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印刷2008/08/01 13:00

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第182回:いたずらか詐欺か。人気作で起きた三つの事件

奥谷海人のAccess Accepted

 「Team Fortress 2」や「Grand Theft Auto IV」のような人気作品になると,どんな手を使ってでも最新情報を得ようとする熱狂的なファンや,虚偽の情報を流して人々が混乱する様子を楽しむ愉快犯などの話題がニュースになる。さらには,難癖をつけて金儲けを企むような者などが出てくることもあるので困りものだ。冗談の域に留まっていればいいのだが,行きすぎると……。

いたずらか詐欺か。人気作で起きた三つの事件

 ゲーム業界を驚かせた大仕掛けないたずらというと,「第83回:マックと嘘とビデオゲーム」で紹介した事件が有名だ。これは,MacDonald Interactiveという架空のゲーム開発会社を捏造して,ゲームカンファレンスに挑んだ環境団体の話である。簡単に説明すると,ハンバーガーチェーン,マクドナルドの傘下という触れ込みでシミュレーションゲームを開発し,同社がなにをやっても地球環境を破壊してしまうという,驚きの(?)結果を報告し,カンファレンス参加者を騙したという事件だ。

 あらためて読み返しても「よくもまあ,こんなことをやったものだ」と思える,信じられないようないたずらだ。

 ここまで大がかりとはいかないまでも,欧米ではゲーム業界に向けたいたずらは,結構な頻度で起きる。それはゲームに対する愛情の表れであることが多く,人を傷付けない程度のものであれば,それほど大問題に発展することはない。場合によっては,賞賛されたり,その子供っぽさが批判されたりしてネットで評判になり,ゲームの名前がより知られることもある。だが中には,偽の情報を流してファンコミュニティが混乱するのを楽しんだり,利益を得ようとする輩も含まれているのである。

 今回は,そんな中でもValveとRockstarという,世界的に有名なゲーム会社が巻き込まれた事件を紹介しよう。

 

Team Fortress 2のSpyアップデート画像を捏造
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ファンフォーラムでは早い段階から,サインについて指摘されていたが,騙されてしまった人が多かったようで,3週間近く経ってからValveから公式に“偽と認められた”
※クリックで拡大します

 6月末に“リーク”されたというのが「Team Fortress 2」のSpyキャラクターのアップデート情報である。いかにもTeam Fortress 2シリーズらしいアートワークを使い,プレイヤーが作ったマップ二つを正式に追加するという発表や,Spyがアンロックできる新しい武器や専用のアチーブメント35種類などが,こと細かに紹介されたのだ。

 アートワークは,それ以前にアップデートされたMedicとPyroに似せられていた。Spyの好敵手であるPyroがアップデートされて一週間ばかりのタイミングでファンフォーラムに掲載されたこともあり,これを見た人は誰もがValveの社内サーバーからリークされたものだと信じて疑わなかった。ただ,この偽アートを作った人物にはそれほど悪気がなかったようで,ページ最下部のコピーライト部分最後に小さな文字で「Keaninが作った嘘だよ!」(Hoax by Keanin :P)とサインされていた。

 だが,それに気がつかなかったファンやメディア関係者からの問い合わせがValveに相次いだらしく,7月16日に公式サイトの開発者ブログで,このアートが偽モノであると正式に説明された。面白いのは,この偽情報の出来があまりにもよかっために,Valve社内にも騙されてしまった人がいたと書かれていることだ。ブログの最後には「Keanin,上手くやったな!」と記されており,ちょっとしたいたずらを大目に見るValveとファンコミュニティの関係が伝わってくる。

 

Grand Theft Auto IVのPC版開発の情報を,
Rockstar Gamesから聞き出したというウワサ

「Grand Theft Auto IV(以下,GTA IV)のPC版は出るのか,出ないのか?」という疑問は,多くのPCゲーマーにとって気になるところ。最近では,ドイツのオンラインゲームショップにPC版の予約情報が出たり,インドネシアのPCゲーム専門雑誌の表紙になったりしたようで,PC版発売のウワサが広まっている。さらに,ゲームのレーティングを行うESRBのサイトでは,Xbox 360版とPLAYSTATION 3版とともに「Windows PC」もプラットフォームに加えられていた。現在ではWindows PCの文字は消えているが,外堀は徐々に埋められつつあるといった感じかもしれない。とはいってもRockstar Gamesは依然として正式な発表は行っていないので,ウワサの域を脱していないのだ。

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カスタマーサポートの担当者は,存在しないPC版GTA IVのリーク版を追求するはめになった。RockstarScammer氏は,インターネットに関する知識が豊富でない振りをして,PC版存在の証言を引き出したのである。なお画像は,「How we pranked Rockstar」より転載したものだ

 そんな状態に業を煮やしたのか,PC版の存在の解明に乗り出したのが,「How we pranked Rockstar」というブログの管理人RockstarScammer氏である。しかも,PC用GTA IVのβ版が流出しているという嘘のメールを送り,Rockstarから話を聞きだすという巧妙な手口だったのだ。

 RockstarScammer氏は,「最近,GTA IVの無料配布版をダウンロードしたのだけど,私のPCでは音が鳴りません。これは無料版の仕様なのでしょうか」と,なにも知らずにダウンロードしてしまったかのように装い,Rockstarのカスタマーサポートセンターに接触。翌朝には親会社のTake-Two Interactive傘下でPCソフトを担当する2K Gamesの担当からメールがあり,何度かやり取りをしたという。その過程で「PC版は現在開発中で,市場には出回っていません」という言葉を引き出したというのである。

 すべてがでっち上げという可能性もあったのだが,7月26日に,RockstarScammer氏はオンラインサポートのやり取りで使用したEメールのキャプチャー画像を公開しており,信憑性が高まっている。今後は,これを読んで得た知識を実践する人が現われる可能性があるので,ゲームメーカー各社は,ファンを混乱させないためにも,より一層の注意が必要になるだろう。

 

尻すぼみの結果に終わった
San Andreasの消費者団体訴訟

 さて,PC版のGTA IV発売が難しいといわれているのは,そもそも「Grand Theft Auto: San Andreas」(以下,San Andreas)で,セックスシーンのミニゲームをアンロックさせる「Hot Coffee MOD」の存在が社会問題へと発展したからだ。問題はさまざまなところへ拡がり,数億円規模の消費者団体訴訟が行われたのだが,その結果はどうなったのだろうか。

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今回のテーマとは少し離れてしまったが,ゲーム業界を食い荒らそうとする一部の弁護士の行為は,詐欺的な印象を受ける。もっとも,Take-Two Interactiveの賠償によるダメージは小さく,結果としてGTA IVの大成功につながる前哨戦を制した

 Xbox 360とPLAYSTATION 3版を含めると,San Andreasは1200万本のセールスを記録しており,このうちPCは50万本ほど売れたと推定されている。ところが,訴訟を起こした消費者団体の呼びかけに応じた人は,締め切りの6月28日までに,わずか2676人だった。つまり,実際にSan Andreasを購入した者のうち,ミニゲームの存在に不満を訴えた人は1%にも満たなかったわけだ。

 訴訟を起こしたグループの公式サイトによると,ゲームを購入時のレシートを持っていれば,最大35ドル(約4000円)の賠償金とミニゲームを取り除いたセカンドエディションへの交換が行われるとしている。しかし,レシートを持っていた人はほとんどいなかったようで,Take-Two Interactiveが負担した額は3万ドル(約307万円)程度と,大騒ぎしていたのが嘘のようだ。オークションサイトでは,ファーストエディションが高額で取引されていたりもするため,わざわざ団体訴訟に応える人は少なかったのだろう。

 そもそも「ほぼ100%の購入者は満足していた」という事実こそが,この訴訟がいかに無意味だったのかを物語っている。ちなみに,消費者団体訴訟を起こした弁護士グループには弁護費用が100万ドル(約1億700万円)が支払われるという。訴訟社会アメリカの複雑さが,あらためて浮き彫りになったといえる結果だ。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。自転車を新調することになっている娘さんのために,自転車屋へ下見に行った奥谷氏。予算を大幅に超えるビアンキの自転車に,娘さんが見とれておりハラハラしたそうだ。だが,試し乗りしたり眺めたりしているに,パーツの輝きや美しい曲線に自分がしびれてしまったという。結局今は,娘さんの自転車新調計画は棚上げし,自分が買うための策をアレコレ練っているらしい。成功したら,ここでその方法を公開してください。

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