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印刷2009/03/27 11:22

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奥谷海人のAccess Accepted / 第211回:ゲームとハリウッド映画に起きる新現象

奥谷海人のAccess Accepted

 ゲーム業界と映画業界は,昔から密接な関わりがあった。その傾向はさらに目立つようになってきて,スティーブン・スピルバーグ監督とElectronic Artsのコラボレーションによって「Boom Box」が生まれるなど,ハリウッドの有名人がゲーム開発に深く関わるようなケースが目立っている。今回は,ゲームと映画の間に起きつつある現象についてお伝えする。

第211回:ゲームとハリウッド映画に起きる新現象

 

あのジェームズ・キャメロンがMMORPGを開発
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これは,2009年12月に全米公開される,ジェームズ・キャメロン監督の「Avatar」のコンセプトアートだ。これまでも,ジョージ・ルーカスやスティーブン・スピルバーグといった大物達がゲーム開発に関わっていたが,キャメロン監督主導のMMORPGはどのようなものになるのだろうか (C)20th Century Fox. All Rights Reserved.

 2000年頃から「ハリウッドはオリジナルネタ不足」などといわれるようになっており,ヒット作の続編が乱発された。また,2001年に人気アクションアドベンチャーゲームを映画化した「Lara Croft: Tomb Raider」(邦題 トゥームレイダー)が公開最初の週末で4800万ドル(約46億円)の大ヒットを記録。2002年の「Resident Evil」(邦題 バイオハザード)も2370万ドル(約21億円)で,週末ランキングのトップを飾るなど,ゲームを映画化した“ゲーム映画”が立て続けに成功を収めた。

 徐々にゲーム業界とのつながりを深めていったハリウッドの映画産業だが,最近ではいままでと違う形でのコラボレーションが目立つようになってきた。単にライセンスをプロダクション会社に売りつけるというケースはあまり見られなくなっており,企画段階から映画とゲームの両方を念頭においたプロジェクトが増えているのである。

 そんな代表例といえるのが,ジェームズ・キャメロン監督の映画「Avatar」だ。Avatarは,2004年3月に「ゲームと映画を一体化させる」という名目で本格的に始動。その後Ubisoft Entertainmentと協力してMMORPGの開発が進められていることが発表された。Avatarは,未来と過去が混在したような架空の惑星を舞台に,特殊な実験で離れた場所にいる人に自分の意思を投影できるようになった主人公が,遥かかなたにある惑星の戦争に大きな影響をおよぼすというストーリーになるようだ。20世紀フォックスが300億円近くも投じて制作している超大作である。ゲームのほうは詳細がまったく明かされていないが,映画の制作費を考えると,こちらにも巨費が投じられていてもなんの不思議もないだろう。

 

 

ゲームと映画が同時開発されるミリタリーFPS
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ゲームだけでなく,映画やコミックにもなる「Blacklight」。これはたんに映画をゲーム化するという話ではなく,企画段階から映画以外のプロジェクトも同時進行しているのだ

 また,Avatarと同じようなスタイルである「Blacklight」という新プロジェクトが,最近発表された。これは,Zombie Studiosが開発する,Unreal Engine 3.0を使ったミリタリーFPSになる模様だ。
 Zombie Studiosは,1998年に「Spec Ops: Ranger Lead the Way」という作品を手掛け,旧Red Storm EntertainmentのRainbow Sixシリーズや,NovaLogicのDelta Forceシリーズと並び,“ミリタリーFPS三羽烏”の一翼を担っていた老舗デベロッパだ。最近では,アメリカ陸軍が新兵リクルートを目的に制作した「America's Army」の開発を裏で支えていた。

 Blacklightは,ゲームと共に映画が制作される予定になっており,こちらはハリウッドをベースにするUnion Entertainmentが担当する。Union Entertainmentは,ゲーム会社とハリウッドのタレントをつなぐ仲介業社として存在感を増してる会社だ。2K Gamesが2007年にリリースしたFPS「The Darkness」では,ハリウッドの脚本家やミュージシャンを開発チームのStarbreeze Studiosに引き合わせ,コミックスも手掛けるといった実績がある。Union Entertainmentは,Blacklightの映画以外に,コミックスなどもリリースする予定だ。

 さらに,ハリウッド俳優がゲーム会社を設立するというケースもある。例えば,「The Fast & The Furious」(邦題: ワイルドスピード)や「The Pacifier」(邦題: キャプテン・ウルフ)などの作品で知られるヴィン・ディーゼル氏は,Tigon Studiosという開発会社をシアトル近郊に持っているのだ。
 ディーゼル氏は,The Chronicle of Riddickシリーズや「WHEELMAN」に,自分の姿をデジタル化して登場させており,ゲーム業界の中では際立った存在感を示している。さらに,公式サイトでは「Secret Service」というゲームを開発していることが紹介されている。
 加えて,Tigon Studiosは「Barca B.C.」というMMORPGの開発にも着手したことを発表しているが,Barca(バルカ)とは,カルタゴの戦いで有名なハンニバル将軍のラストネームのこと。どのようなオンラインゲームになるのか想像もつかないが,ディーゼル氏はハンニバル将軍の半生を追った映画を,自ら製作から監督,そして主演までをこなす予定で企画しているという。

 このほかにも,メタルギア・ソリッドシリーズ英語版でスネークを演じているDavid Heyter(デイビッド・へイター)氏が,2008年に公開された映画「Doomsday」のプロデューサーであるBenedict Carver(ベネディクト・カーヴァー)氏と,Dark Hero Studiosという開発会社を設立した。1作目として,「Demonology」というホラー系アクションゲームを開発する予定だ。
 ヘイター氏は,古くは「ルパン三世 カリオストロの城」の英語版でルパン役を演じるなど,声優としてかなりのキャリアを積んできている。さらに,脚本家としても有名で,X-メンシリーズや「Watchmen」の脚本を執筆した人物でもある。

 

 

トランスメディア化と,その裏に感じるゲーム愛
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4月にアメリカで発売される予定のヴィン・ディーゼル“主演”ゲーム「The Chronicle of Riddick: Assault on Dark Athena」。アクションスターとしては中堅どころの彼は,かなりのゲーマーとして知られている。映画産業に限らず,スポーツや音楽業界を担うスターや若手企業家達のほとんどが,ゲームに子供の頃から親しんでいる世代になってきたのだ

 映画界で名の知れた監督やプロデューサー,脚本家や俳優といった人達が,映画の版権をライセンスするだけでなく,畑違いであるゲーム制作に関わることが,ハリウッドの一つのトレンドになっているのは明らかだ。最近では,こういった手法をアメリカでは「トランスメディア」(transmedia)と呼ぶようになっている。

 ハリウッド俳優や監督といえば,以前までは,一度人気が出ると新作映画のプロモーション目的以外の理由で,テレビや雑誌などに出るのを嫌う風潮があった。坂口博信氏がメガホンを取ったCGアニメ映画「ファイナル・ファンタジー」のキャスティング時に,「将来,俳優業を脅かす危険のあるデジタルキャラクターに関わりたくない」と突っぱねた男優がいたという話を,制作関係者から聞いたことがある。
 時代は移り変わり,今ではハリウッド俳優がテレビに転進したり,リアリティショーやクイズ番組に出演するのを見かけるようになった。また,映画関係者がゲーム業界に参入するだけでなく,スポーツ選手がスポーツゲームのパッケージの表紙になることを誇りとし,ミュージシャンは楽曲を提供するだけでなく,自分自身をゲームに登場させてプレイヤーに遊ばせたりしている。トランスメディアは広く浸透しているといってよいだろう。

 「多角的に活躍の場を模索するのは,エンターテイナーなら当たり前」といってしまえばそれまでかも知れない。だが,そうやってゲーム業界に新たな関わりを持ち始めた人々は,ゲームに対する造詣が深い。子供の頃からゲームに親しんできた世代が大人になり,大きなプロジェクトを動かすようになってきたのも,映画とゲームが近づいた一因だろう。ゲームがハリウッドと密接な関わりを持ち始めたのは,ゲームが“メインストリーム”になったことの証しの一つといえるだろう。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。3月17日はアイルランドにキリスト教を広めた聖パトリックの命日であり,アイルランド系移民の多い街などではお祭りが行なわれる。せっかくだからアイリッシュバーでこの日を過ごしたいと思った奥谷氏は,「アイルランド人と一緒でなければ意味がない」とアイルランド人を探し回り,ようやく奥さんの従妹の旦那さんという,近いのか遠いのか分からない人物と会う約束をとりつけた。だが共通の話題が皆無で,男二人で黙ってビールをひたすら飲むという微妙な祝日になったらしい。
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