ,地味なパブリッシャだよね」という意見はあるだろう。しかし,20周年を迎えた昨年に引き続き,今年も開催された「What's Next de Focus?」では,コアやニッチなゲーマー層にアピールしつつ,ストーリーやテーマなどで非常に興味深い,以下のような作品が次々に紹介された。

■クトゥルフ神話をベースにしたホラーRPG,「Call of Cthulhu: The Official Video Game」のデモが初公開

■3000匹のネズミがゲーム画面を動き回る! 背筋ゾクゾクな新作アクションアドベンチャー「A Plague Tale: Innocence」の詳細が明らかに

■ゾンビはもう古い! 「ワールド・オブ・ダークネス」の世界観をベースにした人狼が主人公のアクションRPG「Werewolf: The Apocalypse」とは

■バロック調のファンタジー世界をモチーフにしたアクションRPG「GreedFall」の制作が発表に

■誰の生き血を吸うべきか? アクションRPG「Vampyr」のディテールが,パリで開催されたゲームイベントで明らかに

■「Warhammer 40,000」関連作品の世界観をベースにした新作タクティカルRPG「Necromunda: Underhive Wars」が発表

■強化外骨格のアップグレードを楽しむ新作メレーコンバット「The Surge」のプレイアブルデモが出展

■新作FPS「Insurgency: Sandstorm」の最新情報が公開。主人公はクルド人の女性戦士

 記事として掲載したタイトルを並べてみると,面白そうなゲームがずらりと並んでいるという印象なのだが,いかがだろうか。

 Focus Home Interactiveは,2年ほど前に欧州の株式市場であるEuronextに上場し,ゆっくりとだが,着実に株価を上げている。現在は,上場当時の2倍の値を付けるほどに成長し,欧州では,今後も要注目の企業として見られているようだ。前置きが長くなったが,というわけで,フランスの地にしっかりと土台を築き,世界に向かって羽ばたく,この成長株にして古参のパブリッシャを率いるセドリック・ラギャリック氏へのインタビューを,以下に紹介する。


大手パブリッシャとは異なる,独自のポリシー


4Gamer
Focus Home Interactiveの設立者でCEOのセドリック・ラギャリック氏。業界歴は長いものの,日本のメディアに登場するのは,おそらく初めてのことだ
 ではまず,ご自身とFocus Home Interactiveの紹介をお願いできますか。

セドリック・ラギャリック(以下,ラギャリック)氏
 いいですよ。私はFocus Home Interactiveの創設者でCEOの,セドリック・ラギャリックです。地元の小さな企業のマーケティング部門で働いていたこともありましたが,今から21年前にこの会社を立ち上げました。目的は,ゲームのディストリビューション(パッケージ販売の卸売業)をすることでしたが,最初は何も分からず何もない状態でした。それが今や,こんな自社イベントを開けるまでに成長したわけです。

4Gamer
 Focus Home Interactiveは,設立当初はPCゲームを中心に扱っていたという印象があります。

ラギャリック氏
 そうです。最初はPCゲームだけでした。コンシューマ市場が巨大化してPCゲームビジネスが圧迫される中,どのように生き残っていくか考えたときに可能性を感じたのがデジタル販売でした。そういうわけで,我々はSteamに参入した初期のパブリッシャの1つになったんです。2006年のことですね。
 デジタル販売はさらに大きくなると考え,ほかのパブリッシャと差別化するためにも,かなり早くから自分達のサイトで直接販売することも始めました。その頃,我々の名前はフランスではそれなりに知られていましたが,国際的に知名度を上げていくためにも,より良いゲームを数多く発売することが大きな課題になっていました。そこで,PCゲーム市場に慣れてからコンシューマ機のパッケージ販売やデジタル販売に参入し,現在,収益としてはコンシューマ機向けビジネスのほうが多くなっています。

4Gamer
 最初はパブリッシャというより,ディストリビュータとして活動していたんですね。

ラギャリック氏
 ディストリビュータとして長い期間やってきたのは,移り変わりの非常に激しいゲームビジネスで十分な経験やノウハウがないまま,失敗をしてしまうことを恐れていたからです。
 その間,多くのパブリッシャが独自にゲーム開発を始めたり,海外の開発スタジオを買収してパッケージビジネスに乗り出す姿を見てきましたが,その多くが小売販売の縮小の中で消えていきました。こうしたことが起こり得るのは十分に予測できたので,我々はデジタル販売に早くから参入していたのです。そして,デジタル販売に対する理解を深め,直接ファンにアプローチする方法を考えていくことが,我々の立場を良くしていくと確信していました。

4Gamer
 その頃,パッケージ販売はしていなかったのですか。

ラギャリック氏
 いえ,パッケージの販売網を広げていくのを怠っていたわけではありません。努力の結果,80か国ほどにPCゲームを販売できるようになっていましたから,コンシューマ機向けのビジネスもスムーズに進められました。現在,Microsoft GamesやSony Interactive Entertainmentと良い関係を保てているのは,我々がほかのパブリッシャとは異なる個性的なゲームを提供できているからだと思います。

Focus Home Interactiveの公式サイトには早くからデジタル販売のショップが存在したが,ファンの多くからSteamでダウンロードしたいという要望があったため,2006年,Steamに参加した
Access Accepted第527回:Focus Home Interactiveとはどんなパブリッシャなのか? 同社の20年の歴史を支えてきたCEOにインタビュー

4Gamer
 なるほど。ところで,ラギャリックさんは今回のイベントのタイトルラインナップをどのように見ていますか。予想以上にボリューム感がありますよね。

ラギャリック氏
 非常に興奮しています。いろんなジャンル,いろんなテーマのゲームをまとめていくのは本当に大変なことなんですが,幸い,「Farming Simulator」シリーズのGIANT Softwareや,古くから我々と良い関係にあり,今回は「Styx: Shards of Darkness」「Call of Cthulhu: The Official Video Game」,そして「Werewolf: The Apocalypse」を展示したCyanide Studio,それから「GreedFall」のSpidersや「Vampyr」のDONTNOD Entertainment,さらに「A Plague Tale: Innocence」のAsobo Studioなど,ワールドクラスのデベロッパと一緒に仕事ができました。彼らと共に成長していけるとしたら,それは本当に楽しいことですね。

4Gamer
 なるほど。では,現在のゲーム市場で,自分達をどのように位置づけているんですか。大手パブリッシャの多くは,プロジェクトの数を絞る傾向にあり,正反対の方向性ですが。

ラギャリック氏
 そうですね。でも,大手パブリッシャのやっていることを見てください。彼らは,もう社外のデベロッパと一緒に仕事をしようとしていません。自分達ですべてを賄うか,才能あるチームを買収するだけで,結果として大きな予算を使ったFPSや,オープンワールド型のアクションアドベンチャーなど,同じようなゲームばかり作っています。

4Gamer
 そうかもしれません。マンネリ化しているというか。

ラギャリック氏
 しかし,現実世界には何千人もの有望な開発者がいて,そんな,非常に才能のある人達が,自分達の作りたいゲームを作っています。
 にもかかわらず,パブリッシャが彼らに協力しないことで,そのプロジェクトはゲーマーに遊んでもらえないんです。デベロッパは信念をもって自分のプロジェクトを進めており,作業に情熱を注いでいます。そんなオリジナリティの高いユニークなゲームにスポットライトが当たらないと状況は,ある意味,我々にとって非常にファンタスティックなことですね。我々はいつも,そんなゲームを探し求めていて,それらが,大手パブリッシャが手を付けないまま,いたるところ
にあるわけですから。
 我々は,自分達がヒューマン・カンパニーであると思っており,デベロッパ達の情熱を共有できることに誇りを持っています。

クトゥルフ神話をベースにしたホラーRPG「Call of Cthulhu: The Official Video Game」のデモが,イベントで公開された
Access Accepted第527回:Focus Home Interactiveとはどんなパブリッシャなのか? 同社の20年の歴史を支えてきたCEOにインタビュー


デジタル販売で成功する秘訣


4Gamer
 Focus Home Interactiveのラインナップを見ていると,フランス国内の独立系デベロッパがかなり多いようですね。

ラギャリック氏
 それはもう,我々がフランス企業ですからね(笑)。まあ,CyanideやSpiderは古くからの付き合いですし,今回はAsobo StudioとDONTNOD Entertainmentとも提携していますので,多いように見えるでしょう。でも,同じく古くからのパートナーであるGIANT Softwareはスイスですし,イベントホールにゲームを出展したメーカーでいうと,「Insurgency: Sandstorm」のNew Worldはアメリカ,「Necromunda: Underhive Wars」のRogue Factorはカナダ,そして「The Surge」のDeck 13 Interactiveはドイツです。Focus Home Interactiveの社員は多くなく,海外の窓口さえない状態ですが,オリジナリティの高いゲームなら,国とは関係なく,さまざまな地域のデベロッパやゲーマーと関係を築いていきたいですね。

記事にはしていないが,「Farming Simulator 17」のDLCとして,農業機器メーカーのKuhnをフィーチャーした「Kuhn DLC」が2月14日にリリースされることも発表された
Access Accepted第527回:Focus Home Interactiveとはどんなパブリッシャなのか? 同社の20年の歴史を支えてきたCEOにインタビュー

4Gamer
 ところで,フランスのゲーム産業の現状はどう見ていらっしゃいますか。

ラギャリック氏
 今は,生まれ変わりつつあると思います。フランスを代表するゲームメーカーといえばUbisoft Entertainment,というイメージを皆さん,持っているのではないでしょうか。でも,彼らでさえ,政府や州の支援があるカナダやアメリカ,中国などでゲーム開発を行っています。これまで,フランスでゲームを作ることにメリットはありませんでした。
 しかし最近,フランス政府はゲーム産業を成長の機会と見るようになっており,法人税や開発費負担などの優遇政策を行い,それによって,ほかの地域と競えるようになってきました。フランスに優れたデベロッパが次々に生まれているのも,そのことに関係があるのです。

4Gamer
 数字的なことを聞きますが,Focus Home Interactiveの社員はどういう構成ですか。

ラギャリック氏
 一番多いのは開発関係で,QA(品質管理)を含めて50人くらいですか。あとはマーケティングが30人弱で,小売関係が12人……かな。それに私のような管理職を含めると,そうですね,100人いるかいないかくらいの規模だと思います。

4Gamer
 品質管理がメインなんですか。やはりデベロッパにとって,Focus Home Interactiveが提供するバグチェックは大切なのでしょうね。

ラギャリック氏
 そうですね。でも,社内だけでなく,外部のQA専門会社に委託することも多いです。もっとも,最近のゲームエンジンは非常に洗練されており,昔に比べて,ゲームをクラッシュさせるような致命的なバグはかなり少なくなっています。ですから,品質管理部門の負担は減っているようです。

ゴブリンが主人公という一風変わったステルスアクション「Styx: World of Darkness」は,3月発売予定
Access Accepted第527回:Focus Home Interactiveとはどんなパブリッシャなのか? 同社の20年の歴史を支えてきたCEOにインタビュー

4Gamer
 ゲーム開発に対して,デベロッパにあれしろこれしとと“口出し”をすることはあるんですか。

ラギャリック氏
 それは,ケースバイケースですね。DONTNOD Entertainmentの「Vampyr」は,もともと,アクションに特化したゲームだったのですが,それが現在のゲーム市場にどうフィットするかという話し合いぐらいは持ちました。また,「Blood Bowl」に始まり,Game Workshopとの提携も6年めに入りましたが,「Warhammer」ユニバースに詳しい彼らにコンタクトして,IPに即したプロジェクトを作れるかどうか,企画を出してもらうといったこともありますね。
 しかし,基本的に我々は開発者達がやりたいことを尊重していますので,彼らの作りたいゲームを作ってもらうようにしています。

新たなパートナーとなったAsobo Studioの新作「A Plague Tale: Innocence」は,3000匹ものネズミが画面中を動き回るアクションアドベンチャーだ
Access Accepted第527回:Focus Home Interactiveとはどんなパブリッシャなのか? 同社の20年の歴史を支えてきたCEOにインタビュー

4Gamer
 2016年は,Steamで4200作を超える作品がリリースされました。今のゲーム市場の競争は激化しているようですが,これをどのように見ていますか。

ラギャリック氏
 あまり詳しいノウハウをお話するわけにはいかないんですが,当時も今も変わらないのは,Steamはあくまで「プラットフォーム」でしかないということです。Valveがゲームを売ってくれるわけではありません。あくまでも,ゲームを作る側,制作する側が“Steamというプラットフォーム”を使ってゲームを売るんです。そのためにマーケティングを行い,ファンとのコミュニケーションを図り,プロモーション活動をしていくのは,我々の役目です。

4Gamer
 なるほど,それは分かりやすいですね。Focus Home Interactiveのタイトルのほとんどが,伝統的な売り切り型であるという点はどう考えていますか。

ラギャリック氏
 Free-to-Playにしろ,エピソディックにしろ,いろいろなビジネスモデルを見ていますが,成功させるのはなかなか難しいと思っています。DLCを批判するつもりはありませんが,個人的には,プレミアムとかマイクロトランザクションでプレイヤーから追加料金を取るという仕組みを好んではいません。ほかのメーカーがそうした手法で成功するのは喜ばしいことですが,実際に成果を出しているのは,全体のほんの一部ではないでしょうか。プレイヤーには完成した1つの製品を購入してほしいと思っています。

4Gamer
 では最後になりますが,短期でも長期でもいいのですが,Focus Home Interactiveの現在の目標を聞かせてください。

ラギャリック氏
 現在,我々がやっていることが間違っているとは思いませんので,軌道修正せずに進んでいこうと思っています。私はFocus Home Interactiveがほかのパブリッシャが出すタイトルとは異なる,個性的なオリジナル作品を数多くリリースする伝統を持っていることを,少しでも多くのゲーマーの皆さんに知ってほしいと願っています。そして,それが今回の「What's Next de Focus?」のラインナップに表れていると思います。

 我々は小さなパブリッシャに過ぎませんが,Focus Home Interactiveだからこそ作れるタイトル,大きな予算はかけていないかもしれないけど,プレイする価値があるゲームをプロデュースできることに誇りを持っています。我々の成長を皆さんに見てもらえるなら,それは本当に嬉しいことです。

4Gamer
 本日はどうも,ありがとうございました。

Focus Home Interactive公式サイト


著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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